転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3648話

 ジュネスの屋上のフードコートでホットドッグを食べながら迎えが来るのを待つ。

 ぶっちゃけ、影のゲートを使った方がよかったのでは?

 そんな風にも思ったが、鳴上と花村に影のゲートの存在を教えてもいいのかどうかちょっと迷い、取りあえず今はまだ話さない事にしたのが大きい。

 堂島も合流し、後は時間が来るまで話をするだけだ。

 本来ならTVの中の世界について話したかったんだが、フードコートにはまだ多数の人がいる。

 ましてや、極上の美女のレモンと美鶴がいて、強面のムラタもいたりするし、自分で言うのもなんだが俺もまたかなり周囲に与える印象が強い。

 それらの理由から当然のように周囲から注目されている中で、TVの中の世界やペルソナについて話す訳にはいかなかった。

 ……実際には、その件について話しても、内容が内容なので、それこそゲームか何かの話だと思われそうな気がしたが。

 それでも念には念を入れた形だ。

 やがてやってきたシャドウワーカーの車に乗って、俺達はその場を後にする。

 

「うわ……これ凄い車ですね」

 

 感心した様子なのは花村。

 まぁ、普通ならこういう大きな車に乗る機会なんてないだろうしな。

 とはいえ、花村が無理にはしゃいで、テンションを上げているのは俺にも分かる。

 花村にしてみれば、これから自分がどうなるのか分からないんだろうし。

 それでもこうして無理にはしゃいでパニックになるのを防いでいるのは、堂島の甥の鳴上がいるからだろう。

 甥の友人の自分に妙な真似はしないと……そう思っていてもおかしくはない。

 もし桐条グループのエルゴ研が存続していたら、そういうのは関係なく実験体になっていた可能性が高いんだが。

 何しろ、TVの中の世界で覚醒したペルソナ使いだ。

 エルゴ研が研究していた、ニュクス関係のペルソナ使いとは似て非なる存在なのだろうから。

 召喚器とか必要なくペルソナを召喚出来るというだけで、かなり珍しい存在だし。

 勿論、美鶴を始めとしてニュクスの一件でペルソナに覚醒した者達も、召喚器を使わずにペルソナを召喚することは出来る。

 出来るが、それでもやはり召喚器を使ってペルソナを召喚するのが一番スムーズにペルソナを召喚する方法なのだ。

 そして召喚器は……うん。死を連想させるという意味で拳銃の形をしており、しかもそれはかなり本物に近い。

 それはいいのだが、問題なのはそれを持っているのを警察とか……そこまでいかなくても、何も知らない一般人に見られると騒動になる可能性が高い。

 勿論、しっかりと調べれば本当の拳銃として使えないというのは分かるが、それが判明するまでの騒動は非常に面倒極まりないのも事実。

 だからこそ、召喚器がなくてもペルソナを召喚出来るというのは羨ましい。

 その辺の事情については、天城屋旅館でもっとしっかりと話を聞いてからの事になるが。

 この2人がどういう扱いになるのかとか、そういうのもしっかりと考える必要があるのも事実だし。

 そんな風に考えていると、やがて車は天城屋旅館の駐車場に到着するのだった。

 

 

 

 

 

「うおっ、すげえ……」

 

 それが大広間に入った花村の第一声だった。

 普通の高校生が、天城屋旅館という全国的に有名な老舗旅館の大広間に来るような機会はまずないだろうし、そういう意味で驚いてもおかしくはない。

 ましてや、大広間の半分近くには多数のコンピュータが用意されており、現在そこでは何人ものシャドウワーカーが仕事をしてるのだから。

 その仕事をしている者達も、花村の声を聞くと一斉に視線を向ける。

 それもただの興味深そうな視線という訳ではなく、真剣な視線。

 

「……えっと……」

 

 いきなりそんな視線を向けられた花村は、戸惑った様子を見せていたが。

 花村にしてみれば、まさか自分がそんな視線を向けられるとは思っていなかったのだろう。

 慌てて周囲を見回し……

 

「え? 空中にあるのって……何だ?」

 

 空中に浮かぶ映像スクリーンを見て、驚きの声を上げる。

 それは鳴上も同様で、花村程ではないにしろ驚きを露わにしていた。

 しまったな。

 そう言えばそうか。

 俺達が映像スクリーンからTVの中の世界に入ったんだから、それをそのままにしておいてもおかしくはない。

 俺達がジュネスから現実世界に戻ってきたのは知っていたのだから、通信機のスイッチを切っておいて欲しかったという思いもそこにはあるのだが。

 

