キヴォトスでちょっとエッチな精子脳男子をヤってみた話(旧題『カヤ虐曇らせモノ』) 作:ニーガタの英霊
「──素晴らしい」
古聖堂の最奥。カタコンベの一部であるその場所にマエストロはいた。
「素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい」
木々を擦り合わせるかのような不協和音を奏でながらマエストロは歓喜に身を震わせる。
「知性と品格、礼儀と信念、そして培ってきた経験と知恵……」
マエストロは見ていた。その男の姿を、男たちの生きざまを。
汎ゆる賛辞も汎ゆる祝福の言葉すら、それを讃えるのに足りないほどの姿。彼らを評価するのに適切な言葉を持ち合わせていない。
「嗚呼、そうだ……。そうだとも、私は今──」
デカルコマニーとゴルコンダであれば何と言うであろうか、マエストロは己の口下手な身に対して慙愧の念に堪えない。
だが、それでも。一つだけ確かなことがある。
「──猛烈に、感動している……ッ!!」
この魂を震わす美しさは紛れもなく真実であることに!!
「……私の『崇高』を……! そなたらの『崇高』を……! 見せてくれ……っ!!」
……。
………。
カタコンベが大きく揺れる。
「こ、これは……」
サオリとの決戦を制し、対話を済ませたアズサは突然の状況の変化に戸惑う。
「……まさか。あの『教義』が、完成した……?」
サオリとの決戦の後、爆風によってダメージを受けながら
唯一、マエストロの動きを把握していた彼女だけが状況に際して違和感に勘づく。
それは紅い……紅い天使。
光輪を背に輝く紅色のフードを被ったかのような人型の受肉体。
戒律の守護者、その教義を独自解釈し再現し、単一の個体として生み出したシステムの擬人化とでも言える存在。
──ヒエロニムス。
困惑し警戒の色を強めるアリウススクワッド。
冷や汗を垂らしながら、後退を進めるアズサ。
「"……どうやら、反則みたいだね"」
その中でただ一人、彼だけがその
「先生……?」
先生が懐から取り出したのは、黒いカードだった。
アズサにはそれがわからない。なにせ初めて見たからだ。
「"出さないで終わらせたかったけど……"」
先生は自嘲するようにそのカード──大人のカードを取り出す。
その顔をアズサは知っている。
それは覚悟の顔だ。何かを決断し、いかな不利益を被ろうとも進むことを決めた顔だった。
「せ、先生……。それは……!」
それは、よくないものなんじゃないか……?
アズサは直感的に察する。先生が覚悟を決めなければならないもの。例えば何かしらの代償を払う必要性があるもの。そんな気がしてならなかった。
アズサは後悔する。もしここに補習授業部の皆がいてくれれば、私の想いを汲んでくれた先生や皆には感謝はあれど、その代償として先生が傷つくのは許容できない。
だからアズサは先生に手を伸ばそうとして──。
「おいおい、そいつぁ……穏やかじゃねぇな」
──男の声に遮られた。
「"……イサク、どうしてここに?"」
要件がある、とアズサや先生とカタコンベ内で別行動をしていたイサク。
彼にとってアリウスとは殺し殺されの仲である。普通であればそんな状況にある彼を一人にするなど愚行と言えるだろう。
だが、先生には確信があった。前原イサクと言う男であれば大丈夫だと。彼にはそう思わせる何かがあった。
人によってはそれはカリスマとも言える不思議な魅力。あるいは彼と出会って数時間、それだけで先生の中にイサクに対して感じるものがあった。
「言っただろ、先生。アンタは後ろでどっしり構えといてくれりゃいい……ってな」
その言葉とともに轟音が響き渡る。
「──礼砲は略式で……。ですが、敬意をお忘れなく」
L118榴弾砲。
ティーパーティー、フィリウス分派直下にあたる精鋭砲兵部隊が使用する砲撃支援。
カタコンベという屋内でありながら、緻密な弾道計算によって味方に傷を負わせず、砲弾は正確にヒエロニムスを捉える。
「……待ってたぜ、ナっちゃん」
「ええ、おまたせしました。イサクさん、そして先生」
ティーパーティーホスト、桐藤ナギサが其処に居た。
「"ナギサ! 大丈夫なのかい!?"」
「ええ、先生。永らくご心配をおかけいたしました」
まだ完治してないのだろう。その歩幅はゆっくりで片足を引きずりながらナギサは胸に手を当て、スカートの裾を軽く持ち上げる。
