「これが……」
映像スクリーンを通してTVの中の世界に入ると、俺の腕の中で美鶴がそう呟く。
その言葉に複雑な、それこそ様々な感情が入り交じっているのは、このTVの中の世界がどこかタルタロスと似ていると感じているからだろう。
シャドウワーカーを組織し、これまで幾つかのシャドウの案件を解決してきた美鶴だったが、聞いた話によるとそこまで大規模なものはなかったらしい。
だが、この稲羽市で現在起きている騒動は、シャドウワーカーが解決してきた件とは大きく異なる。
それこそ影時間の一件に匹敵する……というのは言いすぎかもしれないが、それに準ずる規模なのは間違いない。
影時間の一件はニュクスの件もあって、正真正銘人類絶滅の危機だったしな。
この稲羽市で起きている一件は、規模は大きいものの、それでも影時間の一件には及ばない。
「美鶴、降りるぞ」
「え? あ、ああ。分かった」
俺の言葉で我に返った美鶴が、少し慌ててそう言ってくる。
TVの中の世界に来たことで、現在の自分がどういう状況にあったのかすっかり忘れたいたのだろう。
そんな美鶴を抱いたまま地上に降りる。
周辺にあるのは、先程と同じく公園。
また、公園の周囲が俺でも見通せないような濃霧に覆われているのも、先程と同じだった。
「これは……霧が濃いな」
「それは上空から見た時も分かっていただろう?」
「上から見るのと、こうして実際に地上に降りて見るのでは違う。……ちなみに一応聞くが、アクセルは周囲の状況を完全に理解しているのか?」
「この公園の中だけならな。公園の外の濃霧は俺にも何がどうなっているのかは分からない」
「……私も一応公園の中は把握出来ているものの、それでも完全に理解出来るといったところではないな」
「その辺は人と混沌精霊の能力による差だ。そう考えれば、おかしな話でもないだろう」
美鶴は俺の言葉に完全に納得した様子は見せていないものの、それでも生物としての能力差と言われれば仕方がないと判断したのか、反論はしない。
「それで、霧の件はともかくシャドウに関してはどう思う? 刈り取る者はシャドウの気配を感じると言っていたが」
いや、実際には態度で示しただけなんだが。
……今更だけど、刈り取る者は雄叫びとかそういうのはあるけど、言葉を話す事が出来るのか?
こっちの言葉を理解している以上、言葉が分からない訳じゃないだろうが。
まぁ、頷いたり首を横に振ったりで意思疎通に問題はないが。
「ふむ。月光館学園の時と違って専用の機材がない以上、そこまで正確に調べる事は出来んが……それでも多少は調べる事が出来るか」
そう言うと、美鶴は召喚器を頭部に当て……
「ペルソナ!」
その言葉と共にトリガーを引き、アルテミシアが姿を現す。
大広間で出した時とは違い、かなりの迫力を持つ。
いつ戦闘になってもおかしくはないと、そう判断しての召喚だからだろう。
そのアルテミシアは、周囲の様子を見るように濃霧の方を一瞥する。
どことなく女王っぽい雰囲気があると思うのは、俺の気のせいだろうか。
美鶴がそういう女王気質を持ってるからかもしれないが。
……あくまでも女王気質で、女王様気質じゃないのは俺にとって幸運だったのかもしれないな。
そんな風に思っていると、アルテミシアが姿を消す。
「公園の外にシャドウの気配は感じられるが、詳細までは分からない。すまんな」
「気にするな。元々アルテミシアは偵察とかそういうのが出来るけど、それはあくまでも出来るであって、得意という訳じゃないんだ。山岸がいればその辺もどうにか出来たかもしれないが、いない以上はここでどうこう言っても仕方がない」
現在の状況において、俺達の出来る事をやればいいだけだ。
とはいえ、これから今すぐ探索をする訳にいかないのも事実だが。
空間倉庫に武器とかはあるし、美鶴はペルソナも使える。
そう考えると普通に探索をやろうと思えば出来るんだが……それでも、一度は現実世界に戻る必要があった。
「なら、そろそろ戻るか。向こうでも俺達が……正確には美鶴が戻ってくるのを待ってるだろうし」
シャドウワーカーの面々にとって、美鶴は年下であろうとも頼れる有能なボスだ。
俺が特殊な存在であるのは知ってるだろうが、それを考えても俺と美鶴では美鶴の方が大事だろう。
堂島にとっては、恐らく稲羽署の上層部から美鶴の護衛もするように言われているのだろうから、こちらも美鶴の方が大事な筈だ。
早紀は……やっぱり同性という事もあり、美鶴を心配している筈だった。
……あれ? こうして考えてみると、もしかして俺って誰にも心配されていない?
