転生とらぶる2   作:青竹(移住)

964 / 2196
3671話

 里中と堂島がペルソナ使いとして覚醒した翌日……

 

「全員、準備はいいな? 行くぞ」

 

 ジュネスにある家電売り場の大型TVの前で全員に確認する。

 この場にいるのは、俺、美鶴、ムラタ、五飛、堂島、鳴上、花村、里中の合計8人。

 この8人で、これからTVの中の世界に行って雪子を助け出す予定だ。

 いや、実際にはTVの中の世界にはクマがいるので8人と1匹か?

 もっともクマはペルソナを使ったり出来ないので、あくまでも探索役だが。

 俺の言葉に堂島だけが微妙に不満そうな様子を見せる。

 堂島は刑事である以上、俺達はともかく、学生の鳴上達はTVの中の世界に連れて行きたくないのだろう。

 だが、自分のペルソナを受け入れる為には仲間の……友人の力が必要だ。

 もしかしたら必要はないかもしれないが、それで連れて行かず、結果として雪子が自分のシャドウを受け入れられずに殺されるような事があったら取り返しがつかない。

 その為、堂島も鳴上達を連れていくのに賛成したのだ。

 不承不承……本当に不承不承といった様子だったが。

 

「じゃあ、中に入るぞ」

 

 そう言い、俺達は中に入る。

 ちなみに昨日までは俺……もしくはTVの中に自由に出入り出来る誰かと一緒でなければTVの中の世界に入れない堂島だったが、ペルソナ使いとして覚醒した為か、今は普通に中に入れる。

 そうして全員で中に入ると……

 

「待ってたクマ!」

 

 俺達が来たのを確認したクマが、嬉しそうな様子で近付いてくる。

 これを見ると、最初に俺と会った時に怯えていたとは全く思えないな。

 

「すぐに雪子のいる場所……昨日の場所まで行きたいが、大丈夫か?」

「大センセーの言う事なら、クマは頑張るクマよ!」

 

 そう言い、俺達は雪子のいる場所に向かう。

 スタジオから出て、そのまま真っ直ぐに案内される。

 

「クマ、このTVの中の世界に俺達や雪子、これからいく場所にいる連中の他に、誰かいるか分かるか?」

 

 雪子のいる場所に向かう途中、ふと気になってクマにそう尋ねる。

 そんな俺の言葉に、日本刀を持った堂島がピクリと反応した。

 一体俺が誰についての事を聞いてるのか、すぐに分かったからだろう。

 

「うーん……いるような、いないような……ちょっと分からないクマね。クマも鼻が利くけど、それでも離れすぎてると分からないクマよ」

 

 鼻が利く、か。

 つまり嗅覚で雪子のいる場所を見つけたのか。

 単純には比較出来ないが、犬並の嗅覚を持ってそうだな。

 そんな風に思っていると、今度は美鶴と里中が反応する。

 まぁ、女だし……臭いとかそういう風に言われると気になってもおかしくはないか。

 とはいえ、今日はまだシャドウと戦ったりといった激しい運動はしていない。

 また、昨夜はゆっくりと休むのが最優先だったので、美鶴を抱いたりもしていない。

 体臭とか、そういうのはあまり気にならないと思う。

 それでも犬並の嗅覚を持っているのなら、気になってもおかしくはないと思うけど。

 にしても、出来れば足立のいる場所にこうして案内して貰えると楽だったんだが、どうやらそう簡単にはいかないらしい。

 

「ただ、その足立って人の持ち物があれば……もしかしたら見つけられるかもしれないクマ」

「足立の持ち物か」

 

 クマの言葉に堂島に視線を向ける。

 俺の視線を受けた堂島は、即座に頷く。

 

「分かった。今日の探索を終わった後で、すぐ稲羽署に連絡して用意して貰おう」

 

 足立がTVの中の世界に逃げ込んだのは計画的なものではない。

 早紀をTVの中に入れようとしたのを俺が止めて、そこに堂島が入ってきた事によって捕まったのが原因だ。

 そうである以上、自分の私物を全て整理してからという訳ではない以上、足立の所有物はそれこそ幾らでもある。

 また、足立の住んでいた場所も家宅捜索をされているので、そちらでも足立の所有物を手に入れるのは難しい話ではない。

 ……何故かキャベツが大量にあったらしいが。

 

「足立の件はそれでいいとして……ほら、見えてきたぞ」

 

 そう言い、俺は視線の先に存在する建物……雪子の城とでも呼ぶべき建物に視線を向ける。

 あの建物の中に雪子がいるのは間違いなく、それを見た里中はやる気満々といった様子を見せていた。

 里中にしてみれば、今日で絶対に雪子を助けるつもりなのだろう。

 やる気が空回りしないといいんだが。

 里中もペルソナ使いとして覚醒した以上、その辺については大丈夫……だと思いたい。

 

