「ここが……随分と栄えているな」
ラース・ワウを眺めつつ、そう呟く。
あの村で話を聞いてから、1時間程。
本来なら影のゲートを使えばすぐにでも到着出来たんだが、それでもこれだけの時間が掛かったのは、街道の分かれ道付近でラース・ワウの場所を聞きながら移動した為だ。
当然の話だが、ルフト領の中にも街道は何本も存在している。
アの国の中でも広大な領土を持つルフト領である以上、それは当然の事だろう。
結果として、街道は結構な分かれ道が存在し……何とかラース・ワウの場所を聞きながら移動したので、1時間程も掛かってしまったのだ。
……まぁ、それでも普通に移動すれば、あの村からラース・ワウまで1時間で到着するというのは不可能なのだから、そういう意味では随分と早いのだが。
「そうね。エルフ城よりも活気があるんじゃない?」
ラース・ワウを見ながら、マーベルが俺の言葉に同意するように呟く。
実際、その言葉は決して間違ってはいない。
人の数もエルフ城……正確にはその城下街とそう変わらないが、それでもそこに住んでいる者達の活気は大きく違う。
エルフ城の住人達は、フラオンの豪華な生活の為に高い税を取られている。
それに比べると、ラース・ワウの住人はそこまで高い税金は取られていない為か、生活に活気がある。
「やっぱり領主としては有能なようだな」
「でも、オーラバトラーなんて代物を開発したからこそ、でしょう? ある意味でそれは賭けだったんじゃない?」
マーベルの世界では、未だに人型機動兵器は開発されていないだけに、余計にドレイクの手法はギャンブル的に見えるのだろう。
実際には何らかの勝算のようなものがあっての事だったのだろうが……ともあれ、今の状況を考えると、ドレイクは有能な人物という認識で間違いはないと思う。
問題なのは、有能と善人というのが同じ意味ではないという事か。
オーラバトラーを開発しただけに、野心の類を持っていてもおかしくはない。
……何しろ、ここはファンタジー世界だけに、下剋上とかそんな事を考えてもおかしくはないのだ。
その辺は直接会って確認するしかないだろう。
「かもしれないな。……ともあれ、拠点となる場所は必要だ。宿を取るとしよう」
「今回は問題ない宿だといいわね」
「今日の宿だって、別に問題があった訳じゃないだろ? 個人的には色々と思うところがあったのは間違いないけど」
普通の宿であれば、兵士がやってきて人を捜しているとなるとそれに協力しないという選択肢はないだろう。
ましてや、フラオンの命令によって俺とマーベルを捜しているのだ。
幾ら評判のいい宿であっても、王に逆らうなどといった事は到底出来ない。
ましてや、相手が愚王のフラオンだ。
自分に逆らったというのを知れば、当然の話だが面白くないと思うのは当然であり……それこそ、場合によっては厳しい罰を受ける可能性も否定出来ない。
「そうね」
マーベルもその辺は理解しているのだろう。それ以上は特に何も言わない。
そんなマーベルと一緒に、近くの料理を売ってる店……レストランではなく定食屋といった様子の店で食事をするついでに、評判のいい宿を聞く。
何気に今朝はアの国の兵士にいきなり乱入されたので、朝食がまだだったんだよな。
そんな訳で、朝食と昼食の間くらいの食事をし……
「いいのか?」
「ええ。……身の危険を考えるとね。今朝みたいな事もあるだろうし」
早速宿で部屋を取ったのだが、そこでマーベルが俺と同じ部屋でいいと、そう言ったのだ。
この場合の身の危険ってのは、命の危険という意味での事なんだろうが……同時に、俺と一緒の部屋となると、普通なら別の意味で身の危険を感じてもいいと思うんだが。
昨日会ったばかりの俺を……それも恋人が10人以上いると公言する俺だけに、当然のようにそちら方面でこっちを疑うのが普通じゃないか?
