俺と堂島が家の外で話をしていると、不意に家の中から声が聞こえてくる。
「お父さん、どこ?」
父親を捜す菜々子の声。
一応堂島は家から出る時に菜々子に声を掛けたと思うんだが、どうやら荷物の準備に集中したせいか忘れてしまったらしい。
堂島は家の中から聞こえてきた声に息を吐くと、俺を一瞥してから家の中に戻る。
多分だけど、俺を一瞥したのは話はここで終わりというのを示したかったんだろう。
そうして少し待つと、ランドセルを背負って帽子を被った菜々子と、幾つかのバッグを手にした早紀と堂島が姿を現す。
菜々子がランドセルを背負って帽子を被っているのは、それこそ今から小学校に行こうとしているように思える。
……実際には帰ってきてからまだそんなに時間が経ってないんだろうけど。
早紀と堂島が持ってるバッグには、着替えやらランドセルに入りきらなかった勉強道具やら、その他諸々入っているのだろう。
「アクセル、悪いが車のトランクを開けてくれ」
堂島の言葉に頷き、車のトランクを開ける。
車というのは、基本的にどこの世界でも操作方法は大体同じだからいいよな。
とはいえ、変わらないのはこういうガソリンで走る車だが。
これが電気自動車になったり、エアカーになったりとなると、その世界によってそれなりに変わってきたりする。
それでも運転しやすいように作られているのは間違いない以上、実際に運転さえしてみればそれなりに問題なく操縦出来たりするのだが。
トランクの中にバッグを入れ、菜々子は早紀と共に後部座席に座る。
いやまぁ、これは仕方がないか。
菜々子にしてみれば、早紀には懐いているが俺はまだそんなに親しくないのだから。
そんな状況で俺と一緒に後部座席に座れというのが無理だ。
これで菜々子が中学生とか高校生くらいなら、そのくらいは出来たかもしれないが。
そんな訳で、俺は大人しく助手席に座る。
後ろからは早紀と菜々子の楽しそうな会話が聞こえてくる。
どうやらジュネスについて話しているらしい。
稲羽市に住んでいる者にとって、ジュネスは好まれているのだろう。
早紀がジュネスでバイトをしていた時に聞いた話とかをしており、菜々子はそれを興味深そうに聞いていた。
早紀にしてみれば、これからの事で少しでも菜々子が不安に思わないようにと考えているといったところか。
それは実際に成功しており、菜々子の様子に不安はない。
自分が狙われているとかよりも、堂島と一緒に泊まりに出掛けるのが嬉しいといったところか。
菜々子と早紀の会話を聞きながら、俺はこっそりと堂島の顔を見る。
するとそこには、複雑な表情があった。
堂島の立場を考えれば、それも無理はないか。
とはいえ、ここで俺が何かを言っても堂島は誤魔化すだろう。
なら、今は特に何も言わないでおくか。
「ああ、そうだ。どうせ街中まで出て来たんだし、途中で何か買っていくか?」
不意に堂島の口からそんな声が漏れる。
それは俺にとっても驚きの言葉だ。
堂島の性格を思えば、今のような状況でそんな事を言うとは思っていなかった。
だが、そんな俺に対し、堂島は頼むといった視線を向けてくる。
ああ、なるほど。堂島としては菜々子にはあまり深刻になって欲しくないから、これが菜々子を守る為とかではなく、単に出掛けるといった雰囲気を持たせたいとか、そんな感じか。
「じゃあ、丸久豆腐店に寄ってくれないか? あそこの豆腐は美味いし」
「分かった。俺の家でもあの店の豆腐はよく使ってるんだが、確かに美味いよな。これからは少しずつ暖かくなってくるし、冷や奴とかいいかもしれない」
「……そう言えば、堂島の家は料理はどうしてるんだ?」
堂島は刑事だ。事件があればそちらに向かう必要があり、とてもではないが定時に帰るといった事は出来ない。
かといって、まさか小学1年の菜々子に包丁を使ったり火を使ったりといった料理をさせる訳にもいかないだろう。
電気調理器があれば少しは安全だが……いや、火事になりにくいというだけで、熱したフライパンとかに触って火傷をする可能性は十分にあるか。
後は揚げ油とか。
何より包丁を使うのが危険だろう。
これがもう少し年上になれば、小学校でも調理実習とかやるから多少は安心出来るのかもしれないが。
「……基本的には惣菜とかだな。時間があれば俺が作ったりもするが」
