転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3641話

 映像スクリーンの中に入ると、そこはTVの中の世界で既に見慣れた感のある公園だった。

 そして公園には薄らと、公園の周囲には濃霧があるのも変わらない。

 もしこれがTVの中の世界ではなく自然現象だとしたら、時間が経って暖かくなれば霧も消えるだろう。

 だが、生憎とここは霧の中の世界。

 この濃霧は時間が経っても消えないのは、今まで色々な時間にTVの中の世界に来ている事から判明している。

 

「さて。……準備はいいな?」

 

 公園にいる面々に視線を向け、そう尋ねる。

 公園にいるのは、俺、レモン、美鶴、ムラタ、五飛、堂島の5人。

 その堂島はTVの中に入るのに必要な魔力や気を持っていないので、五飛が抱えて中に入ってきたが、さすがにもう降りている。

 

「問題ない」

 

 即座にそう言ったのは、ムラタ。

 ……これでようやくシャドウと戦える事になると、そう期待しての言葉だろう。

 他の面々もその言葉に不満はない様子だった。

 そんな面々を確認してから、俺はスーツケースの仮面を渡す。

 

「これを被ってくれ。レモンが作った、濃霧を無効化する仮面だ」

「……本当にこんなのであの濃霧をどうにか出来るのか?」

 

 疑わしげに言ったのは、堂島。

 そして堂島1人だけがそんな風に言っていた。

 それ以外の面々は仮面の外見に多少疑問を抱くところはあったものの、それでも堂島のように怪しむ様子はない。

 

「え? おい?」

 

 自分以外の者が何も言わない事を疑問に思ったのか、堂島が戸惑う。

 この辺はレモンという人物を知ってるかどうかの違いだろう。

 俺は勿論、ムラタや五飛はレモンが万能の天才であるというのを、実際に自分の目で確認している。

 美鶴にとってはレモンはどちらかと言えば自分と同じ恋人の1人という認識だったが、それでもホワイトスターに来た時に話を聞いていればレモンの実力について理解出来るだろう。

 だが……堂島は俺達とは全く何の関係もない者なのだ。

 そうである以上、レモンの事は以前ちょっと来た時に会った事くらいしかない。

 ましてや、その美貌を考えれば能力云々よりも、俺の恋人という方を強く認識してもおかしくはなかった。

 

「安心しろ。レモンの作った物なら安心して使える。それは他の連中の様子を見れば明らかだろう?」

「そ、それは……」

 

 実際には、レモン曰くこの仮面は作ったばかりで実験はしていないという話だったが……それでもレモンが問題ないと判断したのなら、多分問題ないだろう。

 

「ほら」

 

 そう言い、俺は堂島に仮面を渡す。

 外見が鬼か何かをモチーフにしたような形なのもあってか、堂島は少し困った様子を見せる。

 コスプレとかハロウィンとかそういうのを経験していれば、堂島もこのくらいは特に気にしないんだろうが……生真面目な堂島の性格を考えると、そういうのはした経験がなくてもおかしくはない。

 仮面を渡された堂島が戸惑っている間に他の面々にも仮面を渡していく。

 そして全員に行き渡ったところで、残っている仮面とスーツケースは空間倉庫に収納する。

 

「さて、後はこれを……」

 

 少しだけ心配だったのは、この仮面が培養された恐獣の骨で作られている事だろう。

 恐獣の素材はオーラバトラーの材料となるのだが、俺がオーラバトラーに乗った場合、オーラ力……いわゆる気ではなく魔力で身体を構成していたり、何よりその魔力量によってオーラバトラーの動力炉たるオーラコンバータが爆発したのを思い出した為だ。

 オーラバトラーの素材として使われている恐獣の骨である以上、同じように俺の魔力で爆発とかしたりしないだろうな?

 これが例えば普通の爆弾とかなら、物理攻撃を無効化する俺に効果はない。

 だが、魔力によって爆発したとなると、俺にダメージを与えるのに十分だ。

 そうならないように注意しながら……本当にいざとなったら即座に仮面を外そうと考えながら仮面を被ったが……

 

「おお」

 

 特に何も爆発の類が起きなかった事に安堵する。

 もっとも、今はまだ仮面を被ったばかりだ。

 長時間被り続けていたらどうなるかは、ちょっと分からない。

 それでも取りあえずは安心だろうと思いながら周囲を見ると……

 

「これは、凄いな」

 

