転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3693話

「ニッキ、とにかく話については今は後回しだ。これ以上海上にいても、敵に一方的に狙われるだけになるし」

 

 実際には敵がジオン軍残党であり、補給物資を求めて襲ってきたのだとしたら、予備の弾薬もあまりないと思ってもいい。

 勿論すぐに弾切れになるとは思えないが、それでも襲ってきたジオン軍残党の心理としては、出来るだけ弾切れになりたくはないだろう。

 ザクマシンガンの類はともかく、対空ミサイルや魚雷ともなると製造するのはそう簡単ではないだろうし。

 その辺を考えれば……いやまぁ、ハワイを襲撃したのが補給物資とかそういうのを奪う為ならの話だが。

 もし単純に、ジオンを名乗ってるくせに自分達に協力しないとか、そういう理由で襲撃してきたのなら、こちらも対処は難しいと思う。

 

『了解しました。それと、水陸両用MSが襲ってきたのなら、どこかにユーコンがいる筈です。そちらはどうしますか?』

「……マッド・アングラーという事はないか?」

 

 再び海中から飛んできた魚雷を回避しつつ、ニッキにそう尋ねる。

 ジオン軍が海での活動を考えてキシリアが設立させた潜水艦部隊。

 その潜水艦部隊で使われていたのだが、ユーコン級とマッド・アングラー級となる。

 分かりやすく言えば、ユーコンはサラミスのようなもので、マッド・アングラーはマゼランのようなものと認識すれば分かりやすい。

 かなり巨大で、グラブロのようなMAですら搭載可能。

 もっともそれだけ巨大なだけにメンテナンスとかもかなり厳しいのだろうが。

 そういう意味では、ジオン軍として活動していた時ならともかく、残党として行動するのには向いてないと思う。

 ユーコンにしろ、マッド・アングラーにしろ、行動するのは海中だ。

 下手にメンテナンスをケチったりした場合、それは乗員の命に直結する。

 それでもマッド・アングラーの性能を考えると、ニッキには聞いておく必要があった。

 

『今のところ確認されてませんけど、そこまで心配はしなくてもいいのでは? さすがに残党軍でマッド・アングラーを運用出来るとは思えません』

「だと思うけど、戦争が終わってからまだそんなに……それこそ、10年も20年も経ってる訳じゃない。今ならまだそれなりに使えるかもしれない。そうして使える以上、使い捨てるつもりで今回投入してきている可能性もある」

『……分かりました。警戒を厳しくします。それでアクセル代表はどのように?』

「取りあえず敵を倒すのを目指す。出来るだけ殺さないようにしてな。敵のMSを海から追い出すか、あるいはそこまでいかなくても海面付近まで追い詰めてくれないか? 勿論、そっちで撃破出来るのならしてもいいが」

 

 その言葉に、ニッキは難しい表情を浮かべる。

 どうやらあまり気が進まないらしい。

 撃墜数を稼ぎたい……とか、そんな感じか?

 まぁ、それならそれでも構わないんだが。

 

「難しそうか?」

『いえ、出来るだけやってみます。ただ、敵の数がそれなりに多いので、アクセル代表が望むように出来るかどうかは分かりませんが』

「構わない。まずは敵を倒す事を優先してくれ。勿論、可能なら捕虜にする感じで」

『了解しました。部下にもそのように命令しておきます』

 

 今更の話だったが、どうやらニッキはMS隊の小隊長といった感じらしい。

 少尉という階級を考えれば、そんなにおかしな話でもないか。

 それに純粋に技量という点でも、ニッキは闇夜のフェンリル隊として活躍していたのだ。

 ……とはいえ、ニッキが現在小隊長をしているという事は、闇夜のフェンリル隊はどうなってるんだろうな。

 あるいは今日は偶然そういう形になってるだけで、普段は闇夜のフェンリル隊として働いてるとか。

 今回の襲撃がかなり予想外だった事を考えると、その可能性は十分にある。

 ともあれ、ニッキとの通信は終わる。

 ニッキも俺との通信で決まった内容を実行するとなれば、通信を繋げたままにし続けるといった事は出来ないだろうし。

 うーん……今更、本当に今更の話だが、俺が使うMSはドワッジではなく水陸両用MSとかにするべきだったか?

