転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3680話

 ホワイトスターに戻った翌日……レモン達は限界を超えて魔法球で休む事になった。

 ……いやまぁ、美鶴と一緒の部屋で寝泊まりしてるのに、夜の行為は一切なしだったのだから、色々と暴走したのは自分でも分かっている。

 そんな訳で、珍しく俺が料理を作ってルリとラピスをSEED世界の学校に送り出した。

 ラピスはまだその辺についてはあまり気にしていないのか、レモン達がいない事に不思議そうな表情を浮かべてはいたが、特に何も気にした様子がなかった。

 ルリの方にはジト目で『馬鹿ばっか』と言われてしまったが。

 ……ともあれ、そんな訳ですっきりとした俺はUC世界に向かう。

 どうせなら、シーマ、モニク、クスコ、クリスの4人も泊まりに来ていればよかったんだけどな。

 残念ながら、シーマ達は昨日泊まりに来る事は出来なかった。

 ……いやまぁ、X世界に派遣されていたせいもあるのだろうが。

 X世界の派遣については、きちんと上からの命令で行われた事だ。

 だが同時に、いなくなっていた間の仕事が減る訳ではない。

 勿論、いない間にある程度の仕事を処理する準備は整えていただろうが、それでもどうしても本人でなければ駄目な書類とかもある。

 シーマはルナ・ジオン軍の中でも半ば独立部隊的な存在である海兵隊を率いる身だ。

 モニクは役人、それもそれなりに上位に位置する役人だ。

 クスコはルナ・ジオンのニュータイプ研究機関のアルテミスに所属するニュータイプで、しかもそのニュータイプ能力は俺との接触や俺に抱かれた事によって強化されており、セイラには及ばないまでもルナ・ジオンで2番目に高いニュータイプ能力を持っている。

 クリスはルナ・ジオン軍に所属してると同時に、兵器メーカー、ディアナのテストパイロットでもある。

 他の3人と比べると一番楽に動けそうだが、ルナ・ジオンのMSやMA、あるいはそれに連なる技術を開発する上で非常に大きな意味を持つ。

 特にディアナは、現在SEED世界のアドゥカーフ・メカノインダストリーと接触するかどうかという話が持ち上がっており、その交渉や条件について話し合われている。

 基本的に異世界間貿易においてその世界の兵器の輸出や輸入は例外を除いて禁止されている。

 今回のその件は、その例外になるかどうか。

 正直なところ、シャドウミラーの影響力を使い、更にはルナ・ジオンがシャドウミラーの下部組織的な存在であるという事を考えた上でも、この件が無事に成功するかどうかはかなり際どい。

 それだけに、クリスもディアナでの仕事は幾らでもある訳だ。

 そんな訳で、UC世界にいるシーマ達も色々と忙しい。

 

「そう、思ってたんだけどな」

「おや、久しぶりに恋人に会ったってのに、嬉しそうじゃないね」

 

 してやったりといった表情を浮かべているシーマが、現在俺の前にいた。

 ルリやラピス達を送り出し、ゲートを使ってUC世界に来たのだが、そんな俺を待ち受けるかのようにシーマの姿があったのだ。

 ……いや、待ち受けるようにではなく、実際に待ち受けていたのだろうが。

 

「いや、嬉しいか嬉しくないかで言えば嬉しいんだけどな。……で、そのサングラスと帽子はやっぱり変装か? まぁ、お洒落と言っても納得出来るけど」

「今の私は、普通に外を出歩けないからねぇ……」

「まぁ、だろうな」

 

 シーマはこのルナ・ジオンにおいて、女王のセイラとはまた別の意味で象徴的な存在だ。

 ジオン軍……いや、この場合は旧ジオン軍と呼ぶべきなのかもしれないが、その旧ジオン軍によって毒ガスを催涙ガスと騙されて使われ、コロニーの住人を皆殺しにさせられてしまったという過去を持つ。

 そんなシーマは旧ジオン軍にとっても早く死んで欲しかったのか、激戦に次ぐ激戦。

 その上、シーマ達のコロニーのマハルはソーラ・レイに改造されて故郷までなくなった。

 それでもシーマは生き残り……俺と手を組み、ルナ・ジオン建国の際には自分達が受けた仕打ちを暴露した。

 それによってシーマには大きな同情が集まり、セイラとは別の意味でルナ・ジオンの象徴となったのだった。

 また、シーマがルナ・ジオンの建国に大きく協力したのも間違いなく、女王のセイラにも信頼されている。

 だからこそ、シーマの率いる海兵隊はルナ・ジオン軍とは別の組織に近い独立した戦力に近い形となっていた。

 

