美鶴は行動をするとなると早い。
大広間に戻ってから30分後には、既に稲羽署や警視庁に連絡を取り、堂島一家も天城屋旅館で寝泊まりをする事に決まっていた。
ただし、宿泊料金の方は桐条グループと警視庁の折半という扱いになったが。
稲羽署の上層部は、自分達が……それも稲羽署の予算ではなく、上層部の個人的な資産からその料金を出さなくてもよかったことに、恐らく喜んでいるのだろうが。
ただし、堂島一家の泊まる部屋は俺と美鶴が泊まっているような宿泊料金の高い部屋ではない。
早紀が泊まっているのが安い――あくまでも天城屋旅館の中ではだが――部屋なので、堂島一家の部屋も早紀の部屋の近くになった。
これは早紀が菜々子の相手をしたりする事もあるので、そういう時は近くにいた方がいいと主張したのが受け入れられた結果だ。
……もっとも、早紀のその主張は菜々子の件もあるが、それと同じくらい堂島の側にいたいという思いがあってのものなのだろうが。
ただ、早紀と年齢の近い鳴上がいるのを考えると、それはそれでちょっと危ないんじゃ? とは思うが。
女に強い興味を持つ高校生が、すぐ側……表現は悪いが同じ屋根の下に早紀のような美人がいるのだ。
暴走しないといいんだけどな。
堂島の甥だけに、そういう事はしないと思うが。
それでもまだ会ったばかりである以上、俺は鳴上の性格は分からないし。
あ、でも鳴上はこの事件の主人公であるかもしれない以上、そんな心配はいらないのか?
その辺については堂島に任せておけばいいか。
とはいえ、場合によっては鳴上は自分より1歳年上の義理の叔母が出来る訳か。
何だか……いやまぁ、そんな事は考えない方がいいな、うん。
「さて、堂島の件がある程度片付いたし、俺はちょっとTVの中の世界に行ってくる」
「何? それは少し待って欲しいと言ったと思うが」
「美鶴には悪いが、今のところ特に何もやる事がなくてな。足立を見つけるのは難しそうだし、TVの中の世界にいるシャドウがどのくらいの強さなのかも知っておきたい」
まぁ、スライムを使えば足立を探す手掛かりになるかもしれないが、スライムを出している間、ずっと俺が動けないというのはちょっとな。
ましてや、スライムはTVの中の世界に入る事は……あれ? どうなんだろう。
魔力があればTVの中の世界に入れるのなら、スライムを使っても……ちょっと試してみるか。
思いついたら即実験。
「悪い、ちょっと試してみたい事が出来たから、行ってくる」
「アクセル?」
疑問の声を口にする美鶴をその場に残し、俺は大広間から出る。
シャドウワーカーだけがいるのなら、大広間で試してもよかったんだが。
生憎と大広間には堂島もいる。
影のゲートを始めとして、幾つかの能力は見せたものの、スライムについては見せていない。
スライムは俺の奥の手というのもあるが、色々と特殊な存在である以上、見せない方がいいと判断したのだ。
そんな訳で、天城屋旅館の周囲にある山の中まで移動する。
これが田舎のいいところだよな。
もしここが普通の……例えば東京とかなら、すぐに誰も見られない場所まで移動したりは出来ないし。
もっとも、東京でも田舎と変わらない場所もあったりするのだが。
それこそ住所上は東京になっていても、周囲には山しかない場所とか。
それでもやっぱり東京と言われて思い浮かべるのは、都会だろう。
実際にペルソナ世界においても、東京は世界でトップクラスの人口密集地らしいし。
「さて、スライムはどうなる?」
山の中、周囲に誰もいないのを確認してから、空中に映像スクリーンを浮かべる。
その映像スクリーンに向かってスライムを伸ばす。
次第にスライムの先端は映像スクリーンに近付いていき……
「駄目か」
映像スクリーンを貫いたスライムを見て、残念に思いながら呟く。
スライムを操作すると、映像スクリーンを貫いた先端部分が弧を描くようにして俺のいる方に先端が向けられる。
映像スクリーンを貫いたその様子は、どこか不思議な光景だった。
とはいえ、俺もいつまでもその不思議な光景に目を奪われている訳にもいかない。
スライムを空間倉庫の中に戻し、映像スクリーンも消す……前に、一応という事で映像スクリーンに近付いて手を伸ばす。
うん、やっぱり俺の手はスライムのように映像スクリーンを貫いたりはしないな。
だとすれば、スライムがTVの中の世界に行けないのは一体どういう理由からなんだ?
