リクエスト中から、ノンシュガーレスさんの劇場版機動戦艦ナデシコを採用しました。
えーっと……あれ? ここはナデシコ世界の筈……だよな?
そんな疑問を抱く。
久しぶりにナデシコ世界にやって来たのだが、妙にこう……イメージが違う。
何より疑問なのは、ネルガルが何だか俺の知ってる時と比べて大きく衰退してるんだが。
俺が知ってる限り……というか経験した限りだと、ネルガルはナデシコ世界において、非常に大きな影響力を持っていた筈だ。
エリナを通してシャドウミラーと取引をすることが出来るようになったのも大きい。
ナデシコ世界を支配する……とまではいかないが、それでも1つの企業としては考えられない影響力を持っていた筈だった。
とはいえ、それで好き勝手をすればシャドウミラーからの注意がされ、最悪制裁もあるので、本当の意味で好き勝手は出来なかった筈だったが。
それでも地球で非常に大きな力を持っていたのは間違いない。
だが、そんな俺の記憶とは違い、違和感から色々と調べたところによると……この世界にもネルガルはあるし、一応大企業と呼ぶべき大きさの企業ではあるが、ナデシコ世界で最大の企業という訳ではない。
一体何があった?
いや、そう言えば最近ちょっとゲートの調子が悪いとかレモンに聞かされた覚えがあるな。
とはいえ、今のところ特に何も不具合は起こっていなかった筈だ。
俺に限ってトラブったのか?
いやまぁ、トラブル誘引体質とでも呼ぶべき俺の性質を考えれば、そういう事になってもおかしくはないのか。
そもそもゲートはシャドウミラーにとっても一種のアーティファクト……オーパーツとでも呼ぶべき存在か?
いや、違うな。オーパーツというのは、場違いな工芸品という意味で、遺跡とかかから発見される、その時代の技術力では作れない物の事だ。
そういう意味では、このゲートは別に遺跡から発見された訳ではない以上、オーパーツという表現は合わない筈だ。
ともあれそんなゲートだけに、何か異常があってもおかしくはない。
特にそのゲートを使ったのが人間ではなく混沌精霊の俺だとすれば尚更。
そしてナデシコ世界に来るつもりが……うーん、これは……多分だが、ナデシコ世界はナデシコ世界でも、俺が知ってるナデシコ世界とは違うのか?
そもそも転移した場所も火星ではなく地球だし。
そんな訳で、俺は取りあえず情報を集める為に図書館に向かう。
こういう時、日本に転移してよかったよな。
基本的に図書館は規模の大小はあれど、殆どの地域にもあるし。
何より無料で使えるというのがいい。
ここがナデシコ世界でも俺が知ってるのと具体的にどう違うのか。
それを調べるのに、図書館はちょうどいい。
……図書館はいいけど、問題は金をどうするかだな。
ナデシコ世界の金は持っていない。
宝石とかはあるけど、こういうのを売るとなると身分証とか必要だし。
勿論裏の……違法な相手になら身分証とかはいらないが。
だが、その代わり足下を見られる。
となると、やっぱりヤクザやマフィア、テロリスト……そういう連中から奪うのが一番か。
ともあれ、まずは情報収集だな。
そうして俺は通行人に図書館のある場所を聞いてそこに向かったのだが……
「マジか」
コンピュータに残っている新聞を読んで、思わずそう呟く。
このナデシコ世界、シャドウミラーが関与しなかった事もあり、俺達が辿ったのとはかなり違う道筋を辿ったらしい。
何よりも驚いたのは、アキトとユリカがもう死んでいる事だろう。
この2人がくっつくのは、俺の関与した世界と変わらない。
だが、新婚旅行に行った時に飛行機事故があって死んでいる。
俺達が関与しない……つまり、原作のままの流れでいけば、そういう流れになったのか?
原作の主人公とヒロインがエンディング、あるいは続編において死ぬというのは……ない訳ではないと思う。
とはいえ、それはあくまでも俺の予想でしかない。
世の中には数え切れない程の原作がある以上、今回のような展開があってもおかしくはない。
おかしくはないんだが……これからどうするべきだ?
