転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編141話 劇場版ナデシコ編 第08話

 現在の火星の様子は、かなり凄い状態となっていた。

 火星の後継者の部隊とナデシコが……そして2隻から出撃したエステバリス隊が、正面から激しく戦っていたのだ。

 というか、ナデシコがアマテラスでちょっと見た感じの様子とは違うような気がするけど……もしかして、あれがユーチャリスのデータを流用して開発されたナデシコCなのか?

 その辺はちょっと詳しい事は分からないが……

 

『アクセル、俺は出る』

「アキト?」

 

 ホワイトサレナのコックピットにアキトが表示されると、いきなりそう言ってくる。

 俺達がナデシコの援軍に出るのは予定通りだったが、それでもすぐに出撃する必要はないと思うんだが。

 そんな俺の疑問に対し、ラピスが映像モニタにとある映像を送ってきたことで、何となく理解出来た。

 映像モニタに表示されているのは、2機。1機はエステバリスっぽい人型機動兵器で、もう1機は脚部のない……ジオング的なシルエットを持つ機体。

 個人的には1機が赤く塗られているのがあまり面白くはないが。

 錫杖? を持ってるのが少し気になる。

 この状況でラピスが俺にこの映像を送ってきたという事は、あの2機……それこそ動き的に赤い機体がアキトにとっては倒すべき敵という扱いなのだろう。

 そしてアキトがそのように思う相手について、俺は心当たりがある。

 それは北辰。

 まさにアキトにとっては、宿敵と呼ぶに相応しい相手だ。

 北辰の部下は全て俺が殺したから、墓で殺した奴以外に誰か部下がいない限り、北辰は自分だけで出撃してもおかしくはない。

 そしてもう1機は、恐らく唯一生き残った北辰の部下だろう。

 あるいは北辰直属の部下ではなくても、火星の後継者に所属している者を引き連れて出て来てもおかしくはないが……墓での言動から考えると、北辰はとてもではないが普通のパイロットと一緒に行動する事はないと思う。

 

「あの赤い機体は北辰か?」

『そうだ。あれは奴の……北辰の夜天光だ』

 

 そう言うアキトの顔には光のラインが走る。

 これは北辰達の実験の後遺症で、興奮したりすると浮き上がるらしい。

 つまりこれは、それだけアキトが北辰を相手に怒りを抱いているという事になる。

 

「分かった」

 

 純粋に勝敗を考えるなら、俺も一緒に戦った方がいいのだろう。

 だが、アキトの気持ちを考えた場合、ここはアキトだけに任せて俺が手を出さない方がいい。

 俺の言葉を聞き、アキトのブラックサレナが出撃する。

 その姿を見送ると、俺は何をするべきなのかを考える。

 北辰が部下を引き連れていたのなら、アキトには北辰を任せて俺が部下を攻撃してもよかった。

 だが、その部下がいない以上は俺が出しゃばる必要はない。

 アキトがピンチになったら……とも思ったが、北辰の機体と戦っているアキトの様子を見ると、一方的とまではいかないが、アキトがかなり押していた。

 しかもジオング的な機体はすでに撃破されているし。

 

「ラピス、アキトは今まで何度も北辰達に負けてきたんだよな?」

 

 アキトは北辰と……正確には北辰とその部下達に負ける度にエステバリスを強化してきたのだ。

 その結果が、今のブラックサレナ。

 アマテラスでの戦いにおいても、結局北辰はおろか、北辰の部下の1人も倒せなかったと聞く。

 その割には、随分とアキトが押してるように見えるが。

 

『相手の連携が上手かった』

 

 端的な言葉に、なるほどと頷く。

 エステバリスも基本的には連携を前提とした機体だ。

 北辰達もそんな感じで戦っていたのだろう。

 それに対して、アキトは1人。

 その状況で勝つのが難しいのは、なるほど納得出来るものがあった。

 

『それに今日は以前よりも動きが悪い』

 

 ラピスがそう言い、以前アキトと北辰が戦った映像データを送っている。

 それと今の北辰を見ると……なるほど。今日の動きは明らかに悪い。

 以前戦ったという映像データと比べると、6割……いや、7割に届いているか?

 ともかくそのくらいの動きだ。

 何故だ?

