宴会――酒はなしだが――が終わり、数時間。
俺達の姿はやはり大広間の中にあった。
ただし、既に合鴨鍋を始めとした料理は片付けられ、風呂にも入ってさっぱりとした状況でだ。
天城屋旅館をシャドウワーカーの拠点とするように指定したのは稲羽署の上層部だったが、いつでも好きな時に温泉に入れるというのはシャドウワーカーの士気向上という点では大きい。
料理もまた、今日の合鴨鍋を始めとした料理の数々程に特別という訳ではないが、それでも十分に美味い料理を食べられる。
掃除の類は……仕事をしている時とかは部外秘の書類とかそういうのがあるので、早紀がやることになっている。
ただし、夜になって仕事が終わって書類とかそういうのをきちんと片付けた後では、天城屋旅館の従業員が掃除に来る。
もっとも、そういう時でも掃除をする振りをして書類とかを見られたりしないように、それとなく見張りをしているらしいが。
また、仕事場所も大広間というかなり広い場所なので、解放感があるのは大きい。
そんな諸々から、天城屋旅館を拠点とするのはシャドウワーカーにとって非常にありがたい事だった。
……その快適さの代償として、稲羽署の面々は結構な金額の宿泊料金を支払う事になってるのだが。
ともあれ、そんな快適な場所ではあるのだが……美味い料理を食べ、温泉に入って後は寝るだけといった状態であるにも関わらず、現在大広間にいる者達は全員が緊張した様子を見せていた。
そんな中でも特に緊張してるのは、シャドウワーカーの面々だ。
これから初めてマヨナカテレビを見るのだから、それも当然だろう。
俺や美鶴は、完全にではないにしろマヨナカテレビを見ている。
早紀も……マヨナカテレビについての噂を知っていたという事は、恐らくマヨナカテレビを見た事があるのだろう。
そんな訳で、俺と美鶴、早紀の3人はそこまで緊張はしていなかった。
とはいえ、それでもこのマヨナカテレビというのが色々と特殊な現象なのは明らかで、そういう意味ではやはり緊張と……そして楽しみが混ざっているように思えるのだが。
「アクセル、そろそろ準備を」
そう美鶴が言ったのは、11時59分になってからだ。
その言葉に頷き、マヨナカテレビを見る為に通信機の映像スクリーンを空中に映し出す。
それを見た美鶴以外の面々は、驚きの表情を浮かべる。
別にこれが初めて見るという訳ではないが、シャドウワーカーの面々は俺がシャドウミラーの存在であると知っている。
異世界の存在である以上、このような事が出来る技術力を持っていてもおかしくはないと思っているのだろう。
早紀の方はシャドウミラーについては何も知らないが、桐条グループという、稲羽市においても非常に有名な財閥……いや、企業グループか? ともあれそんな者達なら自分の知らない技術を持っていてもおかしくはないと考えたらしい。
あるいは、世の中に出回っている最新技術というのは、実は本当の意味では最新技術ではないとか、そういう話を信じてるのかもしれないが。
まぁ、その話は決して嘘という訳ではない。
アイギスの件を見れば、その辺は明らかだろう。
このペルソナ世界においては、せいぜいがペットロボットとかそういうのだけだ。
それも決まった反応しか返せないような。
アイギスの技術を考えれば、空中に浮かぶ映像スクリーンはそこまで驚くべき事ではない……と思う。
堂島辺りがここにいれば、違和感を抱くかもしれないが。
「そろそろだ」
美鶴が再度口を開く。
その瞬間、時間は12時を越えた。
……これで実はマヨナカテレビが映るのではなく影時間になったりしたら、それはそれで面白そうではあるんだが。
そんな風に思っているが、12時を回って10秒程経過しても映像スクリーンには何も映らない。
「美鶴さん、これって……」
シャドウワーカーの1人が、美鶴にそう尋ねる。
早紀が言っていたように、1人で見なければマヨナカテレビは映らないのでは。
そう言おうとしたのだろうが……
「来たぞ」
自分に聞かれた言葉は聞き流し、そう美鶴が言う。
だが、聞き流された方は不満そうな表情を浮かべたりはしない。
それだけ美鶴が真剣な様子だったというのもあるし、何より美鶴の言葉の意味を理解すると、映像スクリーンに視線を向けたのだから。
ザザ……ザ……
そんな音を立てつつ、映像スクリーンには確かに何かが映った。
以前見た時と同じように、映像の映りが悪くて正式には何が映っているのかは分からない。
