キヴォトスでちょっとエッチな精子脳男子をヤってみた話(旧題『カヤ虐曇らせモノ』)   作:ニーガタの英霊

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 本来はカヤを曇らせるためのSSでしたが、曇ってるのがカヤ以外にもいるので思い切ってタイトルを変更しました。
 やったね、ホシノちゃん! ひとえにお前が強いだけの女で誰も守れないせいだが。


える、知っているか。この回は実質原作そのままなんだ

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……!!」

 

 戦火の中にあるトリニティ。古聖堂を中心とした地区にて一人の少女が駆けていた。

 

 白洲アズサ。

 

「先生……」

 

 トリニティ総合学園二年の転入生であり、元アリウス分校生。

 瓦礫の間を駆け、トラップを潜り、慎重に……かつ足早に走り出す。

 

「先生……!」

 

 息は荒く、白い制服には土煙のせいで所々汚れている。

 ときには無理矢理罠を起動させて解除させるせいか、あちこちに擦過傷も出来ている。

 

「先生……っ!!」

 

 それでも彼女は銃を手に走り続ける。

 先生──白洲アズサ(わたし)補習授業部(わたしたち)の恩人。

 

 先生にはいろんなものをもらった。

 勉強を教えてくれた。

 仲間と一緒に何かを成し遂げることを教えてくれた。

 居場所をくれた。

 

 楽しかった、嬉しかった。

 きっとそれはこれからもそうだから。

 たとえすべてが虚しいものだとしても、その日々は決して無駄ではない。

 私の心の奥のいちばん大切なところにあるから。

 

 だから先生。

 まだ、先生に教えてもらいたいことがある。

 色んなことをしたいんだ。色んなものをみたいんだ。

 ヒフミと、ハナコと、コハルと、なにより先生と。

 私はまだ、みんなと一緒に居たいと願っている。

 

 砂塵の向こう側。

 瓦礫の先に見覚えのある白いシャーレの外套。

 

「先せっ──」

 

 そう、先生に呼びかけようと声をかけて。

 先生の身体が不意に傾く。

 

 ──嫌だ。

 

 頭が真っ白になる。

 眼の前の事実を否定しようと、理解が拒否を始める。

 

 小柄な白髪の少女(空崎ヒナ)の唸るような叫びと、冷たく銃口を向ける黒髪の少女(錠前サオリ)

 ドリフト走行で駆ける救急車。

 十字砲火によって崩れ落ちる空崎ヒナ。

 心が折れ、蹲る桐藤ナギサ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 息が荒い。

 走行による疲労じゃない。

 無性に心拍数が上がり、私はサオリの持つ拳銃から目をそらすことが出来なくなっていた。

 

「……ここでお前が出てくるのか」

 

 サオリは拳銃をホルスターに収め、余裕そうに私を見つめる。

 

「どうだ、アズサ」

「……どうして、どうして」

 

 冷静じゃない。わかっていても私はうまく言葉を紡ぎ出せない。

 

「私の言った通りだっただろう? トリニティにもシャーレにも、お前の居場所は無い。私たちみたいな『人殺し』を受け入れてくれる場所なんて、この世界にはないんだよ」

「どうして、先生を……!!」

「そんな場所があるように見えてもすべては儚く消える。……さっきの『先生』とやらのようにな。……全ては無駄だ、それなのにどうして足掻くんだ、白洲アズサ」

「サオリいいぃぃぃっ!!」

 

 私は銃を構えて放つ。

 なんて無様なのだろう。怒りに任せての破れかぶれの突撃なんて全然クレバーじゃない。

 戦術的に大間違いだ。サオリだってわかっている。

 正面からなんて勝てないだろうぐらい。周到に罠を張り、背後から奇襲し、不意を打ち、確実に着実に詰めていくべきだ。

 

「あああああああっ!!!!」

 

 馬鹿だ。

 私は馬鹿だ。愚か者になってしまった。

 心を冷静にすべきなのに、感情なんて捨て去ればいいのに。

 そうはならなかった。なれなかった。

 

 だってこれが、先生と会って……補習授業部のみんなと出会って手に入れたものだから。

 

