転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3647話

「本当にジュネスだな」

 

 クマによってTVの中の世界を脱出した俺は、周囲の様子を見てそう呟く。

 とはいえ、ジュネスには何度か来ているものの、家電売り場は来た事がなかったので、実はここはジュネスではありませんと言われれば信じてしまいそうになるが。

 ……ジュネスのテーマソングが聞こえてくるので、ここがジュネスではないとは思わないけど。

 

「このTVから入ってきたのか」

 

 堂島が俺達の出て来たTVを見てそう言う。

 そのTVは家電売り場にあってもおかしくはないような、かなり大きなTVだ。

 俺達がTVの中の世界に入る時に使った映像スクリーンと同じくらいの大きさか?

 

「誰も見てなくてよかったな。というか、TVはそれなりに売れる商品なんだし、こういう人の来ないところじゃなくて、もっと目立つところにあってもいいと思うんだが。……まぁ、そのお陰でこうして出て来ても目立たないんだろうが」

 

 そういう風に言いながら、周囲を見る、

 当然ながら、ここにいるのはスタジオにいた面々……なのだが、クマはここにはいない。

 

「クマはこっちに来ないのか?」

「あ、はい。何でも向こうの世界で生まれたからって」

 

 花村の言葉に、クマがTVの中の世界から出られないのか、それとも出る事は出来るのだが、ただ単に出ないだけなのかはちょっと分からない。

 分からないものの、クマがいないのは間違いない。

 

「そうか。……それで、一応確認するがTVの中の世界に入ったのはお前達2人だけなんだな?」

 

 もしかしたら、本当にもしかしたらだが、実は鳴上と花村だけではなく、他にも一緒に入った奴がいておかしくはない。

 あるいは、TVの中の世界には興味があるものの、実際に中に入るのは怖いと思うような者とか。

 いや、後者は俺達が出て来ても誰もいないんだし、心配はないか。

 あるいはいたとしても、鳴上達が戻って来なかったので危険だと判断してここから逃げたのか。

 

「はい。俺達だけです。……あ、でもその、今回は俺達だけですけど、昨日TVの中に入った時は里中がいました」

「里中? 里中千枝か?」

 

 花村の口から予想外の言葉が出て来た事に驚く。

 里中千枝というのは、俺が雪子と歩いている時にナンパしてると勘違いして助けに入った女だ。

 正義感が強いというか、無鉄砲というか。

 あ、でも里中と花村達は仲が良いと聞いた事があったような?

 だとすれば、里中がTVの中の世界について知っていてもおかしくはない、のか?

 ……もしかして、そこから雪子にTVの中の世界について広まったりしてないだろうな?

 それはそれで微妙に面倒な事になりそうな気がする。

 

「はい、そうですけど。……何で知ってるんです?」

 

 花村の方も、俺が里中と知り合いだったのには驚いたのか、そう尋ねてくる。

 

「この前、雪子と一緒に道を歩いていたら里中がナンパと勘違いしてな」

「あ……ああああああああっ! じゃあ、あんたが天城越えをしそうになっているっていう、男!」

 

 俺を指さし、叫ぶ花村。

 いや、客が俺達以外にいないとはいえ、そんな風にここで叫ばれると困るんだが。

 というか、ペルソナ関連、シャドウ関連よりも天城越えの方に驚くってのはどうなんだ?

 

「アクセルだものね」

「アクセルだからな」

 

 レモンと美鶴は何故か特に何も感じておらず、またかといった様子を見せている。

 いや、別に俺は雪子を口説いてる訳じゃないぞ?

 そして堂島の方は、ジト目を向けていた。

 

「アクセル、一応言っておくが、この国では未成年とそういう行為をするのは禁じられていて、罪となるんだが」

「警察らしい意見、ごくろうさん。けど、別に俺はただちょっと雪子と話しただけだぞ?」

「……ハーレムを作ってる男がそんな事を言って、信じられると思うか?」

 

 堂島のその言葉に、反論するのがちょっと難しい。

 そもそも俺の夜の生活を知れば、それこそそっち方面での説得力はないだろう。

 

「ハーレムって、うわ……マジか……さすが大センセー」

 

 何故か花村が尊敬の視線を俺に向けてくる。

 まぁ、高校生なんだから女に興味を持つのは当然だろうけど。

 

「その件はともかくとして、今はあまり人目がないとはいえ、いつまでもここにいる訳にもいかないだろう? 稲羽署か天城屋旅館に戻って話さないか?」

 

