「ふむ、分かった。それについてはこちらで手を打っておこう」
温泉から上がって大広間に戻ると、俺はその時の件について美鶴に話す。
ウーロン茶を代価に入手した情報は、美鶴にとって興味を示すのには十分な代物だったらしい。
「程々にな」
そう美鶴に言ったのは、俺が温泉に入っている間にやってきていた堂島だ。
シャドウワーカーとの連絡役兼緩衝役兼見張り……という、1人3役を任されている堂島だが、それだけにここで余計な仕事が増えるのは遠慮したかったのだろう。
「心配するな。こちらに被害が出ないよう、桐条グループの方から遠回しに忠告するだけだ」
美鶴の言葉に堂島は微妙な表情を浮かべる。
堂島にしてみれば、遠回しの忠告だろうと、それを行うのが桐条グループである以上は、とてもではないが安心する事は出来ないといったところか。
とはいえ、俺にしてみれば余計なちょっかいを出さないようにされればそれで問題はない。
そういう意味では、美鶴に任せておけば何の問題もなかった。
「その件については美鶴に任せるとして……昨夜のマヨナカテレビの件は話したのか?」
「ああ、丁度今その話をしていたところだ。残念だったが」
美鶴の口から出た残念という言葉に、何となくその結果を理解は出来た。
「俺達と同じか?」
改めて堂島に尋ねると、堂島は素直に頷く。
「聞いた限りだとそうだったらしいな。マヨナカテレビそのものは見られたものの、その内容については何も理解出来なかった。……厄介な事に」
「俺達と同じか。……けど、マヨナカテレビというのは基本的には1人で見るのが前提なんだよな? なら、何で複数で見た俺達が普通に見られたんだ?」
堂島が見たのと俺達が見たのは、どうやら同じだったらしい。
それは分かるし理解出来るものの、一体何故マヨナカテレビの大前提の1つである、1人で見なければならないというのが必要なかったのか。
もしくは、マヨナカテレビを1人でないと見られないというのは、噂として広がっていく中で新たに付け加えられた奴とか?
一般的に考えて、学生で日付が変わる頃に誰かと一緒にいるというのは……まぁ、それなりにありそうな気はするが、それでも自分の運命の人を見たい為にマヨナカテレビを見ようとする者が、誰か他の相手と一緒に見るとは思えない。
そもそもの話、もしマヨナカテレビで運命の人を見つけられるという噂が真実だったとして、その場合TVが1つでマヨナカテレビを試すのが2人の場合、どうなるんだろうな。
マヨナカテレビに映し出されたのが1人なら、それが一緒に見ている者のどちらの運命の相手なのかは分からないし、最悪喧嘩になってもおかしくはない。
だとすれば、TVの画面が2分割されてそこにそれぞれの運命の人が映し出されるのか。
そうなった場合でも、分割されたTVのどっちに映った相手が自分の運命の相手かという事で騒動になったりしてもおかしくはない。
そういう意味では、基本的に1人でマヨナカテレビを見るというのは大前提なのだろう。
その辺から1人でなければマヨナカテレビは見られないといったように噂が追加された可能性も否定は出来なかった。
実際にどうなのかは、残念ながら分からないが。
「俺に言われてもな。ただ……マヨナカテレビというのが実在した事だけは間違いない。まさかそんなものがあるとは思わなかったが」
頑固な堂島にしてみれば、目の前で実際に見たからこそマヨナカテレビの存在を認めたのだろう。
もしこれでも認めないと言えば、その時は現実を見られない人物として稲羽署に別の人物を寄越すように言うか、あるいは捜査とかには協力させず、あくまでも連絡役や折衝役として使ったか。
決めるのは美鶴なので、俺がここでどうこう言うような事ではないだろうが。
「マヨナカテレビがあると認識してくれたようで何よりだ。それで……堂島が来たという事は、これからここで何をやるのか聞いたか?」
「ああ。……だが、本気か? TVの中に自分から入るとは」
どうやら美鶴からその辺については聞いていたらしい。
心配そうに、そして若干の呆れと共に尋ねてくる。
そんな堂島の言葉に俺は頷く。
「結局のところ、TVの中が今回の一件の重要な場所だ。そうである以上、実際にTVの中に入ってみないと何とも言えない。……幸い、俺は魔力を使うとTVの中に入れるしな。出来ればTVの中に入った瞬間に足立がいてくれると助かるんだが」
足立が逃げ込み、まだTVの中から出て来てないとすれば、TVの中で捕まえる事が出来るかもしれない。
とはいえ、稲羽署のTVから入って別のTVから出るといった事をしてもおかしくはないんだが。
「そう言えば、足立の家には行ってみたのか? もし稲羽署以外のTVから出て来たら、荷物とかそういうのを手に入れる為に家に戻っていてもおかしくはないが」