 案の定、私は負ける。

 膝を地面について、銃口を頭に向けられて。

 口の中には血の味が混じって、睨みつけることしかできなくて。

 

「サオリ……この状況、何が目的だ?」

 

 両脇にミサキとアツコによって拘束されながら身体を無理矢理起こさせられる。

 

「……何が起きているのか、教えてやろう」

 

 サオリの口から説明されることはあまりにも荒唐無稽だった。

 ただ、目的は理解できた。

 サオリたちアリウスの狙いはエデン条約の書き換えによる兵力の確保、それだった。

 

 すぐ近くにいるアツコが手話で此方に語り掛けてくる。

 曰く、アリウスに戻ってきてほしい。ということだった。

 

「やめておけ、姫。今は無駄だ。あいつの意志を折るのはそう簡単じゃない……前々からそうだろう?」

 

 それをすぐにサオリが否定する。

 業腹では有るがその通りだった。

 

「その意志を、想いをすぐそばで煽る存在が居たんだろうな」

 

 サオリはゆっくりと此方に近づき、私の顎にそっと触れると、私の顔を冷たい視線で見つめる。

 

「この世界の真実を隠し、事実を歪めて嘘を教える……そんな悪い大人が。……まあ、その先生もすでに片付けた。だから後はもうゆっくり考え直せば良い」

「……っ!!」

 

 その言葉に、私の身体はカッと熱くなる。

 何も知らないくせに、先生のことを知らないくせに、よくもそんな口で先生を語るなんて、と。

 悔しくて、情けなくて、何もできない自分が恥ずかしくて堪らなかった。

 先生の名誉すら守ることも出来ないことに、自分自身に腹立たしくて堪らなくなった。

 

「……トリニティでは楽しそうだったな。あの生活は楽しかったか? 好きな人たちと一緒にいること、お前を理解してくれる人たちと一緒にいることは」

 

 安い挑発だ。

 楽しかったとも、ああ本当に楽しかったとも。

 みんな優しかった。暖かかった。

 だから、守りたいと思ったんだ。

 あの素晴らしい場所を、あの素晴らしい仲間たち(補習授業部のみんな)を。

 

「……虚しいな」

 

 サオリの冷たく低い声が、さらに冷たさと切れ味を帯びる。

 

「思い出せ、お前を理解して受け入れてくれるのは、私たちだけだ。ここがお前の居場所だ」

 

 お前はアリウスの白洲アズサなんだ、と。サオリは私に突きつける。

 

「お前はその真実から目を逸らし、甘い嘘に目が眩んだ。そしてその弱さがお前をこうして敗北させている」

 

 ……それは、明確な事実でも有った。

 私は弱くなった。情が出来た。

 無機質に、機械的に目標の排除のための効率的かつ合理的な行動。それには感情を排することが必要である。

 怒りに身を任せた行動など下の下だろう。サオリの指摘は間違いなく正しい。

 

「……私たちを止めたいか? ならば私のヘイローを破壊してみろ。白洲アズサ」

「……!」

 

 それは短絡的であり、なおかつ全てを根本から対処できる解決策であった。

 エデン条約の主体はアリウススクワッドにある。スクワッドが存在する限り『戒律の守護者』たちはアリウス側の兵力として使役し続けられる。

 

 そうなれば、数の差でトリニティやゲヘナと十分渡り合うのとて可能なのだ。

 ──そのヘイローを破壊しない限り。

 

「今のお前に足りないのは殺意だ。……しかし、今のお前にそんなことができるか? あのセイアの任務から逃げたお前が」

「……っ!?」

「私たちを騙そうとしてまで、綺麗な場所に残ろうとする……そんなお前には無理だよ」

 

 サオリはそう詰るように告げ、手を離す。

 私に興味を薄れ差したかのようにふと足元に目を移す。

 

「……ぬいぐるみ?」

 

 それは、ヒフミからもらったペロロ博士のぬいぐるみだった。

 

 その瞬間。砲弾が私達のすぐそばを通過する。

 

「……っ!!」

 

 サオリは不意を突かれたように、私に対して意識を外し。

 私はその隙を見逃さず、ぬいぐるみを拾いあげ、身体を捻りながら逃走する。

 