 公園には周囲の濃霧程ではないにしろ、霧があった。

 だが、仮面を被った状態で見ると公園に霧は一切ない。

 普通の公園のように思える。

 そして……問題の公園の周囲に存在する濃霧は、何も知らないでこの光景を見れば、そこに濃霧があるとは思えない程、公園の周囲には何も存在しなかった。

 何かの間違いではないかと、一旦仮面を脱いでみるも、そこには当然のように濃霧が存在する。

 仮面の性能は予定通り、か。

 他の面々はどうかと思って周囲を見るが、俺と同じように驚いている者達が多い。

 特に先程レモンの言葉を完全に信じてはいなかった堂島は、何度も仮面を被ったり脱いだりを繰り返してる。

 ……うん。この仮面の効果は間違いなく発揮されているものの、それを被ってるのは……お世辞にもこれから戦いに赴くとは思えない。

 鬼を模したかのような仮面だけに、やっぱりどこかコスプレ感があるんだよな。

 レモン、美鶴、ムラタ、五飛、堂島……全員が被っている仮面には色々と思うところがあった。

 あ、でもそうだな。ムラタの場合は強面の顔が上半分だけとはいえ隠れているので、そう考えるとムラタの迫力は多少は減ったか?

 まぁ、ムラタの持つ雰囲気からすると、怖い思いをするのは間違いないのだが。

 

「全員、問題なく仮面の性能は発揮されてるな?」

 

 一応、そう確認する。

 俺が問題なく使えているし、素人の堂島も同様なのを思えば、わざわざ確認する必要はないと思うが、それでも念の為だ。

 レモンが作った仮面である以上、問題はないとは思う。

 だが、場合によっては初期不良とかそういうのがある可能性はあるだろうし。

 それを確認する意味で聞いたのだが、誰も仮面の不調を訴える者はいない。

 

「どうやら問題ないみたいだな。……となると、早速これから探索を始めるか」

 

 そう言い、俺は空間倉庫に預かっていた武器を取り出すと、レモンには鞭を、美鶴には細剣というかレイピアを、ムラタと堂島には日本刀を、五飛には青竜刀を渡す。

 また、俺の武器は当然のようにゲイ・ボルク。

 

「ちょっとアクセル? 何で私の武器は鞭なのかしら?」

 

 鞭を渡されたレモンが、不満そうに言ってくる。

 女王様系……とか言ったら怒るよな?

 いやまぁ、鞭を選んだ理由はそれだけではないのだが。

 

「近距離で戦えたり、遠距離で戦える者はいるけど、中距離で戦える者はいない。なら、レモンにそれをやって貰おうと思ってな」

 

 近距離は日本刀やら青竜刀やらレイピアやら、あるいは俺のゲイ・ボルクもそうだが、問題なく対応出来る。

 遠距離も魔法や神鳴流があるので対処は可能だ。

 しかし、これが中距離となると……微妙なところだ。

 まぁ、槍も中距離に入ると言えば入るのかもしれないが。

 それでも鞭と比べると、どうしても間合いが狭い。

 そう説明すると、レモンは難しい表情を浮かべながらも素直に鞭を受け取る。

 

「アクセルの言いたい事は分かったけど、鞭なんて殆ど使った事はないわよ?」

 

 殆どという事は、使用した事はあるのだろう。

 具体的にいつ使った事があるのかは……うん、聞くのがちょっと怖いのでやめておこう。

 取りあえず俺との夜の行為で使った事がないのは間違いないんだが。

 そうなると、技術班の中で馬鹿をやった奴に対してのお仕置きとか?

 ……何だか容易に想像出来てしまう辺り、ちょっと怖いな。

 そんな風に思いつつ、鞭を手に少し離れるレモンを見る。

 俺達に当たらない場所に移動すると、レモンは早速鞭の練習を始めた。

 鞭と言われて真っ先に思い浮かぶのは、あやかが仮契約のカードで出すアーティファクトだ。

 もっともあやかの鞭は普通の鞭ではなく、9本に分かれた鞭で非常に扱いが難しいのだが。

 それでも使いこなす辺りに、あやかの実力が窺える。

 レモンもそう遠くないうちに使いこなせると思うんだが。

 そう考えていると、俺の予想が当たったのか10分もしないうちに鞭をそれなりに使いこなし始める。

 あくまでも使いこなし始めたのであって、完璧に使いこなしている訳ではない。

 それでもある程度の敵を相手にしても、それが弱い相手ならどうとでもなるだろうと思えるくらいには使えていた。

 うん、やっぱりレモンって万能の天才という表現が相応しいよな。

 俺が知ってる限りでは、鞭……それも乗馬鞭のような類ではなく、現在レモンが持っているような武器として使える鞭というのは、それなりにであっても使いこなすのは簡単ではない。

 そんな鞭を10分かそこらである程度使いこなせるというのは、レモンの才能を示していた。

 

「大体こんな感じね。……じゃあ、行きましょうか」

 

 鞭を手にそう言って笑うレモンは、女王様……まぁ、これは考えない方がいい。

 頭部の上を覆っている仮面ではなく、もっとそれらしい……それこそSMの女王様が被るようなマスクとかを被っていたら、もしかしたらシャドウでなくても逃げ出すんじゃないか?