分からないが、それでも映像スクリーンに何かが映し出された事だけは間違いのない事実。
「これは、一体……何だ?」
「何かが映ってるのは分かるけど、これがマヨナカテレビ?」
「いや、でも……うん、これは本当に何だ?」
シャドウワーカーの面々が、理解出来ないといった様子で呟く。
「やっぱり……」
そんな中、そういう声を発したのは早紀だ。
「どうした? 何かこの状況について知ってるのか? 私とアクセルが以前見たマヨナカテレビも、このような感じだったのだが」
「えっと、はい。私が1人で試した時も、こういう風によく分からない光景でした。間違いなく何かが映ってるのは分かるんですけど、それが具体的になんなのか分からないといった感じで」
「そうなのか? それこそ早紀がさっき言ってたように、1人で見てないからこういう風になってるんだと思ってたけど」
2人の会話に、そう割り込む。
実際、マヨナカテレビで山野真由美の姿を見たという奴がいた以上、そう判断出来るくらいには明確に映ってもおかしくはないと思うんだが。
「分かりません。元々マヨナカテレビというのが色々と怪しい存在ですし」
「まぁ……うん。それはな」
常識的に考えて、雨の日の夜に1人で日付が変わった時に消えたTVを見るとそこに運命の人が現れるというのは、怪しすぎる。
一体何がどうすればそうなるのか、常識を持っている者なら疑問を感じても当然だろう。
俺達の場合はシャドウという存在を知ってるので、そういう事なのだろうと予想は出来るが。
「あ」
と、そんな会話をしているとシャドウワーカーの1人がそんな声を上げる。
何だ? とその声を上げた男の視線を追うと、そこでは既に映像スクリーンには何も映ってはいなかった。
それはつまり、マヨナカテレビが終わったということなのだろう。
「終わったか。……電気を点けてくれ」
そう指示を出すと、シャドウワーカーの1人がすぐに大広間の電気を点ける。
大広間というだけあってそこは広く、当然だが電気も普通の部屋にあるよりも多数ある。
その電気を点けるのだから、何気に一仕事といったところか。
「さて、それでマヨナカテレビは終わった訳だが……前回と同じように具体的に何が、もしくは誰が映っていたのかを確認することは出来なかったな」
「うむ。どうせならもう少し分かりやすく映せばいいものを。……一体、このマヨナカテレビを放映している者は何を考えてこのような真似をしてるのだろうな」
「足立だろ? 物的証拠はないけど、状況証拠から考えると間違いないだろうし」
TVの中に出入り出来る能力を持っているのが足立である以上、その可能性はかなり高い。
もっとも、TVの中に出入り出来るという事なら、俺でも出来る。
そして俺が出来る以上、他にも出来る奴がいてもおかしくはない。
手に魔力を纏いながら、そっと手を伸ばす。
映像スクリーンに触れた俺の腕は、予想通り中に入っていく。
貫くといった事になっていないのは、映像スクリーンの向こう側に俺の手が入っていない事が証明していた。
「う……」
そんな光景を見た早紀の口から声が漏れる。
どうした? とそちらに視線を向けると、そこには口を押さえた早紀の姿。
何か気持ち悪いのを我慢しているように見える。
「アクセル、映像スクリーンから手を抜け」
美鶴にそう言われ、俺は映像スクリーンから手を抜く。
以前と同様、俺を映像スクリーンの中に引っ張り込もうとする力が働いたものの、俺にしてみればその程度の力に逆らうのは簡単なことだ。
もしかしたら、これも足立……いや、違うな。
足立がまだ正体を明かしていない時に試した時も、俺の腕は映像スクリーンの中に引っ張り込まれそうになっていたし。
だとすれば、映像スクリーンの中、もしくはTVの中の世界にそういう力が働いているのかもしれない。
映像スクリーンから腕を引き抜くと、早紀に視線を向ける。
するとそこでは美鶴とシャドウワーカーの中でも女の面々が早紀の背中をさすったりしていた。
「大丈夫?」
「あ、はい。すいません。ちょっと……その、稲羽署での件を思い出して。もしアクセルさんが無理矢理入ってきていなかったら、きっと私はTVの中に入れられてたんだと思うんです。それを思い出して……」
なるほど、あの件が早紀にしてみれば一種のトラウマになってるのか。
いや、トラウマというのは言いすぎか?
