転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3657話

 鳴上と花村がペルソナに覚醒した翌日……その日の日中は特に何が起きるでもなく時間が流れていく。

 ちなみに鳴上と花村は昨日の件……学校をサボってTVの中の世界に行っていた件で教師からかなり怒られたらしい。

 もっともTVの中の世界の件については、今のところ秘密だ。

 ……というか、もしそれを言っても信じる者が一体どれだけいるのやら。

 そんな訳で、花村と鳴上は学校をサボって遊んでいたという事になった。

 八十神高等学校はそこまで進学校といった訳でもないので、多少サボったところで特に何か影響があったりはしないと思うが。

 勿論、内申書とかそういうのに多少なりとも影響してくるだろうけど。

 特に鳴上は、まだ八十神高等学校に転校してからそんなに時間が経っていない。

 それだけに教師の中には不満に思う者も出て来るだろうし。

 

「よし、じゃあ行くぞ。……けど、こっちでいいのか? ジュネスから行かないとクマには会えないだろ?」

 

 放課後、俺は何度も来ている山の中……天城屋旅館から見える山の中で、鳴上と花村に向かって言う。

 これから行われるのは、TVの中の世界に行ってペルソナを使って戦闘の訓練だ。

 ジュネスの家電売り場にあるTV……スタジオに繋がっているTVではなく、公園に繋がっている俺の映像スクリーンから中に入るのを希望した2人にそう言う。

 ちなみにここにいるのは、俺、鳴上、花村……そして美鶴、ムラタ、五飛、堂島の合計7人だ。

 見事なまでに、これから戦闘を行うといった面子だ。

 実際、これから行うのはシャドウとの戦闘である以上、この面子が揃ってもおかしくはない。

 とはいえ、ペルソナ使いの初心者2人に、氷系の攻撃魔法が得意なアルテミシアを使う美鶴、京都神鳴流を使うムラタに、気による身体強化を得意とする五飛、日本刀を持つ堂島。

 そして俺は言うまでもなく……うん、見事なまでに攻撃特化だな。

 実際にはアルテミシアは回復魔法も相応に得意だし、完全に攻撃だけという訳でもないんだが。

 

「何となくこっちの方がいいと思って」

「悠がそう言うんだから、俺もそれで構わないですよ。それに……ジュネスの家電売り場はそれなりに客もいるんで、TVの中に入る光景を見られるのはちょっと困りますし」

 

 花村にしてみれば、ジュネスの中でTVの中に入るのを見られるというのは致命的だろう。

 見つかったのが足立を警戒して見回り中の刑事とかなら、まだいい。

 足立の件も稲羽署の中では知られている筈だし。

 だが、買い物に来た客に見られた場合、それはジュネス的にも妙な噂によって、風評被害を受ける可能性がある。

 ……いや、実際にTVの中に入っている以上、それが風評被害なのかどうか、俺にはちょっと分からないが。

 ともあれ、花村としてはその辺について考える必要があって、それで見つかる心配のない俺の通信機の映像スクリーンから中に入ると決めたのだろう。

 もっとも、山菜を採りに来たり、猟師がいたりするので絶対に安全という訳でもないのだが。

 とはいえ気配で誰かが近付いてくるのは分かるが。

 もっとも、ここで俺達が中に入ると誰もここに残らず、空中に映像スクリーンが浮かんでいるだけとなるので、誰が近付いてきても判断は出来ないが。

 こうして考えると、やっぱり大広間で映像スクリーンを展開した方がよかったような気がするな。

 量産型W辺りを連れてきて護衛というか、近付いて来た相手を惑わせるといった手段でも構わないが。

 ともあれ、何となくこうして山の中でという事にしたものの、次からはもっときちんと考えて行動した方がいいか。

 

「分かった。じゃあ中に入るぞ。いつシャドウと遭遇してもいいように注意しろ」

 

 そう言い、俺は映像スクリーンの中に入るのだった。

 

 

 

 

 

「うひぃ、やっぱりこうして何度来ても、TVの中の世界はちょっと怖いな」

 

 TVの中の世界にある公園の中で、周囲を見ながら花村が言う。

 その顔にはクマから貰った眼鏡が掛けられている。

 それは鳴上も同じだ。

 それ以外の面々……俺を含めた他の面々には、顔の上半身を隠す仮面がある。

 相変わらず、眼鏡とは違って違和感がある。

 ダンバイン世界の恐獣の骨に魔法的な処理をして生み出されたこの仮面は、TVの中の世界に存在する霧を無効化――という表現が正しいのかどうかは不明だが――する特性を持つ。

