美鶴の運転で天城屋旅館に戻ってくると、早速早紀の泊まる予定になっている部屋に案内される。
荷物を何も持っていないことに、案内の従業員は不思議そうな様子を見せていたものの、早紀の件については既に警察やシャドウワーカーから事情を聞いているので、深く聞いてきたりはしない。
いやまぁ、歴史ある旅館の従業員だ。
そういう特別な事情がなくても、わざわざ話を聞いたりといった事はしないだろうが。
あるいは客の方が話し掛けて欲しいと思っていれば、それを察知して話し掛けたりはするだろうが。
そうして案内された部屋は、俺と美鶴が泊まっている部屋と比べるとそれなりにランクの下がる部屋だ。
とはいえ、天城屋旅館の部屋である以上は、それでも十分贅沢な部屋ではあったが。
それこそ、その辺のビジネスホテルとかとは比べものにならないくらいに快適な部屋ではあった。
稲羽署の出費……どうなるんだろうな。
その辺については俺が心配する事じゃないし、警視庁側の方からも恐らく臨時にある程度の金が下りてくるだろうから、副署長とかの貯金が減る事は多分ないと思う。
「では、アクセル。荷物を」
一緒に来ていた美鶴の指示に従い、空間倉庫から早紀の荷物を取り出す。
どん、どん、どん、どん。
そんな風に何個ものスーツケースやバッグがどこからともなく出てくる様子は、早紀にとっては全く理解出来ないものなのだろう。
それでもすぐ我に返ると、自分の荷物に何も影響がないのかと確認していく。
……今更の話だけど、もし荷物の中に時計とかがあったら時間がずれてるんだよな。
電波とかで自動的に時間の誤差を調整するタイプの時計だったら、その辺は問題ないが。
「アクセル、いつまで部屋にいるつもりだ? 女の荷物整理を見たいとでも?」
バッグの1つを開けようして動きを止めていた早紀を見て、美鶴がそう言ってくる。
多分だが、あのバッグの中には他人に……特に男に見せられないような何かがあったのだろう。
具体的には下着とか。
「そうだな。俺は大広間に戻ってる……けど、そのTVはどうする?」
俺と美鶴の部屋には、ゆっくりしたいからという理由でTVを置かないで貰っていた。
だが、この部屋は普通の部屋である以上、TVが置かれている。
そこまで大きなTVという訳でもないが、それでも稲羽署の取調室にあったTVよりは大きい。
だとすれば、早紀が入る事は十分に可能だろう。
何しろ足立は取調室のTVに早紀を入れようとしたのだから。
なら、早紀の部屋にこのTVを置いておくのは止めた方がいいだろう。
とはいえ、TVは天城屋旅館の色々な場所にある。
その全てを撤去する訳にはいかない以上、この部屋のTVを撤去したからといって絶対に安全という訳ではないのだろうが。
「取りあえず部屋の外に出しておいてくれ。私から宿の方に話を通しておく」
「分かった」
美鶴がどういう理由でTVを部屋の中に入れないように説明するのかは、生憎と俺には分からなかった。
とはいえ、その辺は美鶴の交渉能力があればどうとでもなるのだろう。
あるいは桐条グループの力で無理矢理どうにかするのかもしれないが。
……まさか、TVの中に入れる奴がいるとか、そういうのは言わないと思うけど。
とにかく交渉に関しては美鶴に任せて、俺はTVのケーブルをそれぞれ引き抜くと部屋の外に置く。
ちなみに……本当にちなみにの話なんだが、足立が入る事の出来るTVってケーブルやコンセントが繋がっている状態だけなのか?
それともTVという存在であれば、その時点で問題ないのか。
その辺は少し気になるな。
この先、足立を捕らえるにしても、もしくは倒すにしても足立の能力について知る事は必須なのだから。
とはいえ、それは今の時点ではどうしようもないか。
……あるいは俺が試してみればいいのか?
