「じゃあ、その里中というのは小さい頃からの友達だったのか」
「そうなりますね。本当に小さい頃から千枝には助けて貰ってばかりで……親友です」
八十神高等学校に向かいながら、俺は雪子とそんな話をする。
今日は特に何か緊急にやる事もなかったので、俺は適当に街中を歩いて、何かヒント……足立に繋がる何かでも見つかればそれでいいと思っていたのだが、その際に学校に行こうとしていた雪子と遭遇したので、こうして話をしながら一緒に歩いていた。
雪子が迷惑そうならやめようかとも思ったのだが、特にそんな風には見えないし、問題ないと判断した。
あるいは俺が天城屋旅館に泊まっている客だからというのもあるのかもしれないが、それ以上に自分の親友の里中千枝という人物について話せるのが嬉しかったらしい。
雪子にしてみれば、その里中という親友が大好きなのだろう。
……実はもしかして、そういう関係だとかだったりしないよな?
それはそれで別にいいんだが。
ただし雪子の様子を見ると、そういう感情はないように思える。
勿論好意を抱いているのは間違いないが、それは恋愛対象に向ける好意ではなく、あくまでも大事な友人に向ける好意だ。
雪子を口説こうとするのは天城越えと呼ばれるように難易度が高いらしいが、普通に口説くのではなく里中という親友を話題にすれば、それなりにいけるんじゃないか?
もしくは里中とも友好的な関係を築いて、そっちから手を回して貰うとか。
将を射んと欲すればまず馬を射よを地でいく感じか。
「そっち関係で鳴上とも親しい訳か」
「ええ。それに花村君も」
また新しい名前が出て来たな。
ただ、話の流れや君付けという事を考えると男だろうし、里中の方がそっちの花村という人物と親しい訳だ。
「それで千枝ってば、お肉ばっかり食べて……あれだと栄養が偏って身体に悪いのに。最近なんか肉ガムなんてのも食べてるんですよ?」
「何だ……それ?」
肉ガム。
雪子の口から出たのは、間違いなくそんな名前だった。
だが、その肉ガムというのがどういう奴なのかは俺にも全く分からない。
いや、正確には全く何も分からない訳ではなく、名前からどういうのかは予想出来るものの、自分で食べてみたいかと言われればその答えは否だ。
肉とガム。
とてもではないが、合わない組み合わせだ。
今まで合わない組み合わせのガムというので印象深く残ってるのは、梅ガムだ。
ただ、これは実際に食べてみたらそれなりに美味かったので、今となっては特に違和感はない。
後は……コーヒー味のガムというのもあったな。
こっちは俺が紅茶派でコーヒーをあまり好まないということもあって食べた回数は少ないが、それでも普通に食べられる。
だとすれば、肉ガムというのも実は普通に食べられるのか?
ただ、どうしても肉とガムの相性がいいようには思えない。
あるいは……本当にあるいは、考えたくもないし想像もしたくないのだが、ゴーヤクレープ枠じゃないだろうな?
里中という人物が肉ガムを好んで食べているという事は、それは里中が購入して食べている筈。つまり普通に売ってる訳だ。
市販されている肉ガム。
つまりそれを販売しているメーカーは、肉ガムが売れると判断したのだろう。
一体どういうニーズがあると思ったのか、俺には分からない。
パーティとかの罰ゲームで使う奴か?
名前の感触からして、それなら普通にありそうだな。
取りあえず後で少し購入して誰かに食べさせてみるかと思いつつ、雪子との会話を続ける。
「千枝ったら、この前も……」
「ちょっ、おい、あれ……天城が男と一緒にいるぞ!? しかも楽しそうだ!」
雪子と会話をしつつ、聞こえてきた声に意識を集中する。
幸いその声はそこまで大きくなかったので、雪子は気が付いていない。
……気が付いても、何となく気にしなさそうではあるが。
天城屋旅館の側では、俺達以外に学生はいなかった。
だが、八十神高等学校に向かえば、当然ながら周囲には他に学生も増える訳で、学校のヒロインとでも呼ぶべき立場にいる雪子の事を知ってる者も増える。
そして雪子について知っていれば、当然ながら天城越えについても知っており、男の影のない雪子が俺という男と一緒にいるのを見て驚く者が出てくるのはおかしな話ではない。
実際、思わずといった様子で驚きの声を発した男以外にも、こっちを見ている者が何人もいるし。
この様子だとちょっと不味いか?