 ドワッジはホバー移動で海上であっても問題なく移動出来るというのは大きいが、あくまでもそれだけだ。

 海中にいる敵に対して有効な攻撃方法となると、それこそジャイアントバズくらいしかない。

 そしてジャイアントバズは実弾兵器なので、どうしても弾数が限られている。

 それに比べると、水陸両用MSは普通に水中での行動を前提としている為に海の中にいる敵に対する攻撃方法は多数ある。

 いや、その辺は今更の話か。

 ドワッジは俺が自分で乗ると決めたMSだ。

 そうである以上、今更別のMSに乗っていればよかったとか、そんな風に思っても仕方がない。

 

『アクセル代表、ズゴックが海面に向かっています!』

 

 俺の考えていた時間は一体どれくらいだったのか。

 ニッキからの通信で我に返り、レーダーを確認する。

 するとニッキの言葉通り、MSが1機海中から上がってくるのが確認出来た。

 ちなみにこのレーダーは、ドワッジがハワイで使う上で改修された部分らしい。

 標準のドワッジは基本的に砂漠とかの熱帯での運用を想定されていたので、海中用にレーダーを使えるようにするのは、ハワイで運用する上で必須だったのだろう。

 そのレーダーで確認すると同時に、ドワッジを海上から移動させる。

 ニッキが海上近くにまで敵を向かわせるのは納得出来るが、実際にそれを行うとなると、それこそドワッジのすぐ側とは出来ない。

 海の広さを、そして戦場となっている場所を考えれば、ニッキはとにかく海上近くに向かわせればそれでいいと、そのように思ったのだろう。

 実際、その判断はそう間違ってはいない。

 ドワッジの移動速度を考えれば、その程度のことは容易に出来るのだから。

 レーダーを頼りに、敵が浮上してくる場所に向かう。

 すると向こうもこちらの存在に気が付いたのか、上昇する速度が上がる。

 自分が上手い具合に誘導されたと気が付いたのか、それとも偶然だと思ったのか。

 それは分からなかったが、それでも俺にとって悪い事でないのは間違いない。

 とはいえ、ズゴックは水陸両用MSの傑作機と呼ばれている存在だ。

 何より大きいのは、腹部にメガ粒子砲が内蔵されているのと違い、両手にメガ粒子砲が内蔵されている事だろう。

 また、推進力も高いのはこちらに向かってくる速度から分かる。

 つまりズゴックは、両手だけを海面から出して攻撃するという事も可能なのだ。

 とはいえ、それが分かっていれば対処するのはそう難しい話ではない。

 そもそもホバー移動という、かなり高速で移動しているドワッジである以上、メガ粒子砲であっても命中させるのはそう簡単ではない。

 こちらに向かって上昇してくるのにタイミングを合わせ……今! って、え?

 てっきり海面から腕だけを出してメガ粒子砲で攻撃してくると思っていたのだが、ズゴックは腕だけではなく機体そのものが海中から飛び出してきた。

 勿論、この行為は決して不可能ではない。

 ズゴックの推進力は非常に高いのだから。

 だがこの状況でわざわざ機体全体で飛び出すといった判断をするのは理解不能だった。

 いきなり姿を現してこちらを驚かそうとしたのか、腕や上半身だけを海面から出して攻撃するといった操作が苦手だったのか、それともこの状況でこっちを侮っているのか。

 生憎とその辺については俺も分からないが、それでもこうして機体全体を現してくれたのは、俺にとって悪い話ではない。

 ホバー移動でメガ粒子砲を回避しつつ、ジャイアントバズ……ではなく、咄嗟に左手で持ったザクマシンガンを撃つ。

 ジャイアントバズは、取り回しも悪いし、砲弾数もそこまで多くないという欠点が目立つが、その欠点を理解した上でも圧倒的な威力が魅力の武器だ。

 それは間違いないが、この状況においてはその威力が問題だった。

 これでズゴックが海中にいるのなら、ジャイアントバズの破壊力も海にある程度吸収されるし、何よりザクマシンでは海によって威力を奪われてしまい、敵にダメージを与えられるかどうかは微妙なことだろ。

