「それで、どうする? 目的のサンプルは入手したし、もう帰るか?」
TVの中の世界から出ると、レモンにそう尋ねる。
レモンは日帰りでホワイトスターに戻ると言っていたので、すぐにでも戻りたいのかと思ったのだが……
「もう少しここにいるわ。この天城屋旅館は温泉も有名何でしょう? なら、少しはその温泉を楽しみたいし」
「それは分かるけど、この場合レモンが温泉に入ったり出来るのか?」
天城屋旅館の温泉は良質な温泉水として有名だ。
実際、天城屋旅館に泊まりに来る者の大半の楽しみは、温泉なのだから。
だが老舗旅館というのも影響してるのか、温泉だけに入りたいという客には対応していない。
そしてレモンはこうして俺達に会いには来たが、泊まっていく訳ではないので天城屋旅館にしてみれば宿泊客ではない。
だとすれば、天城屋旅館側でも温泉に入るのを許可出来ないのではないか。
そう思ったのだが……
「ああ、それについては問題ない。アクセル達がTVの中の世界に行ってる間に、私の方で話をしておいた。温泉に入っても問題ないらしい」
俺の疑問に答えたのは、美鶴。
どうやらその言葉通り、俺達がTVの中の世界に行ってる間に旅館の従業員に話を通していたらしい。
レモンが大広間に入って、俺が堂島と話をしている間にその辺の根回しを頼んでいたのかもしれないが。
にしても、天城屋旅館に泊まって温泉を存分に堪能している俺が思う事ではないが、ホワイトスターには魔力泉のスパがある。
この魔力泉の効能はぶっちゃけ普通の温泉の何倍も凄い。
だというのに、わざわざ普通の温泉に入る必要があるのか?
そう思わないでもなかったが、レモンにしてみれば普通の温泉にも入ってみたいという思いがあったのだろう。
「じゃあ、温泉から出たら送っていくよ」
「あら、今日は一緒に入らないの?」
悪戯っぽい笑みを浮かべて俺を見るレモン。
その言葉に、大広間にいた美鶴以外の者……いつの間にか戻っていた早紀も、一斉に俺に視線を向けてくる。
その気持ちは分からないでもない。
レモンのような極上の美人と一緒に風呂に入っていると言われて、それで気にするなという方が無理だろう。
何しろ堂島まで他の面々と一緒に俺に視線を向けているくらいなのだから、レモンの言葉が一体どれ程の衝撃を与えたのか、予想するのは難しい話ではない。
とはいえ、ここで慌てるような事になれば後々からかわれる原因にもなりかねないので……
「一緒に入りたいところだけど、残念ながら天城屋旅館の温泉は混浴じゃないんだ」
あるいは俺達だけで借り切っているのなら、そういう事も出来るかもしれない。
だが、俺達が泊まった時にいた客達はもう全員が帰れるようになってチェックアウトしているものの、それと入れ替わるようにして何組かの客が泊まっているのは分かる。
まだゴールデンウィークまではそれなりに時間があるが、そのように混雑するよりも少し前だからこそ、ゆっくりと泊まれると思って予約する客がいてもおかしくはない。
そんな訳で、俺が女湯に入るのは色々と問題があるし、同時にレモンが男湯に入るのも問題がある。
「あら、そうなの。残念ね。久しぶりにアクセルとゆっくりした時間を楽しみたかったんだけど。じゃあ、私は1人でゆっくりと温泉に入ってくるから」
そう言い、大広間を出ていくレモン。
その際に着替えとかそういうのを美鶴から受け取ってる辺り、最初から温泉狙いだったのだろう。
大広間からレモンが出ていくと、中に残っていた多くの者の視線が俺に向けられた。
ただし、視線を向けはするがそれ以上何かを言ってきたりといった事はない。
何だかお互いに牽制し合っているというか、押し付け合ってるというか、そんな感じ。
そんな微妙な沈黙の中、不意に手を叩く音が周囲に響く。
「ほら、いつまでぼうっとしている。仕事に戻れ」
