転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3651話

 刈り取る者の様子から、鳴上と花村の2人がペルソナ使いなのは確定していた。

 だがそれでも、ペルソナを召喚出来ないのは間違いない。

 美鶴の召喚器を使ってもペルソナを召喚出来ない以上、何か別の理由があるのは間違いなかった。

 問題なのは、それが具体的にどういう理由なのかという事だろう。

 TVの中の世界に存在したジュネスで俺達が見たのは、間違いなくペルソナだ。

 そうなると、何かもっと別の理由がそこにはある筈だった。

 問題なのは、それが具体的にどういう事なのか分からないというもの。

 だとすれば……例えば、今の鳴上達がペルソナを使えないのではなく、あの時だからこそペルソナを使えたと考えればどうだ?

 そして今との違いは……

 

「TVの中の世界でしかペルソナが使えない?」

 

 そう口にしたのは、俺……ではなく美鶴。

 どうやら美鶴も俺と同じ事を考えていたらしい。

 

「やっぱりそう思うか?」

「今の状況でペルソナを使えないとなると、考えられる可能性としてはそれしかないだろう。だが……そういう事があるのか?」

 

 美鶴が不思議そうに呟いたのは、美鶴が……より正確にはニュクスの一件に関わったペルソナ使い達は、普通に現実世界でもペルソナを使えるからだろう。

 そんな美鶴にしてみれば、TVの中の世界という限られた場所でしかペルソナを使えないというのは、どうしても疑問に思ってしまうといったところか。

 実際問題、俺もそれを不思議に思う。

 思うが、それでも状況がそれを示しているのも間違いのない事実。

 

「ともあれ、TVの中でしか使えないのなら試してみればいい。幸い、ここならTVの中の世界に入っても誰に見られるという事はないしな」

 

 そう言い、俺は通信機を取り出して空中に映像スクリーンを浮かび上がらせ……鳴上と花村に視線を向ける。

 

「さて、じゃあTVの中の世界に入るぞ」

 

 俺の言葉に、鳴上と花村は拒否をするという事はなかった。

 

 

 

 

 

「うわ、ここが公園……俺達が行ったスタジオとは全く違うな」

 

 TVの中の世界に入った花村は、周囲の様子を見ながらそう呟く。

 ジュネスの家電売り場から中に入ったスタジオとこの公園は、それだけ印象が違うのだろう。

 

「スタジオは結構ごちゃっとしてたけど、この公園は遊具がある程度でそれなりの広さがあるから、身体を動かすにはいい筈だ。……難点は、公園の周囲には濃霧があるくらいか」

 

 一応この公園にも薄らと霧はあるが、それでも周囲の状況が確認出来ない程ではない。

 特に問題なく動き回る事が出来る。

 後は、もしかしたらシャドウがどこからともなく現れるかもしれないという事だが……TVの中に入る前に一度影に返した刈り取る者をまた召喚するか?

 少しそう思ったが、それは止めておく。

 鳴上はともかく、花村は刈り取る者を思い切り怖がっていたしな。

 ……ちなみに、山に俺達と一緒に来た数人のシャドウワーカーにとっても、初めてのTVの中の世界という事で興奮したり緊張したりしているが、そっちは放っておいてもいいだろう。

 

「そうですね。それに……ここなら何とかなりそうな気がします」

 

 鳴上が俺の言葉にそう頷く。

 その言葉は決して嘘ではないだろうというのは、こうして見ていれば分かる。

 

「じゃあ、やってみてくれ。……召喚器はいるか?」

 

 美鶴の召喚器は既に空間倉庫に収納されている。

 美鶴の許可も出ているし、使うのなら出してもいい。

 そう思って聞いたのだが、鳴上は首を横に振る。

 

「いえ、そういうのはいりません。出来る……そういう確信が俺の中にありますから」

 

 どうやらそういう事らしい。

 まぁ、それならそれで構わない。

 そんな俺達の会話を聞き、はしゃいでいたシャドウワーカーの面々もこっちに戻ってくる。

 花村と堂島の2人も、そんな鳴上を真剣な表情で見ていた。

 TVの中の世界にやって来た面々の視線が向けられる中、鳴上は集中し……

 

「何だ?」

 

 不意に鳴上の目の前にカードが現れる。

 それは俺以外の目にもしっかりと映ったのだろう。

 見ていた者達が突然の現象に驚き、ざわめく。

 しかし、鳴上はそんな状況を気にした様子もなく、そのカードに手を伸ばし……握り潰す。

 するとカードは紙で出来ているのではなく、それこそガラスか何かで出来ているかのように砕け散り……

 