「全員、準備はいいな?」

 

 一応確認の意味を込めて全員に尋ねる。

 その言葉に、全員がやる気に満ちた表情で頷いていた。

 そうして雪子がいるだろう建物の中に入る。

 すると即座に襲ってくるシャドウ達。

 まるでこっちを待ち構えていたと言いたげな……いや、あるいは本当に何らかの理由でこっちの存在を感知して待ち受けていたのかもしれないな。

 ともあれ、今の状況を考えると考えるよりもまず先に行動に移した方がいいか。

 

「里中、堂島!」

 

 そう指示を出すと、堂島はすぐに、そして里中は若干遅れながらも堂島に続く。

 指示に対する対応の速度は、堂島がそれなりにTVの中の世界での戦いの経験があるからというのが大きい。

 里中は以前にTVの中の世界に来た事はあったらしいが、その時は特に何があった訳でもないみたいだし。

 昨日初めてTVの中の世界でシャドウを見て、ペルソナ能力に覚醒したのだから。

 その辺の状況を思えば、経験の差というのは大きい。

 襲ってきたのは、既にお馴染みと言ってもいいシャドウ……空中に浮かぶゼブラ模様の丸い形をして大きな口を持つシャドウ。

 そのシャドウを前に、堂島と里中は同時にペルソナを召喚する。

 里中はどこからともなく現れたカードを蹴って砕き、堂島は殴ってカードを破壊する。

 

『ペルソナ!』

 

 その声と共に召喚される2体のペルソナ。

 里中が召喚したペルソナは、女っぽいスタイルをしている。

 堂島が召喚したペルソナは、水で出来たゴーレムとなっていた。

 堂島の方はシャドウとして現れた時と似てはいるが、鎧がシャドウの時よりもシャープに……そう、騎士っぽい感じになっている。

 

「行って、トモエ!」

「ワダツミ、お前の力を見せてみろ!」

 

 それぞれ里中と堂島の指示に従い、トモエとワダツミと呼ばれたペルソナはシャドウを攻撃する。

 さすがペルソナと言うべきだろう。

 生身では堂島もそれなりに苦労をしていたシャドウを相手に、数秒で倒す事に成功する。

 

「これは……」

 

 そんな自分のペルソナの強さに驚きの声を上げるのは堂島だ。

 まぁ、分からないでもない。

 堂島がペルソナを使えなかった時は、シャドウを相手に日本刀を使って必死に攻撃をしてようやく倒せていたのだ。

 それがペルソナを使えるようになると、こうしてあっという間に倒してしまったのだから。

 これはペルソナを使わずに生身でシャドウと戦った事がない里中には理解出来ない感覚だろう。

 まぁ、安全の為を思えばそんな経験はない方がいいんだろうが。

 

「初めてペルソナを使ってみた感じはどうだ? 鳴上達のようにある程度訓練をしてから……といった事は出来なかったけど」

 

 雪子を助けるのを急がないといけない。

 堂島と里中は昨日ペルソナ能力に覚醒したばかりだ。

 この2つの理由から、半ばぶっつけ本番での戦いとなった。

 それ以外にも、俺を含めて腕利きが多く揃っており、いざという時にフォローが出来るというのも、この場合は大きかったが。

 

「ああ、凄いなこれは。……正直なところ、ペルソナを使えるだけでシャドウとの戦いがこんなに楽になるとは思っていなかった」

「その辺の違いが分かるのは、堂島が実際に生身でシャドウと戦っていたからというのが大きい。……その経験は決して意味のないものじゃない。これからの戦いの中でそれなりに役立つ」

 

 そう言うと堂島は疑問の視線を向けてくる。

 生身で戦った経験が役立つと言われても、それを素直に信じることが出来なかったのだろう。

 とはいえ、これは別に冗談でも何でもない。

 それなりに戦いに慣れている者ならともかく、堂島を含めてこの事件の中でペルソナ使いとなった者達は、どうしても大なり小なりその力に振り回される事がある。

 今回のように、生身では非常に苦戦をするシャドウを、ペルソナならあっさりと倒せるのだ。

 その辺の感覚の違いを理解するまでは、自分の感覚に齟齬が生じる。

 そうなると、最悪……本当に最悪の場合だが、ペルソナがこうして楽にシャドウを倒せるのなら、ペルソナを使わずに生身でシャドウを倒せると判断して、大怪我を負うといった事にもなりかねなかった

 ペルソナを使うようになってから相応に時間が経過すれば、その辺の感覚の齟齬についてもある程度対処出来るのだろうが。

 