今日起きたんだから、その事を思い出して振るえるのはそんなにおかしな話ではないと思う。
「悪かったな。どうせなら早紀のいない場所でやればよかった」
「いえ、大丈夫です。……あの人の側にいるには、こんなのに負けてられませんから」
早紀の口から出たあの人というのが誰なのかは……その辺を追及するのは無粋か。
そもそも誰なのかは、容易に想像出来るし。
ともあれ、早紀の様子が落ち着いたのを確認すると、話題を変える。……いや、マヨナカテレビとか足立の話だし、別に話題を変える訳でもないのか?
「そう言えば稲羽署の方でもマヨナカテレビの実験をやってると思うか?」
一応堂島からマヨナカテレビとかについての報告は上がっている筈だ。
そうである以上、もしかしたら俺達みたいに試している可能性は十分にある。
もっとも、俺達のようにマヨナカテレビは見る事が出来たものの、それが具体的に何なのかは分からなかったりしたのかもしれないが。
もしくは、俺という存在がいたからこそ多人数でもマヨナカテレビを見られた可能性はある。
「ふむ、そうだな。その辺は少し気になる。だが……堂島は家にいるだろうし、稲羽署に連絡をするのは明日でもいいだろう」
「いいのか? 少しでも早く情報を共有した方がいいと思うけど」
そう言うものの、美鶴は俺の言葉に首を横に振る。
「アクセルの言いたい事も分かるが、今の状況ではまだ何も分からない。そもそも稲羽署でマヨナカテレビを見ていない可能性もある。であれば、急ぐ必要もないだろう。それに……向こうには私の携帯の番号を教えてある。何かあればこちらに連絡してくる筈だ。……足立の件とかな」
早紀を一瞥し、そう言う。
その表情には表に出さないようにはしているものの、怒りが込められているのが分かる。
美鶴にしてみれば、早紀をTVの中に入れようとしたその理由がフラれた……というか、身体を求めてそれを断られたからという、かなり自己中心的なものだ。
そんな相手に好意を抱けというのは無理があるだろう。
もし足立がここにいれば、それこそ即座に処刑されてもおかしくはない。
それもデコピンされたシャドウワーカーの男のような軽いものではく、文字通りの意味での処刑を。
「あー……うん。そうだな。じゃあ、どうする? もう日付が変わったし、そろそろ寝るか? 明日は朝からまた忙しいだろうし。睡眠はしっかりと取っておいた方がいいだろ?」
「そうだな。明日からの本格的な捜査のことを思えば、早めに休んだ方がいいか。特にシャドウワーカーは東京から稲羽市まで車で来て、大広間で仕事を出来るようにコンピュータを運び込んで、結構な人数が街中に出て情報収集をしたからな」
美鶴の言葉を聞くと、シャドウワーカーの連中は今日だけでかなり疲れていたのは間違いないな。
これがシャドウミラーの者達なら、そのくらいのことでそこまで疲れたりはしないだろうが。
何しろシャドウミラーで行われるエヴァの訓練とかは、シャドウワーカーが今日した以上の運動量になるのは間違いない。
もっとも疲れるというのは体力的な問題だけではなく、精神的な問題もある。
慣れない場所で行動すると、最初のうちは体力的にはそんなに疲れていない筈なのに、精神的にはかなり疲れてしまうのは珍しくはない。
そういう意味では、いきなり見知らぬ場所にやって来てシャドウ関係の仕事をするようにと言われたシャドウワーカーの面々が疲れてもおかしくはないか。
ただ、シャドウワーカーというのは基本的にシャドウによる騒動が起きたと思しき場所で活動する事になる。
実際、ここにいるシャドウワーカー以外の面々は、もう一ヶ所でシャドウが出たと思しき場所で活動してるんだし。
そう考えれば、これこそがシャドウワーカーの本来の活動なのだろう。
それに俺が言うのもなんだが、シャドウワーカーに所属する者達は基本的に若い。
20代が大半で、30代が少々といったところだ。
40代以上はいない。
これはまだ若い美鶴が率いるからというのも影響してるかもしれないな。
そんな風に思いつつ、俺は美鶴がシャドウワーカーに指示を出すのを眺めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820