「うーん、この光景を何と表現したらいいんだろうな。……メロドラマ? 違うか」
コニシ酒店……正確にはその中で小西一家がそれぞれ言い争い、説得し、泣き、怒り、喚き……そんな事をしている光景を見て、思わず呟く。
確かメロドラマというのは、恋愛を重視したドラマのジャンルだった筈だ。
今、俺の目の前で繰り広げられているのは、愛は愛でも家族愛だ。
そうである以上、メロドラマじゃなくてホームコメディにでもなるのか?
いや、コメディじゃないからこれもちょっと違うか。
あるいは堂島との一件からメロドラマと考えてもいいのかもしれないが。
そんな風に考えている間に、家族間の会話は終わる。
小西の両親にしてみれば、多少関係がギクシャクしていたとはいえ、娘が殺されそうになったのだ。
それも刑事の足立に。
ちなみに当然だがTVの中に入れる云々ではなく、あくまでも普通に……男の力で殴り掛かって殺そうとしたという事になっている。
さすがにTVの中に入れるというのは、普通に説明しても素直に納得出来るとは思えないだろうし。
「東京での生活については、桐条グループが全面的にバックアップします。勿論、働きたいと言うのであれば、仕事場も用意しましょう。また尚紀君には月光館学園という高校に一時的に転校して貰います」
美鶴の説明に、小西一家――早紀を除く――は戸惑った様子を見せている。
まぁ、いきなり桐条グループという存在が出て来たら驚くなという方が無理だろうが。
それでも堂島が……稲羽署の刑事が美鶴は本物であると、本当に桐条グループの令嬢で、暫くの間小西一家を匿うのに協力してくれると聞くと、今度は何故そんな事になるのかと疑問を抱く。
「早紀の件で匿ってくれるのは嬉しいんだが、一体何でわざわざ桐条グループが? これは警察の仕事だと思うんだが」
小西……ここには小西が4人もいるから、早紀は早紀と呼んで、それ以外は早紀の父と母と弟という事にしておくか。
とにかく早紀の父親が不思議そうな視線を美鶴に向ける。
美鶴が桐条グループの令嬢だというのは堂島が保証したものの、それでも日本で大きな影響力を持つのは間違いないものの、それでも民間という立場なのに何故、と。
「桐条グループの大きさは分かるでしょう。その桐条グループの中には、警察と協力関係を結んでいる組織もあるんですよ」
堂島がいつものぶっきらぼうな口調ではなく、丁寧な口調で早紀の両親や弟に説明する。
……その説明も、決して嘘という訳じゃない。
実際に警察――実際には警視庁だが――と協力関係にあるのは間違いないし、シャドウワーカーは桐条グループに所属する組織なのだから。
寧ろシャドウだとかTVに入る能力だとか、対シャドウ用の組織だとか、そういうのを言わないで説明するとなれば、堂島のその説明が一番分かりやすいと思う。
堂島もその辺を理解した上で話したのか、それとも偶然そういう説明になったのか。
その辺は俺にも分からなかったが。
「はぁ、警察と協力関係を……そういう事もあるのか」
早紀の父親は堂島の説明に納得したのか、それとも納得出来ていないのか、とにかくそんな風に言う。
実際、外部組織という意味では警察と協力関係を結んでいる組織もあったりするので、そこまでおかしな話ではない……だろう。
「そういう訳で、貴方達の心配はいりません」
「ですが、その……こういった風な事は普通の事なんですか?」
「普通ではないですね。今回の件はそれだけ特別だと思って下さい」
「……刑事が犯人だったというのは分かりますが、それでここまでする程に特別だとは思えないんですが。それに、避難をするのはいいとして、息子が転校というのも……それが必要なくらい、事件の解決には時間が掛かるんですか?」
「念の為です。今回の事件の容疑者は、色々と特殊な裏事情がありましてね」
早紀の父親の疑問に堂島が答えているが、それはいかにも苦しい。
まぁ、シャドウとかTVに入る能力について話せないのだから、それも当然か。
特にTVに入れる能力について話せないのは、足立について説明するのが難しいよな。
ぶっちゃけ、早紀の家族が東京に避難するのは、それが一番大きな理由なのだから。
TVを自由に出入り出来るとなると、それこそどんなに厳重にコニシ酒店を警備していても、内側からあっさりと入ってくる事が出来る。