「トリニティ総合学園、ティーパーティーホスト代行桐藤ナギサ。只今、参りました」
その掛け声とともに、戦列を並べるトリニティの生徒たち。
「"これは……"」
「なぁ、先生。今のアンタにそいつは本当に必要かい?」
イサクは先生の手の中にある大人のカードに視線を送る。
「"……あれは強大だよ。だったら──"」
「俺達は一人じゃない、子供の力なんざ出来ることは限られてるのかもしれない。だから、俺達は力を合わせるんだ」
イサクは、ニカッと笑みを浮かべて、右手の人差し指を高らかにあげて宣言する。
「俺を、俺達を信じてくれ先生。子供の可能性は何時だって無限大だ。アンタの信じる、俺たちを信じてくれ!!」
子供の可能性を信じること、それが大人の責務ではないだろうか。先生は逡巡し、そして仕方なさげにカードを仕舞う。
「"すごいねイサクは。先生なのに教えてもらっちゃうなんてね"」
「仕方ねぇよ、俺は唯一無二にして至高のイサクさんだからな」
もっとも語彙力に関してはすごくは無いようであった。
「"やれるかい、イサク"」
「俺たちを誰だとおもっていやがる、先生」
下に同じ文章あり
それはまるで祈りのようで、ある種の神聖さを表すような儀式のような姿だった。
「──俺たちはアンタの生徒だぜ。祈ってくれ先生、その願いを俺はこの一撃に籠めよう」
「"いいや、大人として見ているだけなんて出来ないさ"」
先生は懐にあったシッテムの箱を起動する。
うん、やっぱりこっちのほうが性に合っていると先生は自身を自嘲する。
「"私だって先生だ。君たちの手助けをしてやりたい。勿論、無理のない範囲で、ね?"」
子供が一つの目標に向けて走るのなら、そのサポートをするのが大人の役目であり、先生としての義務だから。
なにより、私自身が彼らとともに戦いたいと思っているのだから。
「"君は、君のやりたいことを。私は私のすべきこと……いや、やりたいことをやるだけ。そうだろ、イサク"」
「……しょぉがねぇなぁ」
自然と笑みがこぼれる。状況は考えつく限りピンチなのに、なぜだろう。みんなと一緒なら不可能なんてないかのように思えてならなかった。
「それじゃ約束しようぜ、先生」
「"約束…?"」
イサクは片手で握りこぶしを作りながら、それを先生の前に向けた。
「──男と男の約束ってやつだ」
「"……"」
暫しの沈黙のあと先生はその意味に気づいたのか、イサクの拳に対して左手で軽く小突く。
「俺たちは誰ひとり欠けることなく、誰一人として犠牲なく、事を成す。そうだろ、先生?」
「"ああ、勿論だ"」
「哀しみの涙なんざいらねぇ、誰もがそんな事あったなぁって笑い合えるくだらない話にしてやるんだ。大丈夫だ、俺とアンタなら……いいや、俺達なら出来る!!」
イサクはそう言うと、先生に背を向けてホルダーにあった単発銃を握りしめる。
イサクは目を瞑り、銃身を額に添える。
その姿はまるで祈るかの様な何処か神秘的で神聖な姿であった。
それと同時にイサクの持つ銃に蒼い光が渦巻き、銃口から銃身に淡い光が籠められる。
「──背中は任せたぜ」
「"──うん、後ろは任せてほしい"」
その銃身に祈りは籠められた。
……。
………。
傑作とは何を以て傑作というか。
その判断は個々人に委ねられるだろう。
兵器であるのならば
では、芸術においては何か。近いのはやはり大衆性による客観的な多数意見に委ねられがちになることは否めない。
だが、そうではない。そうではないのだ。
何を以て傑作か決めるのは私自身に他ならない。
私が認めない限り、それは傑作足り得ないのだ。
「──本物だ」
『
充てがわれたテクスチャではない、見た目だけを精巧にしたそれではない。
私は本物の前原イサクを求めていた。
スペックを上げることは簡単だろう。それこそ素体そのものに前原イサクを使わず人々の想起から『複製』すれば事足りる話である。
しかしそれは前原イサクという幻想の皮を被った別の何かでしかない。
だから、当初は不完全だった。もともとのあれを私は前原イサクとは断じては居ない。
槌永ヒヨリの思考から生み出され、神秘殺しの権能を顕現させ、ヘイローによる基礎スペックの向上を図ったそれは本物の良さなどなにも引き出せていない作成途中の未完成品でしかなった。
だから、そう……だから私は……。
だから私は歓喜したのだ。私の想像の中の作品ではなく、私の想像を飛び越えた本物として彼は再誕した。
