転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3697話

 ゴップとの会談にコーウェンがいた事には驚いたものの、コーウェンの様子からすると、どうやら俺との関係を修復しようとしてのものらしい。

 ……修復しようにも、そもそも俺とコーウェンは関係らしい関係はなかった。

 精々が1年戦争の時にレビルの派閥にいたコーウェンがこっちを敵視していたくらいだが、それも別にネチネチとあった訳ではない。

 良くも悪くも、コーウェンの性格はそういうのに向いてないんだよな。

 そんな訳で、正確にはコーウェンとの関係を新しく構築するというのが正しいと思う。

 今回はある意味でコーウェンが関わってきたタイミングも悪くない。

 

「それで、連邦軍再編計画においてガンダム開発計画というのを考えてると聞いたが、本当か?」

 

 ソファに座り、10分程世間話をしたところで、本題……いや、今回の本題はジーラインの譲渡だから、別に本題ではないのか? ただ、重要な話題であるのは間違いない。

 とにかくそんな話題を口にする。

 その言葉を聞いたコーウェンは、ヒクリと頬を引き攣らせる。

 まだ甘いな。

 ゴップは俺の言葉を聞いても特に驚いた様子を見せていない。

 それに比べると、コーウェンは感情を隠すのが上手くない。

 

「何故それを? 連邦軍でもまだ表向きになっておらず、水面下で話をしているだけの状態なのだが」

「情報というのはどこからともなく漏れるものだ」

 

 そう誤魔化すが、実際にはシーマがどこからともなく入手した情報なんだよな。

 あれ? シーマじゃなくてルナ・ジオンがだったか?

 ともあれ、シーマから聞いたのは間違いない。

 

「……そうか。まぁ、いい。私がここに来たのは、それも理由の1つだからな」

 

 俺の言葉に納得したのかどうかは分からないが、それでもそう口にする。

 けど、理由の1つ? 具体的にはどういう感じだ?

 

 

「具体的な話を聞かせて貰おうか」

「……ゴップ大将」

「すまないが私はここ最近の仕事で忙しくてね。どうしても眠いんだよ。ああ、また眠くなってきたね」

 

 コーウェンの言葉にそう言うゴップだったが、それが嘘……というか建前なのは、世間話を知っている時に軍人が持ってきた紅茶を飲んでいるのを見れば明らかだ。

 自分はこれからコーウェンの話す事は知らないと、聞いていないと、感知しないと。そういう事なのだろう。

 コーウェンもゴップのそんな様子を見ると納得したのか、小さく笑みを浮かべてから口を開く。

 

「アクセル代表がガンダム開発計画について既に知っているという事は、連邦軍再編計画についても知ってると思っていいか?」

「色々と聞いているけど、具体的に何だ?」

「大艦巨砲主義の信者達についてだ」

「あー……うん」

 

 コーウェンの言葉に少しだけ哀れみを覚える。

 シーマと情報交換をした時にその件については知らされていたが、それでもこうして実際に連邦軍の軍人から話を聞くと……うん。

 連邦軍にとって……いや、違うな。大艦巨砲主義の信者とコーウェンに称された連邦軍の軍人にとって、MSというのは決して好ましいものではないのだろう。

 本人の趣味嗜好とかもあるのだろうが、それ以外にも連邦がジオンよりも優れていると思っている者の中には、ジオンが開発したMSを連邦軍でも使うというのは、連邦はジオンよりも劣っていたという風に認識してしまう。

 いや、実際にザクを開発して連邦軍は一方的に叩きのめされたのだから、MSの技術についてはジオンが連邦を上回っていたのは間違いない。

 その後、レビルの主導でV作戦が行われ、それでようやく連邦軍もMSを開発して、ルナ・ジオンの協力があったとはいえ、1年戦争で勝利した訳だが……

 

「1年戦争の教訓をそんなにあっさり忘れるのって、どうなんだ?」

「私もそう思う。だが、あの連中にしてみればMSについては認めたくないのだろう。せめて連邦軍再編計画で開発する軍艦にはMSの運用能力を持たせればいいものを……」

 

 苛立たしそうな様子を見せるコーウェン。

 その辺についても考えてないのは、一体どうなんだ?