「ペルソナ!」

 

 その声と共に、鳴上の後ろに姿を現すペルソナ。

 それは今日TVの中の世界のジュネスの屋上で、花村のシャドウと戦っていたペルソナで間違いなかった

 

『おお』

 

 シャドウワーカーの面々が揃って驚きの声を上げる。

 こうして実際に自分達の目で鳴上のペルソナを見たのだから当然か。

 シャドウワーカーの面々は、別にペルソナそのものを見慣れていない訳ではない。

 以前に天城屋旅館の大広間で美鶴がアルテミシアを召喚したのを見れば分かるが、他の……ニュクスの一件に関わった者達でシャドウワーカーに協力している面々はシャドウとの戦いになればペルソナを召喚したりも出来る。

 だが、とある例外を除き、基本的に1人が召喚出来るペルソナは1種類だけだ。

 美鶴のペンテシレアがアルテミシアにパワーアップされたような事もあるが。

 そんな訳で、シャドウワーカーの面々にしてみれば全く新しいペルソナというのはそう簡単に見る機会はないのだ。

 だからこそ、こうして鳴上の召喚したペルソナは珍しいと思えたのだろう。

 

「それにしても……やっぱりTVの中でしか召喚が出来ないのか。どう思う?」

 

 鳴上のペルソナを見ながら、美鶴に尋ねる。

 他の面々のように驚きで我を忘れていないのは、経験の違いだろう。

 また、俺が尋ねた美鶴も。ペルソナ関係に限ってだが、多くの修羅場を潜ってきている。

 

「分からん。アクセルが言った時は、まさか本当にTVの中でしか召喚が出来ないとは思ってもいなかったが……それでもこれはかなり予想外の結果なのは事実だ。私達は普通に現実世界でもペルソナが召喚出来る。だが、彼等は出来ない。一体この違いはどこにある?」

「違いと言えば、召喚器を使わずにどこからともなく現れたカードを砕いてペルソナを召喚していたのも気になるな」

「うむ」

「あくまでも俺が知ってるペルソナ使いは美鶴達だけ……あのニュクスの件に関わった者達だけだが、召喚器を使うか、何も使わずにペルソナを召喚していた。あんなカードが出てくるといった現象は見た事がない。美鶴もか?」

「私もアクセルと同じだよ。一体何がどうなってああなったのやら。……ペルソナを召喚するという現象そのものは同じであっても、その過程が私達と違うのかもしれんな」

「……そういう事があるのか?」

 

 例えば、これで鳴上が召喚したのがペルソナではなく、全く別の存在であれば、どこからともなく現れたカードが関係してると言われても納得出来る。

 だがそれが、同じペルソナであるからこそ疑問に思ってしまうのだ。

 一体何がどうなってそうなったのか、と。

 

「分からんとしか言いようがないな。エルゴ研のデータについては私も見ているが、このような事例はなかった筈だ」

 

 美鶴にも分からないとなると……しまったな。レモンにはもう少しこっちにいてもらうべきだったか?

 そんな風に思うも、この状況は初めてである以上、レモンがこの様子を見ても一体何がどうなってこのような事になったのかは分からないだろう。

 だとすれば、今はこれはこういうものだと認識して行動するしかないか。

 

「じゃあ、取りあえず次は……花村、頼む」

「分かりました」

 

 俺の言葉に花村がやる気でそう言う。

 花村にしてみれば、既に鳴上がペルソナを召喚している以上、自分もペルソナを召喚出来るという確信があるのだろう。

 ……これで実は、花村がペルソナを召喚出来なかったら、それはそれで面白いんだが。

 もっともそうなればそうなったで、色々と面倒な事になりそうな気がするが。

 

「すぅー……ふぅ……」

 

 深呼吸をして意識を集中する花村。

 そして目を瞑り……

 やがて鳴上の時と同じく、どこからともなくカードが現れ、花村はそれを殴り、砕く。

 

「ペルソナ!」

 

 その言葉と共に、花村の後ろにペルソナが姿を現した。

 

『おお』

 

 再びざわめくシャドウワーカーの面々。

 鳴上のペルソナに続き、再び新たなペルソナが姿を現したのだから当然だろう。

 ちなみに……これはこの世界の原作があるという俺の視点からの話だが、恐らく以前鳴上と花村と一緒にTVの中に入った里中もペルソナ使いとして覚醒するだろう。

 そして里中の親友の雪子もまた、ペルソナ使いとして覚醒する可能性は十分にあった。

 その辺の状況を考えると、里中や雪子にも積極的にこの件について話しておいた方がいいような気がしないでもない。

 とはいえ、これはあくまでも俺の……この世界に原作があると知っているおれだからこその認識だ。

 それを知らない者にしてみれば、こんな事に里中や雪子を巻き込むのは悪意を持っていると思われても仕方がない。

 特に雪子の場合、家が家で家族が家族だ。

 そんな……お嬢様という表現は微妙に違うかもしれないが、ともあれそんな雪子を命懸けでシャドウと戦う場所に連れていくのは、色々と……それはもう本当に色々と問題がある。