俺は構わないが、雪子が色々と面倒な事になりかねない。
「雪子、そろそろ人が多くなってきたから……ん?」
俺は別の場所に行く。
そう言おうと思ったのだが、それを言うよりも前に俺の方に走ってくる足音を聞く。
学校に遅れそうだから急いでいるといった訳ではなく、明確に俺のいる方に……より正確には俺と雪子のいる方に向かって走ってくる足音。
一体何だ?
そう思った瞬間、ずざざざざという靴が地面を擦る音と共に1人の女が俺と雪子の間を遮るように姿を現す。
ショートカットの、見るからに活発そうな性格。
制服の上から緑のジャージを着ているのが特徴的だ。
「雪子、無事!?」
「え? 千枝……? どうしたの急に」
その女は雪子に声を掛け、そして俺を睨み付ける。
だが次の瞬間に雪子の口から出た言葉で、女……里中千枝の動きが止まる。
そう、この女こそが雪子が言っていた親友の里中だったのだろう。
そう考えれば、そして雪子の学校での扱いを考えれば、何故里中が今のような行動を取ったのか、十分に理解出来た。
「あれ? 雪子……? この人に無理矢理言い寄られてたんじゃないの?」
やっぱりな。
里中の言葉に、そんな感想を抱く。
雪子から聞いた話の流れからすると、里中は雪子をこれまでも同じように守ってきたのだろう。
そして今日もまた、雪子が男に……それも自分達と同年代ではなく、20代の外見をしている俺に言い寄られていると判断し、慌ててやって来たのだ。
もっともその判断は早とちりだったが。
……それだけ、今まで雪子は多くの男に言い寄られてたんだろうな。
「ええ。この人はアクセルさん。旅館の方に泊まっていただいてるお客様よ。鳴上君とも知り合いみたい」
「え? あー……その……すいません」
雪子の言葉に里中は自分が決定的に勘違いしていた事を悟ったのだろう。
少し困った様子で俺に頭を下げてくる。
「気にしなくてもいい。雪子が男に言い寄られるのは多いんだろうし」
「ありがとうございます。……って、雪子!? え? 名前を呼び捨て!?」
俺が雪子と名前で呼んだのに気が付き、里中は慌てたように言う。
里中だけではなく、周囲で様子を見ていた他の者達もそれは同様だった。
このままだと面倒な事になると判断し、少しだけ声を大きくして、周囲で話を聞いている者達にも聞こえるように、口を開く。
「落ち着け。俺が雪子と名前で呼んでるのは、天城屋旅館に泊まっているからだ。そこで名字で呼べば、それこそ雪子の母親……女将を呼んでると思われるかもしれないだろう。だから、俺は名前で呼んでいる」
「……あ、何だ。それなら納得だわ」
あっさりとそう言う里中。
いや、説明した俺が言うのもなんだが、そんなにあっさりと納得してもいいのか?
普通ならそれだけで納得したりはしないと思うんだが。
まぁ、それで納得してくれるのは俺にとっても悪い話ではないので、寧ろ大歓迎だったりする。
「そんな訳で、今更だが自己紹介でもするか。俺はアクセル・アルマーだ」
「あ、やっぱり外国人なんだ。私は里中千枝です」
お互いに自己紹介をすると、これ以上俺が一緒にいると余計な面倒になると判断して口を開く。
「じゃあ、友達が来たみたいだし、俺はこの辺で失礼する。他にも色々と行ってみたい場所があるし」
これは嘘……とまでは言わないが、真実でもない。
稲羽市で行ってみたい場所というのは、そんなにないし。
敢えて挙げるとすれば、ジュネスのフードコートのホットドッグとか、丸久豆腐店の豆腐を買うとか、そんな感じだろう。
どっちも今の時間に行っても……あ、でも豆腐屋って朝が早いんだったか?