 このままここで話していても分が悪いと判断し、そう言う。

 とはいえ、そういう風に言ったのは現状が不利だからというだけではない。

 ここがジュネスの家電売り場である以上、いつ他の客がやって来てもおかしくはないのだから。

 

「そうだな。どっちがいい?」

 

 堂島が俺の言葉に頷き、鳴上と花村に尋ねる。

 普通なら、こういう時は稲羽署で事情を聞く事になる。

 しかし、ペルソナやシャドウといった事が関係している以上、その専門家であるシャドウワーカーの拠点である天城屋旅館で話を聞いた方が手っ取り早いのも事実。

 その場合は、堂島がそこでされた話を上層部に提出したりといった感じになると思う。

 

「天城屋旅館で!」

 

 真っ先にそう言ったのは花村。

 花村にしてみれば、稲羽署で事情を聞かれるというのは色々と問題だろう。

 ましてや、ジュネスの店長の息子という立場もある。

 場合によっては、それによって悪い噂が立ってジュネスの経営に悪影響を与える可能性も否定は出来なかった。

 花村がそこまで考えているのかどうかは、俺にも分からない。

 だが、それでも稲羽署に……警察署に行きたくないと思うのは、高校生としては当然だろう。

 しかも花村達にはTVの中の世界に入って、ペルソナを使って戦っていたという後ろめたさもあるし。

 

「じゃあ、アクセル。天城屋旅館に行ったら私を送っていってね。早くクマから貰ったこの眼鏡を解析してみたいし。……上手くいけば……」

 

 そう言い、仮面を外すレモン。

 ああ、そう言えばまだ仮面を被ったままだったな。

 うん、この状況でここに客がいなかったのは、やっぱり助かった。

 そう思いつつ、俺も……そして他の面々も仮面を外す。

 その仮面は俺が預かる。

 ちなみに日本刀や青竜刀、レイピア、鞭といった武器も既に俺が空間倉庫に収納しているので、そっちは見つかっても銃刀法とかを心配しなくてもいい。

 レモンは仮面を改良したいと言っていたものの、この仮面は眼鏡と同じ効果を持ち、防具としての効果もあるという点は優れてると思うんだけどな。

 とはいえ、レモンにしてみれば別に仮面に防御力など求めていなかった。

 恐獣の骨に魔法的な処理をした仮面は、それ以上に小さく出来なかったいうのがレモンの正直なところなのだろう。

 

「楽しみにしてる。出来れば、シャドウの位置を確認出来るとか、そういう能力が追加されたら嬉しいけど」

「あまり無茶を言わないでくれる? ……まぁ、一応試してはみるけど」

 

 そうして話は決まり、天城屋旅館に戻る事になったのだが……どうやって戻るのかという事になる。

 シャドウワーカーが使っている大型の車があれば、この人数でも問題はない。

 だが、天城屋旅館からTVの中の世界を通って直接ジュネスに来た以上、シャドウワーカーの車は今も天城屋旅館にある。

 そんな訳で……

 

「すぐに来るそうだから、もう少し待って欲しい」

 

 美鶴が携帯電話を切ってそう言う。

 とはいえ、そうなるとどこで待つのかという事になる。

 

「フードコートに行くか? あそこなら腹ごしらえも出来るし、この人数が待つのにも丁度いいだろうし。それに……もう昼だしな」

 

 時刻は既に昼を回っている。

 正確には午後1時30分くらい。

 午前中にTVの中の世界に行ったのを考えると、何だかんだと数時間は向こうにいたのか。

 実際に俺が感じた時間も、大体そのくらいだったし問題はないだろう。

 

「そうだな。この人数が集まっていると、妙な視線を向けられるかもしれん」

 

 堂島が俺の意見に賛成すると、他に誰も反対する者はいない。

 もしかしたら反対するかもしれないと思ったムラタや五飛も特に不満はなく、大人しくフードーコートに向かう。

 空腹というのもあるんだろう。

 

「堂島刑事!?」

 

 フードコートに向かっていると、不意にそんな声が聞こえてくる。

 声のした方に視線を向けると、そこには20代程の男女……恋人同士に見えなくもない2人がいた。

 堂島が刑事と知っているとなると、この2人も恐らく刑事なのだろう。

 実際には恋人じゃなくて、コンビを組んでるんだろうけど。

 それが男と女なので、恋人同士に見えているといったところか。

 

「アクセル、悪いが先に行っててくれ。俺はこの2人と少し話をしてから追い掛ける」

「分かった」

 