 勿論、1年戦争中にサラミスとかでジムを無理矢理運用した例はある。

 それこそ露天状態でジムやボールを甲板に置いておき、それに乗り込むとかそんな感じで。

 だが、それはぶっちゃけ臨時の措置でしかない。

 ホワイトベースのように、しっかりとMSを運用出来るようにするのが、この場合は最善だろうに。

 

「ジオン共和国は連邦軍の影響力が強い。それでMSの新規開発はさせないようにすればいいというのが連中の言い分なんだが……」

「まぁ、それはある意味では間違ってないな」

 

 ジオン公国時代の兵器メーカーは、ルナ・ジオンや連邦、アナハイムとかに引き抜き、吸収、買収、合併……そんな感じで今のジオン共和国には新型MSを開発するだけの能力があるのは難しい。

 一応技術局だったか。そこは残っているし、兵器メーカーの中でも何らかの理由……愛国心であったり、もしくはそこまで有能ではないとして勧誘されなかった者もいる。

 そういう者達がいれば、もしかしたら新型MSの開発は出来るかもしれないが。

 実際、1年戦争中に技術局ではそれなりに新型兵器を開発したりもしている。

 あるいは新型MSを開発出来なくても保守は可能。

 大艦巨砲主義の信者達はそんな風に思っているのかもしれないが……

 

「ジオン共和国はそれでいいとして、その連中はルナ・ジオンをどうするつもりなんだ?」

 

 そう、ジオン共和国に対しては、その考えで押し通そうと思えば出来ない事もないだろう。

 色々と無理はあるだろうが、数年……あるいは上手くいけば10年くらいはどうにかなるかもしれない。

 だが、ルナ・ジオンはどうするのか。

 それこそ1年戦争中に真っ先にジオンの兵器メーカーから有能な人物を引き抜き、あるいは引き抜くよりも前に開発環境やジオンの敗北を予想して逃げ込んできた者も多い。

 つまり、正真正銘有能な人材が揃っているのだ。

 そして有能な人材だからこそ、ジオンで行っていた弊害……それぞれの兵器メーカーの独自色が強すぎて、MSのパーツの共用が出来なかったというのを反省し、統合整備計画を参考にディアナという1つの兵器メーカーを作った。

 そういう意味で、セイラ的には……そしてジオン公国に思うところのある者達にとってはあまり面白くないだろうが、ジオン共和国ではなくジオン公国のジオン軍の正統な後継者はディアナ、そしてディアナが所属するルナ・ジオンという事になるのかもしれない。

 いやまぁ、アクシズにも旧ジオン軍がそれなりに逃げ込んでいるし、キシリアも火星にいるらしい。そう考えると、ジオン軍の血統はかなり広がっているという事を意味していたが。

 

「月に関しては、どうにかなると思っているらしい」

「……どうにか? 何だその具体的な対策も何もない、希望的な観測は」

 

 コーウェンは俺の言葉に困ったように、それこそ心の底から困った様子で首を横に振る。

 それだけ大艦巨砲主義の信者が理解出来ないという事なのだろう。

 ゴップはどう思っているのかと思ってそちらに視線を向けると、ゴップは無言で目を瞑っている。

 そう言えばさっき仕事で忙しくて眠いとか言っていたな。

 もっとも、それがあくまでも表向きの話だというのは分かっている。

 それでもこうしてわざわざその件について口にしたのは、これを狙っての事だったのか?

 実際、目を瞑ってはいるものの、ゴップは本当に寝ている訳ではないのだろう。

 今の俺とコーウェンの話に関わり合いたくないと思っての行動なのは間違いなかった。

 その気持ちは分からないでもないが。

 コーウェンの話を聞く限り、俺でもそんな連中に関わり合いたくはない。

 だがコーウェンの場合、連邦軍再編計画について関わっている以上はどうしても関わるしかないのだろう。

 

「勿論、私も大艦巨砲主義の全てを却下している訳ではない。具体的にはMSを運用する軍艦が後方から援護をするという意味では」

「だろうな」

 

 コーウェンが言うように、MSを使う際に後方からの援護があるのとないのとでは、大きく違う。

 そういう意味では大艦巨砲主義……というか、MSの母艦が強力なメガ粒子砲を持ってるのはMSパイロットにとって頼もしいだろう。

 

「しかし、それでは戦場の主役はどうしてもMSになってしまう。大艦巨砲主義の信者達にしてみれば、戦場の主役はやはり軍艦……特に戦艦であるべきなのだろう」

「本当に連邦軍、大丈夫か?」

 

