転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3636話

「堂島が戻ってきたら、鳴上の件は知らせた方がいいと思うか?」

 

 ジュネスの防犯カメラに映った、鳴上とその友人……早紀の言う花ちゃん、もとい花村陽介と里中千枝を合わせた合計3人。

 この3人について、堂島に知らせた方がいいのかと疑問に思うが……

 

「話すのは構わんが、今回の件について考えると堂島も厳しくは言えないのではないか?」

 

 美鶴の言葉に、それもそうかと頷く。

 現在のジュネスに行くなと言うのは、捜査情報を漏らすようなものだ。

 勿論、天城屋旅館に避難してきていたり、足立の件が関わっているという事で、その辺は今更という気がしないでもなかったが。

 

「菜々子は心配だが、鳴上は高校生だけに、ある程度対処が出来るか」

 

 そう言うのは、鳴上がこの事件の主人公であるのではないかと、そんな疑いがまだ俺の中にあった為だ。

 これで鳴上がペルソナ使いだったら、それで完璧だったんだけどな。

 

「ああ、堂島と言えば……菜々子はどうするんだ?」

 

 現状、堂島一家の中で一番危険なのは、やはり小学生の菜々子だろう。

 朝は早紀がシャドウワーカーの面々に護衛をされながら小学校まで送った筈だが、帰りはどうするのか。

 そんな俺の疑問に答えたのは、早紀だった。

 

「堂島さんが稲羽署での用事を終えたら、小学校に回って連れてくるって言ってましたよ」

 

 どうやらそういう事らしい。

 堂島が迎えに行くのなら、菜々子の方についても心配はいらないだろう。

 もっとも、足立もその辺については考えているのだろうし、菜々子の前に姿を現す事はない……と思う。

 とはいえ、送り迎えはともかく普段の護衛をどうするのかが問題だな。

 やっぱり以前考えたようにペットロボットとかそういうのを作った方がいいのかもしれないが。

 

「なら安心だな。……そうなると、今のところやる事はないか」

 

 堂島が忙しいのなら、俺が暇潰しも兼ねて菜々子を迎えに行ってもよかった。

 とはいえ、同性の早紀であったり父親の堂島が迎えに行くのはともかく、俺が迎えに行くのは……場合によっては不審者扱いされそうな気がしないでもない。

 ただ、稲羽市は田舎なので東京とかよりもその辺は緩そうな気がする。

 だからといって試したいかと言われれば、それは否だが。

 

「ちょっとジュネスにでも顔を出してくるか」

「鳴上達の様子を見に行くのか?」

「それもあるけど、ついでだな。ホットドッグを買ってこようと思って」

「……はぁ」

 

 俺の言葉に、美鶴の口からは半ば呆れが込められた溜息が漏れる。

 まさかこの状況で俺がジュネスの屋上にあるフードコートに行くとは思ってもいなかったのだろう。

 とはいえ、あのフードコートで売ってるホットドッグは、ちょっと高めの値段ではあるものの、その値段に相応しい味なのは間違いない。

 癖になるというとはちょっと違うが、かなりの美味さを持つのは間違いない。

 ゴーヤクレープではなく、このホットドッグが色んな世界に広がってくれればと思うくらいには。

 ……だからといって、あのホットドッグを売ってる屋台の店主をスカウトしようとまでは思わない。

 確かにホットドッグはかなり美味いが、だからといってわざわざシャドウミラーの人員としてスカウトしたい程かと言えば、それは否だ。

 あのホットドッグが美味いのは間違いないものの、それはあくまでも値段相応の美味さでしかない。

 例えばこれが、200円くらいであのくらいのホットドッグの美味さであったり、今の値段でも1万円払っても惜しくないといったような値段のホットドッグであれば、即座にスカウトをしただろう。

 あのホットドッグが美味いのは間違いないが、良くも悪くも値段相応の味でしかないのも事実。

 勿論これは、あのホットドッグを貶している訳ではない。

 実際に美味いのは間違いないのだから。

 だが、それはあくまでも常識の範囲内の美味さでしかなく、わざわざシャドウミラーにスカウトをしたいとは思わない。

 これが……そう、例えば以前ナデシコ世界で食べたフライドポテトだったら、話は別だが。

 四葉ですら再現出来ず、中毒性があるのではないかと思えるくらいに美味いフライドポテト。

 あのフライドポテトを作れるような者なら、シャドウミラーにスカウトしたいとは思うが。

 ちなみにナデシコ世界の方でフライドポテトを売っていた店に接触はしたものの、断られたという話を報告書か何かで見たな。

 