そう思って部屋の外に運んだTVに、魔力を通した腕を伸ばすと……
「あ」
予想していたよりもあっさりと俺の腕はTVの中に入ってしまう。
一応と確認してTVの後ろ側を見るも、そこからも俺の腕は見えない。
何より、TVの中に入った腕を引っ張るような力がある。
この感覚はTVの中に腕を入れた時特有の感覚なので、間違う筈もなかった。
部屋の扉……というか、襖を軽く叩く。
「美鶴、ちょっといいか?」
その言葉に美鶴はすぐに襖を開ける。
ただし、俺に部屋の中が見えないようにしてすぐ外に出て来るが。
「どうし……一体何をやってる」
どうした? と聞きそうになった美鶴だったが、その視線の先で俺がTVに腕を突っ込んだままなのを見て呆れたように言う。
まぁ、呼ばれて部屋の外に出たら、そこではTVの中に腕を突っ込んでいる俺がいたのだから、それで驚くなという方が無理だろう。
「見ての通り、腕をTVの中に入れている。……それで、気が付かないか?」
「何? 一体何を……待て。TVの中に腕を入れているだと? コンセントやケーブルが抜かれたその状態でか?」
「当たり。どうやら稲羽市ではTVのコンセントやケーブルがなくても、普通に中に入る事が出来るらしい」
「それは……いや、その可能性は考えておくべきだったか。そもそもマヨナカテレビというのは普通の現象ではないのだから。しかしそうなると、部屋の外にTVを置いておくのも危険ではないか?」
「だと思うけど、だからって天城屋旅館のTVを全てどうこうするって訳にもいかないだろ? それにTVや通信機の映像スクリーンもそうだとすれば、大広間にあるシャドウワーカーのコンピュータとかも危険になる。まさか、全てに見張りを付ける訳にもいかないし」
ぶっちゃけ、見張りを付けるというだけならどうとでも出来たりする。
具体的には炎獣を使って。
ただ、炎獣は白炎で身体が出来ている以上、かなり目立つ。
X世界のような世界やファンタジーが普通にある世界ならともかく、このペルソナ世界では炎獣を自由に使うのは難しい。
あ、でも白炎という名称通り白い炎だし、炎は赤いという認識を持つ者が多いなら、桐条グループが開発したペットロボットだとかそんな具合に……無理だな。
炎獣はリアル感というか、そういうのがかなり大きい。
見てしまえば、それだけでペットロボットとか人形とか、そういうのじゃないと認識出来てしまう。
うん、やっぱり無理だな。
下手をすればネットで一気に広まってしまう。
稲羽市にしてみれば、UMAということで観光客が増えるのは歓迎かもしれないが。
「では、どうする?」
「どうすると言われても、どうしようもないとしか言いようがないな。桐条グループの力を最大限使っても、稲羽市にいる者達を全員どこかに避難させるといった事は出来ないだろう?」
「さすがにそれは……難しいだろう」
難しいということは、やってやれない事はないのか?
とはいえ、そんな事をすれば桐条グループ的にもダメージは考えられないくらいに大きいだろうし。
「だろうな。それに……こう言うのも何だが、稲羽市全体にTVとかコンピュータの映像モニタとか、そういうのがどのくらいあると思う? 1つの家庭で考えても、TVとかそういうのは複数ある筈だ。その全てがTVの中の世界の出入り口だとすれば……」
そう言うと、美鶴は微妙な表情になる。
当然だろう。
それこそ数百、数千……場合によっては数万ものTVや映像モニタがTVの中の世界と繋がっているということになるのだから。
普通に考えてその出入り口の多さはTVの中にいる者にしてみれば厄介でしかないだろう。
あるいはTVの中の世界でどの辺に出られるのかといったことをある程度自由に決められるとかなら、まだ分からないが。
この世界が原作ありきの世界だとすれば、そういう風にTVの中にいる足立に都合のいいようなシステムとかありそうでちょっと怖いけど。
「そう考えると、TVの件については心配しなくてもいいのかもしれ……いや、待て。どこか特定の場所に出るのは難しくても、自分が入ってきたTVの場所からはすぐに戻れるという可能性はないか?」
「……あ、稲羽署」
美鶴の言葉に、稲羽署の存在を思い出す。
何しろ足立がTVの世界に逃げた場所だ。
そうである以上、またそこから足立が出てくる可能性は十分にあった。
「とはいえ、足立の能力はあくまでもTVに出入り出来る能力だろ? 実際にTVから出て来てしまえば、女子供が相手ならともかく、刑事達が大量にいるような場所だと……とはいえ、堂島を通して知らせておいた方がいいか」
刑事達がいないのを見計らって、TVから出てくるという可能性も否定出来ないし。
いつ出て来てもいいように対処をするとなると、刑事達にもそれなりに苦労させるだろう。
何しろ足立の入ったTVのある部屋でいつ来るのか分からない足立をずっと待っていないといけないのだから。
そうなると、事件の捜査とかそういうのも出来ないし、かなり大変なのは間違いない。
だとすれば、その辺の状況をどうするのかは……まぁ、一応情報は伝えておいた方がいいだろう。
その状況で稲羽署の面々がどう動くのか。
稲羽署の中には、まだ完全にこっちの話を信じてない奴もいる。
具体的には足立がTVに入るのを直接見ていない連中だ。
そういう連中にしてみれば、足立が何かやらかしたのは間違いないものの、TVの中に入るというのを完全に信じられるかと言えば、微妙なところだろう。
「うむ、堂島を通して稲羽署には注意しておくとしよう。最悪、足立が入ったTVを破壊すればそこから出てくる事はないだろうが、刑事達にとってもTVというのは情報を得るという意味で必要なものだろう」
「今はネットとかの方が情報が早かったりするらしいけどな」
ペルソナ世界においても、マスコミはネットで情報を入手し、そこから取材を行う事が多い。
そういうのってマスコミとしてどうなんだ?
