転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3675話

「宝箱を開けるのに鍵が必要なら納得出来るが、宝箱の中に鍵が入ってるって……一体なんなんだ?」

 

 宝箱の中から見つかった鍵に、花村は不満そうな様子を見せる。

 花村にしてみれば、まさかこんな事になるとは思ってもいなかったのだろう。

 あるいはもっと何かいい物が……それこそお宝の類が入ってると思っていたのかもしれない。

 

「普通に考えれば、宝箱の中には鍵が掛かっていて、それを開ける為の鍵だという事だろうな」

 

 幸いなことに、今まで俺達が開けてきた宝箱には鍵の掛かっている物はなかった。

 だがここがゲームの世界だとすれば、宝箱に鍵が掛かっていてもおかしくはない。

 いやまぁ、ゲームとかそういうのを抜きにして考えた場合、普通なら宝箱には貴重品を入れておくんだから、鍵を掛けるのは当然なのかもしれないが。

 

「鍵の掛かってる宝箱……何かレア物が入ってそうな予感!」

 

 嬉しそうにする花村。

 うーん、これは……黙っておいた方がいいか?

 素手で壁を壊す事が出来る以上、もし宝箱に鍵が掛かっていても、俺ならそれを力で強引に外す事が出来る。

 とはいえ、鍵を無理矢理壊したりすれば、何らかの罠が発動する可能性は否定出来ない。

 そうなると、やっぱり可能ならきちんと鍵で開けた方がいいのは間違いないんだよな。

 ただ、こういう鍵のある宝箱とかだと、実は鍵の掛かっている宝箱よりも鍵が少なかったりするというのはよくある。

 その場合は、何らかの手段……シャドウを倒してドロップ品として入手するのが一般的かもしれないが、そうして足りない鍵を補充するか、もしくはいっその事、幾つかの宝箱は諦めるか。

 ただし、ゲームとかなら攻略本とかでどの宝箱に何が入っているのかを前もって知る事が出来るので開けない宝箱を選ぶのは難しくはないものの、生憎と俺には原作知識がなくなっている。

 ……いや、もし原作知識があっても、どの宝箱に希少なアイテムがあるとか、そういう情報までは覚えていなかった筈だ。

 ともあれ、鍵で開けられる限りの宝箱は開けて、鍵が全部なくなったら俺が強引に開けるといった感じにした方がいいな。

 

「鍵はあった方がいいだろう。そうなると、次は右……いや、左でここに来たのだから正面だな」

 

 そう言い、俺は他の面々を引き連れてまだ壁に穴が空いてない場所に向かい……

 

「なるほど、ここでガラスの鍵を使うのか」

 

 鳴上がガラスの鍵を使って扉の鍵を開けたのを見て、そう呟く。

 とはいえ、こちらもまたいざとなれば俺の力で鍵を壊して強引に扉を開けるといった手段が使えたのを考えると……いやまぁ、鍵があるのだから別にわざわざ壊すようなことはしないが。

 それにガラスの鍵で開けないと罠があるという可能性は十分にあったし。

 そうして俺達は次の階に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「これは……明らかにボスがいそうな場所だな」

 

 騎士と戦った5階から6階、7階と攻略して8階に到着する。

 ここまで来る途中に結構な数のシャドウを倒したり、宝箱を開けてマジックアイテムを入手したりもした。

 それなりに納得出来る数のマジックアイテムを入手し、それ以外にも5階で行ったように炎獣を置いてシャドウと遭遇したら狩るようにも言っておいた。

 最終的に雪子を助けてこの城から脱出する時、シャドウを倒して入手したマジックアイテムを持ってくるように言っておいたので、これによってある程度マジックアイテムを手に入れる事も出来るだろう。

 

「早く行こうよ。雪子を早く助けなきゃ」

 

 ボスという俺の言葉で、里中がそう主張する。

 里中にしてみれば、雪子を助ける為にここまで来たのだ。

 そうである以上、躊躇う必要はないのだろう。

 実際、その判断はそう間違ったものではない。

 雪子を助ける為に来たというのも間違いではないのだから。

 

「待て。何だかんだとここまでやって来るのにお前達も疲れていただろう。少し休め」

 

 ここに来るまでの間、基本的に戦いは里中達が主に行ってきた。

 少しでも里中達を鍛える必要がある以上、それは当然のものだったが、それによってかなり疲れているのは間違いない。

 炎獣を置いてきた件は、里中達を戦わせるのとは矛盾していない。

 何しろ俺達が次の階に向かう時に炎獣をその階に残していくのだから。

 そういう意味では、里中達の戦闘を邪魔する事をしてはいない。

 

「そうだな。今は少しゆっくりとした方がいいだろう」

 