「また逃げる気か、アズサ!!」

 

 サオリの声が、私の耳を打つ。

 どこまでも、どこまでも……。

 私の耳と心に濁るように打つのだ。

 

 ……。

 ………。

 

 トリニティは混乱の最中にいた。

 

 トリニティ首脳部は完全に麻痺し、保護されたナギサ様は声をかけてもまともに反応せず何処か虚空を見つめるばかり。

 ハナコちゃんはなんとか混乱を鎮めようと古書館にて本部をおいてその収拾にあたり、コハルちゃんは正義実現委員会の委員会メンバーとして働いている状況。

 

 そんな中、私にはたった一人で行動するアズサちゃんを探すために彼方此方で飛び回る中、一通のモモトークを目にした。

 

「アズサちゃん……?」

 

 日は沈み、一面は薄暗く。本来大橋を照らす街灯は一連の事件の影響か、配電が途切れたせいで真っ暗であった。

 

「アズサちゃん、私です、どこにいるんですか……?」

 

 私の声に返答はなく。言葉さえ闇の中に消えていくような、そんな風景に私は少しだけ恐怖を感じる。

 

「アズサちゃん……答えてください、アズサちゃん……!」

 

 何度も声を上げて呼びかけると、誰かが歩み寄ってくる足音が聞こえる。

 

「アズサ、ちゃん……?」

「ヒフミ……」

 

 アズサちゃんの姿はボロボロで、制服は汚れ、身体も傷だらけで。とてもじゃないですが、まともな状態じゃありませんでした。

 

「アズサちゃん、今まで何処に……学園は今、大騒ぎで……」

「……うん、知ってる」

「アズサちゃん……?」

 

 アズサちゃんの雰囲気はいつもとは違っていた。

 いつも迷いなんてなくて、強い意志を感じさせる瞳は暗く。

 まるで後悔と慚愧に満ちているようだった。

 

「……これを、誰かが止めなくちゃいけない」

「それは、どういう……どうしてそんな顔で……アズサちゃん?」

 

 私は、不意にアズサちゃんに駆け寄ろうと一歩足を前に踏み出す。

 

「来ないで!!」

 

 それはアズサちゃんの強い否定の言葉だった。

 身体が驚きで硬直する。こんなアズサちゃんは見たことがなかった。

 

「……ありがとう、ヒフミ」

 

 アズサちゃんはそう言って、私に微笑む。

 

「でも、ここまでだ、ここから先には来ちゃいけない」

 

 強い、線引きの言葉。

 悩みながら、苦しみながら、アズサちゃんが出した強い覚悟の言葉だった。

 

「ここから先は、私の居場所。ヒフミみたいな善良な人は、これ以上来ちゃいけないんだ」

「あ、アズサちゃん……何の、何のお話ですか……? 私じゃ、何がダメなんですか……?」

「……平凡で優しいヒフミには、似合わない話だよ」

 

 納得するように、アズサちゃんは独りごちる。

 

「アズサちゃん、私は……!」

「人殺し」

 

 吐き捨てるように、アズサちゃんは語る。

 

「……人殺しになった私は、もう友達では居られないだろう?」

「あ、アズサちゃん……?」

 

 アズサちゃんはそう言って自身を『人殺し』と吐き捨てる。

 

「だって、だってアズサちゃんはそんな……」

 

 そんなことは無いと、私は声を掛けようとするもアズサちゃんは私の声を聞く前に口を開く。

 

「私のせいだ。私のせいでみんなが傷ついて……、先生が撃たれた」

 

 それは深い悔恨だった。

 

「正義実現委員会、ティーパーティー、シスターフッド、それにゲヘナの人たちも……セイアが昏睡状態になったのも、学園がここまで破壊されたのも……全部、私のせいだ」

 

 違う、アズサちゃんのせいじゃない。

 アズサちゃんが悪いことなんて何にもない。

 

「ヒフミ、それにハナコとコハル。このままじゃみんなまで危険になる」

「そ、それは……アズサちゃんのせいではありません……それは……」

 