俺がTVの中の世界に入る時は、魔力で身体を覆っている。
だとすると、魔力の有無?
もしくは単純にスライムだからとか?
けどその理屈だと人間じゃないから駄目という事になる筈だ。
そして俺は混沌精霊で、人間ではない。
その辺の状況を考えると、やっぱり疑問があるのは事実だ。
やっぱり魔力の有無か?
スライムに魔力があるのかどうかとなると、多分あると思うんだが。
何しろこのスライムは俺の転生特典の1つで、俺と繋がっている。
そうなると、俺の魔力がスライムにも流れていると考えてもおかしくはない筈だった。
だとすれば一体何でスライムがTVの中の世界に入れないのか。
……まぁ、入れない以上はどうしようもない。
そうである以上、そういう風に動けばいい。
そんな風に考えつつ、俺は映像スクリーンの中に入る。
やはり出たのは5m程の高さにある場所で、目の前に広がっているのは霧の広がっている公園だった。
大広間で中に入った時と同じく、公園の中には何とか周囲を確認出来る程度の霧があり、公園の周囲には1m先も見通すのが難しいような濃霧が広がっている。
一応以前も試してみたが、やっぱり入る場所はどうあっても変わらないらしい。
代わりに入るTV――俺の場合は映像スクリーンだが――によって、TVの中の世界のどこに出るのかは決まっているのは確定と考えてもいいだろう。
「さて」
地上に降りてから小さく呟く。
今日試すのは、公園の周囲の濃霧がどのような存在なのかを確認する事だ。
公園の中には特に何かある訳ではなかった。
刑事の堂島がしっかりと調べたのだから、それは間違いないだろう。
もっともペルソナやシャドウについて詳しくない堂島が調べたということは、もしそっち関係の何かあった場合、堂島はそれを見破る事は出来なかっただろうが。
とはいえ、まずはやっぱり濃霧だよな。
空から見た感じでも、完全に霧で覆われている。
もし公園から出るのなら、あの濃霧をどうにかしないといけないだろう。
それでいながら、その濃霧が公園の中に入ってくる事がないのは疑問だ。
ここがタルタロスと似たような場所であるから、そんな風になっていると言われれば、俺も納得するしかないのだが。
霧を蒸発させるか……いや、スライムを使うか?
スライムでTVの中には入れなかった。
だが、TVの中に入った状態でスライムを使えばどうなる?
俺のやるべき事は決まった。
スライムは攻撃力とかもかなりのものだが、俺が重宝してるのはその探索能力だ。
実際、足立が早紀をTVの中に入れようとしているのを察知したのも、スライムの力だったし。
……とはいえ、まさか稲羽署の中でスライムを使っていたなどとは言えないので、その辺は永遠に秘密だが。
稲羽署の中には防犯カメラとかがあるんだろうが、糸状になったスライムは幾ら高性能な防犯カメラでも認識する事は出来ない。
これが技術班謹製のカメラとかなら話は別だが。
ましてや、田舎にある警察署では防犯カメラとかのようなものに使える金額もそこまで多くはないだろうし。
……場合によっては、防犯カメラの性能は出来てからそう時間が経っていないジュネスの方が高いんじゃないんだろうか。
まぁ、その辺は今はいいか。
まずはスライムを出せるかを試し……
「うわ、あっさり」
何となくだが、出せるだろうと予想はしていた。
予想はしていたのだが、何の抵抗もなくあっさりと……それこそ、いつも通り空間倉庫からスライムを出す事が出来たのだ。
嬉しいか嬉しくないかと言われれば、勿論嬉しいが。
ただ、映像スクリーンの中に入れなかったのに、実際にTVの中の世界に入ってみれば、普通にスライムを出せる事に少し思うところがあっただけだ。
とはいえ、スライムを出せるというのは俺にとっても悪い話ではない。
公園の周囲に存在する濃霧の中では、そこにシャドウがいても見る事は出来ない。
気配を察知出来るものの、それでもやはり視覚で見つけられないというのは大きかった。
何より、見た感じこの濃霧は気配の類についても……そう、そう強くはないがジャミング的な性能を持ってるみたいだし。
でないと、この濃霧にいるだろうシャドウの存在をここまで感じにくいというのは分からない。
勿論、これはあくまでも予想であって、実際には単純に濃霧の中にシャドウがいないだけという可能性も否定は出来なかったが。
ともあれ、あの濃霧の中を確認するのが重要なのは間違いない。
そんな訳で、俺は早速スライムを細い糸上……それこそ目で見てもすぐには分からないような細さにすると霧の中に伸ばす。
さて、一体何が分かるか。
シャドウがいれば、間違いなく動いている筈だ。
スライムならその振動なり、動いている音なりを感じるには十分だ。
十分だったのだが……
「おかしいな」
公園を中心に、半径50m程の距離まで多数のスライムを伸ばしても、そこには全く何の反応もない。
この世界にシャドウがいるのは、それこそ刈り取る者がはっきりと断言――言葉ではないが――してるのだが。
だが、この公園の側にシャドウはいない?