 公園に漂っている薄らとした霧は勿論、公園の周辺に存在する濃霧すらもこの仮面は無効化する事が出来て、それによって初めてこのTVの中の世界を探索出来るのだ。

 

「さて、じゃあまずはシャドウを見つける必要があるんだが……どうやって見つけるかだな」

 

 TVの中の世界での行動で一番重要なのはそれだった。

 そして一番重要でありながら、見つけるのが難しいのも事実。

 あるいはペルソナを使いこなす訓練という事なら、美鶴がアルテミシアで相手をしてもいいし、もしくはムラタや五飛が戦ってもいい。

 はたまた、こちらはどちらの訓練にもなるが、堂島が戦いを挑んでも構わなかった。

 その辺が具体的にどうなるのかは、それこそ俺が考えるのではなく、美鶴が考える事だろう。

 現在この場にいる者の中でペルソナに一番詳しいのは間違いなく美鶴なのだから。

 ……問題なのは、同じペルソナという呼称であっても微妙に違う点があるという事か。

 それこそ、現実世界で召喚出来なかったり。

 それでも似ている場所が多い以上、ここで模擬戦を行うというのは十分にありだ。

 シャドウが見つからなかったら、それでもいいかもしれないな。

 そんな風に思いつつ、俺は周囲の様子を確認する。

 やはり、公園の周囲にシャドウの姿はない。

 

「鳴上、花村、一応聞くけど、ジュネスのTVから入ったスタジオでシャドウが出た事はあるか?」

「いえ、ないです。ただ、俺達もそんなに頻繁にTVの中の世界に入った訳じゃない以上、何とも言えませんけど」

「悠の言う通り、俺達はまだ2回か3回くらしかTVの中の世界に入ってないんですよ。ただ、クマならその辺について詳しいんじゃないかと」

 

 クマか。

 このTVの中の世界で何に一番驚いたのかと聞かれれば、俺は素直にクマの存在と言うだろう。

 何しろTVの中の世界で生まれたというのだから。

 普通に考えれば、TVの中の世界で生まれたのだから、シャドウではないかと思う。

 だが実際には、違う。

 シャドウには基本的に自我はなく、生きてる人間を見れば本能で襲い掛かってくる。

 少し違うのは、刈り取る者か。

 俺との戦闘によってそれなりに意思疎通が出来る事が判明し、最終的には俺の召喚獣となったのだから。

 また、花村のシャドウがいたらしいが、それはあくまでも特別だろう。

 花村がシャドウを受け入れる事により、そのシャドウはペルソナとなったらしいのだから。

 そういうのを考えると、クマの存在は色々な意味で特殊なのは間違いない。

 場合によっては、レモンがクマを調べたいと言ってもおかしくはないくらいに。

 

「クマか。そう言えば俺達がこの公園に何度も来てるけど、今までクマと遭遇した事はなかったな。鳴上達はどこでクマにあったんだ?」

「どこって、あのスタジオです。えっと、柊みすずの写真とかポスターが大量にあった部屋がありますよね。あそこに入って出たら、そこにクマが」

「それは、また……だとすれば、クマはあのスタジオの辺りを拠点としてるのか。……見た感じ、お前達は自分でTVの中の世界からは出られないみたいだし、クマがいてよかったな」

 

 俺達の場合は、堂島以外なら空を飛んだり、虚空瞬動で空中を蹴ったり、あるいは単純な身体能力で地面を蹴って現実世界に通じている場所から出られる。

 だが、それはあくまでも俺達が魔力や気を使えるからだ。

 もしくは俺のように文字通りの意味で人外の存在であるというのもある。

 だが、鳴上達は当時ペルソナ使いに覚醒している訳ではなかった。

 だすれば、クマに遭遇しなければ出るに出られなかった訳だ。

 そういう意味では、鳴上達にとってクマの存在というのは非常に大きな意味を持つ。

 

「そう……ですね。言われてみれば。もしクマに会ってなかったら、どうなっていたんでしょう?」

「山野真由美と同じ運命だろうな」

 

 そう言うと、聞いてきた鳴上と花村の2人は深刻そうな表情を浮かべる。

 実際、シャドウというのは対抗手段がないとかなりの強敵だ。

 刑事として相応に身体を鍛えていた堂島が、日本刀を持ち、短いながらも五飛や俺と訓練を重ね、そうして戦ってもシャドウの中では恐らく最弱に近いだろうシャドウを相手に、若干苦戦をしつつも何とか勝てるといった戦いを行うのだ。