ちなみに他にも色々と調べたが、俺達が関与したナデシコ世界と全く違う展開になっているのもあれば、同じ展開になっているようなこともあった。
この辺は俺にとってもかなり予想外だったが、それより驚いたのは……
「幽霊ロボット?」
図書館ではなく、街中にあるTVとかそういうのに映っているニュースで頻繁にやっているのが、この幽霊ロボットについてだ。
ヒサゴプランとかいう奴で重要な場所に、幽霊ロボットが襲撃してきたらしい。
それはこの世界の話だと、ボソンジャンプではないのか?
そうも思ったが、ボソンジャンプを使うには襲撃してきたロボットは小さいとか何とか。
多分だが、この幽霊ロボットが何らかの大きなキーになるんだろうな。
とはいえ……
「どうしたものか」
当然の話だが、現在のこのナデシコ世界において俺の知り合いは誰もいない。
ミナトやエリナといった恋人達もこの世界では当然だが俺がいないので俺の恋人という訳でもなく、養子となったルリやラピスも俺が関与していない以上は誰か他の相手の養子になってるのか、もしくは独り立ちしてるのか。
年号を見る限り、木連との諸々が終わってから……つまり原作が終了してから3年の時間が経っている。
だとすれば、ルリやラピスがどうなっているのか気になるな。
とはいえ、今の状況でどうやって見つけられるか。
個人的にはミナト、エリカ、ルリ、ラピスに会いに行きたいんだが、それはそれで難しいのも事実。
うーん、そうなると……正直なところ、どうすればいいんだろうな。
やっぱりアカツキに会いに行くのが一番いいのか?
俺の知ってるナデシコ世界程ではなくても、ネルガルが大企業なのは間違いない。
ゲートを設置する場所とかそういうのを考えても、土地は必要だ。
あるいは山の中にでも勝手にゲートを設置しても、特に問題はなかったりするんだが。
とはいえ、シャドウミラーと繋がりのある物がいないこの世界で活動するとなると、やっぱり権力や財力を持った相手との繋がりは欲しい。
ユリカの父親のミスマル提督の顔が思い浮かんだが、すぐにそれを却下する。
図書館で調べた時、宇宙軍は現在かなり弱体化……というか、冷遇されてる感じの記事が多かった為だ。
ネットの中には、左遷先の最有力候補とかいうのもあったし。
どうやら統合軍というのが新しく出来たのが原因らしい。
統合軍というのが存在するのなら、連合宇宙軍もそっちに合流するなり、吸収されるなりしてもいいと思うんだが。
まぁ、その辺は恐らく人間関係とか組織間のアレコレ、それ以外にも色々とあって今の感じになったのかもしれないが。
何しろ俺達が関与したナデシコ世界の出来事であっても、人間関係から面倒が多数起きていたし。
そんな訳で、やっぱり接触するのならネルガルという企業を率いてるアカツキだろう。
アカツキだろうが……うーん、この場合どうやって接触すればいいんだ?
そもそも落ち目であろうとネルガルが大企業なのは変わらず、そうなると会長のアカツキもかなり忙しい。
会いたいからといって、はいわかりましたとすぐに会えたりはしない。
だとすれば、アカツキのいる場所に影のゲートを使って侵入するか?
とはいえ、そうなればそうなったでアカツキに怪しい相手と認識される。
……いや、それはそれで構わないか?
アカツキが俺を怪しい存在と認識するにしろ、その後で俺と組む事にメリットが多数あると話せば……そしてメリットがあるという証拠を実際に見せればどうなるか。
これが普通の相手なら怪しい思ってこっちの言葉を聞かないだろう。
だが、アカツキは良くも悪くも企業を率いる存在だ。
特にこの世界においては、俺の関与したナデシコ世界と違い、ネルガルは落ち目だ。
その落ち目の状態から脱するかもしれないとなれば、多少怪しくても俺の話を聞くだろう。
もっとも、アカツキに会いに行って説明に戸惑っていたり、向こうの利益になるというのを見せない場合、即座に警備を呼ばれたりする可能性もあるが。
とはいえ、警備を呼ばれても俺がどうこうなる訳ではない。
混沌精霊の俺を相手に、魔力も気もないこのナデシコ世界の住人がどうにか出来る筈もないし。
あるいはボソンジャンプを使って俺をどこか遠くに飛ばしたりは出来るかもしれないが。
そんな訳で、素早く見せるには……やっぱり炎獣か?
