転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編135話 劇場版ナデシコ編 第02話

「……君は誰だい?」

 

 俺の姿を見ても、アカツキは特に動揺した様子を見せない。

 その内心はどうなのかまでは分からないが。

 だが、それでも表面上は特に動揺らしいものはなかった。

 

「さすがアカツキだな。もっとも、俺が知ってるアカツキなら、ホテルの部屋にいきなり俺みたいなのが現れると、大袈裟な程に驚いたりするが」

 

 現在俺がいるのは、とあるホテルのスィートルーム。

 値段もかなり高額で、それこそちょっとした金持ち程度では泊まれない金額。

 ここに泊まれるのは、落ち目とはいえネルガルが未だに大企業である証だろう。

 もっとも、そういう高級ホテルだけに警備とかも万全だ。

 アカツキがこのホテルに泊まっているのも、あるいはそれを狙ってなのかもしれないな。

 正直なところ、アカツキがいる場所を見つけるのはかなり難しかった。

 ネルガルのような大企業であっても、アカツキの行動予定とかそういうのはネットやニュースとかにも流れていなかったのだ。

 他の企業とかはそれなりにその辺が表沙汰になっていたのを考えると、恐らくアカツキは意図的に自分の情報を封鎖していた。

 それを見つける事が出来たのは、ハッキングによるものだ。

 技術班謹製のハッキングツールのお陰で、俺でもネルガルのコンピュータに侵入して情報を奪えた。

 ネルガルはオモイカネというAIを開発した実績があり、ネットの防壁に対しても他の企業とかよりも明らかに上だったが、それでもシャドウミラーの技術班が作ったハッキングツールには及ばなかったらしい。

 あるいはこれが、ルリやラピスのような奴がいれば話は別だったが。

 とはいえ、ネルガルのコンピュータから盗み出した情報はあくまでもアカツキのスケジュールだけだから、許して貰いたい。

 

「君は僕を知ってるかのように言うね。ただ、僕は君を知らないんだが」

「だろうな。この歴史では俺とお前は初対面だ」

「……歴史?」

 

 そう言った瞬間、アカツキの軽薄な雰囲気が消えて鋭い……大企業を率いるに相応しい雰囲気をその身に纏う。

 

「一体どういう事か、詳しい話を教えてくれないかな? まさか、草壁のお仲間……という訳ではないと思うが」

「草壁? また、懐かしい名前を」

 

 草壁というのは、木連の中でもお偉いさんの1人だ。

 序列としては4位……いや、3位だったか?

 とにかくお偉いさんだったのは間違いない。

 正義感が強いというのは間違いないらしいが、その正義感はあくまでも草壁の正義感で、それが正しいと完全に思い込んでいる。

 他人の正義は気にせず、自分の正義こそが正しい。

 言ってみれば、それは独善だろう。

 

「懐かしい? 君はやはり木連の?」

「生憎だが違う。……そうだな。これから色々と説明したいところだが、時間に余裕はあるか?」

「……僕はこう見えてもそれなりに忙しいんだけどね。それを知った上での話かい?」

「そうだ。お前にとっては決して悪い話じゃないと思うぞ? 例えば……」

 

 パチン、と。

 指を鳴らすと右手が白炎となって猫の炎獣を生み出す。

 

「……手品かい?」

「本当にそう思ってるのか?」

 

 猫の炎獣に指示を出し、アカツキのいる机の上に移動させる。

 白い炎が猫の形をして、それで動き回っているのだ。

 俺にしてみれば炎獣は慣れた存在なので特に珍しい光景ではないが、アカツキにしてみればとてもではないが目の前の存在が何なのか疑問に思うだろう。

 

「これは、触っても?」

「構わない。敵意を持たない限り、攻撃してくることはないからな」

 

 俺の言葉をどこまで信じたのかは分からない。

 だが、それでもアカツキは猫の炎獣にそっと手を伸ばす。

 そして、炎獣に触れる。

 

「暖かい……けど、熱くはない?」

「炎獣だからな」

「……改めて聞こうか。君は一体何者だい? 僕に悪意や敵意を抱いてないのは、今のやり取りで十分分かったんだけど」

 

 その真剣な様子に、取りあえず安堵する。

 今のでアカツキが俺を怪しい存在と見なすのを止めたのが分かったから。

 ……いや、これは正確ではないな。

 今の俺は相変わらずアカツキの中では怪しい存在と認識してるだろう。

 だが、それでも自分に危害を加えるような相手ではないと認識したというのが正しい。

 