そう考えると、とてもではないが足立が自由にTVを出入り可能な稲羽市に小西の家族を置いておく訳にはいかず、桐条グループのお膝元の東京で匿うのが最善だった。
東京でTVの中に入れないというのは、実際に俺が確認してあるし。
しかし、その辺の事情について話せないから、堂島の説明も色々と苦しい。
それでも早紀の両親が納得したのは、堂島の説明で十分に理解したのか。
あるいは堂島の様子から説明はされていないものの、言えないような何かがあると判断したのか。
ともあれ、堂島の説明に納得すると、早紀の両親と弟はすぐに東京に向かう準備をする。
美鶴が桐条グループの全面的なバックアップがあると言ったのは嘘でも何でもなく、持っていくのは数日分の着替えと通帳や判子、あるいはどうしても長期間家を留守にする以上は残していけない大事な物となる。
ぶっちゃけ、天城屋旅館に卒業旅行でやって来た美鶴やゆかりの荷物の方が多かったくらいだ。
それ以外の生活に必要な諸々は全て桐条グループの方で用意するらしい。
普通に生活するとなると、TVや洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、PC……それ以外にも色々と必要な家電とかはあると思うが、それも全て桐条グループ側で用意するらしい。
新品を購入するのか、あるいは桐条グループにあるけど使っていなかった物を流用するのか、はたまた桐条グループにある試作品とかそういうのを用意するのか。
その辺りについては、生憎と俺にも分からないが。
とはいえ、刑事の堂島や桐条グループの美鶴が来たという事もあり、娘が、そして娘の家族の自分達も信じられない騒動に巻き込まれているのは理解したのだろう。
素早く準備を終えると、家から出ていく。
ちなみに田舎というのは東京とかと違って電車やバスを使って移動するよりも、車が普通の足だ。
家族で1台ではなく、冗談でも何でもなく1人1台というのが田舎での普通だ。
そんな訳でコニシ酒店にも宅配とかに使う車があるので、早紀以外の小西一家はその車に乗って去っていく。
当然だが、店はシャッターを閉めて、都合により暫く休みますといった張り紙が貼られる。
本来ならこういう時は隣近所の家にも事情を説明するのが普通なのだろうが、生憎と今はそんな真似をするだけの余裕はないので、特に説明の類はなかった。
「皆……」
走り去る車を見ながら、早紀が小さく呟くのが聞こえてきた。
とはいえ、その呟きは小さな声だったので、混沌精霊で五感が鋭い俺にしか聞こえなかっただろうが。
それでも寂しそうな様子の早紀を見て、堂島は思うところがあったのだろう。
近くに行って一言二言声を掛ける。
それに笑みを浮かべる早紀。
とはいえ、それはとてもではないが満面の笑みといったようなものではなく、無理に笑みを浮かべているといった様子だったが。
それでも堂島が声を掛けるというのは、早紀にとっては十分な効果があったらしい。
……もっとも、落ち込んでいるところで気になっている相手に声を掛けて貰うという事で、早紀の堂島に対する想いはより一層強まったように思えたが。
「さて、ではそろそろ私達も天城屋旅館に戻るとしよう」
早紀が落ち着いたのを見た美鶴が、そう言う。
ちなみに早紀の着替えとかそういう諸々も、既に準備が終わっている。
小西一家が準備をしている時、早紀もまた自分の荷物を準備していたのだ。
ただし、こちらは結構な荷物量だが。
無理もない。小西一家が桐条グループの完全なバックアップを受けて生活に必要な物は全て用意するのに対して、現在俺達が泊まっているのは天城屋旅館だ。
勝手に荷物とかを用意する訳にはいかない。
その上、早紀は女子高生で化粧品を始めとして自分で持っていく荷物の量もかなりの物となる。
それを考えれば、荷物が多くなるのは仕方のない事だった。
とはいえ、堂島が驚く程の荷物の量だったが。
「これ、全部車に積めるのか?」
「心配するな。……丁度いい、以前は影のゲートを見せたが、もっと違う俺の能力を見せてやろう」
「何?」
俺が何を言ってるのか分からないといった様子の堂島だったが、論より証拠、百聞は一見にしかず。
早紀の荷物を空間倉庫に収納していく。
「な……」
「え?」
堂島と早紀は目の前で消えていく荷物に理解出来ないといった声を上げる。