 連邦軍の中に有能な人材がいるという俺の考えは今も変わっていない。

 ゴップやコーウェンといった面々がいるのを見れば、その考えは決して間違ってはいないのだから。

 だが、同時に連邦軍に所属している者の数がそれだけ多くなったのなら、当然ながら無能もそれだけ多くなる。

 そして俺にとって……いや、コーウェンにとっても予想外だったのは、その無能が集まった結果結託し、大きな発言力を持つようになってしまったという事なのだろう。

 あるいは大艦巨砲主義の信者であっても、それ以外の部分は有能で決して一口で無能とは言えないような者がいる……という訳ではないのかもしれないが。

 ともあれ、俺はあくまでも他国の話なのでそこまで影響はないが、コーウェンにしてみれば自分の所属している組織の話だけに、文字通りの意味で他人事ではないのだろう。

 

「そう言われると素直に大丈夫だとは言えないが……ただ、私も相手がそのような者達だけであれば、対処は出来る。今回のガンダム開発計画のようにな」

「少し後手に回ってる気がするが? 相手が大艦巨砲主義に拘ってる程度の奴なら、それこそコーウェンの影響力で根本から……それこそMSの運用を前提とした軍艦を開発するように出来ないのか?」

 

 レビルの派閥を引き継いだコーウェンだ。

 その影響力は大きい。

 勿論、派閥のトップで連邦軍の顔とでも呼ぶべきレビルが死んだ以上、レビルの派閥から抜けた者もいるだろうから、数も減ってるだろう。

 コーウェンと友好的な関係を築いているゴップも、レビル派から抜けているようだし。

 それでも連邦軍の中で強い影響力を持っているのは間違いない。

 そんなコーウェンだけに、今回の件はもっと積極的に動けると思うのだが。

 だが、コーウェンは俺の言葉に苦々しげに首を横に振る。

 

「普段であれば出来るだろう。だが、大艦巨砲主義の後ろには誰かがいる。裏で糸を引いている者がいるんだ」

「……それは、また。連邦軍に恨みでもある奴がいそうだな」

 

 幾ら大艦巨砲主義によって戦艦を作ったとしても、それでMSに対抗は出来ない。

 ミノフスキー粒子がなければ誘導兵器とかを使って対処は出来るが、UC世界の戦場においてミノフスキー粒子がないという事はまず有り得ない。

 そうなると、つまり大艦巨砲主義によって戦艦を作ろうとも、MSに攻撃されると撃沈してしまう事を意味している。

 勿論、新型の戦艦である以上はMSの1機や2機でどうにかならないだろう。

 ……そのMSのパイロットが異名持ちのエースとかならともかく。

 普通のパイロットが操縦するMSも、10機……いやもっとあれば、戦艦を沈められる可能性が十分にあった。

 わざわざそのような状況を作る為に連邦軍再編計画で大艦巨砲主義を唱える者達を裏で操っているいるのだから、恐らく連邦軍に恨みを持っている者達という認識で間違ってはいないと思う。

 

「その可能性も考えるべきか」

「ん? そう言うって事は、別の相手を想定していたのか?」

「私が調べた限りでは、どうやら大艦巨砲主義の者達の後ろにいるのは強硬派らしい」

「強硬派が? 何でそこに強硬派が出てくる?」

「分からん。それに強硬派と一口で言っても、強硬派の中にも様々な派閥が存在する。具体的にどの強硬派が今回の件を仕組んだのかは分からん。……だからこそ、ガンダム開発計画を失敗する訳にはいかんのだ」

 

 強硬派に複数の派閥があるというのは理解していた。

 だが、それがここで足を引っ張るとは思わなかったな。

 とはいえ、それでも……

 

「しっかりとした証拠はないだろうが、それでも予想くらいは出来るんじゃないか?」

「出来ない事はないが、それが本当に正しいとは限らん。それに、怪しい相手と私を争わせるのを狙っている可能性も否定は出来ん」

 

 漁夫の利を狙うのか。

 強硬派の中でも複数の派閥があるというのなら、その可能性は否定出来ないか。

 とはいえ、そうなると迂闊に敵を敵と見定めることも難しくなる。

 

「なら、どうするんだ? ガンダム開発計画だけで対処するのか?」

「今のところはそのつもりだ。戦艦に比べれば少ないが、それでもMSを開発するには十分な……十分すぎるだけの予算を奪ったからな」

 

 そう言うコーウェンは、自慢げだ。

 恐らくだが、ここでレビル派としての影響力を大きく利用したのだろう。

 大艦巨砲主義の者達にとって、コーウェンは厄介極まりない存在と認識されてもおかしくはないくらいに。

 

「それでフィフス・ルナか」

「……そっちについても情報を持っていたのか」

 

 コーウェンは俺の言葉に苦々しげな表情を浮かべるのだった。

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