「そうだな。何から言えばいいか。……並行世界、パラレルワールド。そういう概念は知ってるか?」

「勿論知ってるさ。それで君はこの世界の並行世界からやって来たと?」

「正確にはちょっと違う。俺の本拠地は世界と世界の狭間という場所にあって、それで以前この世界……ナデシコ世界に関与した。ただ、ちょっとしたミスでそのナデシコ世界の並行世界であるこの世界に転移してきてしまった感じだ」

「ナデシコ世界……?」

 

 その名前に反応するアカツキ。

 無理もないか。この世界でもネルガルは火星にいるイネス達を助ける為に、ナデシコを派遣している。

 アキトが乗ってるのかどうかまでは分からなかったが、ユリカが艦長を務めているのはニュースになっていた。

 アキトがユリカとの新婚旅行に事故で死んでるのを考えると、この世界でもアキトはナデシコに乗っていたのだろう。

 以前アキトから聞いた話によると、アキトとユリカは小さい頃に火星で一緒に育った……いわゆる幼馴染みだったらしいし。

 そしてユリカは地球に戻った。

 そんな2人が結婚するには、やっぱりどこかで再会するしかなく、その再会がナデシコだったと。

 

「そうだ。俺達はこの世界……正確にはこの世界の並行世界だが、そこをナデシコ世界と呼んでいた。呼称の理由は、俺もナデシコに乗ったからだな」

「えっと、その……世界の名前をそんな簡単な事で決めたのかい?」

 

 戸惑う様子を見せるアカツキ。

 アカツキにしてみれば、まさか自分の住んでいた世界の名前がネルガルの製造したナデシコから来るとは思ってもいなかったのだろう。

 

「俺達……世界の狭間に存在する俺の国はシャドウミラーという名称だが、基本的にその世界と関係する世界の名前は大体そんな感じだぞ。ネギま世界とか」

「……ちょっと待ってくれ。何てそこで焼き鳥の名前の世界に? その世界の住人はそれで納得するのか?」

 

 アカツキの疑問はもっともだが、納得してるというか、諦めているというか……

 

「ネギま世界程に珍しい名前はないしな。ちなみにネギまというのは焼き鳥でも、ましてやネギとマグロの鍋でもない。ネギという人物が魔法使いだからネギまだ」

「……何だい、それは……」

 

 俺の言葉が全く理解出来ないといった様子でそう告げる。

 とはいえ、実際その世界の名前というのは俺のインスピレーション……あるいは勘でつけているものだ。

 もっとも、恐らく、これは本当に恐らくの話で何の確証もないのだが、恐らくその世界の名前はその世界の原作に関係のあるものだと思っている。

 既に俺に原作知識はないものの、それでもまだどこかに微かに残っている……のかもしれないな。

 

「その辺については気にするな。……とはいえ、この世界の名前をどうするのかは微妙なところだが。取りあえず今はナデシコ世界という呼称にしておいて、ゲートが繋がったらまた名前を変えるとしよう」

「ゲートとは?」

 

 頭が痛い……いや、頭が頭痛だといった様子で頭を押さえながら、アカツキは俺に聞いてくる。

 情報過多で、一体何を聞けばいいのか迷っているのだろう。

 

「そうだな。まずは基本的な事から説明するか。それを信じるかどうかは、アカツキが自分で判断すればいい」

「信じるも何も、この……炎獣だったかい? これがいる時点で、既に君が僕の常識を越えた存在なのは間違いないと思うんだが」

 

 そんなアカツキの言葉にそれもそうかと頷き、俺は事情を説明するのだった。

 

 

 

 

 

「……いや、驚きだね。まさかそんなことになっていたとは。そっちの……並行世界の僕が羨ましい」

 

 大雑把にだが諸々の事情を説明すると、アカツキの口から出たのはそんな言葉だった。

 アカツキにしてみれば、ネルガルがナデシコ世界において最大手の会社になっているというのは、やはり羨ましいのだろう。

 一応この世界でも上位の企業ではあるのだが。

 

「それに何より、エリナ君がアクセルの恋人に……あるいはネルガルの地位よりも、こちらの方が驚いたかもしれないな。それにハルカ君もか。シャドウミラーというのは、一夫多妻制なのかい?」

「そんな感じだな。その2人だけじゃなくて、恋人は20人くらいいるし」

「羨ましいねぇ。……うーん、いっそ僕もシャドウミラーに所属したいと思えるよ」

「本気で言ってるのなら、こっちとしては歓迎するけどな」

 

