キヴォトスでちょっとエッチな精子脳男子をヤってみた話(旧題『カヤ虐曇らせモノ』) 作:ニーガタの英霊
私事で仕事を辞めて再就職に奔走してたため随分と期間が空き、いつの間にか百花繚乱編二章が始まってしまいました。
皆さんはナグサちゃんは引けましたか?わたしは14連ガチャで引けました。なぜか二つも。
科学とは、世界の法則を解き明かし、神秘や奇跡を普遍なる現象へと変える行為である。
偶然を必然に変え、特別を凡庸に変え、奇跡をありきたりに成り下がらせるもの。
それが科学である。
ミレニアムサイエンススクールはキヴォトス最高峰の理工学系学校であり、その中でエンジニア部は工学分野のプロフェッショナル、すなわちマイスターを擁する天才集団の一角ともいえるだろう。
「なんでこんなことが出来るんだ……?」
それを生み出したのはまったくの偶然の産物であった。
求めたのはエネルギーの伝導率を向上させるための仕組み。一切の無駄なくそれでいてエネルギーを効率的に稼働させる歯車。
それが、なぜか半永久的にエネルギーを生み出し続け、無限に至るほどの永久機関と化す理由がわからない。
「おかしいだろう……質量保存の法則はどこに行った? 確かに半永久的かつクリーンな動力の生成は科学の到達点だろう。いや、だが……しかし」
科学とは神秘や奇跡を普遍なる現象へと貶める行為である。
それは普遍性と汎用性。何よりも再現性がなければならない。
「わからない……」
──どれだけこの現象を紐解こうとも、再現することが出来ないモノを、
少女は天才ではない、ミレニアムサイエンススクールでは掃いて捨てるほどいるそれなりに勉強だけは出来る凡人に過ぎない。
一人でできることには限りがあり、一人の発想では到底及ばないものがあることを彼女は誰よりも理解していた。
「わからないから、知るべきだ……!」
だから、より多くの知恵が必要となる。
いったい、誰がここまで文明を拓いたのか。たった一つの小さな焚火から、何千年という悠久の時を経て弾道弾ミサイルを生み出すに至ったのか。
それは、幾年にわたる時間と人々の小さな閃きだ。
数多くの人類の集合知こそ文明を拓きえる力があることの証左である。
そして、科学の発展には常に人々の争いがあった。
一歩間違えば、既存の文明を滅ぼしかねない無意味な闘争の結果、人類はこのキヴォトスで最も繫栄した銃という武装を生み出したことよりそれは明らかである。
「一人では無理でも、みんなの力があれば切り開ける」
誰もが扱い、誰もが理解し、誰もが振るうことのできるモノ。
科学という技術の発展によって人々は多くの差別を撤廃した。
何よりも平等で、何よりも公平。
それが科学という素晴らしいモノなんだ。
そう、彼女は信じている。
「学ぶことを辞めたとき、それが人が死ぬときだ」
少女はまだ生きている。科学の最果てには未だ遠く、未知はごまんとあるのだから。
その未知の切っ先に手を伸ばし続ける者こそ科学者のあり方なのだから。
……。
………。
「ボクの負担が大きすぎないか……あり得ないだろう、そもそもボクは後方支援のはず……」
口から愚痴が止まらず武器屋は不満を述べる。
「そもそも…そう、そもそもだ。何でもかんでもボクに任せすぎだ! ええっ!? ここまでの装備を整えたのは? 用意したのは? 妨害電波を流したのもそうだし、挙句の果てにはこのボクを走らせてこんな場所まで一人で制圧したのだってボクじゃないか? 働かせすぎじゃないか!! 給料分以上の仕事をしているぞ!! まったく、しかも誰もまともに仕事しているという意識がない。これはもう責任感の欠如だ。普通あり得ないぞ、普通チームを組むならしっかりとコミュニケーションを取るべきじゃないか。当たり前のことが出来てないんだぞ!! 謝罪や謝礼の一言二言あってしかるべきだろう!! 二丁拳銃は途中で見つかってるし、狐と蒐集家は仕事も忘れて大暴れっ!! せっかくの舞台だぞ、相手は連邦生徒会肝いりの組織なんだぞ!! ああ、まったく……!! もう受けないぞ、二度と受けないぞ!! 教授だかなんだか知らないが一人の才覚に物事を任せすぎだ。もっとスマートかつ人員を整えて第二第三の矢を準備すべきだろう。少なくとも少数精鋭でやることじゃ──」