「じゃあ、どこか喫茶店にでも入ろうか。アクセルもUC世界の件については色々と聞いておきたいだろう?」

「……いや、いいのか?」

 

 人に見つかるのは避けたいと、シーマはサングラスに帽子で変装している。

 なのにセイラのいる政庁なりどこかに行くのではなく、喫茶店に入るとなると……シーマだと、他の客に見つかる可能性もあるだろう。

 しかし、シーマはそんな俺の心配に問題ないと笑みを浮かべる。

 

「気にしなくてもいいよ。私の知り合いが喫茶店を開いてね。そこならそんなに心配はいらない筈さ」

 

 シーマの知り合いと言われると、裏社会を想像してしまうが……いやまぁ、うん。それは仕方ないよな。

 そんな訳で、俺は大人しくシーマについていったのだった。

 ……ちなみに、その喫茶店のナポリタンが美味いというのは俺が大人しくシーマと一緒に行動したのとは関係ない。

 

 

 

 

 

「個室か。……喫茶店でこういうのがあるのは珍しいな」

 

 こういう個室は、それこそレストランとかそういう場所にあるというイメージがあったが、まさか喫茶店に個室があるとは思わなかった。

 

「政府の人間も時々使ってるらしいね。盗聴とかの対策はしっかりとしているから、安心して話が出来るらしいよ」

「なるほど。だからそれなりに高級そうな感じになってるのか」

 

 個室の中を見回してそう呟く。

 別に高級な家具とかそういうのに詳しい訳ではない。

 ……そう言えば高級な家具で思い出したけど、W世界でデルマイユの別荘とかから盗み出した家具やら美術品やらその他諸々、まだその大半が空間倉庫に収納したままだったな。

 幾つか使ったけど、それも僅かだし。

 これも空間倉庫で眠らせておくのは勿体ないな。

 そんな風に思いながら、テーブルと椅子……これもまた、一目見ただけで安物ではないだろうと判断出来るそれを眺めつつ、座る。

 シーマもサングラスを外して帽子を脱ぎ、俺のよく知っているシーマになると向かいに座る。

 するとそのタイミングで、扉がノックされる。

 シーマが中に入るように言うと、そこには店に入った時にいたウェイトレスの姿があった。

 

「いらっしゃい、シーマ。それとアクセルさんですよね? シーマがお世話になっています」

「ちょっと、あんたは私の保護者じゃないだろうに。……まぁ、いいか。私は紅茶とケーキを。アクセルはどうする?」

「シーマと同じく紅茶と、この店の名物だというナポリタンを頼む」

 

 それで足りるのか? と言われれば、勿論足りない。

 というか、俺の場合は食べても即座に魔力になって吸収されるので、基本的には腹一杯になるという事はない。

 食事はあくまでも娯楽なのだから。

 そんな訳で、ナポリタンだけでは足りないが、別にそれで餓死する訳でもない。

 俺達の注文を聞くと、ウェイトレスはそれ以上シーマをからかったりせず、大人しく部屋から出ていく。

 ただし、最後にシーマに意味ありげな視線を向けるのを忘れはしなかったが。

 

「全く」

 

 シーマはそんなウェイトレスの笑みを見て、困ったように呟く。

 ただ、見た感じだと困ったように呟いてはいるが、あのウェイトレスを決して嫌っている訳ではない。

 気楽なやり取りを本人も楽しんでいるのは間違いなかった。

 

「どういう知り合いだ?」

「そうだね。マハル時代にちょっとね」

 

 それ以上は説明しない。

 シーマにとっても、マハル時代の話は好んでしたいとは思わないのだろう。

 何しろマハルというのは、コロニーそのものがスラム街に等しい存在だった。

 実際にはコロニーの中にはそれなりに金持ちもいたのだろうが、それも本当に一握りだ。

 普通のコロニーであれば、金持ち、一般人、スラム街の住人といったように構成されている。

 だがマハルは少数の金持ちとスラム街の住人といった構成だったらしい。

 そう考えると、本当に歪だったんだな。

 何しろ戸籍登録とかもろくに出来ていなかったらしいし。

 そんなマハルで生まれたシーマだ。

 出来れば言いたくない事もあるのだろう。

 

「そうか。それで、俺がUC世界に来るのを待っていたのは、何でだ? 普通にデートをしたいだけなら、俺は歓迎だけど」

「ふふっ、それもいいね。けど、残念ながら私がここにいたのはUC世界の情報について色々と話しておく為だよ」

「一応情報はシャドウミラーに流してるんだろう?」

「そうだけど、アクセルは基本的に重要な情報しか見ないと、千鶴が言っていたよ?」

「……まぁ、それは否定しない」

 

