転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3672話

「これは……ちょっと待った」

 

 その言葉に皆が足を止める。

 最初の宝箱を見つけてからも進み、やがて5階に到着した俺達。

 そのまま進んでいたものの、ふと違和感があって足を止める。

 そんな俺の言葉に他の面々も素直に足を止めた。

 

「アクセル? どうしたんだ?」

 

 堂島が訝しげな様子で聞いてくるが、俺は周囲の様子を確認して口を開く。

 

「この建物について詳しい訳じゃないが、今一瞬……何か違和感があった」

「違和感? 俺は別にそんなの感じなかったが……悠、お前はどうだ?」

「え? いや、俺も何も感じなかったけど」

 

 堂島の言葉に鳴上がそう答える。

 その言葉に、堂島は改めて訝しげな視線を俺の方に向けてくるが……

 

「アクセルが言うのなら、恐らく何かあるのは間違いない」

 

 美鶴が真っ先にそう言い、ムラタと五飛もそれに異論を唱えるような事はない。

 この3人は何だかんだと俺と一緒に行動する機会が多い。

 また、俺の正体……というか能力についても十分に理解しているので、特に異論はなかったのだろう。

 そんな3人の様子に堂島は難しい表情で考える。

 堂島は俺との付き合いが短い。

 それだけに、この話をどこまで信じていいものかどうか迷っているといったところか。

 

「取りあえず、慎重に進むとしよう。何かまた違和感があったら口にする。……よりも前に、お客さんだぞ」

 

 通路の向こう側から、空を飛ぶ魚? 樽? とにかくそんな妙なシャドウが5匹姿を現す。

 

「鳴上達にやらせるから、俺達は手を出さない。……いいな?」

 

 ムラタ、五飛、美鶴に向かってそう指示をする。

 その言葉にムラタが不満そうな様子を見せたものの、結局その不満を口に出す事はなかった。

 鳴上達を鍛えなければ、雪子を助けられない……あるいはこの先の戦いで対処するのが難しくなると、そう思ったのだろう。

 ……もっとも、単純に出て来たシャドウが弱そうだからというのもあるのかもしれいな。

 

『ペルソナ!』

 

 鳴上、花村、里中、堂島の4人が一斉にペルソナを召喚させる。

 鳴上以外のペルソナは全員一度は見ているペルソナと同じだったが、鳴上だけは違う。

 

「あれは……ピクシーか」

 

 美鶴の呟く声が聞こえてきたが、その事は決して間違っていない。

 ピクシーなのは事実だった。

 有里が以前使っているところを見たことがある。

 もっとも、訓練の時に使っていた……イザナギだったか? それとはまた違うペルソナなのは間違いない。

 姿を現したピクシーは、まさに愛らしいとう表現が相応しい。

 人形のような……というか、名前通りの妖精か。

 その妖精が人差し指をシャドウに向け……電撃が放たれる。

 恐らくあれはこのペルソナ世界特有の魔法の中でも、雷系の魔法であるジオだろう。

 そうしてジオでダメージを受けたシャドウに、里中のトモエが蹴りを放って倒す。

 堂島のワダツミと花村のジライヤは他のシャドウに攻撃を命中させていた。

 

「こうして改めて見ると、他のペルソナを使えるという彼は……やはり特別な存在なのだろうな」

 

 鳴上を見ながら、美鶴がしみじみと呟く。

 恐らく鳴上と同じ力を持っている有里の事を思い出しているのだろう。

 

「複数のペルソナを使えるというのは大きいだろうな」

 

 俺自身はペルソナを使えないものの、ペルソナの特性について美鶴から色々と聞いている。

 そんなペルソナの特徴の1つに、ペルソナには明確な弱点があるというのがあった。

 例えばアギ系に弱い、ブフ系に弱い、ジオ系に弱い……といったように。

 そのような弱点は基本固定されている。

 しかし、ペルソナを自由に変える事が出来る鳴上なら、シャドウの攻撃が自分の今のペルソナの弱点なら、その弱点を持っていない別のペルソナに変えるといった方法で対処出来るのだ。

 また、それは敵の弱点を突くという点でも同じ事が言える。

 そういう意味で、自由にペルソナを変える事が出来る鳴上は戦いの中で非常に大きな意味を持つ。

 さすが主人公といったところか。

 そんな風に考えている間にも戦いは進み、やがてシャドウが全滅する。

 

「薄い紙っぽいのを落としたんだが、これが何か分かるか?」

「いわゆる、ドロップアイテムと言われる物だな。……今までのシャドウは落とさなかったのに、ここで落とすのは……まぁ、入手出来たんだしいいか」

「ドロップアイテム?」

 