自ら優れた
作者の想定を超える作品を、生み出したもののコントロールからはずれた存在を。
見定めねばなるまい。最後の最期まで。
それが、芸術家たる自身のすべき事であるからだ。
前線にて縦横無尽に駆け回る白洲アズサ。
周囲を固める
的確に援護の指示を下す桐藤ナギサ。
それらの少女たちに指示を出す先生とただ独り機をうかがう前原イサク。
珍しい、と。マエストロは独りごちる。
前原イサクはどちらかといえば行動的な男である。
前線で身体を張ることもあれば後方から指揮を担うこともある。
それが、
自身の指揮権を先生に委ねている。これは今までの前原イサクではなかったことだ。
「Vanitas vanitatum et omnia vanitas.」
白洲アズサが
その隙を突こうとするユスティナ聖徒会の
「"──アズサ、左腕を狙って"」
「了解、先生」
放たれた弾丸は正確に
「"無駄だよ、君の攻撃はもう私たちには届かない"」
それは明確な事実であった。
数手における戦いの中で先生はそれを解析し的確な指揮のもと
しかし、それでもなお一押しが足りない。
前線を張る白洲アズサが如何に玄人であったとしても、為せるのは牽制の一手。
前原イサクによる必殺に名高い『祈りの弾丸』を食らわせれば勝てるやもしれんが、そのための崩しの一手が必要となる。
ジリ貧が目に見えている状況。装備が潤沢と言えどもL118榴弾砲には限りがあり、白洲アズサの体力と集中力にも限りがある。
それでも彼らの目は死んではいない。
白洲アズサは先生を信じ、桐藤ナギサは前原イサクに託し、前原イサクは何かを待ち続け、先生は額に汗を滲ませながら
「嗚呼……そうか」
私は驚嘆した。同時に納得した。
「前原イサクよ、そなたはまだ……信じているというのか」
裏切られ、騙され、その結果多くを失ったにも関わらず。
それでも男は信じた。前原イサクは信じたのだ。
「……えへへっ」
マエストロは振り返る。そして確かにソレはあった。
重厚なフォルム。外壁を容易に貫通せしめる対物ライフル。
「辛いですよねぇ、苦しいですよねぇ……でも大丈夫です。もう、これで……終わりですから」
それを持っているものをマエストロはよく知っていた。
放たれた弾丸は、
腕を弾かれ、錫杖が宙を舞い、
「よくやった、つっちー」
前方に大きく倒れる
「──これで終いだ」
祈りの弾丸は放たれた。
けたたましい叫び声が木霊し、
『祈りの弾丸』はゲマトリアの総力をあげて生み出した神秘崩しの力である。
効果は単純。神秘を否定し、恐怖に打ち勝つ。ただそれだけである。
その結果、祈りの弾丸を受けたものは
科学の名のもとに神秘を解き明かし、見えざる恐怖に打ち勝ち、黎明の闇を切り開く人間としての強さ。
それこそが祈りの弾丸の正体である。
「勝っ、た……?」
白洲アズサが困惑とともに呟く。
「"うん、もう大丈夫。私たちの勝ちだよ"」
先生は白洲アズサの肩に手を置き、安心させるように微笑む。
「"イサクもありがとう"」
「礼なら、つっちーに言ってくれ。あれがあったからこそ、俺は仕留められたんだからな」
前原イサクが視線を向けた先には丸腰で此方に近づく槌永ヒヨリの姿があった。
「"ヒヨリ……"」
「えへへ、さっきぶりですね」
少しだけ怯えを孕みながら、槌永ヒヨリは引き攣った笑みを浮かべる。
「総員、槌永ヒヨリを拘束してください」
凛とした声。決して大きくない桐藤ナギサの声がカタコンベに響き、ティーパーティーの面々によって槌永ヒヨリは拘束される。
「"ナギサ……!"」
「お許し下さい、先生。私たちにとってアリウススクワッドは今回の騒動を引き起こしたテロリストなのです。彼女も覚悟の上でしょう」
チラリと先生は槌永ヒヨリに視線を向けると槌永ヒヨリは引き攣った笑みをしながらどこか諦めたかのような表情を浮かべる。
「"ヒヨリ……"」
「えへへ、いいんです、先生。た、確かにこの後のことを考えると、とても辛いですし、酷いことをされるんでしょうけど……」
この先のことを考えたのか槌永ヒヨリは顔色を悪くして身体を震わしながら、視線を前原イサクに向けて一言告げる。
「……それでも、イサクさんを助けたかったんです」
だから、戻ってきた。あの日助けられなかった日からずっと心に刺さっていた棘をようやく引き抜けたかのような安堵を槌永ヒヨリは感じていたのだろう。