ああ、それよりも狛治を召喚するか。
向こうでもナデシコ世界に行った筈の俺がいない事で混乱してるかもしれないし。
そうだな。狛治を召喚するのはアカツキの件は関係なくしておいた方がいいか。
とはいえ、狛治の外見は角とかがあるのを考えると……コスプレで通じるといいんだが。
ゲートを設置してみて、それが普通に動作しなかったら狛治を呼んだ方がいいか。
ゲートを設置してホワイトスターに戻れるのなら、わざわざ狛治を召喚する必要もないし。
ん? だとすればアカツキに接触する前にそっちは試しておいた方がいいな。
そう判断すると、俺は人のいない場所に行き、影のゲートを展開するのだった。
「駄目か」
日本にある、秩父山中。
その山の中でゲートを設置したものの、正常にホワイトスターにあるゲート……オリジナルであるリュケイオスとのリンクが確立しない。
これはリュケイオスの方で何か問題があったのか、あるいは俺達が関与していないナデシコ世界、つまり2番目のナデシコ世界という事が原因なのか。
その辺は俺にもちょっと分からない。
分からないが、ゲートが正常に動かないのは間違いない。
もしかして、秩父山中という場所が悪いとか? ……いや、さすがにそれはないか。
とにかく仕方がないので、召喚魔法を使い狛治を召喚する。
「アクセル、どうした? 強敵でもいるのか?」
そう言いつつ、狛治は周囲を確認する。
だが、そこにあるのは自然だけだ。
特に敵がいる訳でもないのを確認すると、不思議そうな視線を俺に向けてくる。
「何で俺が呼ばれた?」
「ちょっと面倒な事になっていてな」
そう前置きし、事情を説明する。
明治時代で生活していた狛治だが、それでも俺の召喚獣兼シャドウミラーの一員となった事によって、技術的な詳細までは分からないが、何となくそういうのだという風には理解してる。
例えれば、TVの構造とかそういうのを知ってる者は少ないが、それを使える者は多い……という表現に近いか。
「それはまた……本当に面倒な事になっているみたいだな」
「幸か不幸か、そんな感じだよ。ゲートはさっきも説明したように起動しない。いつそっちに行ける事になるのかは分からないが、取りあえず戻らなくても心配はいらないと説明しておいてくれ」
「分かった。ただ、俺は現在ネギま世界の魔法界にいる。召喚が終わって戻っても、すぐに連絡をする事は出来ないぞ」
「フェイトを頼れば、ある程度はどうにかなるだろ」
ネギま世界のフェイトは一応シャドウミラーに所属している。
とはいえ、本人は基本的にネギま世界から出るような事はない。
ぶっちゃけ、フェイトがシャドウミラーに所属しているのは半ば建前のようなものだ。
それでも俺達とは結構上手くやってるが。
唯一俺とフェイトで分かり合えないところがあるとすれば、それはフェイトがコーヒー派で、俺が紅茶派といったところだろう。
とはいえ、フェイトは生粋のコーヒー派だ。
それに対して、俺は一応紅茶派だが缶紅茶やペットボトルの紅茶……いわゆる本物の紅茶ではなく、紅茶風飲料と呼ばれる物でも普通に美味いと思える程度の紅茶派でしかない。
紅茶派の中でフェイトに対抗出来るのは、それこそネギくらいか。
後は現在通信途絶中だが、OGs世界のユウキとか。
ともあれ、紅茶やコーヒーの件では分かり合えない俺とフェイトだが、それでもシャドウミラーの一員としてやるべきことは普通にやる。
狛治を通してフェイトに連絡し、それからホワイトスターに連絡をすれば十分だろう。
あるいは狛治が通信機を使ってホワイトスターに連絡するのでもいい。
「分かった。ネギま世界に戻ったらすぐに行動する」
「そうしてくれ。取りあえずレモン達には俺は心配ないと言っておいてくれればいいから」
そうして狛治との話を終わらせ、召喚を解除する。
狛治の姿は消え、現在この場にいるのは俺だけになった。
さて、そうなるとこれからどうするかだな。
というか、ここが俺達が介入したのとは違うナデシコ世界とはいえ、それでもナデシコ世界である事に違いはない。
そうなると、この世界で特に入手したい技術なんかはないんだよな。
バッタやコバッタ、カトンボといった無人機の生産プラントは確保してるし。
あ、でも幽霊ロボットの件があったな。
もしそれを入手出来るのなら、それなりにこっちにとっても悪くない……か?
ともあれ、まずはアカツキと接触する事から始めるとするか。
そんな風に思いつつ、俺は影のゲートを展開するのだった。