 ……実際にはダメージを与えられる可能性は皆無ではないが、それでもあまりにランダム性が高い。

 ズゴックは水陸両用MSとして、普通の……ザクとかに比べると厚い装甲を持っているというのもある。

 だが、ズゴックは空中に飛び出した。

 当然の話だが、そんなことをすれば海という最大の恩恵を利用することは出来ない。

 その為、ジャイアントバズで攻撃した場合、その威力が高すぎてズゴックを撃破してしまう可能性が高かった。

 まぁ、狙う場所を変えればそれでもどうにかなるだろうが、より簡単に使えるザクマシンがあるのだから、そちらを使わないという選択肢は存在しない。

 そんな訳で、俺は右手のジャイアントバズではなく、左手でザクマシンガンを装備し、射撃する。

 腰のラックから取り外し、そのまま狙うという行為は命中精度という点ではかなりの問題がある。

 とはいえ、それはあくまでも普通のパイロットならではの話だ。

 PPによって射撃や命中の数値が上がっており、ガンファイトも習得している俺にしてみれば、その程度の事が出来ない訳がない。

 ……ドワッジの反応速度が遅いのはどうしようもなく、機体に自分の反応を合わせる必要があるのが難点だったが、それに関してはT-LINKシステムを搭載しているニーズヘッグ以外の機体はどれも同じなのでもう慣れた。

 ともかく放たれたザクマシンガンの弾丸は、次々とズゴックの四肢に命中する。

 出来れば魚雷や対空ミサイルを発射する頭部も破壊したいところだが、そちらを攻撃するとパイロットにも悪影響が出るかもしれないんだよな。

 厚い装甲を持つズゴックだったが、手足は胴体と違ってそこまでではない。

 そんな手足に同じ場所に何度も連続して命中すれば……

 ズゴックが空中にいる間に手足は砕かれる。

 普通なら空中にいる間に四肢の全てを撃つといった事は不可能に近いだろう。

 あるいはニュータイプや異名持ちのような者なら出来るかもしれない。

 しかし、俺にしてみればそう難しい話ではなく……手足を破壊されたズゴックは、その部品と共に海中に没していく。

 恐らく向こうの考えとしては、いきなりズゴックが海中から飛び出したところでこちらを驚かせ、そうしてこちらが驚いているところで両手のメガ粒子砲を使うといった考えだったのだろうが……まさかこっちが即座に反応するとは思わなかったらしい。

 

「ニッキ、ズゴックの四肢を破壊した。海中に沈んでいったから、確保してくれ」

『了解しました!』

 

 即座にニッキに通信を送る。

 コックピットは直撃していないが、それでも四肢を破壊された影響で機体に水が入ってくる可能性は十分にある。

 そうなるとパイロットが溺れ死ぬ……もしくは漏電から機体に火が回って爆発するといった事も十分にあった。

 そんな訳で、ズゴックのパイロットは出来るだけ早く確保する必要がある。

 ニッキの判断ではジオン軍残党らしいが、それはあくまでもニッキの判断でしかない。

 もしかしたら、そう見せ掛けた連邦軍の強硬派……もしくはジオン軍残党でも連邦軍の強硬派に脅しなり買収なりされてハワイを襲ったという可能性は十分にある。

 うーん、もしかしたら俺はそうであって欲しいと思っているからこそ、そんな風に思おうとしてるのか?

 そんな疑問があったが、その辺については実際に捕虜を尋問すればある程度の状況は理解出来るだろう。

 それでもしジオン軍残党であったのなら、それは別に構わない。

 本拠地や仲間の情報をゴップに対する土産にするか、あるいはハワイの部隊でそこを襲撃して報復しつつ、物資を強奪するか。

 ……とはいえ、こうして見る限りではジオン軍残党だけあって特に何かこっちの興味を惹くような機体……MSなりMAなりを持ってるとは思えない。

 人員もギレン派、キシリア派、デギン派、無所属といった面々であれば欲しいとは……ああ、でもデギンはドズルと同じくガルマを可愛がっていたから、デギン派ならガルマに、ジオン共和国に合流するのを嫌がらないのか?

 いやまぁ、そういう理由で戦いを止めるのなら、今のこの状況でジオン軍残党として行動するとは思えない。

 1年戦争が終わった時、ルナ・ジオン軍はジオン軍時代の繋がりを使い、地球にいるジオン軍残党に対してハワイに来れば宇宙に打ち上げてサイド3まで送り届けるといったように情報を流している。

 実際、その情報を聞いてハワイに来た連中もいて、そのような者達は既にサイド3に戻っている。

 中には宇宙への打ち上げ施設があるという事で襲撃して占拠し、サイド3ではなくキシリアであったり、ギレン派の残党であったりと合流しようと考えた者もいたらしいが、そちらについては当然ながら上手くいくことはなく、すぐに鎮圧されたのだった。

 

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