「え? それ……菜々子ちゃんの健康を考えると、ちょっと問題ありますよ」
堂島の言葉に反論したのは、俺ではなく早紀。
早紀にしてみれば、菜々子のような子供が惣菜とか店で買った弁当を食べているのは気になったのだろう。
「一応、コンビニ弁当とかじゃなくて、栄養バランスがよさそうな弁当とかにしてるぞ? それと野菜をメインにした惣菜とかも買ってるし。それに……俺が作れる時は作ってるしな」
「堂島って料理が出来るんだな」
「いやまぁ……そこまで料理が上手いって訳じゃないがな。ある程度はな」
「お父さんの料理、美味しいよ」
「もう、もう、もう!」
堂島をフォローしたのか、それとも実は堂島には料理の才能があって本当に美味いのか。
その辺は分からないが、菜々子がそう言う。
そして菜々子の言葉に早紀は我慢出来ないといった様子で菜々子に抱きつく。
「きゃー!」
そんな早紀に悲鳴を上げる菜々子だったがその悲鳴は嫌がっている悲鳴ではなく、本当に楽しそうな様子の悲鳴だ。
堂島は困ったようにバックミラーでその様子を確認しつつ、他にも何店舗か寄って買い物をしていく事になった。
ちょっと意外だったのは、早紀がここで今度自分が料理を作りに行くとか、そういうアピールをしなかったことだろう。
何気に恋愛ではアグレッシブな早紀にしては、ここでそういう風に言わないのは疑問だ。
あるいは……早紀も実は料理が得意ではないからとか?
そんな風に思いつつ、俺達は買い物を楽しむのだった。
「じゃあ、荷物はここでいいな」
天城屋旅館の、堂島達が泊まる部屋。
早紀の部屋の近くにあるその部屋に荷物を運び、そう堂島に尋ねる。
「ああ、そこでいい。使っているうちに慣れていくだろうし」
部屋の隅に荷物の入ったバッグが置かれる。
ここが旅館である以上、荷物をどう置くのかはある程度決められている。
そうである以上、荷物の整理とかそういうのは今すぐにする必要はないだろう。
「じゃ、菜々子、俺は少し仕事をしてくるから、お前は……」
「あ、堂島さん。私が一緒にいるわ。いい?」
恐らく堂島は菜々子にここで待っていろと言おうと思ったのだろう。
だが、それを遮るように早紀が言う。
早紀にしてみれば、菜々子を見知らぬ場所のこの部屋に置いていくのは不味いと判断したのだろう。
菜々子がもっと好奇心旺盛な性格だったら、もしかしたら放っておいても旅館の中を探検するなりして、時間を潰すかもしれない。
だが、俺が見た限り菜々子は大人しい性格だ。
見知らぬ場所で、自分から積極的に出て歩いたりといった事はしないだろう。
早紀もそれを知っているからこそ、菜々子と一緒にいると言ったんだと思う。
「それは助かるが……大広間の方はいいのか?」
「そこまで仕事はなかったみたいだし。あ、勿論何か緊急に仕事が出来たって言われたら、私もすぐ仕事に戻るから」
「……それでいいか?」
堂島の問いに俺は頷く。
実際には俺はシャドウワーカーに所属している訳でもないのだから、その辺を勝手に決める権限はない。
ただ、美鶴の性格を考えれば、早紀の提案に頷く筈だ。
こう言ってはなんだが、早紀はシャドウワーカーに絶対に必要な人物という訳ではなく、あくまでも保護対象なのだから。
「悪いな」
「気にするな。美鶴がこの話を聞いたらすぐに頷くと思うし」
俺の言葉に堂島は少しだけ疑問の表情を浮かべる。
「本当にそう言うと思うのか?」
ああ、なるほど。堂島は美鶴についてはまだそこまで詳しくはない。
桐条グループの令嬢、そしてシャドウワーカーを率いる者としての顔だけしか知らなければ、今のような対応になってもおかしくはないのか。
「ああ、美鶴の恋人の俺が断言する。それは間違いない」
「……アクセルがそう言うのなら信じておくよ。どのみち大広間に行ってから説明しないといけないんだし」
堂島の言葉に頷き、俺と堂島は大広間に行く事にする。
早紀は暫く菜々子の面倒を任せ、大広間の仕事に関しては俺から美鶴に言っておくという流れになった。
「じゃあ、2人ともいってらっしゃい」
「その……いってらっしゃい」
早紀に促され、菜々子がそう言う。
これが堂島だけなら、恐らく早紀に促されなくてもきちんといってらっしゃいと言ったのだろうが。
菜々子の性格を考えれば、それも仕方がないか。
俺と堂島は部屋を出て、大広間に向かう。