「何かTVについての証拠品とか、手掛かりになるのとかはなかったか? もしくは普通とは違う変わったところとか」
「そうだな。……これが関係あるのかどうか分からんが、キャベツが大量に置いてあったな」
「……キャベツ?」
一瞬、堂島が何を言ってるのか分からなかった。
まさかこのような状況でキャベツという単語が出てくるとは思わなかったのだから、当然だろう。
キャベツという言葉に反応してるのは、俺だけではない。
美鶴や早紀、シャドウワーカーの面々も同様だった
「一応聞くけど、そのキャベツってのは何かの隠語とかそういう訳じゃなくて、野菜のキャベツだよな? 葉物野菜の。ロールキャベツとか、焼きそばとか野菜炒めとか、とんかつのお供の千切りとかに使う」
ちなみに俺はキャベツのおひたしとかも結構好きだったりする。
キャベツのおひたしというのは、あまり聞かないが、以前四葉はいいキャベツが入った時に超包子で出されて、それが美味かった。
超包子は基本的に中華料理店なのに、何故中華風ではなく普通のおひたしが出て来たのかは分からなかったが。
まぁ、それはともあれ。
何で足立の家にそんなにキャベツがあったのかが疑問だ。
「稲羽市のキャベツは食べた者にTVに中に入れるようにする能力があるとか?」
「そんな訳あるか」
「だろうな」
俺の言葉に素早く突っ込んだ堂島だったが、俺も本当にそうなるとは思っていない。
単純に、何故キャベツがあるのかが分からなかったから、そう言っただけだ。
「冗談はこの辺にして。普通に考えるなら、キャベツは足立の好物だったとか?」
「いや、だが……俺もコンビを組んでいた身として、何度も一緒に食事をしたが、特にキャベツが好物だったとか、そういう事はなかった思うが」
「自分がキャベツ好きだと人には言えなかったとか?」
「何でわざわざキャベツが好きだと隠す必要がある?」
「さぁ? その辺は足立の趣味……というか、見栄とか? キャベツ好きだと人に知られると恥ずかしいとか」
「恥ずかしいか?」
改めてそう言われると、俺も素直には頷けない。
これが例えばキャベツが嫌いだから、好き嫌いが子供っぽくてそれを隠しているのなら分かるが、それならわざわざキャベツを家に大量に置いておいたりはしないだろうし。
「どうだろうな。とにかく理由は不明だがキャベツが大量にあったのは間違いのない事実だ。変わったところはそれだけだったな」
「……そうか」
足立の部屋に変わったところがなかったかと聞いたのは俺だ。
堂島はそれに対して自分の知っていることを答えただけで、本人には俺を騙そうとか、そういう思いがないのは間違いない。
堂島にしても、自分の相棒だった足立は出来るだけ早く捕らえたいだろうし。
「足立の家にはTVの世界に関係する何かがないかと思ってたんだが」
「……アクセル、少し気になったのだが、足立がTVに出入り出来るようになったのはいつくらいの事だと思う?」
「それは……」
美鶴の口から出た質問に、俺は足立についての情報を思い出す。
ちなみにこれはシャドウワーカーが稲羽署や警視庁から貰った情報だ。
それによれば、足立は少し前までは警視庁にいたらしい。
トラブルを起こし、それで稲羽署に左遷されてきたとか。
だとすれば、ここで問題になるのは警視庁にいた頃にもTVに出入り出来る能力があったのかどうか。……これは恐らく否だ。
その理由として、東京で映像スクリーンの中に入ろうと試したけど駄目だったというのがある。
稲羽市で試した時は上手くいったのに。
あるいは、足立がそういう能力を持っていて、足立を中心とした場所ではないとTVに出入り出来ないという条件がある可能性もあるが……これも多分ないだろう。
もし足立が警視庁にいる時にTVに出入り出来る能力があったら、その能力を使って稲羽市に左遷になったりはしていなかっただろう。
TVに出入り出来る能力でどうやって左遷されないようにするのかは、ちょっと分からないが。
ただ、TVに出入り出来る能力があるのなら、少し考えれば幾らでも思いつきそうだ。
人事権を持っている人物を実際にTVに入れて脅すとか、その家族を入れて脅すとか。
もしくは単純に脅すのではなく、殺してしまってもいいかもしれない。
……いや、そもそもそういう能力があるのなら、別に警視庁にいなくても幾らでも楽に稼いで生きていけるだろう。
やっぱりTVに出入り出来る能力は稲羽市に来てから覚醒したものなのだろう。
しかも稲羽市でしか使えないという……こう考えると、かなり限定された能力だな。
とはいえ、稲羽市は何だかんだとそれなりの人口数を誇る。確か5万人くらいだったか?