 そう考えた瞬間、思い浮かんだのは俺の拳が北辰の肋骨数本を砕いた感触。

 ナノマシンの技術が進んでいるナデシコ世界だ。

 あるいは治療技術という点でもナノマシンを使って普通に治療するよりも早く治せるのかもしれない。

 だがそれは、あくまでも予想だ。

 もしかしたらそこまで素早い治療は不可能だという可能性は十分にあった。

 そうなると、北辰は肋骨が折れた状態のまま、もしくは折れた肋骨で内臓を傷つけたまま、戦いに参加している可能性がある。

 裏の存在である北辰だ。

 それこそ何らかの強力な効果を持つ……違法薬物に含まれるような薬を使って戦場に出ていてもおかしくはない。

 それでも今のように、とてもではないが万全であるとは思えない様子なのだが。

 問題なのは、アキトがそんな北辰を倒しただけで我慢出来るかどうかという事だろう。

 アキトにしてみれば、ユリカを助ける事と北辰を倒すことだけを目的に戦ってきたのだ。

 なのに、その北辰が弱っているというのは……アキト本人にしてみれば、とてもではないが納得出来ないかもしれないな。

 とはいえ、それで満足出来ないからといって何か出来る訳でもないのだが。

 ……まさか、騎士道精神とかを発揮して、相手が完治するのを待ってからとか、そんな事はないよな? うん、ないと思いたい。

 今のアキトの性格を考えると、まず気にしなくてもいいだろう。

 で、アキトと北辰の件はそれでいいとして……そうなると、俺はやっぱりあっちだろうな。

 ナデシコから出撃したエステバリス隊と火星の後継者のエステバリス……こちらはもしかしたらエステバリスではないのかもしれないが、とにかくそんな戦場に目を向ける。

 先程見た時と比べても、一進一退の攻防が続いていた

 純粋にパイロットの技量として考えれば、ナデシコ側が優勢だ。

 だが、火星の後継者側は数で押している。

 まさに質と量の戦いといったところか。

 物量で押しきるか、質が物量を倒しきるか。

 火星の後継者側の戦力がどのくらい残ってるのかは分からない。

 そうなると、ナデシコ側でも体力的な問題があってもおかしくはないだろう。

 何しろ旧ナデシコのエステバリス3人娘のうち、スバルはアマテラスでも見れば分かるように、軍に残っていたので問題はない。

 だが残り2人は蜥蜴戦争が終わってからは一般人に戻り、漫画家とかスナックのママとかをやっていたらしい。

 3年のブランクは大きい。

 技量もそうだが、何より体力的には鍛えていなければどんどん体力は落ちていく。

 長時間の戦いを行うのに、それは大きな不利となる。

 もっとも、ルリが延々と消耗戦をやるとは思えないが。

 そもそも現在地球ではアカツキを含めて囮となっている者達がいる。

 火星での戦いで無駄に時間を掛けると、問題が起こってもおかしくはない。

 だからこそ、ルリは何らかの手段でこの状況を一気に打破しようと考えてもおかしくはない。

 ともあれ、このままここで見ている訳にはいかないし、アキトの方には手出し出来ない。……そもそも戦闘の様子を見る限りでは、アキトが余程油断しない限り負ける事はないだろう。

 そうなると、やっぱり俺が手を出すべきは向こうだな。

 そう判断し、ラピスに声を掛ける。

 

「ナデシコ側の援軍に向かう。多分大丈夫だろうけど、攻撃されないように連絡をしておいてくれ」

 

 その言葉に、映像モニタのラピスは小さく頷くだけだ。

 もう既に、このユーチャリスには死んだ筈のアキトが乗っていて、その機体がブラックサレナであるのはナデシコ側にも知られている。

 なら、色の違いはあれど、そして外見が若干違っていても、ホワイトサレナは味方だと認識するだろう。

 攻撃してくる事はないと思うが、それでも一応注意しておくに越した事はない。

 

「アクセル・アルマー、ホワイトサレナ、出るぞ!」

 

 そう言い、ホワイトサレナを出撃させる。

 とはいえ、俺が向かうのはナデシコ勢が戦っている場所ではあるが、エステバリス隊の中に突っ込む訳ではない。

 向こうは良くも悪くもお互いの事を知りつくしており、だからこそ3年ぶりでも連携は取れる。

 ……ナデシコBに乗っていた元木連のパイロットもいるらしいが、そっちは一応連携をする為の訓練くらいはしてるんだろうし。

 そんな面々に対し、俺は戦場に突然乱入する形になる。

 ましてや、この世界は俺が介入しなかった世界だけに、初対面で連携は……出来ない事もないだろうが、それよりは俺が別に動いた方が効率的だろう。

 これが俺の介入したナデシコ世界なら、スバル達も俺と一緒に戦っていた為に、ある程度の連携は出来るのだろうが。

 そうでない以上、こっちとしては連携を考えない方がいい。

 そんな訳で、俺は火星の後継者の中でも端の方……左翼に向かって突撃する。

 高機動ユニットを装備している今のホワイトサレナは、ディストーションフィールドを展開したまま、敵の集団に突っ込む。

 アマテラスでもそうだったが、高機動ユニットを装備している今の状態では武器らしい武器は使えない。

 だが、それでも攻撃手段はあった。

 ホワイトサレナもエステバリス……というかアルストロメリアである以上、ディストーションフィールドは使える。

 それに増加装甲と高機動ユニットを装備した事で、通常のエステバリスとは比べものにならないくらいの重量を持つのだ。

 そんな重量がディストーションフィールドを展開しながら突っ込んでくるのだ。

 体当たりをするだけでも、機体の手足の1本や2本は容易に破壊される。

 それはアマテラスで経験している。

 ましてや……アマテラスでは火星の後継者の仲間ではない可能性もあったので、それこそ手足だけを破壊する感じで撃破はしなかった

 しかし、今回の敵は火星の後継者に所属する者達だ。

 手加減については全く考えなくてもよく……

 