「何だか、着々と外堀を埋められてないか?」
「言うな」
廊下でそんな会話を交わす。
堂島にしてみれば、外堀を埋められつつあるのは何となく分かっているのだろう。
俺から見ても、菜々子は明らかに早紀に懐いているしな。
早紀にしてみれば、外堀を埋めるのと菜々子と親しくなるのはどちらも積極的にやりたいのだろう。
この調子だと、やっぱりそのうち堂島は……
まぁ、堂島にとって悪い話ではないだろう。
堂島も菜々子の母親を交通事故で亡くして以来、男やもめなんだし。
堂島と早紀なら、何となく上手くいきそうな気がする。
普通年の差があると、恋人にしろ結婚にしろ、一時的にはともかく末永く幸せにとはなかなかならないらしいが。
それでも堂島と早紀なら問題ない気がする。
何か確証があってのものではなく、何となくそう思うといったところだが。
「そうだな、じゃあ黙っておくよ」
「ふん」
面白くなさそうに、あるいは照れからか、堂島は俺の言葉に鼻を鳴らして進む。
お互いに特に何を話すでもなく廊下を進む。
もう少しで大広間につくというところで口を開く。
「そう言えば、鳴上に連絡はしたのか? こっちに来るように、もしくは迎えに行くから待ってるように連絡をしておいた方がいいんじゃないか?」
「ああ、そうだな。なら、悪いが俺は悠に少し連絡をしてくる。アクセルは先に行っててくれ」
その言葉に軽く手を振り、堂島をその場に残して大広間に向かう。
すぐに大広間に到着し……
「うん? 戻ったか。けど、アクセルだけなのか? 他の者達は?」
「菜々子はここに連れてくる訳にはいかないだろう? そして菜々子を1人で部屋に残しておくのもなんだし、早紀は菜々子のお守りをしている。堂島は鳴上に連絡をしている。予想はしていたが、まだ鳴上は帰ってきてなかったからな」
俺の言葉に美鶴は頷く。
特に不満そうな様子がないのは予想通りだった。
美鶴の性格を考えれば、こういう事で文句を言うとは思えないけどな。
「分かった。それで問題はない。……けど、戻ってくるのに随分と時間が掛かったようだったが、何か問題でもあったのか?」
「特に問題らしい問題はなかったな。ただ、来る途中で少し寄り道をしてきただけだ」
「……アクセルらしいな」
寄り道という言葉に、もしかしたら少し怒るかもしれないと思ったが、幸いなことに美鶴は若干の呆れと共に笑みを浮かべるだけだった。
もし以前の……影時間の一件に関わっていた時なら、怒りはしないものの、こうして笑みを浮かべるようなことはなかっただろう。
この辺は美鶴の成長といったところか。
「そんな訳で……土産だ」
そう言い、クッキーやスナック菓子、惣菜パンといった諸々を空間倉庫から取り出す。
仕事をしながら摘まむにはいいものだろう。
もっともスナック菓子の類は素手で食べると指が汚れて、キーボードやマウスが使いにくくなるので、割り箸か何かを用意した方がいいかもしれないが。
「うわ、これ懐かしい……俺が小学生の時によく食べていたお菓子ですよ。よくまだありましたね」
スナック菓子の1つを見たシャドウワーカーの男が驚きと感激も露わに言う。
いや、感激とまではいかないか?
ともあれ、喜んでいるのは間違いない。
「美鶴さん、アクセルさんが買ってきたお菓子、食べてもいいですか?」
「さっきも休憩したばかりだろうが。……まぁ、でもそうだな。少し休憩をするか。折角アクセルが買ってきてくれたのだから」
美鶴の言葉を聞き、大広間に喜びの声が広がる。
いや、そこまで大袈裟に喜ばなくても。
買ってきたのは銘菓とかそういうのではなく、日本なら大抵の場所で購入出来るようなものなんだし。
……まぁ、買ってきたのを喜ばれて不満はないが。
「何だ? 何でこんなに……」
電話が終わったのか、俺に遅れて大広間に入ってきた堂島が不思議そうな表情を浮かべていた。
大広間の中がこれだけの騒ぎになっているのは、堂島にとっても完全に予想外だったのだろう。
いやまぁ、スナック菓子を始めとして色々と買ってきた俺が言うのもなんだ、こんな騒動になるとは全く想像していなかったのだが。
何故このような騒動になっているのかを理解し、呆れの視線を向けてくる堂島から、俺はそっと視線を逸らすのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820