転生とらぶる2   作:青竹(移住)

919 / 2196
番外編133話 その頃のUC世界

 UC世界に存在する、ルナ・ジオン。

 その名の通り月を本拠地とする勢力だったが、月以外にも小惑星ペズンのような拠点は存在する。

 そんな拠点の1つ……地球に唯一存在するのが、ハワイ。

 そのハワイの頂点にいるのはギニアス。

 実際の政務はその多くが量産型Wが行っているのだが。

 なら、そのギニアスの仕事は何か。

 アクセルが目を付けたのは、その技術力。

 より正確には、兵器開発能力。

 ギニアスとアイナのサハリン兄妹がアクセルに持ちかけてきたのは、アプサラス計画。

 その内容は、核兵器ですら防ぐ厚い岩盤を持つジャブローに対抗する作戦で、地上から成層圏まで打ち上げたアプサラスがジャブローの上空に降下してジャブローの分厚い岩盤すら破壊可能なメガ粒子砲で攻撃するという、普通に考えれば不可能としか言いようのないものだった。

 ジオン公国では、そのギニアスの提案を多くの者が夢物語だと、酷い者になれば妄想だと判断した。

 ギニアスはアプサラス計画によって得た成果でサハリン家を没落した名家から本当の意味での名家にしたかったのだが……

 その態度によって、ギニアスはジオン公国に失望した。

 ギレン、ドズル、キシリアといった面々に計画を却下され、もう残るはデギン公王だけだったが……その時、ギニアス達にはもう1つの選択肢が浮かび上がる。

 それがアクセルという存在。

 結果的にそれは当たり、サハリン家はアプサラス計画によってアプサラスというMAを完成させ、それによってルナ・ジオンでの存在感が増す。

 そして1年戦争が終わった今となっては、ギニアスはまさに幸福の絶頂にあった。

 長年自分の身体を蝕んできた宇宙線による影響もシャドウミラーの技術力によって治療され、健康になった。

 妹のアイナにはガトーという婚約者も出来た。

 ルナ・ジオンが持つ地球の唯一の領土たるハワイをサハリン家が任されている。

 少し前……1年戦争の時には没落し、サイド3にあった有名な劇場でサハリン家としてキープしてあった席ですら手放さなければならなかった時と比べると、まさにこれ以上ない程に現状に……そしてアクセルやセイラといった自分の救いの神に感謝をしているのは間違いなかった。

 間違いはなかったが……だからこそ、現状のままでいい訳ではない。

 実際には、まだ地球上は1年戦争が終結してから1年程度しか経っておらず、戦後復興で忙しい。

 ジオン軍の残党であったり、食べていけなくなった者達が盗賊となったり、元々のゲリラがMSを手に入れたり、戦後の混乱をいい事に一部の者が好き勝手したりと、まだまだ混乱している場所は地球上に幾らでもある。

 寧ろ完全に復興したと言えるような場所の方が少ないだろう。

 そんな地球の状況の中で、ハワイは非常に平和な場所だった。

 連邦軍にしろ、ジオン軍残党にしろ、ルナ・ジオンの領土であるハワイにちょっかいを掛けるような事をすればどうなるか、これまでの被害からしっかりと理解しているのだ。

 ……それでも連邦軍の強硬派であったり、ジオン軍残党の中でもルナ・ジオンに裏切った者達が許せないと憎悪を抱いてる者がちょっかいを出してきたりするが、基本的に平和だった。

 何しろハワイは正確にはハワイ諸島という名前で、その名の通り多くの小さな島々によって構成されている地域だ。

 そんな場所では連邦軍のジムやジオン軍のザクといった地上用のMSは殆ど役に立たない。

 水陸両用MSが必要になるのだが……当然ギニアスもそれを知っており、ハワイには多くの水陸両用MSが配備されていた。

 何しろルナ・ジオンにはMIP社が当初から協力している。

 水陸両用MSの決定版と呼ばれる事が多いズゴック、ズゴックS型、ズゴッグE。

 これらは潤沢にあるし、水中用MAのグラブロも今となっては複数機配備されていた。

 それだけではなく、W世界のキャンサーやパイシーズのように異世界の水中用MSも配備されていた。

 そして、水中用だけではなく……

 

「ドム系列か。……ノリス、どう思う?」

 

 ギニアスの問いに、ノリスは少し考えてから口を開く。

 