それに出来たての厚揚げとかがあったら……うん、豆腐屋に行くとしよう。
「あの、雪子を送ってくれてありがとうございました!」
「最近は色々と物騒だからな。それに少し時間があったし」
「そう……そうですよね。花村の馬鹿もそんな風に言ってましたし」
口の中で小さく呟く里中だったが、混沌精霊の俺には普通に聞こえていた。
とはいえ、馬鹿と言ってはいるものの、そこに悪意の類はない。
気安い関係だからこその態度だと、十分に理解出来た。
「学校、楽しんでこいよ」
そう言い、俺はその場を後にする。
まだ何人かの学生が俺を見て何かを話してはいたが、それは気にしない事にする。
そのうちすぐに俺の事は忘れるだろうし。
「ありがとうね」
丸久豆腐店の婆さんがそう言って笑みを浮かべる。
それなりの量を買ってるので、上客と判断したのか。
もしくは単純に、外国人に見える俺が豆腐を買っていくのが嬉しいのか。
ちなみに出来たての厚揚げとかを食べてみたいと思ったのだが、残念ながら出来たてはなかった。
実際には作られてからそんなに時間が経ってはいなかったのだが、それでも冷えてしまっていたというのが正しい。
ただ、これは仕方がない。
豆腐店が朝早くから開いているのは、朝食に豆腐を使ったりする人を目当てにしたものという説があるらしいから、厚揚げとかもそれ向けなんだろう。
残念には思ったが、単純に俺が来るのが遅かったのだから仕方がない。
明日はもう少し早く来るか、朝ではなく次に厚揚げや油揚げを作る時に顔を出す様子にするか。
後者はそれが具体的にいつなのかちょっと分からないが。
そんな風に思いながら丸久豆腐店を出る。
さて、次はどこに行くか。
そう言えばこの商店街には堂島が武器を買う店があるって話だったな。
具体的にどういう武器を売ってるのかは分からないが、だからこそ興味がある……けど、時間的にまだ開いてないか。
今の時間は午前9時ちょっと前。
早いスーパーとかだと9時に開いたりする事もあるが、こういう店だと10時くらいに開店という印象が強い。
実際には丸久豆腐店のように朝早くからやっていたり、個人商店だけに場合によっては早く開いたりする事もあるんだろうけど。
料理屋とかは、もしかしたらモーニングメニューだったり、八十神高等学校の学生が昼食用に弁当を買ったりといったような事で開いているかもしれないが。
ただ、この商店街の料理は不味いって訳ではないにしろ、決して美味い訳でもないんだよな。
そう考えると、やっぱりわざわざ寄りたいとは思わない。
多少高くても、本当に美味い料理を出すのなら通いたくもなるけど。
何しろ天城屋旅館に泊まってから食べてる料理は、老舗旅館の板前が作ってる料理だしな。
そういう料理と比べると、どうしても数段劣ってしまう。
ジュネスのフードコートで売ってるホットドッグとかくらい美味ければ、まだ進んで食べたいとも思うんだが。
「結局もう少し時間が経ってからここに来る方がいいか。けど、そうなるとそれまでどうやって暇潰しをするかだな。……ん?」
これからどうやって暇を潰すかと考えていると、不意に通信機に連絡が入る。
いつも使っている映像スクリーンは人通りが多い場所で使う訳にはいかないので、携帯電話の振りをして声を出す。
「アクセルだ」
『アクセル? 私よ』
「レモン? どうした?」
『これからペルソナ世界に行きたいと思うけど、迎えに来てくれる?』
「いきなりだな。いや、俺にとっては助かるけど」
TVの中の世界にある濃霧は、今のところ俺達ではどうしようもない。
それこそ俺の白炎を使っても、濃霧の一部は燃やせるものの、燃やされた場所に濃霧がすぐに補充されるのだから。
それをどうにかするには、やはりレモンの協力が必要なのは間違いなかった。
だが、昨日ムラタと五飛が来たものの、レモンは来ていなかった。
暫くはレモンも来られないのだろうと思っていたが、こうして今日いきなり来るというのは驚きだった。
『少し時間が出来たのよ。ただ、少しだから日帰りにする必要があるけど。それでもいい?』
「レモンが来てくれるのなら、それでも問題はない。送り迎えなら俺が出来るし」
ホワイトスターからペルソナ世界に来るには、桐条グループが借りている巨大倉庫のゲートに転移する事になる。
稲羽市から東京までは電車で数時間以上も掛かるものの、ムラタや五飛が来た時のように、俺が影のゲートを使えばいい。
『じゃあ、お願いね。TVの中の世界については、それなりに興味があるし』
レモンにとってもTVの中の世界というのは、初めての現象だ。
それだけに興味深いのだろう。
上手い具合にTVの中の世界の解析が出来たら、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、どの世界でもTVの中の世界を作れたりするかもしれないな。
そんな風に思いつつ、俺は人のいない場所で影のゲートを使って東京に転移するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820