東京のような都会は別として、田舎の市として考えればそこそこの人口と考えてもいいだろう。
地方の政令指定都市には及ばないが、地方にある市の中では5番目くらいには入るというのが俺の予想だ。
もっとも、この辺は田舎とはいえ地方にもよって違うので、半ば俺の感覚に近いものだが。
「稲羽市に来てからだろうな。東京で映像スクリーンの中に手を入れても中に入れなかった事を考えると」
「アクセルもそう思うか。そうなると、この稲羽市には何かがあるという事なのだろう」
「何か……?」
美鶴の言葉に堂島が不思議そうな声を出す。
堂島にしてみれば、この稲羽市は普通の田舎という認識でしかない。
いや、実際にこの稲羽市で生活をしているからこそ、堂島はそう思うのだろう。
そんな堂島の意見には早紀も同意してるのか、こちらも不思議そうな視線を美鶴に向けていた。
「シャドウか」
「それしかないだろう」
「待ってくれ。それはつまり、あんた達が言っていたシャドウってのが今回の件に関係してるってのか!? ……あ、すまない」
咄嗟に叫んだ堂島が、言葉遣いの件に気が付いて美鶴に謝罪する。
だが、美鶴はそんな堂島に首を横に振る。
「気にするな。公の場で気を付けてくれるのなら、それでいい。私も仰々しい言葉遣いはあまり好まないのでな」
桐条グループの令嬢がそう言うのはどうかと思うが。
美鶴の性格的に、そのように言ってもおかしくはないのか
堂島はそんな美鶴の言葉に一瞬驚いた様子を見せる。
無理もないか。堂島にしてみれば、美鶴は桐条グループという大企業の娘だ。
純粋に社会的な立場で考えると、一介の刑事でしかない堂島よりも遙かに上の存在だ。
しかもただ地位のある人物という訳ではなく、シャドウワーカーという組織を纏めて、警視庁とも繋がりを持っている。
……まぁ、警視庁との繋がりは美鶴の力ではなく桐条グループの力なのだが。
しかし、その桐条グループを動かす力を美鶴が持っているのも事実。
そんな美鶴が、特に敬語を使ったりしなくてもいいと言ったのだ。
堂島にしてみれば、驚いてもおかしくはない。
とはいえ、美鶴にしてみればそんなのは当然なのだろうが。
元々美鶴はそういう性格だったというのもあるし、それを抜きにしても俺の恋人となって他の恋人達と接する事が多くなると、その中には企業どころか大国の元皇女であったり、銀河の歌姫であったり、桐条グループ程の影響はないがそれでも十分に大企業や財閥の娘であったり……そういう人物と接する機会が多かったのだから。
「じゃあ、そうさせて貰うよ。……正直なところああいう畏まった言葉遣いはあまり好きじゃないから、助かる。それでシャドウって奴の件についてだが」
「あくまでも可能性だ。とはいえ、その可能性が非常に高いとは思っているが」
「……じゃあ、そのシャドウって奴がいなければ、あいつも……」
「どうだろうな」
堂島の言葉にそう口を挟む。
それを聞いてこちらに視線を向けてくる堂島に、俺は言い聞かせるように口を開く。
「シャドウの影響によって足立がTVに出入り出来る能力を得たのはほぼ間違いないと思っている。けどそれによって足立の性格が変わったとか、そういう事はないと思うぞ。これはあくまで多少なりともシャドウを知っている身としての言葉だが」
俺の言葉に、堂島は不満そうな様子を隠そうともしなかった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820