誰一人とて犠牲を出さず、誰一人とて欠けず。騒動を終わらせた。
大団円であろう。傍目から見ればそうと言える。
──唯一人だけ除いて。
唐突に膝から崩れ落ちる前原イサク。
「"──イサクっ!!"」
「イサクさんっ!?」
まず気づいたのは先生、それから槌永ヒヨリと桐藤ナギサ。
槌永ヒヨリは拘束され身動きが取れず、白洲アズサは疲労があるのか前原イサクの崩れ落ちた姿に動揺しながらも周囲の警戒を怠らない。
──脳が軋みあげる。
「あぁ……問題ねぇ先生。草臥れただけだ……」
「"草臥れただけって……無茶していたのかい?"」
前原イサクは曖昧に笑う。
「……頭がな、妙に軋むんだ。脳がシェイクされてるような頭痛が止まらねぇ」
「──やはり、不完全であったか」
周囲の目がこちらに向く。
当然のことだ。自我を取り戻したことはこちらにとって想定外の出来事であり、脳死の肉体を無理やり動かしている状況を鑑みればどこかエラーが出ていてもおかしくはない。
「……マエストロ」
槌永ヒヨリが怯えを孕んだ目で呟く。
「"──ゲマトリアか"」
「始めまして、先生。私のことは芸術への尊敬を込めてマエストロとよんでほしい」
警戒心を露わにする先生に対して私は努めて礼をこめる。
「──まずは礼を、先生。貴方のおかげで私はまた一つ崇高に近づけた。此度の実験は非常に得るものが多かった」
「"何をしに来た?"」
先生は警戒を露わにし、懐にある大人のカードをそっと握る。
「先生、それは賢明ではないだろう。私としてはその力には非常に興味をそそられるが、この場面で使うのは今までの努力を無に帰すことと同意だ」
「そうだな、アンタの言うとおりだろう」
額に汗を滲ませ、片手で額の弾痕を抑えながら前原イサクはゆっくりと此方に近づいてくる。
「"イサク!?"」
「アンタが俺の主治医だろ? 違うかい」
「概ね間違ってはいない、前原イサクの肉体の調整を行っていたのは私だ」
「だとよ、先生。どうやらここで一時お別れみてぇだ」
「イサクさんっ!!」
前原イサクの言葉に桐藤ナギサは声を張り上げる。
「駄目です、イサクさん……ついて行っては駄目です!!」
「"イサク、ゲマトリアは信用できない。彼らは子供のことなんてちっとも理解していない危険な組織だ"」
「ああ、だろうな。だからといって俺の身体をどうにかできるのはこいつしか居ねぇ。初めから詰んでんだよ」
制止の言葉を尽くす二人に対し、前原イサクはそう告げた。
「で、ですが……なにか方法が」
「手っ取り早い方法が、このマネキンだ。違うか?」
前原イサクは親指で私を指差しながら答える。
「こいつにとって、俺は回収するに値するモノらしいってことはこの状況を見てよくわかってる。無体なことはしないだろ?」
「──如何にもである」
そう、前原イサクは私が崇高に近づくために必要な重要なファクターである。だからこそ、今ある不備を修正しなければならない。
今のイサクと私の間にあるのは完全なる利害の一致という訳だ。
「大丈夫だ。また会えるだろうよ」
私が合図をするとカタコンベに黒い空間が浮かび上がる。
「前原イサク、こちらだ」
「おう、またなんかエライオーパーツだなこりゃ」
学園都市キヴォトスと我々ゲマトリアを結ぶゲート。本来は私の区分にはないが技術として借り受ける程度のことは可能だった。
「"イサクっ!!"」
「先生……俺たちはまたきっと交差する。だからそれまで待ってくれ。男と男の約束だ」
その言葉を最後に私たちはトリニティのカタコンベから姿を消した。
くぅ〜疲れましたwこれにてエデン条約編三章終了です!
最後はイサクさんがゲマトリアで肉体の調整を受けるためにピーチ姫になりました。ヒーローなのかヒロインなのかもう訳わかんないね。
前原イサクをぶち込んだメリットも今回でよくわかったと思いますが先生の大人のカードを使う盤面が一つ減ることと鬼畜難易度と呼ばれた三章24話が支援生徒アズサ、ナギサ、モブトリカス、イサク、ヒヨリで攻略できる優しい世界になってます。
そろっとカヤを動かしたい意欲もあるので今後の予定ではカルバノグ一章→エデン条約編四章→断章→カルバノグ二章って感じに進めたいなぁと思います。
カヤぴぃにイサクさん生きてるかもよ! で希望を見出してさらに落とすことを強いられてるんだ!!
待ってろよ、先生とサオリとカヤの曇らせはこれからだ!!