そう思わないでもなかったが、そういうのは別にペルソナ世界だけではない。
他の世界でも同じように行われている事だ。
恐らくだが、ペルソナ世界の技術が進歩していけば、その辺がもっと顕著になっていくのだろう。
「とにかく、稲羽署にもその辺についてはしっかりと連絡をしておけば、向こうで対処をするだろう」
「……手に負えないからって、こっちに頼ってくる可能性は?」
何しろ足立はTVに入るというとんでもない能力を持つ人物だ。
そうである以上、警察では手に負えないとしてシャドウワーカーに協力を依頼してくる可能性は十分にあった。
とはいえ、今のところ判明しているのはあくまでもTVに入る能力だけだ。
ここがペルソナ世界である以上、ペルソナを使える可能性は否定出来ない……というか、恐らく原作で主人公達の敵となる相手である以上はペルソナを使えないという事はないと思う。
とはいえ、ペルソナというのは使えるのと使いこなすのとでは大きく意味が違う。
それこそ場合によっては荒垣のように、ペルソナを暴走させてしまう事すらあるのだから。
そんな訳で、足立がもしペルソナを使えたとしても刑事達が一斉に拳銃で撃てば、倒せる可能性は十分にある。十分にあるんだが……問題なのは、そもそも拳銃で撃つ事が出来るかどうかだろう。
稲羽署の者達にしてみれば、足立は非常に怪しい存在で限りなく黒に近いグレーではあるものの、それでもグレーには違いない。
そんな相手を……しかも短いとはいえ同僚だった足立を撃てるかどうか。
それにここは日本だ。
刑事が銃を持っていても、そう簡単に撃つといったことは出来ない。
その辺を考えると、稲羽署から足立が出て来ても捕らえる、もしくは殺すか無力化するような事は出来ないと思っておいた方がいいのかもしれない。
「ホワイトスターから誰か呼ぶか? 円や美砂は……X世界の前なら問題なく来る事が出来たんだけど、今はそれもちょっと難しいか」
現在の円と美砂は、それぞれトライロバイト級の艦長という事になっている。
ナタルによって突貫で知識とかを詰め込まれたが、それでもまだ完全ではない。
そしてナタルは完璧主義者だ。
一応は大体の事を教えていても、それ以上の……基本以上の応用を教えるのは自然な流れだった。
そんな訳で円と美砂を連れてくるのは難しい。
凛やあやか、千鶴は……まさかただでさえ忙しい政治班から引き抜く訳にはいかないだろう。
X世界の北米連邦は、宇宙革命軍……いや、ザイデルが死んだし、もう名前は変わったのか? ともあれそっちとの交渉とかもある。
そして当然だが他の世界とも何かがあれば交渉が必要だし。
となると、ルチルはどうだ?
シャドウミラーの中では新顔だが、その身体はレモンによってWナンバーズを含め、今まで入手した技術で作られている。
ガンド程度は撃てるし、その身体能力はそれこそ生身の人間ではどうしようもないし、ニュータイプ能力があるので足立の存在を察知出来る可能性もある。
それと実働班から……ムラタは、駄目か。
TVの中がタルタロスのようになっているのなら、シャドウと戦わせるという意味で呼べば喜んでくるだろうけど。
そんな風に思いながら、俺は美鶴との話を続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820