 美鶴がそう言うと、さすがに里中も不満を口にする事は出来ない。

 里中から見ても、美鶴はある意味で憧れの対象なのだろう。

 まぁ、美鶴は元々男よりも女に好かれる性格だ。

 格好良い女という奴なのだろう。

 実際、月光館学園に通っていた時もお姉様呼ばわりされて微妙に困っていたらしいし。

 あるいは年下からお姉様と呼ばれるのなら、まだ納得も出来るだろう。

 だが美鶴の場合、それこそ年上……10歳以上離れた相手からもお姉様と呼ばれていたりしたらしい。

 美鶴にしてみれば、そういう相手の対応にはちょっと困っただろうな。

 

「次は恐らくボスとの戦いになりそうだし、栄養補給でもしておけ」

 

 そう言い、空間倉庫から取り出した食料……ただし普通の料理とかじゃなくて、ブロック状の栄養補助食品を渡す。

 色々な味があるが、個人的には鉄板のチーズ味が好みだ。

 以前ジュネスに行った時に纏めて買ってあるので、色々な味がある。

 個人的には以前ネギま世界で購入した同じ商品の中でも、ポテト味が結構好きだったんだが……世界が違うからか、もしくは俺は好きだが一般受けしなかったからなのか、ジュネスには売ってなかったんだよな。

 もっとも違う世界で同じ商品があるというのは……まぁ、そんなに珍しい話じゃないか。

 スナック菓子とかでも同じのはあるし。

 

「あ、これ……フルーツ味あったらそれを食べたいんですけど」

「ああ、これ。……肉味がないんだよね。じゃあ、チョコ味で」

「チーズで」

「俺はどれでもいい。余ってるのをくれ」

 

 花村、里中、鳴上、堂島といった順番で自分の好みを口にするが、色々と突っ込みたいのを我慢する。

 というか、肉味って……あ、でもペルソナ世界ではそういうのがあってもいいのか?

 

「おい、里中! 肉味ってなんだ、肉味って! そんなゲテモノ、俺は認めねーぞ! 基本にして究極! フルーツ味こそが最高に決まってるだろ!」

「待って欲しい。チーズ味が一番売れているという状況である以上、チーズ味こそが至高」

「何よ、肉味の方が美味しくなるに決まってるでしょ! 次点でチョコよ!」

「お前達……いい加減にしておけよ?」

 

 そんなやり取りを見つつ、俺は取りあえず自分用にチーズ味を確保する。

 売ってた味の中では、チーズ味が一番好きだし。

 そういう点では、鳴上派だな。

 

「美鶴はどれにする?」

「ふむ、以前はチョコ味を食べて美味かったし、今度はフルーツ味でも貰おうか」

 

 美鶴はどうやらフルーツ味派らしい。

 いや、違うな。

 美鶴はこの手の栄養補助食品を食べる事は滅多にない。

 実際に以前食べさせたチョコ味が美味かったから、次にフルーツといった感じだし。

 だとすれば、別にフルーツ味派という訳でもないのだろう。

 もっとも、この栄養補助食品についてはそこまで過激な争いになったというのを聞いた覚えがない。

 具体的には、唐揚げにレモン汁問題、酢豚にパイナップル問題、きのことたけのこ問題、紅茶とコーヒー問題といった具合に。

 これが問題になったら、それはそれでちょっと気にならないでもないが。

 

「分かった。ムラタと五飛はどうする?」

「いらん。そもそもろくに戦っていないのだから、腹が減る筈もないだろう」

「俺もムラタと同じくいらん」

 

 ムラタと五飛はそれぞれ断る。

 別に無理に食べさせようとしてる訳でもないので、断るのならそれはそれで構わない。

 実際に戦ってる訳ではないのだから空腹ではないというのも納得出来るし。

 

「大センセー、クマは?」

 

 ムラタと五飛が断ったので、早速食べるかと思ったら……不意にクマがそう聞いてくる。

 それは俺にとって完全に予想外だった。

 そもそもの話、クマは何かを食べられるように出来てるのか?

 クマの外見は、着ぐるみだ。

 熊……と言われれば、そうか? と疑問を覚える。

 クマだと言われれば、そういうものかと納得してしまうような感じだが。

 ともあれ、そんな着ぐるみのクマがどうやって食べ物を食べる?

 というか、鳴上達に聞いたところ、クマの中には誰も入っておらず、着ぐるみがそのまま動いてる感じらしい。

 そんなクマが食事をするというのは、驚きだった。

 そもそもの話、クマはこのTVの中の世界で生きてきた筈だが、何かを食べてきたのか?

