転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3673話

「え……」

 

 シャドウを倒しながら通路を移動してたところ、不意に鳴上が驚きの声を上げる。

 無理もない。視線の先……通路の端には犬の炎獣の姿があったのだから。

 普通に考えれば、ここに犬の炎獣がいる筈がない。

 何しろ俺達は犬の炎獣をその場に残して先に進んだのだから。

 だが、実際に犬の炎獣がいるのを見れば、それは明らかにおかしい。

 なるほど、これが違和感か。

 犬の炎獣の側には、幾つかの戦利品と思しき物がある。

 具体的には、俺達がいない間にシャドウが犬の炎獣を襲い、それを犬の炎獣が反撃して倒したのだろう。

 それ事態は別に構わない。

 犬の炎獣もある程度の自我はあるので、シャドウに攻撃されても黙っているといった事はまずないのだから。

 とはいえ、これ……じつは結構いいんじゃないか?

 シャドウにとって、炎獣もきちんと敵と判断している。

 それはつまり、雪子がいるここ……まぁ、ダンジョンと言ってもいいか。そのダンジョンにある程度等間隔に炎獣を置いておけば、それを狙ってシャドウが攻撃してきて、ドロップアイテムを入手出来る。

 もっとも、ドロップアイテムが出る確率そのものはそこまで高くないので、あまり期待は出来ないが。

 ただ、鳴上達が戦わないシャドウを倒して何らかのドロップを入手出来るのなら、それは俺にとっても決して悪くない。

 副業……という表現は少し違うかもしれないが、それでもやらないよりはやった方がいいだろう。

 このTVの中の世界も事件を解決すれば、もしかしたらタルタロスと同じように消えてしまうかもしれないのだから。

 その前に出来るだけマジックアイテムや素材になりそうな物、あるいは珍しい何かを可能な限り入手しておくのは当然だった。

 

「アクセル、これはどういう事だ?」

 

 犬の炎獣を見て動きが止まっていた堂島が、そう俺に尋ねてくる。

 俺が違和感があると口にし、こうして犬の炎獣を用意しておいた事から、何があったのかを十分に理解しているのだろう。

 とはいえ……

 

「そう言われてもな。残念ながら俺も全てを完全に理解してる訳じゃない。ただ、これはあくまでも予想だが、この通路は一定の距離でループしてるんだと思う」

「ループ……?」

「ああ、さっきのドロップの話もそうだが、ゲームを……RPGをやった事があるのなら、もしかしたら似たようなギミックを知ってるんじゃないか?」

 

 俺も最近はあまりゲームをやっていない。

 魔法球の中に入れば、いわゆるオフラインゲーム……1人で遊ぶようなゲームは出来るが、オンラインゲームをやるとなると、魔法球は使えないしな。

 あるいは魔法球の中でだけ完結しているようなオンラインゲームとかは、技術班なら作れるかもしれないが。

 ともあれ、俺は最近のゲームはやっていないので何とも言えない。

 ましてや、ペルソナ世界のゲームはどういうのがあるのか分からないし。

 今度ゲーム機やソフトを大量に集めて魔法球の中にでも入れておくか。

 技術班が興味を持てばやるだろうし、もしかしたら技術班がシャドウミラーの技術を使って何らかのゲーム……いや、ゲーム機を作るかもしれない。

 技術班の作ったゲームなら、どの世界でも普通に売れそうだ。

 もっとも、世界によって使っているゲーム機も違う。

 そう考えると、やっぱりゲームだけじゃなくてゲーム機も売った方がいいのかもしれない。

 とはいえ、幾らゲーム機の性能が高くてもそれが必ずしも売れる訳じゃないのは、色々な世界を見てそれなりに理解している。

 例えば、値段。

 幾ら高性能であっても、ゲーム機に5万円も6万円も……場合に寄っては10万円も掛けるかと言われれば、微妙なところだろう。

 勿論金に余裕のある大人ならそのくらいの値段は普通に使うだろうが、そういう大人の数はどうしても限られてしまう。

 どの世界であっても、スペック的には間違いなく最先端なのに、値段のミスであったり、ゲーム機として開発したのに何故か責任者がゲーム機じゃないとか言ったり、今までは売れたから次も売れるだろうと傲慢に考えていたり……そんな諸々で失敗ハードと呼ばれる事になるのは珍しい事ではない。