美鶴が手を叩き、大広間の中にいた他の面々を我に返らせる。
そういうことが出来るのは、さすがに美鶴だ。
自分よりも年上の部下達を率いているだけの事はある。
……もっとも、美鶴がやったのは問題の先送りでしかない。
今は仕事をしてるので、そちらに集中する必要があるものの、昼休みや仕事が終わった後にはレモンの件で色々と聞かれるのは間違いないだろう。
特に堂島は、俺が美鶴とゆかりの2人を恋人にしてるのを知ってる。
そこに更にレモンが追加されたのだから、それに不満を抱くなという方が無理だった。
日本の常識が染みついてるしな。
堂島の視線を感じつつ、大広間を出る。
シャドウワーカーの面々は仕事に集中するにしても、大広間に俺がいたままではどうしてもこっちを気にしてしまうだろうし。
なら、俺が大広間にいない方がいい。
さて、そうなるとどこに行くか……
「アクセル」
大広間を出た俺にそう声が掛けられる。
それが誰の声なのかは、考えるまでもなく明らかだ。
「どうした? 言っておくが、恋人の数がどうとか、そういう小言は聞きたくないぞ?」
「違う。俺が言いたいのは、少し訓練に付き合って欲しいと頼みたくてな」
「……今からか? 俺は構わないが、堂島は早朝とか夜はともかく、普段は美鶴の側にいる必要があるんじゃないか?」
堂島の仕事の1つが、美鶴達の監視役……もう少し柔らかい言い方をすれば、お目付役だ。
稲羽署でもシャドウワーカーが一体どういう事をしてるのか、その情報については欲しいのだろう。
あるいは緊急で何らかの情報が入った時、稲羽署に情報を流すという意味でも。
「構わん。今は少しでも俺の実力を上げるのを優先する」
「まぁ、堂島がそう言うのなら、俺は構わないが」
上層部からの命令は堂島にとって重要なのは間違いないが、それと同様……あるいはそれ以上に、足立を自分の手で捕らえるのが重要なのだろう。
なら、五飛に訓練を任せるかとも思うが、その五飛は現在ここにはいない。
恐らく山の中で訓練しているのだろう。
1人で訓練をしているのか、ムラタと模擬戦をしてるのか。
その辺は生憎と俺にも分からなかったが。
堂島の訓練は五飛に任せたんだし、本来なら全部五飛にやらせるべきなんだが……シャドウと戦うと考えれば、1人だけじゃなくて何人もと戦っておくのは悪い話じゃない。
「それで、どこで訓練をする? やっぱり山の中か?」
「いや、出来れば何かあった時、すぐに動けるようにしておきいたい」
「となると、TVの中の世界で訓練するのも駄目か」
俺の通信機の映像スクリーンが繋がっているのは、公園だ。
遊具の類もそれなりにあるが、公園だけに相応の広さを持つ。
模擬戦を行うには十分な広さが。
「そうだな。稲羽署から連絡があった時、すぐに対応出来ないのは不味い」
当然の話だが、TVの中の世界には携帯電話とかを使っても繋がらない。
シャドウミラーの通信機なら……どうだろうな。
魔力が関係している濃霧があるのを考えると、シャドウミラーの通信機でもTVの中の世界では通じないと思う。
とにかく堂島としては、稲羽署から連絡があった時にすぐ対応出来ないのは不味いと。
そして稲羽署からの連絡を考えると、シャドウワーカーとの繋ぎの役割もある。
そうなると天城屋旅館から離れる訳にもいかないのか。
けど、そうなるとどこで訓練をするかだな。
堂島が刑事なのは天城屋旅館の従業員も知っている。
そんな堂島が日本刀を手に模擬戦をしているのを見られれば、一体どういう事かと騒動になってもおかしくはなかった。
そうならないようにするには、天城屋旅館の従業員に模擬戦をしてるのを見られる訳にはいかない。
つまり、天城屋旅館の側で訓練をやるが、天城屋旅館の従業員に訓練を見られてはいけないという……それ、どんな無茶だ?