「ともあれ、何にせよ経験というのはあって悪い事じゃない。……取りあえずペルソナを使えるようになったんだし、先に進むぞ。出来るだけ早く雪子を助けたいし」

「分かったわ!」

 

 俺と堂島の会話だったが、その会話を聞いていた里中がそう叫ぶ。

 まさにやる気満々といった感じだ。

 自分の親友を助けるのだから、そこまでやる気に満ちていてもおかしくはないが。

 そんな里中のやる気に引きずられるように、俺達は建物の中を進む。

 途中で何度もシャドウに襲撃されたものの、こっちの戦力は十分それに対抗出来た。

 ……いや、対抗出来るどころか、戦力過多ですらある。

 もしこっちの戦力が少ないようなら、刈り取る者や狛治を召喚しようかと思っていたんだが、その辺の必要は全くないらしい。

 それこそこのTVの中の世界にも刈り取る者が存在すれば、それはそれでこっちもある程度対処してもいいんだが。

 生憎と刈り取る者が出てくる様子はない。

 あるいはTVの中の世界には単純に刈り取る者が存在しないのかもしれないな。

 そうして進んでいると……

 

「宝箱?」

 

 五飛の口からそんな声が漏れる。

 建物の中を移動中に聞こえてきたその声に、足を止める。

 

「え? ちょっ……」

 

 そんな俺の様子に戸惑ったような、そして不満そうな様子を見せる里中。

 とはいえ、宝箱があるとなると放っておく訳にもいかない。

 タルタロスの件を知ってるだけに、余計にそう思うのだろう。

 タルタロスの中には宝箱があり、そこからは色々なマジックアイテムを入手出来た。

 だが、そのタルタロスもニュクスの件が片付いてしまうと消えてしまった。

 つまり、もうタルタロスで入手したマジックアイテムは入手出来ないのだ。

 一応俺はゆかりと一緒に……途中から美鶴達も一緒にタルタロスを攻略していたので、結構な量のマジックアイテムは入手している。

 だが、その多くは技術班に渡して研究されており、実際に使われる事はあまりない。

 いやまぁ、いざという時の為に空間倉庫に多少は収納されているが。

 とにかくタルタロスがなくなってしまった以上、マジックアイテムを入手出来なくなったのは間違いない。

 ……勿論、マジックアイテムというだけならネギま世界とかでも購入出来る。

 特に魔法球なんかは、タルタロスでもとてもではないが入手出来ないマジックアイテムだ。

 しかし同時に、世界が……いや、原作が違うという事もあり、ペルソナ世界でしか入手出来ないマジックアイテムがあったりもする。

 だからこそ、五飛が口にした宝箱を見つけたという言葉は俺にとって非常に重要な意味を持っていた。

 ジュネスや稲羽署では宝箱がなかったしな。

 何故ここで初めて宝箱があったのか。

 それは素直に疑問なんだが、今の状況でそんな事を考えていても仕方がないか。

 

「ちょっと、まずは雪子を……」

「落ち着け。雪子を助けるのを優先する必要があるのは分かるが、だからといってこの宝箱を放っておくのも不味い。もしかしたら、この宝箱の中には雪子を助ける為の何らかの重要なアイテムがあるかもしれない」

「え……それは……そういうものなの?」

 

 宝箱に反応した俺に不満を口にしようとした里中だったが、俺の言葉を聞いて態度を緩める。

 

「分からない。宝箱を開けてないし、雪子が現在どういう状況になってるのかも分からないからな。ただ、万が一がある以上は宝箱を開けていった方がいいと思わないか?」

「それは……」

「こうして話している時間も勿体ないと思うけどな」

「あー、もう! 分かったわよ! じゃあさっさと宝箱を開けてよね!」

 

 そう言う里中の言葉に、次に俺は五飛を見る。

 

「どうする? 五飛が見つけたんだし、五飛が開けるか?」

「別に俺は誰が開けても構わん」

「そうか。じゃあ……」

「あ、誰でもいいんなら、俺が開けてみてもいいですか!?」

 

 俺が開ける。

 そう言おうとしたところで、花村がそう割り込む。

 いやまぁ、どうしても俺が開けたいって訳じゃないが……罠があったらどうするつもりだ?

 

「罠があるかもしれないけど、いいのか?」

「え? その……だ、大丈夫ですよ! それに俺はここまであまり役に立ってませんし、こういう事でもやらせて欲しいんです!」

 

 そう言われると俺も止めろとは言えず……

 

「分かった、開けてみろ」

 

 そんな俺の言葉に花村は嬉しそうに宝箱を開け……

 

「えっと、塩?」

 

 拍子抜けしたように、そんな事を言うのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。