転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3656話

「本気で言ってるのか?」

 

 そう言い、堂島は俺を睨み付けてくる。

 堂島は模擬戦によって俺の力を十分に理解している。

 それでもこうして睨み付けてくるのは、自分よりも強い相手を前にしても決してここで退く事は出来ないと思っているからだろう。

 実際、堂島にしてみれば俺の話……鳴上や花村に協力して貰ってこの事件の捜査をする。

 もっと具体的には、TVの中の世界にいるだろう足立を捕らえるというのは、決して許容出来ないのだろう。

 何度かそれを匂わせるような事を口にはしたが……それでもこうして改めて言われると、やはり素直に頷くといったことは出来ないらしい。

 実際には足立を捕まえるのは途中経過でしかないのだが。

 何しろ俺の認識では、足立は小ボスか、どんなに高く見積もっても中ボスといったところなのだから。

 その後にはラスボスが、場合によっては隠しボスや裏ボスの類がいてもおかしくはない。

 とはいえ、足立の件でここまで反対している以上、そんな事を言える筈もないが。

 

「勿論本気で言っている。鳴上と花村を早紀の家族のように稲羽市から離れた場所に向かわせない以上、戦う力は持っていた方がいい」

「だが、ペルソナは現実世界では召喚出来ないと聞いた。なら、警戒をしないという訳ではないが、TVの中の世界に行かない限りは安全なんじゃないか?」

「かもしれないな。だが、それはあくまでも今の俺達の常識の話だ。確かに鳴上と花村は現実世界でペルソナを召喚出来ない。だが、美鶴は現実世界でペルソナを召喚出来る。なら、足立も現実世界でペルソナを召喚出来るかもしれないという可能性は十分にあるし、あるいは今は無理でも将来的には現実世界でペルソナを召喚出来るようになってもおかしくはない。……違うか?」

「それは……」

 

 その可能性については、恐らく堂島も気が付いていたのだろう。

 あるいは今の俺の説明で納得してしまったのか。

 とはいえ、これは俺が説得する為に適当な事を言ってる訳ではない。

 美鶴達……ニュクスの一件に関わったペルソナ使いが現実世界でペルソナを召喚出来るのだ。

 今は無理でも、シャドウと戦って……そう、ゲーム的に考えるとレベルを上げる事により、将来的に現実世界でペルソナを召喚出来るようになっても、俺は驚きはするものの、それでも最終的には素直に納得するだろう。

 

「足立に対抗する為に、あるいは……ニュクスの一件の時のように、シャドウが現実世界に影響を与えるようになったりした時の為にも、鳴上と花村はTVの中の世界で鍛えた方がいい」

 

 そう最後に言うと、堂島は難しい表情を浮かべ……やがて口を開く。

 

「少し、考えさせてくれ」

「構わないが、あまり時間がないのは間違いないぞ」

「分かっている。だが、姉から預かった甥の事だ。そう簡単に危険に巻き込むような事は出来ん」

「なら、鳴上と話してみたらどうだ? 結局のところ、鳴上がどうしたいのかというのも今回の件には影響してるんだし」

 

 それこそ最悪の話になるが、ここで堂島が鳴上に今回の事件に関わるなと言っても、鳴上が勝手に行動をする……TVの中の世界に行く可能性は十分にある。

 それが具体的にどのような理由からなのかとか、そういうのは俺にもあまり分からない。

 だが、高校生がペルソナのような能力を手に入れた以上……そしてペルソナの召喚がTVの中の世界でしか出来ない以上、そうした行動をしてもおかしくはないだろうと、俺にはそう思えた。

 あるいは花村に引っ張られてTVの中の世界に行くという可能性を否定は出来ないだろう。

 だからこそ、そうして勝手な行動を取るよりも前に堂島としっかり話しておいて、そういう行動を取らないようにしておいた方がいい。

 

「そうするよ。……おい、悠。ちょっと話すぞ」

 

 俺との会話を終わらせた堂島は、少し離れた場所でこっちの様子を見ていた鳴上を引っ張って、部屋から出る。

 こっちを見る鳴上の視線には、感謝と助けて欲しいという2種類の色があったが……まぁ、取りあえずある程度まで堂島が妥協する為の道筋は作ったんだから、後は鳴上に頑張って貰うとしよう。

 