 

「アクセル? どうしたの? 濃霧の中を進むんじゃないの?」

「ん? ああ、悪い。濃霧をどういう風に探索したらいいのかをちょっと考えていてな。……ちなみにレモンはどう思う? この仮面を作った制作者として、何か意見があるなら聞いておくが」

 

 少し誤魔化す意味も込めて……同時に、もしかしたら濃霧について調べて何かを知ってるのではないかと思い、そう尋ねて見る。

 だが、レモンはそんな俺の言葉に首を横に振る。

 

「残念だけど、アクセルが期待するようなことはないわね。寧ろシャドウがいる場所なら、私よりもアクセルや美鶴の方が経験があるでしょう?」

 

 そう言えば、レモンはシャドウと戦った事はないのか。

 なら、俺や美鶴の方がここについて知ってる事があると言われてもおかしくはない。

 おかしくはないが、だからといってすぐにどうといったように思い浮かぶ事はなかった。

 

「美鶴、どう思う?」

「タルタロスならともかく、TVの中の世界となるとな……」

 

 美鶴の言葉に、それもそうかと納得する。

 実際、このTVの中の世界にシャドウがいるのは刈り取る者のお陰で確定はしているものの、シャドウがいるからといってそこがタルタロスと同じとは限らない。

 つまり、このTVの中がどのような場所なのかは、実際に調べてみる必要があった。

 ……スライムが使えれば便利なんだけどな。

 今は濃霧の類は全くなく、普通に見る事が出来ているが、それはあくまでもレモンの作った仮面があるからだ。

 もし仮面がなければ、相変わらず濃霧で周囲の状況を確認は出来ないだろう。

 つまり、濃霧がまだある以上、スライムは使えない。

 

「そうなると、やっぱり実際に行動してみるのが一番手っ取り早いか。……行くぞ。堂島はくれぐれも慎重にな」

 

 この中で一番弱い……それもちょっとやそっとの差ではなく、圧倒的なまでに弱い堂島だけに、もしシャドウと遭遇した場合は即座に殺されてもおかしくはない。

 俺達がいる以上、そして何気に面倒見のいい五飛がいる以上、そのような事になる可能性は非常に低いものの、それでも100%安全という訳ではない。

 そうである以上、堂島にもしっかりとそれを自覚して貰う必要があった。

 やっぱり堂島をTVの中の世界に連れてくるのは少し早かったかもしれないな。

 そう思いつつ、俺達はいよいよ公園の外に出る。

 最初は少し慎重に……何が起きても即座に反応出来るようにしながら。

 だが、公園の外に出て濃霧のあるだろう場所に入っても、特に何も起きる様子はない。

 他の面々も同じく公園の外に出て……こちらも俺と同様に特に何も起こったりはしなかった。

 恐らくはシャドウが生み出しているのだろう濃霧だけに、もしかしたら何かあるかもしれないと思ったんだけどな。

 最終的にはムラタと五飛の2人が先頭、その次が俺で堂島、レモン、美鶴といった順番で進む事になった。

 ムラタと五飛は言うまでもなく戦闘意欲の面で。

 俺はゲイ・ボルクを持ってるので、いざという時の援護。

 中央の堂島は護衛対象として。……中央で日本刀が武器なので、ある意味役立たずなんだが、今はこのTVの中の世界がどういう場所かをはっきりと把握する必要があるから仕方がない。

 堂島の後ろのレモンは、鞭を持っているので中距離からの攻撃が可能なのでその場所に。

 そして最後の美鶴は、レイピアを持ってるので後方から攻撃された時の援護の為に。

 成り行きで決めた順番だが、そんなに悪くないとは思う。

 

「ついでに……」

 

 パチン、と指を鳴らして手の一部を白炎にして、そこから炎獣を生み出す。

 

「うおっ!」

 

 突然生み出された炎獣……犬の炎獣を見て、堂島が驚きの声を発する。

 

「アクセル、これは一体……?」

「炎獣だ。……堂島がゲームに詳しければ召喚魔法とかに近いとか説明出来るんだけどな。分かりやすく言えば、俺の魔法で生み出された疑似生命体だ。それなりに賢くて強いから、護衛としてはうってつけだな。今日は堂島はその炎獣に守って貰え」

 

 そう言う俺の言葉に、堂島は微妙な表情を浮かべるのだった。

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