金に余裕がある訳でもないので、マーベルがそれでいいと言うのならいいか。
いざとなったら何か適当な物を売るか、もしくは悪人……ガロウ・ランだったか? そいつらを襲って金目の物を奪うといった方法も考えられるし。
「分かった。なら1部屋で」
宿の店員に取りあえず一泊分の料金を支払うと、部屋に案内される。
当然の話だが、この部屋は1人用でベッドも1つしかない。
ある程度の価格の宿なので、椅子や机といった家具の類はあるものの、言ってみればそれだけだ。
実はもっと安い宿もあったのだが、その宿は宿泊客全員が大きな部屋に皆で雑魚寝をするといったような宿だったので、こっちの宿を選んだ。
「それで、どうするの?」
「取りあえず、夜になったらドレイク・ルフトの様子を見てくる。それで問題がないようなら、直接接触してみる。……向こうには俺を捕らえるといったような事は出来ないしな」
「……そうでしょうね」
少なからず俺の魔法の類を見ているので、マーベルは俺の言葉に素直に頷く。
マーベルにしてみれば、俺が本当にドレイクに捕らえられるとは思っていなかったのだろう。
それはそれで、こちらとしても助かるんだが。
「取りあえず、夜までは暇だし……どうする? ちょっと街中を歩いてみるか? この宿に来るまである程度見て回ったけど、そんな少しの時間だと分からない事もあるだろうし」
「そうね。……じゃあ、そうしてみましょうか。ルフト領の暮らしがどういうのかも、少し知りたいし」
俺の言葉に同意するマーベルだったが、実際のところ俺もマーベルもこの世界についての情報はまだそこまで詳しくはない。
いや、ある程度他人と話して情報を集めたりといった事はしているのだが、それでもまだ俺達が知らないような事はある筈だった。
少なくても、今の状況ではまだ色々な常識を学ぶ必要がある。
これが、せめてファンタジー世界ではなく地球であれば、多少の差異はあっても常識をわざわざ学ぶといったような事をしなくてもよかったのだが。
ともあれ、そんな訳で俺はマーベルと2人でラース・ワウを色々と見て回る事にするのだった。
「お、いらっしゃい。どうだい、何か買っていくか?」
そう言ったのは、色々な食材を売ってる店の店主だ。
見た事があるような食材もあれば、初めて見る食材もある。
……ここは地球とは違うファンタジー世界だろうに、何だって俺の知ってるような食材とかも置いてあるんだ?
そんな疑問を抱きつつも、あくまでも商品を見るだけで購入はしない。
金に余裕があれば買ってもよかったのだが、この世界の金は昨日の服を売った分しか持っていないのだ。
そうである以上、ここで無駄に使いたいとは思わなかった。
あるいは俺の空間倉庫に入っている何かを売るという手段もあったが、服を売って兵士に追われた件を思えば、取りあえずドレイクがどのような人物なのかを知るまでは迂闊な真似は避けたかった。
そうして色々な店を見て……そして昼に近くなってきたところで、俺とマーベルは一度宿に戻る。
「ほら、これ。マーベルの分だ」
そう言い、ハンバーガーを空間倉庫の中から取り出す。
ハンバーガーとは言っても、これはチェーン店で売ってるようなハンバーガーではなく、パン屋で購入したハンバーガーだ。
ペルソナ世界だったと思うんだが、かなり有名な店だったらしい。
普通パン屋で有名なのはサンドイッチとかそういうのだと思うんだが……このパンを買った店では、息子の1人が鉄板焼き屋で働いており、それで美味いハンバーグを入手する事が出来て、その結果がこのハンバーガーだった。
外側は焼きたてのパンでサクッとした食感で、パンの内側はしっとりと柔らかい。
レタス、トマト、チーズ……そしてハンバーグ。
特にハンバーグは、本職の鉄板焼き屋から仕入れているというだけあって、外側はしっかりと焼き固められているのだが、中は柔らかくジューシーに仕上がっている。
ある意味パンと同じような感じではあるが……当然違う。
特製ソースとマヨネーズ、それとチーズもハンバーグの熱で溶けており、非常に美味い。
「美味しいわね……」
「ハンバーガーの本場のアメリカ人にそう言わせることが出来る辺り、日本って凄いよな」
「これ、日本のお店で買ったの?」
「ああ。シャドウミラーが接触している世界の1つでな。有名なパン屋のハンバーガーだ」
「……凄いわね」
元々、マーベルは禅に詳しかったりと、日本には好意的だ。
それだけに、日本で買ったこのハンバーガーも素直に美味いと言ったのだろう。