「さて、後は……花村の件だな。どうする?」

「それを私に聞くのか? だが、そうだな。鳴上と同じように対応をするという事でいいと思うぞ」

「けど、花村の場合はジュネスの件がある。家族を守る為に稲羽署から護衛が出ているけど、それが本当に上手くいくかどうかは分からないぞ? そっち方面でもこっちで何か手を打った方がいいと思うんだが」

 

 その言葉が聞こえたのか、堂島が微かに不機嫌そうな表情を浮かべる。

 無理もないか。

 堂島にしてみれば、自分の職場の仲間が頼りにならないと言われたようなものなのだから。

 だが同時に、TVの中の世界を自由に出入り出来る足立を相手にした場合、通常の警護の方法ではどうにも出来ないと思ってもおかしくはない。

 一応今のところは足立も現実世界でペルソナの召喚は出来ないと思われるが、鳴上達と話していた時のように、もしかしたら……という事もある。

 あるいは……こちらは出来るかどうか分からないものの、例えばシャドウをTVの中の世界から現実世界に放つといった事もやりかねない。

 今のところはシャドウがTVの中から出て来るようなことはないが、ニュクスの一件の時はタルタロスからシャドウが出ることはそれなりにあった。

 そう考えると、ペルソナと同様今は現実世界に出られなくても、将来的には分からない。

 ましてや、足立にしてみればシャドウを現実世界に出せるようになれば、それは自分の捕まる危険が減って、しかもシャドウの相手を俺達がするので手が足りなくなる。

 その辺の状況を考えると、足立にしてみればシャドウを現実世界に出して陽動や戦力にするというのは、十分に有り得る選択肢だろう。

 その辺はやっぱり注意する必要があるのは間違いない。

 ベストなのは、足立がそれを思いつく、もしくは実行するまでに足立を捕らえるなり、それが駄目なら殺すなりする事だろう。

 堂島は自分が足立を捕らえるのだと思い込んでいるものの、それが実際に出来るかどうかは……まぁ、堂島がどの程度の実力になるのかで決まるだろう。

 俺にしてみれば、そうなるのが一番手っ取り早いのは間違いないと思えるのだが。

 

「けど、護衛を出すにも……どうする? 炎獣でも出すか?」

「それが一番いいとは思うけど、難しいだろうな」

 

 炎獣はどうしても目立つ。

 白炎で生み出された存在……つまり白い炎で構成された存在が動き回っていて、それで目立たない訳がない。

 大人しくしてるように言い聞かせるといった事も出来ない訳ではないが、炎獣であるということそのものがもの凄く目立つ。

 かといってどこかに隠れていると、それが見つかった時点で面倒な事になるのは間違いない。

 

「そうなると、普通に護衛を用意した方がいいか」

「桐条グループの方で人を用意出来ないか?」

「難しいな。これが例えばストーカーに狙われているとか、もしくは恨みを持っている相手に狙われている……つまり普通の人間に狙われているのなら、それなりに対処は出来る。だが、相手はTVに出入り出来る能力を持つ足立だ。その上、ペルソナやシャドウと敵対するという事を考えると……」

 

 難しいと、そう告げる美鶴。

 

「シャドウの件がここで起こっているだけなら、ある程度の人員を回す事も出来るんだがな」

「有里達か」

 

 現在稲羽市で起こっている、マヨナカテレビの一件。

 それ以外にもシャドウが関係してるだろう一件が起こっており、シャドウワーカーの半分程はそちらに向かっている。

 そして有里を始めとしたペルソナ使い達も、俺や美鶴がこっちにいるという事で、そっちに向かっているらしい。

 ……とはいえ、ゆかりのように大学生活を送っている者もいるので、そういう者達は自分の生活を重視しており、時間を見つけてはそっちの手伝いをしているとか何とか。

 結局のところ、今のこの状況では純粋に戦力となる人手が足りないのも事実。

 堂島が俺達から離れた場所で早紀と話しているのを確認してから、少し声を落として言う。

 

「そうなると、いっそホワイトスターから追加の人員を呼ぶか?」

 

 ホワイトスターから実働班の追加を呼ぶのはそう難しい話ではない。

 そしてシャドウミラーの実働班であれば、魔力や気を使えるのでシャドウを相手にしても対処するのは難しい話ではないだろう。

 そしてこっちに来たいと思う者も、相応にいる筈だ。

 だが、そんな俺の提案に美鶴は首を横に振る。

 

「アクセルの気持ちは嬉しいが、今でさえシャドウミラーの存在を完全に隠し通せている訳ではない。そう考えると、シャドウミラーの人員は今のままで限界だろう」

 