 TVの中の世界に食糧の類がないのは、毎晩のように足立がジュネスや他の場所から盗みを働いているのを見れば明らかだ。

 つまり、クマも特に何も食べたりといった事はしてないのだろうが……それでも、俺達が食べているのを見て、食べたくなったのか?

 

「渡すのはいいけど、食べられるのか?」

「大丈夫クマ!」

 

 自信満々といった様子なのを考えると、恐らく本当に食べられるのだろう。

 だが、それが具体的にどうやって食べるのかまでは分からない。

 考えられるとすれば、やっぱり理解不能の生物だから、俺には理解出来ない方法で食べるとかか?

 まぁ、その辺はそういうものだと認識しておけばいいか。

 

「何味を食べる?」

「センセーと大センセーが食べてるのと、同じのがいいクマ!」

「チーズ味だな」

 

 クマの言葉に頷き、チーズ味を渡す。

 それを受け取ったクマは、一体その着ぐるみの手でどうやっているのかと疑問に思うくらい器用にパッケージを剥ぎ、それを食べる。

 ……食べる?

 あれ、今どうやって食べた?

 何だかしっかりと見たような、見てないような、そんな不思議な感覚。

 それについて詳しく聞こうかとも思ったが、結局クマだからで納得しておく。

 元々はクマがシャドウでもないのに、このTVの中の世界で生まれたという特殊な存在だ。

 にも関わらず、何故か濃霧を見通せる眼鏡を用意していたりと、色々な意味で謎が深い。

 そうである以上、ここで俺が疑問を抱いても、それはクマだからで片付いてしまいかねない。

 俺が何かをやれば『アクセルだから』で片付けられるのと一緒だろう。

 

「さて、栄養補給も終わったようだし、いい感じにリラックスも出来たみたいだな」

 

 何味が美味いかで言い争いをしていた里中達だったが、それによって緊張も解れたっぽい。

 栄養補給も終わり、皆のやる気が満ちているのが分かる。

 ……中には里中のように、やる気が半ば暴走しているような奴もいたりするが。

 

「じゃあ、行くぞ」

 

 その言葉に全員が頷き、扉を開く。

 するとそこには……やっぱりな、と理解出来る光景が広がっていた。

 玉座のように少し高い場所にある椅子に、ドレス姿……マヨナカテレビで見た、見えないトコまで勝負仕様の雪子が座っており、下には着物姿の……恐らく、天城屋旅館で連れ去られたのだろう状態の雪子の姿があった。

 ただ、疑問なのは足立の姿がここにない事だろう。

 雪子を連れて来たのに、何故手を出していない?

 俺達が行動するのが早すぎたからとか?

 そんな疑問を抱くが、それよりも前に里中が叫ぶ。

 

「雪子!」

「千枝!?」

 

 里中の姿に驚きの声を上げる雪子。

 そんな里中の後から俺達が姿を現すと、雪子はそれにもまた驚きの表情を浮かべる。

 

『サプライズゲストの皆さん、ようこそいらっしゃいました。それとも私の白馬の王子様かしら? 雪子……待ってたわ』

 

 そう言う雪子……いや、シャドウの雪子か。

 そんなシャドウは、感極まったといった様子で言葉を続ける。

 

『それにしても王子様がこんなに来てくれるなんて、思わなかったわ! 1、2、3、4、5、6……えっと、そっちの着ぐるみは7人目なのかしら? まさに、まさにまさにまさに、これこそ私の為の王子様達! 年下、同い年、年上……更にはおじさまの王子様まで! いやーん、雪子どうしよう!』

 

 俺達を見て、これ以上テンションが高くなりようがないと思える程にはっちゃけた様子を見せる雪子のシャドウ。

 マヨナカテレビの時の様子を見ると、テンションが高い状況なのはそうおかしな話ではないんだが。

 

『でも、雪子ねぇ、どこか遠い場所に行きたいんだぁ。王子様達、私をどこかに連れて行ってくれない? 王子様なんだから、そのくらいはしくれるわよねぇ? ねぇ、ねぇ、ねぇってばぁ』

 

 どこか媚びるように言ってくる雪子のシャドウ。

 世の中にはこういう媚びる女が好みのタイプもいるんだろうが、俺はあまり好みではない。

 このシャドウよりは、本物の雪子の方が魅力的なのは間違いないだろう。

 

「うほほーい! これが噂の逆ナンクマ?」

「ちょっと待ってちょうだい。何だか王子様の中に私や美鶴さんも入ってるような雰囲気になってるんだけど!?」

『千枝……ふふふ、そうよ。私の王子様……千枝はいつだって私をリードしてくれる、強い王子様……だった』

 

 雪子のシャドウは、狂おしいような思いと共に、そう告げるのだった。

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