 この件については俺だけで考えてもどうかと思うので、後で美鶴と相談した方がいいな。

 もし里中や雪子がペルソナ使いとして覚醒出来る素質があるのなら、それを意図的に早めて、ペルソナ使いとしての能力を強化出来る可能性もある。

 最終的に里中や雪子の安全を考えれば、それが一番安全な手段なのも事実だし。

 

「えっと、それでペルソナを召喚出来ましたけど、どうします?」

「ふむ、そうだな。……どうせなら模擬戦をしてみるか。アクセルは論外として、私が相手になってもいいが」

「ちょっと待ってくれ!」

 

 論外と言われた事に俺が不満を口にしようとしたのだが、それよりも前に堂島が待ったを掛ける。

 それを無視して何かを言う事も出来たが、真剣な様子の堂島を見れば、ここで俺が何かを言うよりも、今は堂島に言わせた方がいい。

 

「どうした?」

 

 美鶴も俺と同じ思いだったのか、堂島に視線を向けて訪ねる。

 じっと自分を見てくる美鶴の視線に一瞬気圧された様子の堂島だったが、それでも美鶴の視線の圧力に負けず、口を開く。

 

「悠達は確かにペルソナという力を使える。そして、その戦闘力は俺よりも上だろう。だが、まだ子供だ。そのような子供を今回の事件に巻き込みたくはない」

 

 そう断言する堂島は、甥の鳴上の事を思っての言葉なのは間違いないだろう。

 鳴上の友人の花村も庇う形になっているが……その辺は言葉通り、子供を命懸けの戦いに参加させたくないという思いがあっての事らしい。

 正直なところ、ちょっと意外だったのは間違いない。

 いや、堂島の言ってる事は事実だ。

 しかし今まで多くの戦いを経験してきた身としては、原作のある戦いである以上仕方がないのかもしれないが、多くの主人公が10代なのも事実。

 ……ネギま世界なんか、9歳のネギが主人公だったしな。

 それを考えると、高校生が戦いの場に出るのはそんなにおかしな話ではないと思う。

 原作がある事を考えれば、やっぱりその原作を楽しむのは学生が多いから主人公の年齢も10代にする事が多いんだろうが。

 勿論、全部が全部そういう原作の訳でもない。

 普通に大人が主人公の話も、それこそ幾らだってあるだろう。

 偶然……というか、俺がゲートでランダムに転移する場合、10代が戦いに参加するような世界に行ってるだけで。

 

「堂島の気持ちは分かる。だが、その2人は既にペルソナ使いとして覚醒した。それこそ、いつ足立に狙われるのか分からない。……これはもう堂島も予想出来ているかもしれないが、恐らく足立もペルソナ使いとして覚醒しているだろう」

「それは……」

 

 足立の事を口に出されると、堂島も反論出来なくなる。

 実際、鳴上達の様子を見る限り、足立がペルソナを召喚出来るようになっているのは半ば確定してるのだから。

 恐らくだが、俺を始めとしたシャドウミラーの面々とは違い、魔力や気を使えない者達の中でTVの世界に入れるという能力を持つ者は、ペルソナ使いの素質がある。

 もっとも最初はTVの中に入れなかった花村がペルソナ使いに覚醒したように、TVの中に入ってしまえば誰にでもペルソナ使いとして覚醒出来る可能性はあるのかもしれないが。

 勿論、それは容易に覚醒出来る訳ではない。

 才能のあった鳴上はともかく、花村は自分のシャドウを倒し、受け入れ……それでようやくペルソナ使いとして覚醒したらしいし。

 これはつまり、下手をすれば自分のシャドウに殺される可能性があるという事を意味していた。

 堂島がペルソナ使いとして覚醒するとしたら……どうなるんだろうな。

 

「東京に逃がす訳でもない限り……いや、ペルソナ能力に覚醒したという事を考えると、下手に東京に避難をさせれば、他の研究機関が動くかもしれん」

「それは……」

 

 否定したいが否定出来ない。

 そんな様子で、堂島は美鶴の言葉に黙り込むのだった。

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