 限界というのはどうかと思うが……まぁ、ムラタや五飛が目立つのは事実か。

 

「そうなると……コバッタをどうにかしてもっと小さくするというのを本気で考えた方がいいのかもしれないな」

 

 現在のコバッタは、名称こそコバッタ……小バッタとなっているものの、それなりの大きさがある。

 通常のバッタと比べれば明らかに小さいが。

 出来ればハロくらい……いや、もっと小さく、バッグとかのアクセサリくらいまで小さくする事が出来れば、色々と便利なんだが。

 もっともそこまで小さくすれば、さすがに普通のコバッタのようにある程度の判断力を持たせる事とかは出来ないだろうが。

 ただ、持ち主がピンチになった時にそこまで威力が強くなくてもいいので、ミサイル……もしくはレーザーとかで攻撃が出来ればいい。

 とはいえ、シャドウミラーの技術班であってもそれなりに難しそうな気がする。

 

「今出来ないことを言っていても意味はないだろう。だが、そうだな。刈り取る者は普段アクセルの影にいるのだろう? なら、刈り取る者を花村の影で待機させておくといった事は出来ないのか?」

「それはちょっと難しいな。刈り取る者が俺の影の中にいるのは、あくまでも俺が刈り取る者と召喚魔法の契約をしているからだ。契約をしていない花村にというのは難しいと思う」

 

 影のゲートを使ってあっさりと影を出入りしてるので、影に潜むのはそれなりに簡単そうには見える。

 だが実際は、そう簡単な事ではないのだ。

 ……エヴァ辺りなら普通に使えそうだけど。

 そんな訳で、刈り取る者を花村の影に潜ませるといった事は不可能だ。

 とはいえ……

 

「本当にどうしようもなかったら、それこそ俺と召喚魔法の契約を結ぶという方法もあるけどな」

「それは……アクセルの血を飲むというものだろう?」

 

 俺の言葉に微妙な表情を浮かべる美鶴。

 無理もないか。

 実際、俺の血を飲めばその血に込められた魔力によって……そう、簡単に表現するのなら、1つ上のランクの生物になるようなものだ。

 代わりに角が生えたり羽根が生えたり、尻尾が生えたりするが。

 そうして強くなった者は、あるいは何の苦労もなく力を手に入れたといったように言う者もいるかもしれない。

 だが、それは間違いだ。

 何しろ俺と召喚魔法の契約を結ぶというという事は、つまり俺の血を飲むという事を意味している。

 血の1滴くらいなんだと思うかもしれないが、俺の血は濃密な魔力が込められている。

 それが具体的にどのくらいの魔力かと言えば、俺の血に耐えられない者はパァンッと身体が破裂してしまうくらいに濃密な魔力だ。

 もしくは、吸血鬼のエヴァが俺の血を飲もうとした場合、あまりの魔力の濃さに体調に問題を起こすくらい。

 もっとも濃密な魔力があるのは事実なので、いざという時の為に俺の血を薄めて持ってるらしいが。

 そんな俺の血を飲んで、その血を受け入れ、初めて力を手に入れられるのだ。

 言ってみれば、生き残って俺の召喚獣となって1ランク上の存在になるか、死かの2択な訳だ。

 それでも楽に力を手に入れたと責める者がいた場合……うん、それこそそういう連中には俺の血を飲ませてやってもいいかもしれないな。

 そんな風に思いつつ、美鶴との会話を続ける。

 

「そうなるな。生き残れれば、恐らく足立を倒せるくらいの力は楽に手に入ると思う」

「止めてやれ」

 

 美鶴も俺が召喚の契約を結ぶ際のリスクについては知っている。

 だからこそ、俺の言葉を聞いて即座にそう言ったのだろう。

 まぁ、花村に俺の血を飲ませるというのは、あくまでも冗談で本気ではない。

 ぶっちゃけ、花村が俺の魔力に耐えられるかどうかとなると、かなり分の悪い賭けだ。

 さすがに花村にそんな事をさせようとは思わないし、花村がやりたいと言っても引き受ける訳にはいかない。

 あくまでも今の話は冗談でしかなかった。

 ……何人かのシャドウワーカーの人員が、驚愕の視線を俺に向けていたりするが。

 それでも馬鹿な真似をしようとは思わないだろう。

 

「さて、ともあれ……今の状況で俺がやるのは、TVの中の世界の探索だな。明日からは、少しずつ忙しくなりそうだ」

 

 そう告げる俺の言葉に、美鶴は笑みを浮かべるのだった。

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