転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3650話

「うわぁっ!」

 

 影のゲートから出る感触に、花村の口からそんな悲鳴が上がる。

 それ以外の面々の中にも同じように転移の感触を好まない者はそれなりにいたらしく、微妙な表情を浮かべている者もいる。

 全く何も感じておらず、騒いでいる者達は一体何がどうして騒いでいるのかといったような表情を浮かべている者もいたが。

 それでも数分もしないうちに気持ち悪がっていた者達も復活する。

 

「さて、全員準備はいいようだな」

 

 そう言い、山の中まで転移してきた者達を見回す。

 俺と美鶴がいるのは当然。

 鳴上と花村もペルソナの調査をするのだから、いるのは当然。

 堂島は甥であったり、今回の事件に関係するので上司に報告する為にいるのは当然。

 ここまではいいのだが、何故かシャドウワーカーからも数人来ていたりする。

 シャドウワーカーの面々はシャドウの対処をするのが仕事である以上、新しいペルソナ使いに興味を持つなという方が無理なのかもしれないが。

 ちなみに早紀も来たがったのだが、堂島に待ってるように言われると、何故か嬉しそうな様子で天城屋旅館に残った。

 いや、何故かというのは理由も分かってはいるのだが。

 早紀にしてみれば、堂島にそうしろと言われれば、それだけで嬉しいのだろう。

 恋愛に……それも普通の恋愛ではなく、結ばれるまでの障害の多い恋愛である以上、障害が多ければ多い程に燃え上がっているのかもしれないな。

 今のところは早紀の片思いだが。

 

「美鶴」

「うむ。……では、まずは鳴上の方から試させて貰おう」

 

 美鶴の視線を向けられた鳴上は、小さく頷いて前に出る。

 堂島がそんな鳴上の姿を真剣に見ていた。

 鳴上がペルソナ使いとして覚醒しているのは、それこそTVの中の世界で実際にペルソナの戦っている光景を見ているので、心配はしていないのだろう。

 ただ、自分の甥がこの件にこの事件に思い切り関わってる事に鳴上を預かっている堂島としては、思うところがあっても当然だった。

 俺としては原作の主人公である以上、しょうがないとは思うが。

 そうして前に出た鳴上は意識を集中し……

 

「あれ?」

 

 不意に不思議そうな声を上げる。

 そのまま何かを握るような仕草をするものの、特に何が起きるでもない。

 大きく深呼吸をし、再び意識を集中し……

 

「……あれ?」

 

 再び鳴上の口からそんな声が出る。

 

「鳴上? どうした?」

 

 美鶴が不思議そうに尋ねる。

 俺を含めた他の者達も、一体鳴上に何があったのかといった疑問の視線を向けていたのだが、そんな視線に戸惑うように鳴上が口を開く。

 

「えっと……その……」

 

 戸惑いつつも再度何かを試すような真似をして、再び口を開く。

 

「……ペルソナの召喚が出来ません」

「何だと?」

 

 美鶴にとっても、鳴上のその言葉は驚きだったのか、少し考えてから俺に視線を向けてくる。

 

「アクセル、悪いが私の召喚器を出してくれ」

「召喚器を? それは別にいいけど……これで召喚出来ると思うか?」

「分からんが、可能性はある。鳴上にしろ花村にしろ、今日ペルソナ使いとして覚醒したばかりだ。そうである以上、召喚器も何もなしでペルソナを召喚するというのは元々難しいのかもしれん」

 

 美鶴のその言葉は、それなりに説得力がある。

 美鶴達……影時間の一件に関係してペルソナ使いとなった者達は、それこそ召喚器を使ってのペルソナ召喚が普通となっている。

 そうである以上、鳴上も召喚器を使えばペルソナを召喚出来る可能性は十分にあった。

 というか、そうして召喚した方が普通なのだろう。

 

「分かった。……使え」

「えっと……?」

 

 召喚器についての説明はまだしていなかった為か、召喚器……一見して拳銃にしか見えないそれを見て、鳴上は戸惑った様子を見せる。

 今の俺と美鶴の会話から、これが召喚器と呼ばれる物で、ペルソナを召喚するの使うというのは分かったのだろうが、具体的にどのように使えばいいのか分からないのだろう。

 まさか、それを自分の頭部に向けて撃つとは思ってもいない筈だ。

 何しろこの召喚器は、今まで数え切れない程の戦いを潜り抜けてきた俺が見てさえ、本物の拳銃にしか見えないのだから。

 そういう意味では、この召喚器を作った……いや、デザインを考えた者の芸術性はかなり高かったのだろう。

 

「それは死を疑似体験する事によってペルソナを召喚する為の物だ。本来なら決してこのような事はしてはいけないのだが……銃口の中を見てみるといい」

 