 恐らく情報を共有するのだろうというのは予想出来た。

 別にそれは特に止める必要もないので、堂島を残してそのまま屋上のフードコートに向かう。

 堂島が一体どのくらいの情報を話すのかは、俺にも分からない。

 場合によっては、鳴上や花村がペルソナ使いとして覚醒した件も話す必要があるのだろうが。

 とはいえ、ペルソナ使いを稲羽署に連れてこられても、向こうも困るだろう。

 それに鳴上は堂島の甥である以上、その甥を売り払う……というのとはちょっと違うかもしれないが、とにかく犠牲にするような事はまずないような気がする。

 堂島をその場に残し、屋上に到着する。

 するとそこには、もう一番忙しい時間は終わったのだろうが、それでもまだ結構な人の数があった。

 ジュネス、人気だな。

 

「さて、ここまで来たらやる事は決まってるな。ホットドッグだ」

「うげっ!」

 

 俺の言葉に真っ先に驚きの声を上げたのは、花村。

 ジュネスの店長の息子だけあって、このフードコートにあるホットドッグの屋台がかなりの値段だというのを十分に理解してるのだろう。

 

「いや、その……値段、知ってます?」

「勿論だ。ここ数日、あのホットドッグ屋を結構利用してるし」

「え? じゃあ、最近ジュネスの職員の間で噂になってる大量に買い物をしてる人ってもしかして……」

「俺だな」

 

 ホットドッグの件から何故大量に買い物をしてるという事に辿り着いたのかは分からないが、別に隠す必要もないので素直にそう言う。

 あるいは単純に、ジュネスの従業員がフードコートで俺がホットドッグを買ってるのを見たのかもしれないな。

 

「ブラックカードを使ってるとか……」

「そうだな。しかも桐条グループのブラックカードだ。……けど、そんなにおかしい事でもないぞ? 何しろここに、桐条グループの総帥の娘がいるし」

「……え?」

 

 俺の言葉に美鶴がどうしたと視線を向けてくる。

 そして花村が美鶴を見て固まる。

 ああ、そう言えば自己紹介はしてなかったか?

 あるいはしていて、桐条という名字だからといって、桐条グループの関係者とは限らないと思ったか。

 花村も元は東京在住だ。

 稲羽市にいる者達よりも、桐条グループの影響力については知ってるのだろう。

 

「まぁ、フードコートではカードを使えない店も多いけどな。出来ればカードを使えるようにしてくれるといいんだが」

「えっと、そうですね。そういう意見はそれなりに聞きます。ただ、それでも今の状況ではまだちょっと難しいんですよね」

 

 具体的に何がどういう理由で屋台でクレジットカードを使うのが難しいのか、ちょっと分からない。

 クレジットカード用の機械がとがないとかか?

 まぁ、今ここで俺がそんな事を聞いても、意味はないだろうけど。

 

「取りあえず昼食だ。ちょうどあのテーブルが空いてるから、あそこで待っててくれ。それと何人か一緒に来てくれ。この人数分のホットドッグだと、俺1人で持つのは難しいし」

 

 空間倉庫を使ってもいいのなら問題ないが、まさかこんなに人がいる場所で空間倉庫を使える筈もない。

 つまり買ったホットドッグは、自分達の手で運ぶ必要があった。

 しかもホットドッグは美味いが、量が少ない。

 いや、小食なら1個でも十分な量なのかもしれないが、シャドウミラーの面々にとっては、2個や3個でも足りない。

 シャドウミラーの訓練はかなり厳しく、それこそホットドッグくらいなら5個や6個でもまだ物足りないと思う者は多い。

 ……寧ろそのくらいは食べないと、どんどん痩せていってしまう。

 ダイエットにはいいのかもしれないが。

 ブートキャンプとかそういうダイエットが以前どこかの世界で流行ったと思うが、そういう意味ではシャドウミラーブートキャンプ? あるいは生身での模擬戦をやるのはエヴァだから、エヴァーズブートキャンプ?

 エヴァに聞かれたら、問答無用で氷の矢が飛んできそうなので、これ以上考えるのは止めておこう。

 ともあれ、俺はホットドッグを購入する。

 いつも以上に大量にホットドッグを買った俺に店主は驚いていたものの、それでももう俺がホットドッグを大量に購入するのにはもう慣れていたのか、普通に売ってくれた。

 俺が1人ではなく、何人も一緒だったというのも大きいのだろう。

 やがて同僚と話していた堂島も戻ってきて……シャドウワーカーの面々が来るまで、俺達はホットドッグを始めとした料理で昼食を楽しむのだった。

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