 一体俺が何を言ってるのか理解出来ないといった様子の堂島。

 堂島はゲームとかやりそうにないし、そんな疑問を抱いてもおかしくはないか。

 

「ゲームとかでは、敵を倒せばその敵が何らかのアイテムを落としたりするんだよ。鳴上達なら何となく理解出来るんじゃないか?」

 

 そう言って、鳴上、花村、里中の3人に視線を向ける。

 この3人なら、そこまでのめり込むといった訳ではなくても、それなりにゲームとかをやった経験があるだろう。

 だからこそ、俺の言葉の意味を理解して頷くが……

 

「それだと、このTVの中の世界の出来事がまるでゲームみたいなもんじゃねえか」

 

 不満そうな、そして不安そうな様子で花村が呟く。

 とはいえ、実際この世界にはニュクスの件も含めて原作が存在するのは間違いない。

 その原作が、ゲーム、アニメ、漫画、小説、あるいはそれ以外の何かといった可能性もあった。

 花村が言うように、こうして敵を倒してドロップアイテムを入手出来るのを考えると、何となくゲームっぽい感じがしないでもないが。

 だからといって、この世界には原作があるなどという事を言える筈もない。

 そんな事を言えば、間違いなくショックを受けるだろう、

 いや、それはショックといった程度の軽い言葉では表現出来ない程に強い衝撃の筈だ。

 だからこそ、原作云々という話をする訳にはいかなかった。

 

「俺達が以前解決した時に挑んだタルタロスというダンジョンでも、敵を倒せばドロップアイテムがあったり、さっきのように宝箱があったりもした。そう考えれば、シャドウが関係しているとそうなるんだろうな」

 

 違和感という事なら、それこそタルタロスの方が大きかっただろう。

 何しろ月光館学園がタルタロスというダンジョンに姿を変え、しかもそのダンジョンの宝箱には現金まであったのだから。

 以前にもその現金は一体どこから出て来たのかと疑問に思ったものの、その疑問は未だに解決していない。

 これが例えば今回のように紙であったり、それ以外にも何らかのマジックアイテムや素材、あるいは消耗品の類であれば、タルタロスという存在だからで納得出来ただろう。

 だが、下手に現実感のある現金だ。

 もしかしたら月光館学園に何らかの理由で保管されている現金であったり、落ちていた現金であったりといった可能性も考えたものの、美鶴の調べでは特にそういうのはなかったらしい。

 まぁ、現金を落とすというのは自分でも気が付かないかもしれないから、その調査は完璧とは到底言えないが。

 その辺は……うん。原作のある世界だからという事で納得しておくしかない。

 微妙に、本当に微妙にだが、タルタロスで入手した現金を使ってもいいのかどうか、ちょっと迷った覚えがあったが。

 何しろタルタロスの中で入手した現金だけに、もしかしたらそれは偽札の類ではないかと思ったのだ。

 とはいえ、まさか当時の状況でそんな事を調べる訳にもいかない。

 下手に桐条グループがその辺について調べ始めたら、それこそ公安とか警察とかから怪しまれていただろう。

 だからこそ、その辺については特に気にせず、最終的には普通に使ったが。

 取りあえず入手した金……札の類は、透かしとかそういう偽造防止の仕掛けも普通にあったし。

 ともあれ、そんな訳で気にしないのが一番だと判断した。

 そういうものだと認識しておけば、それ以上は特に気になったりしない。

 いやまぁ、人によっては疑問をそのまま残すのは絶対に許容出来ないといった者もいるだろう。

 そういう者達はそういう者達で、好きに考えればいい。

 俺は割り切る事が出来たので、それについては特に何も思わなかったが。

 

「ともあれ、シャドウを倒したんだ。いつまでもここにいないで、進むぞ。……そう言えばアクセルが言っていた違和感というのはどうなった?」

 

 美鶴の言葉に、その件もあったなと思い出す。

 シャドウとの戦闘があったので、その件についてはすっかり忘れていた。

 

「取りあえずこのまま進む。それでまた何か違和感があったら、その時に言う。……具体的にどういう違和感なのかが、ちょっと説明しにくいんだよな」

 

 違和感があるのは間違いないが、それがどういうものなのかと言われると、それに対して素直に答える事は出来ない。

 だからこそ、違和感という表現をしているのだから。

 

「分かった。では進もう」

 