 アカツキは軽い性格に見えるし、実際に軽い性格なのも間違いないが、非常に有能なのも間違いない。

 シャドウミラーの政治班は優秀な人材は幾らいても構わないのだ。

 今ですら、魔法球を使って休憩時間を無理矢理作り、それで回している状態なのだから。

 その辺の事情を考えれば、アカツキがシャドウミラーに所属してくれるのなら、こっちとしては大歓迎だった。

 一応アカツキはパイロットとしての技量もそれなりにあるが……うん。シャドウミラー的には、実働班よりも政治班の方が多くの人を必要としているのは間違いない。

 

「えっと……うん。それもいいかなと思ったんだけど、やっぱり止めておくよ。ネルガルを捨てる訳にはいかないしね」

 

 ちっ。

 何かを感じたのか、アカツキは俺の誘いを断る。

 実際にはアカツキは政治班がかなり向いてると思うんだけどな。

 とはいえ、本人がここまで嫌がっている以上、無理に誘う訳にもいかないか。

 そもそもこっちのナデシコ世界がどうなるのか、まだはっきりと分からないのだから。

 現在はゲートが動かないのでどうしようもないものの、もしゲートが動くようになったら……うん。その時はその時で、今は特に考える必要もないか。

 面倒な事は後回しにしておく。

 

「そうか。残念だが、お前にその気がないのなら仕方がないか。ただ、もしその気になったら言ってくれ。こっちは大歓迎だ」

「ちなみに……本当にちなみにだけど、もし君の国に行ったらどういうメリットがあるんだい?」

「メリットか。まず企業ではなく国を動かせるというのは充実感的な意味で大きいと思う。それにシャドウミラーは幾つもの世界と繋がりを持っている。その為、やり甲斐という意味でも1つの世界の1企業を経営するよりもいい筈だ。また、本人が望めばだが、魔法を習得出来るし、数百年を生きる吸血鬼に戦闘訓練をつけて貰える」

「えっと、前者はともかく後者は……」

「ちなみにシャドウミラーの者は基本的に虚空瞬動……空中を蹴って空を跳ぶといった事を出来たりする」

 

 まぁ、虚空瞬動を多用するのは技術班の面々なんだが。

 エキドナや茶々丸、セシルといった面々から逃げる為に。

 

「それはまた……随分とアグレッシブな国だね」

「色々と特殊なのは認める」

 

 シャドウミラーが普通の国だと主張すれば、シャドウミラーを知っている者達から揃って突っ込みが来るだろう。

 シャドウミラーのどこが普通の組織なのかと。

 

「そんな特殊な国の一員になってくれるのなら歓迎するんだけどな。……不老にもなれるし」

「いや、そんな事は……何だって?」

 

 俺の提案を再度断ろうとしたアカツキだったが、不老という言葉に反応する。

 無理もないか。

 不老不死というのは、多くの者にとって願っても叶えられない夢なのだから。

 シャドウミラーの場合は不老ではあるが不死ではないので、例えば戦闘でコックピットをビームライフルやビームサーベルで貫かれたりした場合、普通に死ぬ。

 俺の場合は魔力や気がないので死ぬ事はないだろうが、それは俺やエヴァのように特殊な例だけだ。

 あ、でも半サーヴァントの綾子とかはどうなんだろうな。

 ともあれ、シャドウミラーに所属する者で希望する者は不老になれるのは間違いない。

 また、物語によくあるように長く生きすぎて死にたくなった場合は、受信機を外せばいいだけで、そう考えるとシャドウミラーの不老というのは、ある意味でお手軽なのだろう。

 

「不老だ。シャドウミラーに所属した者は、誰でも望めば限定的だが不老になれる」

「それは……正直なところ、とても信じられないな」

「だろうな。とはいえ、それを確認するには、それこそ年単位で俺達と一緒にいる必要があるだろうが」

 

 不老というからには、実際に年齢を重ねる……皺や白髪といった分かりやすいのを見せる必要がある。

 それを確認するのは、アカツキとしては難しいだろう。

 そもそもシャドウミラーにはエヴァがいる時点で年齢がどうとか言ってもちょっとなと思うんだが。

 あるいは混沌精霊の俺もその辺は似たようなものか。

 ともあれ、不老を確認するには色々と難しいところがあるのは間違いなかった。

 

「まぁ、俺と関わっていれば、不老以外にも色々と特典はあると思う。それで、どうする?」

「どうするとは?」

「俺と協力するかどうかだ」

「……まぁ、いいだろう。アクセルだったっけ。君にも興味があるしね」

 

 予想はしていたが、それでもアカツキはあっさりとそう告げるのだった。

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