 シャドウミラーが関わっている世界は幾つもある。

 その世界の全ての情報を完全に理解するとなると……いやまぁ、魔法球を使えばどうにかなるかもしれないが、とてもではないがやりたいとは思わない。

 

「だろう? それにまだ確認が取れていないからシャドウミラーに報告されていない情報というのもあるんだ。その辺について、ある程度教えておこうと思ってね」

「分かった。それでどういう情報があるんだ?」

「そうだね。まずは……連邦がフィフス・ルナという小惑星を持ってるのを知ってるかい?」

 

 微妙に聞き覚えのあるフィフス・ルナという単語に考える。

 連邦が所有している小惑星と言われてすぐに思い出すのはルナツーだ。

 どちらもルナ……つまり月が名前にあるという事は、双方に何らかの関係があるのだろう。

 ルナツーがルナ2、フィフス・ルナが5番目の月。

 だとすれば、3番目と4番目の月もどこかにあるのかもしれないな。

 

「1年戦争の時にちょっと聞き覚えがあるような気がする」

「そうかい。なら詳細な説明はいらないね。資源を発掘する為に連邦軍が運んできた小惑星なんだけど、それはその名の通り資源採掘用以上の意味がなかった。けど、今は急ピッチでフィフス・ルナの整備……いや、改修かね? とにかく工事が進められてるんだよ」

「……何でまた?」

「それは勿論、月を私達に奪われたからだろうね。1年戦争で壊れたコロニーを直す部品を送るにも、輸送艦でわざわざ送るのでは時間が掛かる。月があった時はマスドライバーを使ってそれをどうにかしてたけど、今の月は連邦ではない独立国家だろう?」

 

 シーマの言葉には強い説得力があった。

 実際、月にはマスドライバーがあり、1年戦争ではジオン軍がマスドライバーを使って地球を攻撃したりもしたらしいし。

 

「待て。そのフィフス・ルナを整備し始めたという事は、ルナツーのように軍事基地として使おうとしてるのか?」

 

 小惑星を基地にするのは、そんなに珍しい話ではない。

 UC世界においても、今話題に出たルナツー、そしてソロモンやア・バオア・クー、ペズンがそうだ。

 そういう意味では、フィフス・ルナを軍事基地にするのは納得出来る。

 何しろ1年戦争の序盤から中盤に掛けて、宇宙は殆どがジオン軍の勢力下にあった。

 その例外がルナツーだ。

 ……サイド7でガンダムが開発されていたり、サイド6でアレックスが開発されていたりしたが。

 ただ、それでも大きな軍事基地となると、ルナツーだけだった。

 連邦軍にしてみれば、それでは心許ないと思ったのだろう。

 だからこそ、ソロモンを占領して入手し、コンペイ島と名前を変えているし、ア・バオア・クーは……一応現在も所有者はジオン共和国で資源採掘用として使っているらしいが、いざとなれば連邦軍は強権を発動して自分達で使うだろう。

 そんな小惑星基地が多数あっても安心出来ず、更にフィフス・ルナを整備する理由……これはやっぱりルナ・ジオンの存在、そしてその裏にいる俺達シャドウミラーの存在だろう。

 ジオン共和国は一応独立国家という事になっているが、実質的には連邦の従属国的な存在だ。

 だが、ルナ・ジオンは違う。

 名目だけではなく、実質的な意味でもきちんとした独立国だ。

 その上で裏にはシャドウミラーという規格外の組織がいる以上、連邦に警戒するなという方が無理だろう。

 実際、月の周辺にはジェネシスやバルジ、リーブラ、ニヴルヘイム、そして今回ジーラインを譲渡する理由となったX世界で入手したコロニーレーザーがある。

 これらはどれか1つでも相手を警戒させるのに十分な戦力を持つ。

 また、ペズンも以前あった場所から、現在は地球の軌道上に設置されていてハワイに下りる際にルナ・ジオンの中継地となっている。

 その辺の状況を考えると、連邦が俺達を警戒してもおかしくはないのか。

 そう思ったのだが……

 

「少し違うね」

「……何?」

 

 シーマの口から否定された事に驚く。

 それはつまり、フィフス・ルナの整備については基地化……いや、要塞化する為ではないという事を意味している。

 

「いや、勿論アクセルの言う通りの一面もあると思うけど……連邦軍再編計画、そしてガンダム開発計画って知ってるかい?」

 

 艶のある笑みを浮かべつつ、シーマは俺にそう尋ねるのだった。

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