「砕けろ」

 

 その言葉と共に、最高速度になったホワイトサレナは敵の左翼に突っ込む。

 瞬間、ディストーションフィールドに命中した火星の後継者の機体は俺の言葉通りに砕ける。

 爆散する、という表現の方が相応しいかもしれないが。

 当然だがホワイトサレナが倒した敵はそれだけはなく、2機、3機と倒していく。

 とはいえ、幾らホワイトサレナが高機動ユニットを装備していて増加装甲で重量があっても、敵に命中すればそれだけ速度が落ちる。

 2機目は完全に爆散したものの、3機目は2割程の機体の残骸が残る。

 

「加速」

 

 なので、速度が落ちたところで精神コマンドの加速を使い、ホワイトサレナの速度を一気に上げる。

 瞬時に速度が上がり、4機、5機、6機を撃破したところで方向を変えて左翼から脱出出来るような進路にし、7機目と8機目に命中するものの、そちらは撃破ではなく大破、あるいは中破といったダメージしか与えられなかった。

 

『おいっ! てめえはアキトと一緒にアマテラスを襲撃した奴だな!』

 

 左翼から抜け出したところで、スバルからの通信。

 アマテラスにいただけあって、ホワイトサレナの情報も知っていたらしい。

 あるいはアカツキ辺りから聞いたのかもしれないが。

 

「ああ、そうだ。北辰の方はアキトが1人だけでどうとでも対処出来そうだからな。俺はこっちの手伝いをさせて貰おうと思ってな」

『あの北辰って野郎、アマテラスで見た時と比べると、明らかに動きが鈍いぞ。何をした?』

 

 そう言えばスバルもアキトと一緒にアマテラスで北辰と戦ったんだったか。

 最初はアキトのブラックサレナと戦っていた筈だが、何がどうなってそうなったのか。

 ともあれ、北辰が万全の時の動きについて知ってるスバルにしてみれば、アキトと戦っている今の北辰は明らかに動きが悪いのだろう。

 

「ナデシコに乗ってるのなら、ミナトやルリから聞いてないか? 北辰は俺の攻撃で怪我を負った。それでもボソンジャンプで逃げたらしいが、その怪我は結構な重傷だ。この短時間では到底完治出来ない程にな」

 

 あるいは、古代火星文明の技術の中に治療技術の類があってもおかしくはないが、どうやらそんな好都合ではないらしい。

 

『なら……何?』

 

 俺の言葉に何かを言おうとしたスバルだったが、戸惑ったような声を上げる。

 そして同時に、ホワイトサレナのコックピットにも異常が……というより、未知の存在が大量に戦場に乱入してきたと示していた。

 未知の存在? と疑問を抱いて映像モニタを見ると……そこには、このナデシコ世界では未知の存在かもしれないが、俺にとって見覚えのある存在があった。

 

「メギロート?」

 

 そう、それはメギロート。

 虫型の形をした無人機にして、シャドウミラーの主力の1つだ。

 そんなメギロートが、数十、数百、数千……もしかしたら万になるかもしれないと思うくらい、一斉に姿を現す。

 

『アクセル、狛治から聞いて助けに来たわよ。元気だった?』

 

 ホワイトサレナの映像モニタにレモンの顔が映ったのを見て、俺は事態を理解した。

 そして……それから10分も経たないうちに、火星の後継者は降伏するのだった。

 ちなみにその時にはアキトと北辰の勝負はついており、北辰は死んでいたが。

 その後、当然ながら色々と面倒は起こった。

 例えば俺の恋人のエリナとこの世界のエリナが会って、この世界のエリナが実はアキトの世話をする流れで抱かれていた事が判明し、それを聞いた俺の恋人のエリナが信じられないと叫んだり。

 ミナトの方は……うん。何がどうなったのか分からなかったが、俺の恋人のミナトとこの世界のミナトが一緒になって迫ってきた結果、インモラルな行為を楽しんだりとか、そういう感じになったが。

 後はアキトの身体をレモンが治したり、ユリカも遺跡から解放され……まぁ、総合的に見て悪くない結果になったと思う。

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