 鳴上に召喚器について教える美鶴。

 その美鶴の指示に従い、鳴上は召喚器の銃口を覗き込む。

 ……これは召喚器で銃口が塞がれているからやってもいい事で、本物の拳銃は当然の事、モデルガンの類でも決してやっては行けない事だ。

 本物の拳銃の場合、もし何かのミスで銃弾が残っていて発射されたら間違いなく死ぬし、それがモデルガンであれば、死にはしないかもしれないが失明してもおかしくない、それだけ危険な行為。

 

「あ、本当に塞がってる」

 

 鳴上が銃口を見て、美鶴の言葉に納得する。

 

「分かって貰えたようだな。後は召喚器の銃口を頭部に向けて撃ってくれ。そうすればペルソナが召喚される筈だ」

 

 その言葉に鳴上は驚きの表情……いや、驚愕の表情を浮かべ、反射的に美鶴を見る。

 美鶴の言ってる事の意味は理解出来るが、だからといってその言葉通りにしてもいいのかどうか迷ったのだろう。

 

「美鶴、説明するよりも実際にやって見せた方が早いぞ」

「そうか? ……では」

 

 俺の言葉に納得し、美鶴は鳴上から召喚器を受け取る。

 そして自分の側頭部に銃口を当てる。

 鳴上と花村の2人は、そんな美鶴の様子を息を呑んで見守っていた。

 とはいえ、それ以外の面々は既に見慣れている行為なので、いつも通りに見ていたが。

 堂島も美鶴がペルソナを召喚するところは以前も見ている為、普段通りだ。

 ……大丈夫だとは分かっていても、警察として拳銃の形をした召喚器の銃口を側頭部に向けているという事で、複雑そうな表情だったが。

 

「ペルソナ」

 

 美鶴にしてみれば、ペルソナを召喚するのはこれまで幾度となく行ってきた。

 だからこそ、特に躊躇せず召喚器のトリガーを引き……次の瞬間、美鶴の背後にはアルテミシアが姿を現す。

 

「な……」

「うおっ!」

 

 鳴上と花村の2人は、アルテミシアを見ると揃って驚きの声を上げる。

 まぁ、分からないでもない。

 鳴上と花村が召喚したペルソナはそれなりの迫力があったが、アルテミシアはそんな2人のペルソナ以上の圧倒的な迫力を持っていたのだから。

 これは美鶴が経験してきた今までの戦いで、それだけアルテミシアを成長させてきたという事を意味している。

 もしアルテミシアが鳴上達のペルソナと戦っても、今の時点では一蹴するだろう。

 鳴上はこの事件の主人公である以上、将来的にはアルテミシアを上回ってもおかしい事はなにもないが。

 

「このように、ペルソナを召喚出来る。……では、やってみてくれ」

 

 召喚したアルテミシアをあっさりと消し、美鶴は召喚器を鳴上に渡す。

 それを受け取った鳴上は、目の前で実際にペルソナの召喚を見たからだろう。

 今度こそ召喚器の銃口を自分の側頭部に当て……

 

「ペルソナ」

 

 その言葉と共にトリガーを引く。

 引くが……

 

「あれ?」

 

 一体その言葉を口にしたのは誰だったのか。

 とにかくその言葉が示すように、ペルソナが召喚される事はなかった。

 

「えっと……?」

 

 鳴上も、ペルソナを召喚出来なかった事で疑問を声を上げる。

 一体何が起きてるのか、その場にいる者には誰も分からない。

 実は鳴上がペルソナ召喚の力を手に入れたのは何かの間違いだった?

 いや、実際にその目で見ている以上、それはない。

 つまり……何がどうなってそうなった?

 

「美鶴、ペルソナに覚醒しておきながら、ペルソナを召喚出来ないという事はあるのか?」

「エルゴ研のデータには、本来なら覚醒してる筈なのにペルソナを召喚出来ないというのはあったと思う」

「なら、それか?」

「どうだろうな。鳴上は、TVの中の世界であれだけ自由にペルソナを扱っていたのだぞ? それはアクセルも見ただろう。であれば、それでペルソナを召喚出来ないというのは納得出来んな。……花村、次は君に試して欲しい」

「え? あ、はい。分かりました。……悠」

「ああ」

 

 花村が鳴上から召喚器を受け取り、鳴上と同じく銃口を側頭部に向け……

 

「ペルソナ!」

 

 そう叫びつつ召喚器のトリガーを引くが、やはりペルソナが召喚される事はない。

 