勿論、心配されていないからといってそれが何か致命的な訳でもないのだが。
「そうだな。私のアルテミシアでもそこまで詳しい調査が出来なかったのは残念だが……別に今回だけで全てを明らかにしなければならない訳ではない。また来ればいいだけだ」
「俺は構わないし、シャドウワーカーの面々も美鶴の強さは知ってるから反対はしないだろうけど、堂島は反対しそうだな」
堂島の名前に、少し困った様子を見せる美鶴。
美鶴も当然だが、堂島が自分の護衛を上から命じられているというのは知ってるのだろう。
あるいは堂島の性格を考えると、直接言われてるのかもしれない。
「とにかく、戻るとしようか」
再度戻ると言うと、美鶴も素直に頷く。
そうして再び俺は美鶴をお姫様抱っこをして、空中に浮かび上がり……TVの世界から出る。
「あ、美鶴さん!」
大広間に出ると、シャドウワーカーの1人が真っ先に美鶴の存在に気が付き、声を出す。
他の面々もそんな声で我に返り、俺に視線を向けてくる。
シャドウワーカーの面々の表情に浮かぶのは、喜びだ。
美鶴だから大丈夫だろうと思っていても、やっぱり多少なりとも心配だったのだろう。
「心配を掛けたようですまないな。だが、私は問題ない。TVの中の世界はアクセルが言っていたように公園だった。シャドウも出てくる様子はない」
美鶴の説明に、話を聞いていた者達……特にシャドウワーカーの面々は真剣な表情を浮かべる。
なお、堂島だけ美鶴が無事に戻ってきた事に安堵した様子を見せていたが。
「それで、美鶴さん、私達もそのTVの中の世界に行くんですか?」
シャドウワーカーの女が興味深そうな様子で美鶴に尋ねる。
どうやらTVの中の世界に興味があるらしい。
とはいえ、TVの中の世界にはシャドウがいるのは既に判明している。
そんな場所にペルソナを使えない女を連れていくのはどうかと思うが。
俺はそう思っていたのだが……
「ふむ、そうだな。タルタロスの件もある。今回のように、これからもシャドウと付き合っていけば同じような事に巻き込まれる可能性は高い。なら、シャドウの存在する空間を体験してみるのも悪くないかもしれんな」
「本気か? まだ公園にいたのは短い時間だけだ。俺はあそこをタルタロスのエントランスと同じような場所だと思っているが、本当にそうなのかどうかは、それこそもう少し試してみないと分からないぞ?」
そう美鶴に言うが……その美鶴は、自信に満ちた笑みを浮かべる。
「私やアクセルがいるのだ。その辺は問題ないだろう。それに……もしあそこが本当にタルタロスのエントランスと同じなら、出てくるシャドウは弱い可能性が高い」
「いやまぁ、それは……」
ここが原作のある世界なら、ダンジョン……TVの中の世界に入ったばかりの場所では、弱いシャドウしかいない可能性は十分にある。
もっとも、俺達が入ったのはこの世界の主人公と同じ場所ではないので、もしかしたらいきなりそれなりに強いシャドウが現れる可能性は十分にあったが。
そうなったらそうなったで、こっちは対処出来るだけの戦力はあるのだが。
「なら……悪いが、まずは俺を連れていって貰えないか? 身を守れる武器を手に入れてからという話だったが、そのシャドウってのがそんなに強くないってんなら、構わないだろう?」
「本気か?」
堂島に向かってそう言う。
何度もTVの中の世界に行きたいといったことを口にしていた堂島だったが、今の話を聞いた上でこう言ってくるのは少し予想外だった。
いや、実際にはそこまで予想外って程でもないのか?