「大人しく山の中で訓練しないか? 何かあっても影のゲートを使えば、すぐに天城屋旅館に戻ってこられるんだし」
「駐車場で訓練をするのはどうだ? 天城屋旅館の駐車場は少し離れた場所にある」
「いや、それを本気で言ってるのか? 駐車場で模擬戦をやった場合、駐車場にある車に傷が付いたりするかもしれないぞ?」
車というのは、少し傷が付いただけで相応の修理費用が必要となる。
桐条グループのブラックカードを持っている以上、その辺はどうとでも対処出来るが……だからといって、意味のない金を支払うのは桐条グループに悪い。
これが例えばTVの中の世界から出て来たシャドウが暴れて、それを倒す為に、あるいはシャドウに襲撃された誰かを助ける為に戦い、その影響で駐車場の車に被害が出たのなら、その修理費用を払うのは何も問題ないだろう。
だが、模擬戦をやった結果として石が飛び、それによって車が傷付けられたとかはちょっと。
今の天城屋旅館には俺達以外にも少ないが客がいる筈で、その客の車とかがあってもおかしくはないし。
また、身内ということでシャドウワーカーの大きな車もあるが、それだって意味もなく傷付けられるのはどうかと思う。
「車を傷付けた場合、堂島か稲羽署に請求書が行くと思うけど、大丈夫か?」
「う……」
その言葉に、堂島は何も言えなくなる。
堂島の給料がどのくらいなのかは分からないが、それでも決して裕福という訳ではないだろう。
いわゆる普通の暮らしといったところか。
それだけに堂島にもある程度の余裕はあるかもしれないが、天城屋旅館に泊まるということは裕福な者達が多い。つまり高級車に乗っている可能性が大きく、高級車の修理代ともなれば……うん、堂島が言葉に詰まったのも理解出来る。
あるいは稲羽署に請求書が送られれば、仕事中に一体何をしていたのかという事になる。
堂島にとって、どちらも避けたい事なのは間違いないだろう。
「分かって貰えたようだな。なら、山の中に行くぞ。それが嫌なら訓練は中止だ」
「……分かった」
不承不承といった様子だったが、堂島は俺の言葉に頷くのだった。
「まぁ、ここなら問題ないだろ」
影のゲートを使って転移した山の中。
ある程度の広さのある場所で、堂島の持つ日本刀を振るっても木にぶつかったりはしないだろう場所。
もっとも木々の側で日本刀を振ったりすれば、木々にぶつかって動きは止まるだろうが。
だが、堂島も一応剣道の心得はあるみたいだし、素人のような事はしないと思う。
個人的には、寧ろ剣道の常識に囚われず、周囲にある木々を利用して行動して欲しいと思うのだが。
TVの中の世界が具体的にどういう場所かは分からない。
だが俺達の出る場所が公園だとすれば、濃霧の中には普通に自然とかがあってもおかしくはない。
そういう場所でシャドウと遭遇した時、対処する為に周囲の環境を利用するのはシャドウと戦う上で大きな意味を持つ。
そのような戦闘に慣れさせておくというのは、必須事項だった。
いざ足立と遭遇しても、行儀のいい剣道で捕らえられるとは到底思えないし。
「さて……来い」
そう言い、俺は空間倉庫からゲイ・ボルクを取り出して構える。
「それは一体……?」
「俺が生身の時に使う槍だ。堂島も武器を持った相手との戦いに慣れた方がいいだろう?」
深紅の槍は、見る者の目を否応なく惹き付けるだけの怪しげな力があった。
ゲイ・ボルクを手に、俺は堂島に向かって口を開く。
「来い。足立を捕らえる為に強くなりたいんだろう? シャドウと戦って身を守るくらいの能力は最低限身に付けてもらうぞ。もっとも……TVの中の世界に来ないで、現実世界で待ってるのなら、それはそれでいいけどな」
「くっ……うおおおおおっ!」
自分の気合いを入れるかのような雄叫びを発しつつ、堂島は日本刀を手に俺の方に向かってくる。
だが、その動きはあくまでも素人……いや、魔力や気による身体強化の類もない以上、俺から見れば遅いとしか言いようがないものだ。
とはいえ、元々俺と堂島の間にある実力差は圧倒的である以上、堂島が攻撃をするよりも前に機先を制するような事は出来ない。
また、堂島の持つ日本刀とゲイ・ボルクとの間にある差もまた、決定的なまでに大きいので、ゲイ・ボルクで日本刀を攻撃するような事は出来ない。
もしそのようなことをすれば、日本刀は呆気なく折れて……もしくは砕けてしまうだろう。
そもそも堂島が持ってる日本刀は、刀鍛冶の本職でもない者が打った日本刀だ。
それなりに使えはするのだろうが、それでも結局のところ名刀でも妖刀でもない、ただの数打ちでしかない。
そんな量産品が、宝具とぶつかりあってただですむ筈もない。
そんな訳で、俺は自分に向かって振り下ろされる日本刀の一撃を回避するとゲイ・ボルクの柄で堂島の足を掬い上げる。
「うおっ!」
「日本刀を持ったまま転ぶのは危険だぞ」
そう言うものの、転ばせたのは俺だ。
とはいえ、日本刀に意識を集中させすぎており、俺よりも寧ろ日本刀を気にしている今の状況は色々と問題なのも事実。
それに上半身を狙う剣道と違い、実戦では足を狙うというのも普通にあるので、その辺にも慣れて貰う必要があった。
「ほら、続けるぞ。来い」
その言葉に、堂島は日本刀を手に立ち上がるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820