 それは──それは、なんだというのだろう。

 その先の言葉が私には出なかった。言うのは簡単だとしても、言ってしまえば取り返しのつかないことになってしまう。

 そんな焦燥と確信があったから。

 

 だから、私は話をずらした。

 悪いことは考えないように。

 

「だ、大丈夫です。せ、先生は……先生もきっと、すぐに目が覚めるはず、ですし……ですから……!」

「ヒフミ」

 

 アズサちゃんの鋭い声は私の震え声を責め立てるかのように突き立ててくる。

 

「そんなハッピーエンドは……この世界には無いんだ」

 

 それは冷たいほど明確で、間違いなく真実であった。

 現実は常に思い通りにはならない。誰もが幸せであれるならきっとこんなことにはなっていない。

 

「今から私はサオリのヘイローを『壊しに』行く。それ以外に、この事態を止める方法はない」

「ま、待ってください、方法……方法なら、きっと……!」

 

 アズサはガスマスクを被る。

 

「私はこれから、人を殺す」

 

 それはアズサちゃんの決意だった。

 

「それが当たり前の場所で、それが当たり前だと教わり、それが当たり前みたいに動けるように訓練された存在……それが、本当の私」

 

 そのマスクの裏でどんな顔をしているのか。きっとそれは良いものではないはずだ。

 アズサちゃんの決意はすでに固まっていて、それを解きほぐすのは容易ではなくて。

 それでも私はアズサちゃんに傷ついてしまうような選択を選ばせたくはなかったのに。

 

「こんな私が、ヒフミと同じ世界になんていられない」

「アズサ、ちゃん……?」

 

 だからその優しげな声色に聞き入ってしまった。

 

「ヒフミ、私を友達と思ってくれてありがとう。私を『アズサちゃん』って呼んでくれてありがとう。かわいいぬいぐるみをくれて、ありがとう」

 

 それは感謝だった。

 

「海に連れて行ってくれてありがとう。楽しい思い出をくれてありがとう。かわいいものが、綺麗なものが、知らないものがあるって教えてくれてありがとう」

 

 私にとって、これからも続く青春の日々。

 けれどそれはアズサちゃんにとっては人生における最も素晴らしい奇跡のような日々だった。

 

「補習授業部での毎日……あんなに素敵な日々を過ごして、たくさんのことが学べて良かった」

 

 やめて……。

 

「学ぶことは本当に楽しいことだった……これまでの時間は、死んでも忘れない。少しでも、補習授業部の生徒でいられて良かった……」

 

 やめてよ……アズサちゃん。

 

「ありがとう、ヒフミ。さよなら」

「アズサ、ちゃん……」

 

 そんな顔をしないで、そんなこれが最期のような……そんな顔をしないでください……。

 

「ダメです。待って、待ってください……きっと、他に方法が……せ、先生が、みんなが……」

 

 こんなことは認められない。だってそんなのは嫌だから。

 先生がいればきっとどうにかしてくれるから。だから、早まらないでほしい。

 

「だって……だって、まだ……」

 

 まだ、私はアズサちゃんと一緒にいたいから。

 

「『次はみんなで一緒に海に行こう』って、約束したじゃないですか……また一緒に、ペロロ様の冒険アニメだって、見れてないじゃないですか……」

 

 アズサちゃんは背を向けて駆け出す。

 1秒でも一分でも惜しむかのように。

 

「い、行かないでください……アズサちゃん……ダメです、行かないで……待ってくださいアズサちゃん……」

 

 私が踏み出した足は闇の帳を掻き分けようとして、暗闇の中を進む。

 けれど、アズサちゃんの姿は見当たらず私は堪らず叫ぶ。

 

「アズサちゃんっ!!!!」

 

 視界が滲む。

 声が闇夜に掻き消され、私はその場でへたり込む。

 

 どうして……どうしてこんなことになってしまったんだろうと、ただ後悔を乗せて。




 イサクさんがほぼ関係なくてもここまでの曇らせを用意できるのがYostar氏。手前感動致しました。
 突然ですが私はカヤが好きですがアズサも好きです。
 ナグサちゃんはもっと好きです。(性癖の開示)
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