「本気だ。勿論、もしTVの中の世界に行って怪我をしても、決してアクセル達のせいにはしねえ。これは俺が自分の責任で行く事だ」
「一応言っておくが、もしこの状況で堂島がTVの中の世界に行ったところで、足立に会えるとは限らないぞ?」
「そうなったらいいとは思っているが、そこまで強く期待はしてねえよ。ただ……俺のいるこの街で、そして菜々子のいるこの稲羽市で一体何が起きているのか、少しでも知りたいと思っただけだ。それに、署の方にもTVの件については知らせる必要があるしな」
足立がTVの中に逃げ込む光景を見ている者が多い以上、さすがにTVの中に逃げるなどという事は信じられないと言う奴はいないらしい。
稲羽署の刑事全員が足立がTVの中に入る光景を見ていた訳ではない以上、何らかの手品か何かだと思っている者もいるのかもしれないが。
「美鶴、どうする?」
「そこまでの覚悟があるのなら、仕方がない。アクセルがいれば、シャドウが出て来ても対処は出来るだろうし」
俺任せか。
そう思わないでもなかったが、狛治を召喚したりするよりは、俺が普通に護衛をした方がいいのも事実だ。
「分かった。じゃあ、行くぞ」
そう言い、俺は三度映像スクリーンを展開させ……
「ちょっと待って下さい!」
その瞬間を待っていたかのように、早紀の声が周囲に響く。
「どうした? 一応言っておくけど、早紀も行きたいっていうのは無理だぞ」
「駄目……ですか?」
「ああ。生憎とな。堂島は刑事という事で、一応身体を鍛えている。けどそれに対して、早紀はただの女子高生だろう?」
家が酒屋をやっていたという事は、ビール瓶の入ったケースとか、そういうのを持った事はあるかもしれないが、それだけだ。
曲がりなりにも身体を鍛えている堂島とは違う。
「でも!」
俺の言葉にそう反論しようとする早紀。
早紀が何を考えて今のような事を言ったのかは理解出来る。
早紀にしてみれば、堂島が心配なのだろう。
これが例えば、喧嘩をしている高校生を止めるとか、そういう仕事に行くのなら早紀も心配はするだろうが、堂島を止めたりはしないだろう。
だが、これから堂島が行くのはTVの中の世界という、常識では考えられない場所だ。
そうである以上。堂島が心配なのは間違いない。
とはいえ、それを知ったからといってさすがに早紀を連れてTVの中に行く訳にはいかない。
「諦めろ。堂島ですら、足手纏いになるんだ。そんな場所に、自分の身を守れない奴を連れて行く訳にいかないのは分かるだろう?」
多少厳しい言い方かもしれないが、ここで中途半端な優しさを口にすれば、あっさりと引き下がるような事はないだろう。
「ここは俺がまず行く。心配するな。アクセルは足手纏いと言っていたが、俺はこれでも刑事だ。そう簡単にどうにかなったりはしないからな」
堂島が早紀に向け、そう声を掛ける。
そんな堂島の言葉に、早紀は何かを言いたそうにするものの、最終的には黙り込む。
自分がここで何かを言っても、決して堂島の決意は覆られないと理解したのだろう。
「分かりました。気を付けて下さいね」
「ああ、心配するな」
そう言い、堂島は早紀の頭を撫でる。
それに嬉しそうな様子を見せる早紀。
早紀ってこういう性格だったんだな。
「アクセル」
「分かった。行くぞ」
堂島の言葉に頷き、俺は堂島を抱えて空中に浮かぶ。
とはいえ、さすがに堂島をお姫様抱っこはしたくないので、胴体を右手で抱えて持つ持ち方だ。
そんな持ち方をされても、堂島が不満を言うような事はなかった。
……多分、堂島も自分が美鶴のようにお姫様抱っこをされるのはごめんだったのだろう。
そうして既に3度目となるTVの中に入り……
「ここが、TVの中? 霧が深いが、確かに公園にしか見えないな」
「降りるぞ」
またもや高さ5m程の場所に出た俺は、堂島を抱えて地上に降りる。
堂島も特に暴れたりといった事はせず、大人しくしていた。
地面に降りると、堂島はすぐに周囲の様子を確認し始めた。
「調べるのはいいけど、あまり遠くに行くなよ。もしかしたらシャドウが出てくるかもしれないからな」
「分かった」
堂島は真剣な表情で公園を見て回る。
周囲の濃霧程じゃなにしろ、公園の中もそれなりに霧が出ている。
堂島が調べるにしても、霧を邪魔そうにしているし。
出来ればこの霧をどうにか出来ればいいんだが……やっぱりレモンを連れてくるしかないか?
レモンならこういう霧に対して何らかの対処法を持っていてもおかしくないし。
もしくは、この霧はシャドウに関係する何かだという事で、魔力とかが関係しているのならエヴァか?
そんな風に考えつつ、俺は公園を調べる堂島を眺めながら周囲の警戒を続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820