 そんな訳で、もし売るのならしっかりと考えて市場のニーズに合わせたゲーム機を発売する……のが普通だ。

 普通なんだが、技術班の作るゲーム機だと、それこそ技術的に色々な世界の最先端をぶっちぎるようなものであってもおかしくはなく、宣伝は最小限で売っても、最初はあまり売れず……だが、ある程度影響力のある者がそれをやれば絶賛して、売れに売れるという未来が予想出来る。

 それこそフルダイブVRとか、そういうのを作っても……うん。技術班ならおかしくはない。

 それを世界が受け入れるかどうかは別だが。

 

「それで、アクセル。これからどうするんだ?」

 

 堂島の言葉で我に返る。

 どうやらゲーム機について考えすぎていたらしい。

 うん。……まぁ、ホワイトスターに戻ったら、レモンかマリューにその辺の話をしてみても面白いかもしれないな。

 そう思いながら、堂島に……いや、他の面々に向かっても口を開く。

 

「さっきも言ったが、俺達はいわゆるループをしてるんだと思う。つまり、この通路を真っ直ぐ進んでも、結局この場所に戻ってくるように」

「それは分かった。ならどうすればいい?」

「普通に考えれば、このループ状態を抜け出す為に謎解きをするんだろうな」

「謎解きって……いや、普通に考えれば? どういう事だ?」

「簡単な事だ。つまり……」

 

 そこで言葉を一旦切る。

 そして壁……それも建物の作りからして、中心部分のある方の壁に向かって拳を振るう。

 すると俺の拳はあっさりと壁を破壊する。

 

「な……」

 

 堂島が、そして鳴上達が驚きの表情で俺を見ていた。

 一体何をしているのか、と。

 ただし、美鶴、ムラタ、五飛の3人は全く驚いてはいない。

 俺が何をしようとしているのか、今の行動だけで十分に理解出来たのだろう。

 

「通路がループしてるのなら、ループしてない場所を進めばいい」

「いや、パンがないからお菓子を食べればいいとか、そういう問題じゃないと思う」

 

 俺の言葉の元ネタに気が付いた鳴上が、呆れたように言う。

 

「普通ならループの仕掛けを解除するとかするんだろうが、幸か不幸か俺達は力でどうにか出来るだけの実力がある」

 

 多分これ、原作だとループしないように謎解き――と表現してもいいのか微妙だが――をして進むんだろう。

 しかし、この世界は原作と大きく違う。

 俺がいる時点で、原作通りの流れになる筈がない。

 そして俺は力こそパワーと言わんばかりに、この状況を謎解きせずにどうにか出来る手段が幾つもある。

 その中で一番単純で手っ取り早いのは、壁を壊して進むというものだった。

 

「えー……」

 

 何故か呆れたような声を出す里中。

 

「ちなみにどうしても俺の手段が嫌なら、里中はループの仕掛けを解除してから進んでもいいぞ?」

「う……それは……」

 

 それは嫌なのか、里中もそれ以上は不満を口にしない。

 いや、別に呆れてはいたが不満を持っていた訳でもないのか。

 もっとも、ループの仕掛けを解除して進むというのは、悪い話ばかりではない。

 具体的には、宝箱とかそういうのがあるのを見つけられる……かもしれないのだから。

 ただ、それはあくまでも『かもしれない』であって、絶対に宝箱を見つけられるという訳ではない。

 ましてや、このダンジョンは原作が始まった序盤の場所だろうと予想出来るので、もし宝箱があっても中身はそこまで高価な、あるいは高性能なマジックアイテムが入ってるとは限らない。

 とはいえ、俺はTVの中の世界でマジックアイテムを出来る限り集めようとしていたので、その方針と矛盾すると言えばそれも間違いないんだが。

 ただ、まだ序盤であるというのもあって、そこまで苦労をしてまで宝箱を確保したいかと言われれば、それは否だ。

 ……まぁ、世の中のゲームの中には序盤に隠し通路の先に強力な武器があったりといった事はあるが、普通に置かれている宝箱にそういうのが入ってるような事はないだろう。

 

「どうする? 里中がここを通るのが不満なら、ループの仕掛けを解除してから進んでもいいんだが」

「い、いい」

 

 里中も面倒なのは嫌なのか、最終的に俺の言葉に従う。

 こう言うのも何だが、里中は見るからに運動が得意そうではあるが、頭を使うのは決して得意そうには見えないしな。

 そう考えると、寧ろこうして強引にショートカットをするのを喜ぶのは、里中なんじゃないか?