 鳴上にしろ花村にしろ、高校生という若さはあるものの、特に何か鍛えているようには思えない。

 聞いた話だと、部活の類も特に何かやってる訳ではなかったらしいし。

 つまり、本当にただの高校生でしかない。

 そんな2人がシャドウと遭遇して、それを倒せるかと言われれば……俺は即座に首を横に振るだろう。

 とてもではないが、どうにか出来るとは思えないからだ。

 

「クマに感謝しないとな」

「ああ。今度会ったら何か差し入れでもしよう」

「悠が言いたいことは分かる。けど、クマは何か食ったり出来るのか? そもそも、クマはその辺どうしてたんだろうな?」

 

 鳴上と花村の言葉は俺にとっても気になる。

 このTVの中の世界に食べ物はあるのかどうか。

 毎晩のようにジュネスから食料とかを盗んでいく足立の様子を思えば、恐らくTVの中の世界には飲食物の類はないのだろう。

 だがそうなると、クマはどうやって生きているのかという事になる。

 生きている以上、何らかの手段でエネルギーを補給する必要はある。

 もしくは、俺のように魔力があればそれで生きていける……といった存在なのかもしれないが。

 俺は食事を楽しむが、食事をしなければ生きて行けない訳ではない。

 俺にとって食事というのは、あくまでも料理を楽しむものだ。

 あるいはクマもそういうタイプなのかもしれないな。

 このTVの中の世界にも魔力は存在している。

 もしくは俺が感じられない、魔力とはまた別の力がそこにはある可能性もあった。

 そのような力を何らかの手段で吸収し、それによってクマは生きてきたのかもしれない。

 クマはこのTVの中の世界でいつから生きてきたのか。

 そもそもTVの中の世界は、いつから存在したのか。

 マヨナカテレビの噂がされるようになったのは、本当にここ最近と聞く。

 だとすれば、その噂が流れるようにはなって始めてこのTVの中の世界が生み出されたといった可能性は十分にあった。

 クマに聞けば、その辺についても理解出来るかもしれないが。

 いや、クマはいつの間にか自分はTVの中の世界にいたと言っていたな。

 だとすれば、クマも自分がどうして生まれたのかは分からないといったところか。

 

「クマに色々と聞きたいところだが……ここに今までクマが来た事がないんだよな。多分、あのスタジオにクマは住んでるんだろうけど」

 

 この公園はTVの中の世界とはいえ、外だ。

 それと比べると、ジュネスの家電売り場にあるTVから繋がっている場所はスタジオで一応室内だ。

 TVの中の世界に雨が降ったりするのかは分からないが、それでも寝るのなら外よりも中の方がいいだろう。

 ……あのスタジオの中で寝泊まりをするのは、それはそれで落ち着かないような気もするが。

 

「クマはアクセルさんの事を怖がってたみたいですし、それも影響してるんじゃないですか?」

 

 花村の言葉に反論は出来ない。

 実際、クマは最初俺の魔力を感知したのか、もの凄く怖がっていた。

 もっとも少し話したところで、あっさりと警戒を解き、大センセーとか呼び始めたが。

 ちなみにセンセーは鳴上らしい。

 何でも、TVの中の世界に誰かが入ってくる事が多いらしい。

 多分だが、それは山野真由美であったり、足立であったり……そして俺達だろう。

 そうして多くの者がTVの中の世界に入ってきた結果、興奮か、恐怖か、もしくはもっと別の理由からか。とにかくシャドウが暴れやすくなったらしい。

 で、鳴上や花村はその件について解決して欲しいと頼まれたとか。

 それってつまり、足立を捕らえろって事なんだよな。

 足立以外でTVの中の世界に入っているのは俺達だけだし。

 つまり、そういう意味でも俺達と鳴上達の目的は一致してる訳だ。

 堂島としては、まだ完全に納得した訳ではないようだが。

 

「じゃあ、シャドウが見つかるまでは私が訓練をしよう。……2人揃って掛かってくるといい」

 

 いつの間にかそういう風に話が決まったらしい。

 美鶴のその言葉に、鳴上と花村は驚きつつも、やがて真剣な表情で美鶴を睨む。

 普通なら男2人に睨み付けられるというのは、かなり迫力がある。

 だが美鶴の場合、それこそ今までの経験から全く怯えた様子もなく……

 

「では、行くぞ。ペルソナ!」

 

 そう叫ぶと、召喚器を使いアルテミシアを召喚するのだった。

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