偶然なのか?
いや、偶然としては少し出来すぎな気がする。
だとすれば、考えられるのは足立の仕業か?
そう考え、すぐに否定する。
もし足立がこの辺のシャドウを連れていったとすれば、この場所を知っているという事になる。
TVの中の世界が具体的にどのくらいの広さなのかは、俺には分からない。
だが、稲羽市にあるTVの全てがこの世界に繋がっているとすれば、恐らくだが稲羽市と同じだけの広さ……人口5万人の街と同じ広さがある筈だ。
それどころか、このTVの世界はペルソナやシャドウの関係する世界。つまり、常識の通用しない世界だ。
……そもそもペルソナ世界の月がニュクスという神だと、他の世界の者に言って信じるとは思えない。
それどころか、UC世界でルナ・ジオンに所属する者がそれを聞いたらどう思うのやら。
何しろ人類を全滅させる力を持つニュクスの上に自分達の国を作ってるのだから。
いやまぁ、その件で色々と動いた俺が言うべき事じゃないと思うけど。
とにかくペルソナ世界はそういう意味で特殊な世界でもある。
それだけにシャドウが関係しているTVの中の世界も、稲羽市より広くてもおかしくはない。
そんな、どれくらいの広さかも分からない場所にいるシャドウを、ピンポイントで俺の通信機の映像スクリーンと繋がっている公園から引き連れていくというのは、ちょっと分からない。
かといって、TVの中の世界にいるシャドウ全てを……というのは、ちょっと足立の能力としては大袈裟だし。
俺から見た足立は、精々が小ボス……どんなに頑張っても中ボスといったところだし。
場合によっては、小ボスにすらなれない道化か。
勿論、これはあくまでも俺の認識だ。
もしかしたら足立が早紀の身体を求めたのとかが全て演技で、本性があるとかならボスとかになる可能性も否定は出来ないが。
そんな風に考えながらスライムで周囲の様子を偵察していくものの、やはり特に何かがあったりはしない。
どうなってるんだ?
疑問に思って影にいる刈り取る者を召喚しようとしたところで、ようやくスライムに反応があった。
ただ、それは稲羽署の時のように誰かの声を聞き取ったとかそういうのではなく、何らかの物音がしたといった感じだ。
つまり、これは一体何だ?
何かが動いてるのは間違いないものの、それが何なのかは分からない。
分からないが、それでも何かがいるのは間違いない。
そして何かというのは、無害な存在ではないだろう。
ここが現実世界なら、誰かが歩いているといった可能性も否定は出来なかったのだが、俺が今いるのはTVの中の世界だ。
そんな場所に友好的な存在がいるとは思えない。
だとすれば、これはやはりシャドウか。
万が一、本当に万が一の話だが、足立によって誰かがTVの中に入れられて、その被害者がTVの中の世界を歩き回って俺のいる場所にやって来たという可能性もない訳ではないが、その可能性は限りなく低いだろう。
そう判断し、音のした方にスライムを伸ばしていく。
もし本当にTVの中の世界に迷い込んだ奴なら、何か独り言を口にしたりする可能性も高い。
シャドウに見つからないようにしているのなら、言葉を発しないようにしている可能性もあるが。
そう思いながら音のする方にスライムを伸ばしたのだが……
「消えた?」
誰か、もしくは何かが、次の瞬間その音を消す。
その後数分の間、音のした辺りを探すが……そこには誰の姿もなかった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820