「ホバー移動出来るMSは地上では重要かと。特にそれを使うのが荒野の迅雷の異名を持つヴィッシュ・ドナヒュー率いる部隊ともなれば、その威力は計り知れないでしょう」

「だが、彼は一応陸専用のゲルググを使っていた筈だろう? 性能を考えれば劣る機体に乗る事になるぞ?」

 

 ゲルググは1年戦争の終盤にジオン軍が開発したMSだ。

 その性能は連邦の白い流星、もしくは白い悪魔と呼ばれたアムロの乗っていたガンダムよりもスペック上は高い高性能機。

 惜しむらくはジオン軍のエースパイロットやベテランパイロットの多くが戦死したり、ルナ・ジオンに引き抜かれたりしていた事だろう。

 結果として、高性能なゲルググを使うのは学徒兵が大多数となった。

 勿論、全てのエースパイロットやベテランパイロットが死んだ訳ではなく、中には連邦軍に多大な被害を与えたゲルググのパイロットもいる。

 特に真紅の稲妻ジョニー・ライデン率いるキマイラ隊は、基本的にゲルググによって構成されたエースパイロット部隊で、連邦軍に多大な被害を与えている。

 

「宇宙であれば、ゲルググでもいいでしょう。……いえ、今のルナ・ジオンの主力MSのガルバルディβは、ゲルググよりも高性能なMSですから今更ゲルググは使わないでしょうが」

 

 現在のルナ・ジオン……正確には月とペズンのように宇宙にいるルナ・ジオン軍の主力MSは、ギャンとゲルググの長所を組み合わせたガルバルディβだ。

 そしてエースパイロットやベテランパイロットは、ギャン・クリーガーを使っている。

 ……実はそれ以外にもケリィ・レズナー率いるMA部隊があり、同じMAの先駆者としてギニアスはそちらの方が気になっているのだが。

 

「地上……ホバー移動か」

「はい、そうなります。ハワイにおいては、普通に地上を歩くゲルググでは活動範囲が狭まります。勿論、SFSを使えば話は別ですが」

 

 SFS……元々はジオン軍が地上用爆撃機として開発したド・ダイにザクやグフといったMSが乗せて運用する事から始まった機種だ。

 それに乗せればゲルググも空中を移動出来るものの、MSの他にド・ダイが必要であったり、空中でド・ダイが撃破されるとMSが海中に落ちてしまうという欠点がある。

 それと比べると、ホバー移動出来るドムは海上も普通に移動出来る。

 もっとも、ホバー移動の要である脚部を破壊されると海に沈んでしまうのは変わらないが。

 

「ツィマッド社のMSであるというのも大きいな」

「そうなります」

 

 ギニアスの言葉にノリスは同意する。

 MIP社に続いてアクセルと接近したのが、ツィマッド社だ。

 ヅダの開発チームをそのまま譲渡したのは大きく、MIP社よりも後に接触したにも関わらず、ルナ・ジオン軍の影響力という点ではツィマッド社はかなり強い。

 1年戦争中のルナ・ジオン軍の主力MSがヅダだった事や、現在の主力MSのガルバルディβはギャンとゲルググの長所併せ持った機体で、更にはエースやベテランが乗るのはギャン・クリーガーだ。

 言ってみれば、ルナ・ジオン軍における主力MSはツィマッド系という事になる。

 ましてや、ヅダの開発チームで培った縁を最大限に利用し、1年戦争でジオン軍が負けそうになった時、多くの技術者がルナ・ジオンに亡命してきている。

 その際にMSの製造ラインを持ち込んだ者もいるので、ドム系のMSを量産するのはそう難しい話ではない。

 

「ドム系か。宇宙では使えずとも、地上では……特にハワイではホバー移動を有効に使えるか。そうなると、どの機種を量産する?」

 

 ギニアスの言葉にノリスは少し悩む。

 通常のドムも悪い機体ではないが、どうせ量産するのならもっと高性能なMSの方がいい。

 そして現在ルナ・ジオン軍が製造出来るMSの中で候補となると……

 

「ドム・トローペンかドワッジでしょうな」

 

 ドム・トローペンもドワッジも、双方共に熱帯地や砂漠用に開発されたMSではあるが、ドムの性能向上型という表現も決して間違ってはいない。

 特にドワッジはドムの最終生産型らしく、非常に高性能な機体なのは間違いなかった。

 

「ホバー移動をするという機体ではケンプファーもあっただろう? あれはどうだ?」

 

 ふと思いついたかのように言うギニアスだったが、ノリスは首を横に振る。

 

「ケンプファーもホバー移動は可能ですが、短時間だけです。それも前傾姿勢に限られているので、慣れない者にとっては厄介でしょう」

「そうか」

 