本来なら、ハンバーガーの本場というプライドがあってもおかしくはないのだが。
「飲み物は……何がいい? 紅茶、ウーロン茶、緑茶、それ以外もそれなりにあるけど。……勿論、本格的なお茶じゃなくて、スーパーで購入したペットボトルのお茶だけどな」
ハンバーガーならコーラとかそういうのがいいのかもしれないが、炭酸は俺があまり好きじゃない関係から空間倉庫の中にも殆ど入ってないんだよな。
「じゃあ、緑茶をお願い」
マーベルのリクエストに従い、緑茶のペットボトルを渡す。
どの世界でもそうなんだが、日本のスーパーとかコンビニで売ってる飲み物や食べ物って、かなり高水準なんだよな。
何故かその辺はどの世界に行っても変わらなかったりする。
スーパーとかで売ってる板チョコとか、とても100円とかその辺のレベルじゃないってのは、有名な話だ。
海外の専門店の中には、そういう100円のチョコよりも不味いチョコを売ってたりもするらしいし。
少なくても、日本人の食に対する意識の高さというか、追求心とか、そういうのがよく分かる話だよな。
「アクセルがいて、本当によかったと思うわ。まさか、この世界でこんなに美味しいハンバーガーを食べられるなんて思ってなかったし」
「そう言って貰えると、俺もハンバーガーを用意した甲斐があるよ。……空間倉庫に保存してあっただけだけど」
「ふふっ……それにしても、もしアクセルがいなかったら私はどうなっていたのかしらね。エルフ城で捕まっていたかしら」
「それは否定出来ないな」
俺がこの世界に転移してきた時、マーベルは特に何も持っていなかった。
つまり、売れるような物は着ている服くらいしかなかったのだ。
……これで男慣れしている女なら、娼館で働くといった真似も出来ただろうが、マーベルにそんな事は出来そうにない。
そうなると、当然の話だが持っている物は服か……もしくは財布とかか? ともあれそういうのしかない訳で、それを売れば今朝のようにフラオンの指示を受けた兵士がやって来る可能性もある。
マーベルは見たところかなり頭のいい女だが、言ってみればそれだけだ。
この世界の兵士何人にも襲われて、逃げ切るのは難しい。
……あ、もしかして……本当にもしかしてだが、この世界の主人公がマーベルだった場合、その騒動でマーベルが何らかの力に目覚めるとか、そういう感じなのか?
だとすれば、俺が一緒にいて脱出に成功したのは致命的なミスだった可能性も出て来る。
取りあえず、その件については考えないようにしておくとしよう。
「でしょう? だから、アクセルがいてくれて助かったと、そう思ってるのよ」
「感謝の言葉は素直に受けとっておくよ。……俺がこの世界に来たのも、マーベルがいたからって可能性が高いし」
転移した瞬間に聞こえてきた女の悲鳴は、多分マーベルだったんだろう。
俺と一緒にエルフ城の近くに姿を現したのを思えば、そう間違ってはいないと思う。
「そうなの?」
「多分な。……とにかく、今はこれからどんな行動を取るにしても、ドレイクと接触するのが最優先だ」
「ええ」
マーベルもその事に異論はないのか、こちらの言葉に素直に頷いてくる。
「まぁ、ドレイクがどんな人物であろうとも、結局のところ明日にはその辺がはっきりとしてるんだ。そうである以上、そこまで気にする必要もないから、気楽にいればいいと思うけどな」
「……アクセルならそうかもしれないけど、私はそうじゃないわよ」
「そうか? なら、気分転換も兼ねて午後も色々と見て回ってみるか? 色々と面白い物が売ってる場所もあるかもしれないし。……もっとも、今の俺達は金に余裕がある訳じゃないから、基本的に見るだけだけどな」
「それでも、見ず知らずの場所でこうして出歩くのは決して悪い事じゃないでしょ。……じゃあ、行きましょうか」
そんなマーベルの言葉に頷き、俺は宿から出る。
宿の店員は俺とマーベルを見て何か言いたげな様子だったが……これは多分、昼食をどうするのか聞きたかったんだろうな。
「それで、どこに行く?」
「動物を見たいわね。こういう世界だけに、初めて見る動物も結構多いし、そういう意味でも非常に楽しみだわ」
そう告げるマーベルだったが、ここはラース・ワウ……ルフト領の首都と言ってもいい場所だ。
牧場のようなところはないと思うんだが。
そう思いながら、俺はマーベルとのウインドウショッピングを楽しむのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637