「あー……あれは、まだ公になっていない技術だな」

 

 うん、これは別に嘘を吐いている訳ではない。

 実際にこれはシャドウミラーの技術で、それが公になっている訳ではないのは事実なのだから。

 

「そうなんですか? いや、桐条グループが関係しているって話だし、そんなにおかしくはないのか……?」

「花ちゃん、相変わらずだね」

 

 そうして戸惑った様子の花村に声を掛けたのは、早紀。

 花村は早紀の姿を見た瞬間、映像スクリーンの事など完全に忘れ去ったかのように驚く。

 

「小西先輩!」

 

 そうして嬉しそうな笑みを浮かべる花村。

 2人の会話を見て、少し……本当に少しだけだが、ここに連れて来たのは花村にとって悪かったかもしれないなと思う。

 何しろ早紀が堂島を好きなのは、俺から見ても一目瞭然だ。

 ……そっと堂島の方を見ると、そこでは微妙な表情を浮かべている堂島の姿があった。

 無理もないか。

 堂島は早紀が自分を好きなのを知っている。

 そしてこの様子を見れば、花村が早紀をどう思っているのかも理解出来る。

 つまりこれは、いわゆる三角関係という奴なのだろう。

 堂島にしてみれば、甥の友人から恋敵として見られるのだから、複雑な感情を抱くなという方が無理だった。

 取りあえず堂島達の恋模様については、気にしない事にしてそっと視線を逸らす。

 するともう一方では、美鶴がシャドウワーカーの面々に詰め寄られている。

 

「美鶴さん、新たなペルソナ使いが現れたというのは彼等の事ですか?」

「うむ。それに間違いはない。だが、まだペルソナ使いとして覚醒したばかりである以上、戦力として考えるのは難しいだろう」

「ですが、ペルソナ使いが増えたというのは、シャドウと戦う上で非常に大きな意味を持ちます」

 

 必死に言うシャドウワーカーの面々だったが、その気持ちも分からないではない。

 何しろシャドウと戦う上で、ペルソナが一番効果的なのは間違いないのだから。

 一応銃火器の類も無意味という訳ではない。

 アイギスが使っていたし。

 だが、それでも一番有効な攻撃方法がペルソナなのは、間違いのない事実。

 シャドウワーカーにしてみれば、そんなペルソナ使いが増えるのは大歓迎だった。

 一応月光館学園組とでも呼ぶべき面々は、何かあったら協力してくれる事になっている。

 実際、今も稲羽市とは別の場所で起きたシャドウの事件に有里達が向かっているのだから。

 だが、それでも……何かあった時の選択肢は多い方がいい。

 何らかの理由で有里達が協力出来ないといった事になった場合、シャドウワーカー側としては、幾らでも戦力は必要になる。

 本人達は戦力という表現を気に入らないかもしれないが。

 

「落ち着け。まずはペルソナ能力をどのくらい使えるのかを確認する必要があるだろう。ペルソナの種類によっては、直接戦闘するよりも援護に回って貰う方がいい事もあるし」

 

 美鶴の言葉に、シャドウワーカーの面々は納得した様子で頷く。

 実際、ペルソナの中には山岸のペルソナのように、後方からの援護に特化した能力もある。

 ……ぶっちゃけ、戦闘出来るペルソナ使いはかなりいるし、そういう後方からの援護を行えるペルソナの方が貴重なんだよな。

 敵の能力……特に弱点とかが分かるというのは、非常に大きい。

 ジュネスの中で戦ったシャドウは、まさに雑魚と評するのに相応しい能力だった。

 堂島は一杯一杯だったけど。

 ともあれ、あのような雑魚ならともかく、タルタロスの頂上付近で遭遇するような強力なシャドウの事を考えると、やはり相手の弱点とかが分かるというのは大きい。

 だからこそ、山岸のペルソナのような能力は非常に大きな意味を持つ。

 

「分かりました。そうですね。まさかこんな場所で新たなペルソナ使いが見つかるとは思っていなかったので、少し興奮してしまったようです」

「ここでの話が終わってまだ時間に余裕があるようなら、アクセルに山にでも連れていって貰ってどのようなペルソナ能力を持つのかを確認しようと思っている。もっとも、知っての通りペルソナも最初はそこまで強くなく、戦う事で強くなっていく。今日ペルソナ使いとして覚醒したばかりの鳴上達は、今の時点ではそこまで強くはないだろう」

 