普通に考えてこのような光景を見ることはないだろうし、それも仕方がないのか。
美鶴は空間倉庫について十分に知っているので、今の光景を見ても特に驚く様子はない。
そうしている間にも次々となくなっていく荷物。
やがて全ての荷物がなくなり……
「これで終わり、と。……荷物については見ての通り俺が持っていくから気にしないでくれ」
「いや、待ってくれ。今のは一体何があったんだ? 荷物はどこにいった?」
「俺の持つ能力の1つ、空間倉庫だ。その名の通り、異空間に荷物とかを収納出来る能力を持つ」
『……』
俺の口から出た言葉に、堂島と早紀が出来るのは沈黙する事だけだった。
とはいえ、空間倉庫系の能力というのはフィクションとかでは普通に……いや、堂島がそういうのを読むとは思えないし、早紀もまたそういうのよりはお洒落とかの方に興味がありそうだな。
「唖然とするのもいいけど、実際にそういうのがあるというのは納得して貰わないといけないぞ。でないと、荷物はどこに消えたのかという事になるし」
「それは……」
俺の言葉に最初に我に返ったのは早紀。
当然か。
目の前で消えたのは自分の荷物だ。
その中には色々と大事な物もあっただろうし、それがなくなったかもしれない、消えたかもしれないとなれば、その事に焦るなという方が無理だった。
そんな早紀を安心させる為に、空間倉庫の中に収納した荷物のうちの1つを取り出す。
「ほら、あるだろ?」
「……本当だ……」
「あー……すまないが、車の運転を代わってくれないか? 予想していなかった光景を見て、ちょっと動揺している」
「では、私が運転しよう。アクセルに任せてもいいが、私の方が向いている筈だ」
そう言う美鶴だったが、この場合の向いている云々というのは、免許の有無だろう。
美鶴はペルソナ世界できちんと車の運転免許を取っている。
それに比べると、俺は運転は普通に出来るし、寧ろ上手い方なのは間違いない。
だが、それでも俺が免許を持っていないというのは事実だ。
つまりペルソナ世界において、俺が車を運転すれば無免許運転になってしまう。
身内だけの時はともかく、刑事の堂島がいる場所でそういうのをするのはさすがに不味い。
一応見つかっても桐条グループの力でどうとでもなるとは思うが、問題になると分かっているのなら、最初からそういう事をしない方がいい。
あるいはいっそ影のゲートでとも思ったが、もう夕方……いや、夜になってはいても、人通りがない訳ではない。
ジュネスによってこの商店街の活気がなくなってきたのは間違いないものの、それでも完全に寂れているという訳ではないのだ。
それなりに人もいるのを考えると、やっぱりここで影のゲートを使う訳にはいかない。
早紀にいたっては、まだ高校生だから……あ、でも高3だと考えれば、免許を持っていてもおかしくはないのか?
とはいえ、早紀の様子を見る限りだと免許は持ってないようだったが。
それに免許を取っていても、まだ初心者だ。
確か初心者が車に乗る時は若葉マークをつけないといけなかった筈だが、堂島の車にはそのような物はない。
そんな訳で、現在の状況を考えるとやっぱり美鶴が運転するのが一番いい。
堂島は美鶴に運転をさせることに最初は難色を示した。
桐条グループの令嬢という、VIPと呼ぶべき存在なのだから、当然かもしれないが。
ただ、実際に運転出来るのが美鶴だけだと知ると、さすがにそれ以上の反対は出来ず、美鶴に運転を任せる事になる。
本人は美鶴に運転をさせるのならいっそ自分が……という思いもあったようだったが、美鶴がやる気になっていた以上はどうしようもない。
それに堂島が色々と限界に近い……自分の常識では理解出来ない諸々を、今日だけで一体どれだけ経験したのかを考えれば、精神的な消耗も大きいだろう。
特に相棒だった足立の件が堪えていたところに、追加で空間倉庫だ。
そう考えれば、やはり美鶴に任せるのが最善だった。
そんな訳で、後部座席は堂島と早紀を乗せて、俺は助手席に乗る。
一応、早紀と堂島の関係を考えての行動だったが、もし堂島が俺の考えを知ったらどう反応するんだろうな。
そんな風に思いながら、俺達は車で天城屋旅館に向かうのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820