「フードコートなら今の時間は高校生とかも集まってるだろうし、何らかの噂話を聞いたり出来るかもしれないしな」

 

 ホットドッグを買って食べるのがメインの目的なのは間違いないが、それで情報収集も出来るのなら、それに越した事はない。

 もっとも、情報を集めるという意味ではシャドウワーカーの面々もそれなりに街中に出ているので、その中の誰かがフードコートにいるという可能性は否定出来なかったが。

 それでも、それならそれで、より詳細な情報を入手出来るかもしれないのは大きい。

 

「分かった。行ってくるといい。確かにあのホットドッグは美味かったしな」

 

 結局美鶴はそう言う。

 ついでにシャドウワーカーの夜食用に幾つか買ってくるように言われ、俺はジュネスに向かうのだった。

 

 

 

 

 

「お客さん、この前もだけど……今日も買うねぇ」

 

 ジュネスの屋上にあるフードコート。

 そこで俺はホットドッグの屋台で大量にホットドッグを購入する。

 屋台の店主はさすがにあれだけ大量に買った俺の事を覚えていたのか、そう声を掛けてくる。

 俺と話しながらもホットドッグを作る手を止めない辺り、さすがだ。

 

「この店のホットドッグは美味かったからな。……今日は随分と視線を集めてるけど」

「もう学生さんが集まってくる時間だし、しょうがないですよ。うちのホットドッグは、基本的に学生さんにはちょっと高いですし」

「だろうな」

 

 高校生の小遣いがどのくらいなのかは分からない。

 ただ、月光館学園に通っていた時、クラスメイトから1ヶ月4000円くらいだという話を聞いた覚えがある。

 だとすれば、4個この屋台のホットドッグを食べれば、それで小遣いを使い果たしてしまう事になる。

 勿論、小遣いが足りないのなら早紀のようにバイトをすればいいだけなのだが。

 

「だから、こうしてホットドッグを大量に買うお客さんは、高校生達にしてみれば憧れというか、妬ましいというか、羨ましいというか……とにかくそんな感じなんですよ」

「それは喜ぶべきなのか?」

「さぁ? その辺はお客さんの考え方次第じゃ? ただ、このフードコートをよく利用する八十神高等学校の生徒には妙な絡み方をしてくる不良はあまりいないので、騒動になったりは……あ、でも……」

 

 話している途中で少し言葉に詰まる男に、話の先を促す。

 すると男は、少し困った様子で、他の相手に聞こえないように口を開く。

 

「その、ですね。俺も話を聞いただけで実際には知らないんですが、八十神高等学校にはとんでもなく強い不良が1人いるらしいんですよ。それこそ1人で暴走族を壊滅させるだけの実力があるとかなんとか」

「へぇ」

 

 その説明を聞いて俺が思い浮かべたのは、荒垣だ。

 荒垣もまた、タルタロスの一件に関わっている時、不良が集まるポートアイランド駅の近くで名前を知られていた。

 それなりに喧嘩自慢だった不良が、頭突きだけで気絶させられたとか、そういう話も聞いている。

 荒垣のパターンをなぞるとすれば、その不良は荒垣枠……もしくはそこまで律儀ではなくても、この事件の原作に出て来る登場人物の可能性があった。

 それなら荒垣を仲間にした俺にしてみれば、その不良ともそれなりに友好的な関係を築けるかもしれないな。

 もっとも、不良だからというだけで必ずしもそういう関係を築ける訳ではないのは、今日の東京での一件を考えれば明らかだ。

 ……あるいは、あの時に金を奪った後で解放したりせず、俺の指示に従うようにしておけば、もう少し話は違ったりしたのか?

 

「えっと、その……気を付けて下さいね?」

 

 何故か少し困ったような、焦ったような様子でそう言う男。

 何か察知されたか?