 その言葉にシャドウワーカーの者達が納得する。

 ニュクスの一件の時も、俺と初めて会ったゆかりがペルソナ使いとして強くなっていったのは、タルタロスで多くのシャドウと戦ったからだ。

 ゲーム的に考えると、シャドウを倒す事でペルソナのレベルが上がっていったというのが正しい。

 そう考えると、ニュクスの一件もこの稲羽市の一件も、原作はアニメとか漫画じゃなくてゲームなのかもしれないな。

 だからどうだという話ではないんだが。

 この世界の原作がゲームであろうと、漫画であろうと、アニメであろうと、小説であろうとも、俺がやるべき事は変わらない。

 足立を捕らえて、マヨナカテレビの謎を調べ、稲羽市の事件を終わらせるだけだ。

 

「さて、それぞれ色々と話をしてるところ悪いが……いつまでもこうしてる訳にはいかないし、そろそろ本格的に情報交換をしないか? 出来ればクマもいればいいんだが、生憎とこっちの世界には出て来られないみたいだしな」

 

 クマ? とシャドウワーカーを含め、クマの事を知らない面々が戸惑ったように言う。

 

「ああ、まずはその事を説明しないとな。クマというのは、TVの中の世界で生まれた存在で、一応友好的な奴だ」

「え? アクセルさん、その……TVの中の世界というのは、シャドウの巣ですよね? だとすれば、そのクマというのもシャドウなのでは?」

「違うな。友好的なシャドウがいると思うか?」

 

 いや、いるか。

 俺の召喚獣の刈り取る者とか。

 ただ、刈り取る者も俺が最初にあった時は問答無用で攻撃してきた。

 その後も何度か戦い、最終的には俺の力を認めて従う事になり、召喚の契約を結んだ形だ。

 例えるのなら、夕方に河原で喧嘩して、『やるな』『お前もな』とか言って仲間になるようなものか?

 ……ちょっと、いや、明らかに違うな。

 似て非なるものとも呼べないくらいに違う。

 ともあれ、刈り取る者もそうだが、最初から友好的なシャドウはいない。

 あるいはいるのかもしれないが、俺は知らない。

 そういう意味で、クマはシャドウではないと思う。

 それにもしクマがシャドウでも、それはそれで別に構わない。

 刈り取る者を召喚獣にしたのを見れば分かるように、俺は別にシャドウだからといって嫌悪する訳ではない。

 シャドウワーカーが対処してるシャドウのように、自我も何もなく、ただ人を襲ったりするようなシャドウならともかく、クマは普通に自我も理性もあるし。

 

「ペルソナもシャドウの形態の1つだという話ですし、納得しました」

 

 そう言い、今度こそ本当に話をする事になる。

 

「さて、話を聞かせて貰おうか。そもそも鳴上や花村は、何故TVの中の世界にいた? いや、それ以前に何故TVの中の世界に入れるようになった?」

「それは……」

「マヨナカテレビの噂を聞いて、この前試してみたらTVの中に手が入る事に気が付きました」

 

 花村が言い淀んだところで、鳴上がそう言う。

 だが……TVの中に入れた?

 マヨナカテレビについては、堂島一家が泊まっている部屋にも小さな……TVの中の世界にいる足立が入ってこられないような小さめのTVが置かれている。

 本来なら万が一を考えて撤去した方がいいのだが、菜々子は部屋からあまり出ない以上、部屋にTVくらいは必要という事になったのだ。

 菜々子はジュネスが……正確にはジュネスのCMがお気に入りだというのも、TVを部屋に置く事になった理由だろう。

 そしてマヨナカテレビの噂は学生の間で流行っている以上、鳴上がマヨナカテレビを試してみてもおかしくはない。

 ただし、それで何故鳴上がTVの中の世界に入れるのかという事になる。

 TVの中の世界に入るには、魔力か気が必要だというのが今のところ俺達が理解している前提条件だ。

 それを示すかのように、堂島が試した時はTVの中に入れなかった。

 魔力や気を持つ者と接触していれば問題ないが、何故鳴上が?

 いやまぁ、この事件の主人公であるという理由はあるのかもしれないが、それはあくまでも俺の視点……原作云々について知っている者の視点だ。

 そうである以上、もっと何か他の理由がそこにあってもおかしくはない。

 だとすれば、鳴上はペルソナ使いの素質を持っていたからとか?

 それはそれでありだと思うが、美鶴が以前鳴上に会った時は、ペルソナ使いとして覚醒はしていなかったらしい。

 ……どうやら、まだ色々と分からない事があるみたいだな。

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