 美鶴の言葉に頷き、通路を進み始め……何度かシャドウとの戦闘を繰り返していると……

 

「待った、ここだ。ここに違和感がある。具体的にどういう違和感なのかは、ちょっと分からないが……」

「同じような通路が続いているのを考えると、もし何かがあっても判断しにくいのは間違いないな」

 

 五飛のその言葉に、改めて俺は通路を見る。

 実際、この通路はどこまで行っても同じような作りになっており、もし何らかの違和感があっても、それがどのようなものなのかを見つけるのは難しいだろう。

 同じ建物である以上、建築様式……もしくは通路の壁紙とかそういうのが同じであっても、特におかしな事はないのだが。

 

「なら、こうしておくか」

 

 パチンッ、と指を鳴らして炎獣を作る。

 

「おわぁっ!」

 

 いきなり生み出された犬の炎獣に、花村が驚きの声を上げる。

 実際に声を上げたのは花村だけだったが、それ以外の面々も驚きの表情を浮かべているのは間違いない。

 唯一、以前堂島の護衛として炎獣を使った事があったので、その堂島だけはそこまで驚いている様子はなかったが。

 

「落ち着け。これは俺の能力の1つで炎獣という。そうだな、炎で出来た疑似生命体と言えば分かりやすいか?」

「いや、炎って……白いわよ、この犬!?」

 

 里中の口から驚きの声が漏れる。

 里中にしてみれば、白い炎というのは非常に珍しいのだろう。

 ……まぁ、無理もないか。

 普通に生活していて見る事が出来る炎というのは、基本的に赤とか紫がかった青とか、そんな感じだ。

 普通の炎の中心部分が白かったりはするが、全てが白い炎というのは珍しいだろう。

 ましてや、白炎で出来た犬の炎獣というのはより珍しい。

 珍しいというか、世界で俺しか生み出せないんじゃないだろうか。

 いや、この世界はペルソナとかシャドウとか存在するので、絶対にそうだとは断言出来ないが。

 

「だから俺の魔法で生み出した存在だ。ともあれ、この炎獣にはここで待機していて貰う。俺の予想が正しければ……」

「正しければ?」

「正解は実際にやってみてのお楽しみだ。もしかしたら俺の予想が間違っている可能性もあるし」

 

 そう言うと里中は不満そうな様子を見せる。

 ちなみに美鶴や五飛は俺が何をしたいのか理解しているらしい。

 ムラタは特に気にしていないといったところか。

 ムラタにしてみれば、俺と一緒にいれば強敵と遭遇出来るかもしれないから、こうして一緒に行動してるのだ。

 そうである以上、謎解き……というか、違和感については俺に任せたのだろう。

 実際にこの違和感は俺が抱いたものなのだから、そういう意味では間違っていない。

 

「じゃあ、このまま進むぞ。……何気にこの階はシャドウが多いような気がするけど、鳴上達を鍛えるという意味ではありがたい場所だ」

 

 その言葉に鳴上は微妙な表情を浮かべる。

 鳴上にしてみれば、雪子を助けるのに必要な力さえあれば十分だと考えているのか?

 実際には雪子を助けても、足立を捕らえるまでは安心出来ないのだが。

 あるいは足立の後ろにいる相手を倒すまでか。

 実際には、足立は別に誰かに操られている訳でもないんだろうが。

 それでも足立の存在が小ボスや中ボスといった程度であるという俺の予想が正しければ、まだラスボスが……場合によっては裏ボスや隠しボスといった存在がいてもおかしくはない。

 そういう連中を倒す事によって、初めてこの事件は本当の意味で解決するのだろう。

 この世界の原作とかそういうのを知らない鳴上とかには、その辺の事情について言ったりは出来ないけどな。

 

「望むところだ。ここで自分を鍛えることによって、足立を捕らえられるかもしれんのだ。そうである以上、ここで手を抜くようなことをするつもりはない」

 

 やる気満々の堂島。

 堂島にしてみれば、元々足立を捕らえる為にTVの中の世界に入って、しかもペルソナ使いにまでなったのだ。

 そうである以上、その為になるのなら手を抜いたりといった事は絶対にしない。

 寧ろ強敵と戦う事によって自分が鍛えられるのなら、シャドウとの戦闘は望むところといったところだろう。

 ……五飛と訓練をしていた筈なのに、何でムラタ系統になったんだろうな。

 いや、あくまでも堂島が強敵を求めるのは足立を捕らえる為で、足立を捕らえたら今のような性格ではなくなる筈。……なくなると思う。……なくなるといいなぁ。

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