 そんな風に思いつつ、料金を支払って大量のホットドッグを受け取る。

 お土産用はともかくとして、自分用のはここで食べてもいいよなと考え、フードコートの中を見るが、残念ながら空いている席はどこにもない。

 八十神高等学校の生徒がメインだが、それ以外の高校の制服を着ている学生も少数ながらいて、ハンバーガーだったり、牛串だったり、たこ焼きだったり、お好み焼きだったりを食べていた。

 このフードコートは、学生達にとって丁度いい溜まり場なんだろうな。

 ファーストフード店とかがあれば、そっちに行く学生もいるんだろうが。

 ともあれ、そんな学生達のせいで俺が座る場所はない。

 どこかの席に同席させて貰えばいいのかもしれないが、友人同士で座ってる場所に割り込むのはちょっとな。

 それに俺が大量にホットドッグを買ったのは、多くの者に見られている。

 そうである以上、その件で何か妙な突っ込みを受けたりとか、そういう感じにもなりかねないし。

 しょうがないので、フードコートで食べるのは諦める。

 フードコートで食べながら鳴上達を捜そうかとも思ったのだが、こうして見る限りではフードコートにはいないみたいだしな。

 ホットドッグを食べてる間に来る可能性もあったが、どうしても鳴上達と接触をしたい訳ではない。

 なら、仕方がないのでフードコートを出るとする。

 どこか他の場所……山にでも行って、川を見ながら食べるのもいいかもしれないな。

 そう考えてジュネスの中に入ると……

 

「あ」

 

 見覚えのある人物が、俺を見てそう声を上げる。

 誰だったかと一瞬迷ったものの、やがて以前稲羽署で見た刑事の1人だと思い出す。

 いつ足立がTVの世界から出て来るか分からない為に、夜だけではなく日中も刑事がジュネスに来ているというのは聞いていたから、この刑事がいるのもその一環だろう。

 

「アクセルだったか。ここで一体何を?」

「これを買いにな」

 

 そう言い、ホットドッグが大量に入っている袋を見せる。

 ホットドッグの個数にはまだ結構余裕があるし……

 

「食うか?」

 

 袋から取り出したホットドッグを1個、男に渡す。

 

「これは……」

 

 恐らく男も、このホットドッグの値段を知ってるのだろう。

 そんなホットドッグを複数購入した俺の様子に驚いた様子を見せる。

 この男が足立を捜してジュネスの中を歩き回っているのなら、当然だがフードコートに行ったりもしてる筈だ。

 実際今こうしてフードコートから出たばかりの俺と遭遇したのだから。

 それだけに、ホットドッグに興味を持っていてもおかしくはないが、それを購入出来るだけの懐の余裕はなかったのかもしれない。

 ……懐で思い出したが、足立が毎晩のようにジュネスから食料やら何やらを盗んでいるが、その分の代金ってどうなってるんだろうな。

 稲羽署の方で払っているのか、ジュネスの持ち出しなのか。

 何となく前者のような気がする。

 足立の一件もシャドウ関係である以上、警視庁から捜査の為の資金とかが送られてきてもおかしくはないし。

 桐条グループから金が出るという事は多分ないと思うけど。

 

「頑張ってくれ」

 

 ホットドッグを受け取った刑事をその場に残し、その場から立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

「んー、やっぱりこういう山の中でホットドッグを、しかも出来たてを食べるのは美味いな」

 

 正確には出来てから少し時間が経っているので、出来たてとまでは言えないだろう。

 だが、まだ温かいのは事実。

 特にソーセージが温かいのがいい。

 ソーセージの中には脂身も入っているので、冷たいソーセージだとそれが固まっていまいち美味くないんだよな。

 世の中には色々な嗜好を持つ者がいるので、中には冷たいソーセージの方を好きな奴もいるかもしれないが。

 だが、俺はパリッとした食感のソーセージが楽しめる、温かい方が好きだ。

 

「お、魚だ」

 

 川を眺めながらホットドッグを食べていると、水の中を魚が泳いでいるのを見て取れる。

 獲るか?

 一瞬そう思ったものの、今はホットドッグを食べていたい。

 そうして楽しい一時を楽しんでいると、不意にかなり離れた場所で強力な気を発する何かを感じる。

 ムラタか五飛が訓練でもしてるのだろう。

 温泉に入ったばかりだというのに……いや、でもあれからもう結構な時間が経つか。

 だとすれば、温泉から上がってやる事もなく、また訓練を始めてもおかしくはない。

 ……早いところ、TVの中の世界を探索出来るようにならないと、ムラタと五飛の行動が次第に派手になっていきそうだな。

 元々がシャドウという、今まで自分達が戦った事のない相手との戦いを求めて、ペルソナ世界の援軍に名乗りを上げた者達だ。

 ここで下手に時間を掛けるような事になったら、それこそ妙な騒動を起こしたりしかねない。

 そういうのは嫌なので、出来れば遠慮したい訳で……レモンには出来るだけ早く濃霧を何とかして欲しいと思いながら、ホットドッグを食べるのだった。

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