 

「じゃあ、話は決まりだな。……行くぞ」

 

 そう告げ、壁の穴を広げながら進む。

 

「お?」

 

 壁の中に入った俺は驚きの声を上げる。

 てっきりずっと壁が……それこそコンクリートだったり何かだったりが詰まってると思ったんだが、特に何かが詰まってるといった様子もない。

 そこには何もない大きな空き部屋があった。

 ここはTVの中の世界だけに、何があっても不思議ではないのだが。

 それこそ、強力なシャドウがここにいても、俺は特に驚いたりしなかっただろう。

 ん? いや、ちょっと待てよ?

 もしかしたら隠し扉とかそういうのがあって、普通にこの部屋の中に入れるようになっていたりするのか?

 

「敵はいないか」

 

 残念そうに呟くムラタ。

 通常のルートとは違う場所である以上、イレギュラーな存在……強力なシャドウがいるかもしれないと期待でもしていたのか?

 実際にその可能性がないとは言えない。

 通常では通れない場所を通っている以上、イレギュラーがあってもおしくはないのだから。

 

「このまま進むぞ」

「進むって、どっちに向かうクマ? まさかここで大センセーみたいなことをするとは思わなかったから、どこに向かうのか迷うクマけど」

「そうだな。取りあえず真っ直ぐだ。俺達がここに入ってきた場所の正面から出てみる。そこに何があるのか分からないけど、どうせ今の状況だとそれは変わらないしな」

 

 別に真っ直ぐ進む必要はない。

 この空間は正方形のような形をしているが、右や左の壁を貫いても構わなかった。

 それでも真ん中としたのは……ぶっちゃけ、何となくだ。

 勘という訳でも……ましてや、念動力がそうした方がいいと主張した訳でもない。

 本当に何となく選んだだけである以上、もし誰かが他の方向に行きたいと言えば、俺も特に考えずそれに従っただろう。

 だが、誰も俺の言葉に異論を唱える事はなく、そのまま入ってきた場所の正面に向かって同じく壁を破壊する。

 すると少し離れた場所の壁……ちょうど俺が破壊して入ってきた向かいにある壁に扉があるのを発見する。

 

「どうやら当たりだったみたいだな」

「嘘……本当にこんなに力ずくで?」

 

 里中が信じられないといった様子で言う。

 里中にしてみれば、こうも乱暴な方法で扉を見つけられるとは思わなかったのだろう。

 もっとも、扉があるからといって、この扉が先に進める場所なのかと言われれば、俺も素直に頷くことは出来なかっただろうが。

 とにかく、この扉の中がどうなっているのかは実際に入ってみないと分からない。

 

「中に入るぞ。……宝箱でもあればいいんだけどな」

「部屋の中に宝箱か。……アクセルが言うようなゲームなら、そういう展開もめずらしくないのか?」

「どうだろうな。気になるなら、堂島もゲームくらいはやってみたらどうだ? RPGとかならともかく、パーティゲームの類なら菜々子も喜ぶんじゃないか?」

 

 菜々子の性格を考えると、父親が一緒にパーティゲームをやろうと言えば、喜んでやるだろう。

 それだけではなく、菜々子が懐いている早紀もそのゲームに参加してもおかしくはない。

 つまりこれは、早紀が堂島にアタックするチャンスともなる訳だ。

 ……その辺が上手くいくかどうかは、生憎とまだちょっと分からないが。

 実際にやってみないと、何とも言えないし。

 ただ、それでも早紀にしてみれば堂島にアタックするチャンスである以上、断るという事はない筈だ。

 

「ゲームか。……悠、お前はどう思う?」

「菜々子も叔父さんと遊ぶ時間が少なくて寂しがってるし、いいと思います」

「……そうか。やっぱり菜々子に寂しい思いをさせているか」

 

 少し後ろめたそうな様子の堂島。

 とはいえ、恐らく原作よりはマシな状況だと思うのだが。

 何しろ原作だと俺という存在がいないので、恐らく今も菜々子は……というか、堂島一家は自宅で暮らしており、堂島は刑事としての仕事で忙しかった筈だ。

 だが、俺が関与したこの世界では違う。

 堂島が仕事で忙しいのは間違いないが、その仕事はシャドウワーカー……より正確にはそれを率いる美鶴とのパイプ役だ。

 つまり菜々子が現在泊まっている天城屋旅館での仕事となり、自然と堂島が菜々子と触れ合う機会も多くなっていた。

 それだけではなく、堂島に片思いしている早紀も菜々子を可愛がっており、菜々子は寂しがっている暇はない。……いやまぁ、それでも鳴上の言葉を聞くと寂しいと思っているところはあるんだが。

 そんな風に思いつつ、俺は扉に向かって足を進めるのだった。

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