「花村も駄目か。だとすれば、これはただ単純にまだペルソナの召喚に慣れてないからとか、そういうのとはまた違うんじゃないか?」

「……アクセルの言いたい事は分かるが、それではどのような理由からだと思う?」

「それを俺に聞かれてもな。俺は別にペルソナを使える訳じゃない。刈り取る者はペルソナとはちょっと違うし……いや、待てよ?」

 

 そこまで言って、ふと気になるところがある。

 俺の召喚獣の刈り取る者だが、それと同時にシャドウについても詳しい。

 実際、この稲羽市にシャドウがいると刈り取る者が断言したからこそ、本格的な調査に乗り出したのだから。

 

「アクセル? 何か思いついたのか?」

 

 美鶴の言葉に頷きを返す。

 

「刈り取る者を召喚したらどうかと思ってな。刈り取る者はシャドウについて詳しい。なら、ペルソナについても相応の判断が出来てもおかしくはない。……問題なのは、刈り取る者との意思疎通が難しい事だが」

 

 基本的に刈り取る者は俺の言葉を理解は出来るものの、刈り取る者の方から何かを言うといった事はない。

 であれば、刈り取る者の意思をどうやって認識するのかが問題となる。

 

「それは……だが、何もやらないよりはやった方がいいのではないか?」

「俺もそう思う。って事で、試してみてもいいか?」

「……これからアクセルが召喚する相手は凶悪なプレッシャーを放つ。だが、決して敵対する相手ではないという事を理解して欲しい」

 

 その言葉に、花村が頬を引き攣らせた。

 鳴上の方は特にそこまで気にした様子はないが。

 

「だが、これからアクセルが召喚する者によって、お前達が何故ペルソナが使えなくなったのか、分かるかもしれない」

 

 その言葉に、安心していいのかどうか微妙な表情を浮かべる2人。

 いやまぁ、その気持ちは分からないでもない。

 とはいえ、今の状況でペルソナについてしっかり理解する為には、刈り取る者に頼るのが一番手っ取り早いのも事実。

 実際には刈り取る者を召喚しても、鳴上達がペルソナを使えない理由が分かるとは限らない。

 それでも何もやらないよりはマシなのは間違いなかった。

 

「どうだ? 美鶴の言葉を聞いて、それでも試してみたいと思うか?」

「お願いします」

「ちょっ、おい、悠!?」

 

 即座に俺の言葉に頷く鳴上に、花村が焦ったように言う。

 花村にしてみれば、まさか鳴上がこうもあっさりと俺の言葉に頷くとは思わなかったのだろう。

 この辺、さすが主人公といったところか。

 

「分かった。……花村はどうする?」

「えっと……えーいっ、分かった、分かった、分かりましたよ! 悠だけを危険な目に遭わせる訳にもいかないですし、俺もやります!」

 

 半ば自棄になってるようにも見えるが、それでも鳴上だけに試させる訳にいかないというのは、花村の本気なんだろう。

 鳴上はまだ転校してきてからそんなに経ってない。

 だというのに、こんな短時間で花村とここまで仲良くなるというのは……さすが主人公といったところか。

 

「2人揃って構わないんだな?」

 

 最終確認も込めて尋ねると、2人は揃って頷く。

 それを確認すると、俺は足で地面を……正確には影を軽く蹴る。

 狛治やグリを召喚する時は召喚魔法の呪文が必要となるが、俺の影の中にいる刈り取る者だけは特に呪文の類も必要なく、こうして召喚をするという意思と共に影を蹴るだけでいい。

 そして俺の要請を受けた刈り取る者は、影から姿を現す。

 

「ひぃっ!」

 

 刈り取る者を見た瞬間、花村の口から悲鳴が出る。

 いやまぁ、無理もないか。

 寧ろ畏怖してるのは花村だけではなく、シャドウワーカーの面々や堂島も同様だった。

 主人公の鳴上も、驚きはしていたが花村のように悲鳴を上げてはいない。

 

「刈り取る者、この2人……鳴上と花村はペルソナ使いなんだが、それは分かるか?」

 

 そう尋ねると、刈り取る者は鳴上と花村を一瞥する。

 そんな刈り取る者に花村は再び悲鳴を上げそうになったものの、何とか我慢していた。

 やがてその2人を見た刈り取る者は、俺に視線を戻して頷く。

 どうやら刈り取る者の目から見ても、鳴上と花村はペルソナ使いという認識で問題ないらしい。

 

「だが、この2人は何故かペルソナを出せない。その理由は分かるか?」

 

 そう尋ねるが、刈り取る者が行ったのは首を横に振るという行為だけ。

 どうやら刈り取る者にもこの2人がペルソナ使いなのは分かるものの、何故ペルソナを使えないのかは分からないらしい。

 一体何がどうなってそうなったのか。

 少し気になるが、まずはどうにかしてペルソナを使えるようにする必要があるだろうな。

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