 自分の意見が即座に否定されても、ギニアスが気にする様子はない。

 ケンプファーというMSの事を知っていたので、ちょっと出してみたからだろう。

 

「それとドムの系列機の中にはドム・キャノンもありますが……」

「いや、後方からの援護射撃となると、ザメルもあっただろう」

「それは……ありますが、どうしてもドムに比べると機動性は落ちます」

 

 ザメルは半ばMAに近い機体で、その大きさや重量もMSより上だ。

 しかしドムに採用されたツィマッド社の熱核ジェットエンジンを採用しており、その巨体からは想像も出来ない程の機動性を持つ。

 だが……それでもやはり、MSのドムに比べると重量の問題もあって機動性や運動性はドムに劣るのも事実。

 そうノリスは説明するが、ギニアスは首を横に振る。

 

「基本的に後方からの援護射撃を目的している以上、ドムのような運動性や機動性は必要としない。それよりも、射撃範囲が広いメリットの方が大きい。……とはいえ、そうだな。ハワイの生産能力を考えればドム・キャノンもある程度作れる余裕はあるか」

「それはそうですね」

 

 ノリスとしては、ドワッジを量産するのであればドム系の機体の方が量産しやすいと思う。

 とはいえ、ギニアスもそれは承知の上で言ってる以上、それに対して不満を言うような事はなかったが。

 

「さて……それではMSについてはそれでいいとして、MAについてだ。アプサラスⅣの開発を急ぎたい」

 

 ギニアスが……正確にはサハリン家がルナ・ジオンに所属する事になった理由のアプサラスだが、現在はⅢまでしか存在していない。

 Ⅰはミノフスキークラフトの実験用の機体で、Ⅱはメガ粒子砲の実験用。そしてⅢが前の2種類のデータを使って生み出された実戦仕様のMA。

 もっとも、ⅠはともかくⅡも純粋に攻撃力という点では1年戦争最強クラスの破壊力を持っていたのだが。

 

「具体的にはどのような事を?」

「幾つか考えている。アプサラスⅢは強力なMAではあったが、弱点も多かった」

「そうですな。攻撃力は高いですが、防御力に問題がありますし、空中に浮かぶ巨体は敵に狙われやすいかと」

 

 武人のノリスにしてみれば、アプサラスⅢの欠点については当然気が付いていたのだろう。

 ルナチタニウムを使って高い防御力を手に入れたが、それはあくまでも実弾に対しての防御力でしかない。

 1年戦争後半にはビーム兵器が一般的になっており、ルナチタニウムであってもビーム兵器を防ぐ事は出来ない。

 また、巨体であるという事は相手を威圧するのに効果を発揮するが、同時にノリスが言うように攻撃の的となるのも事実。

 

「分かっている。アプサラスⅢはただでさえ巨大化したからな。アプサラスⅣは可能な限り小型化するつもりだ。それとビームに対する対処法だが、1年戦争でジオン軍が使ったビグ・ザムというMAはビームを弾くIフィールドというバリア機能を持っていたらしい。Iフィールドについては月のディアナで研究している筈だから、データは貰えるだろう」

 

 ディアナというのは、ルナ・ジオンの兵器開発メーカーだ。

 ベースとなっているのは、ジオン公国のジオニック社、ツィマッド社、MIP社を始めとして、ジオン公国から引き抜かれたり亡命してきたりした技術者達。

 それにジオン公国以外からも移住してきた技術者達を一纏めにして作られた兵器メーカーとなる。

 ジオン公国と違うのは、それぞれが独立した兵器メーカーではなく1つの兵器メーカーであるという事だ。

 ジオン公国はジオニック社、ツィマッド社、MIP社と3つの兵器メーカーにコンペという形でMSを作らせたが、それが結局部品の共有が出来ず、それどころか同じ武器ですら兵器メーカーの違いで使えないという、生産性も整備性も悪いという結果になってしまっていた。

 それを危惧したマ・クベによって統合整備計画が提案されたが、提案されたのは0079年の2月で、実際に実行されたのはゲルググが開発された後……つまり0079年の12月になってからだ。

 その辺りの事情を知っている者達としては、ジオン軍と同じあやまちを繰り返すのはごめんだった。

 そういう訳で、ディアナという1つの兵器メーカーが作られる。

 ……なお、他にもアルテミスというニュータイプ研究施設もあるのだが、今のところギニアスの興味はそちらにはなく、オールドタイプ用のMA……アプサラスⅣの開発に集中していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。