武器屋はキーキーと猿のように喚き散らしながらも、テキパキと手を動かす。
すでに電波関係を掌握し、相手の中枢情報システムは物理的に排除。電子戦という戦場においては圧倒的なアドバンテージを有しているのは偏に武器屋の活躍あってのことだろう。
「──命令系統の書き換え完了。さて、見せてもらおうじゃないか……調月リオの虎の子というものをね」
その言葉とともに、武器屋の周辺に居た無機質なモノアイが点灯する。
「大したものだよ、拡張性や応用性も高く。なにより汎用性に優れている。誰にでも扱え、電子回路一つとて無駄のない構築には美しさすら感じられる……だからこそ利用させてもらうよ」
それは調月リオが生み出した自律型火力支援機器。
厳しい訓練や試験のため人員が不足すると考えた前原イサクがミレニアムに単身交渉に赴き、トルドハイム農専の生体研究の一部を条件として引き出したSRT生徒の火力支援、並びに正面戦闘能力のかさ増しとして導入された兵器。
「──『AMAS』。ボクらの欠点である数を補わせてもらうために、使わせてもらおうか」
縦横無尽に空や路上をホイールで駆けるドローン兵器。
兵器庫から一定の間隔を保って規則的に出てくるそれはまるで統率の取れた機甲の軍勢であった。
条件の前提は達成された。あとはこの兵器群を以て弾薬庫を破壊し、SRTに壊滅的な被害を齎せば連邦生徒会の権威は失墜。日々締め付けを迫られるブラックマーケットやいわゆる地下に潜っている組織も活発化するだろう。
それ以外にもこの兵器庫にある武装を幾らか頂戴し裏に流せばかなりの額になる。それは武器屋にとっての新たな資金源となる。
「──っ!?」
そんな風に皮算用をしていた武器屋の頰を一発の銃弾が発砲音とともに撫でる。
危険を感じ、身体を
「──手を挙げて投降しろ。ヴァルキューレだ」
私服姿でありながら片手で警察手帳を開き、もう片方の手で器用に拳銃を構える女生徒。
ピンと尖った獣耳と肉食獣のような歯に垂れ目ながら鋭い眼光、本来隠密作戦や特殊作戦を行うヴァルキューレ警察学校公安局の所属でありながら名前を売り過ぎたヴァルキューレ警察学校の
「──
まるで歯車の間に挟まった一粒の砂の如き想定外が
……。
………。
けたたましい男たちの怒号と、視界を常に煌めかせる赤色灯の光。
ボロアパートから連れて行かれる二人の男たちの背中。
一人は仕立てのいいアイロンで糊付けされたワイシャツ姿のオートマタ。一人はあたりを噛みつきそうな凶相で周囲を睨みつける革ジャンを羽織る鳩の姿をした大人。
それを歩道のガードレールに腰掛けて見つめる
周囲にはやじ馬が奇妙なものをみるように見つめ、アパートの隣人たちも興味深そうに扉や窓から顔を出す。
そんな様子をイサクは無表情にしかし、決して目をそらすことなく見つめ続けていた。
「イサク……、なにがあったんだ……?」
荒い息を整えながら、私はイサクの肩を掴み、揺らしながら声を掛ける。
彼の視線が、ゆっくりと私を捉え。何処か物憂げな表情で口を開く。
「よぉ、カンナちゃん……」
「イサク……おじさんたちが……」
イサクの育ての父親。
イサクは血の繋がった両親は居ない。
ヘイローのない奇妙な赤子。キヴォトスではまずお目にかかれない男の赤子という希少さに目をつけない裏社会の人間は居ない。
イサクの商品価値としての高さに目をつけたのがブラックマーケットの裏カジノで、そこに出入りしていた博徒のコンビが居た。
それが、イサクを育てたおじさんたちであった。
「ああ、そうだな」
「そうだな……って、イサクお前ッ──」
これからどうするつもりだと、声をかけようとして。
イサクから告げられた言葉に、私は息を呑んでしまった。
「俺が通報した」
その言葉を、私は最初飲み込めなかった。
理解ができなかった。
イサクとおじさんたちはうまくやっていたのだ。
少なくとも傍から見ても本当の親子のような関係だったのだ。
私だって顔見知り以上の関係で、粗末なものだったが一緒に食事をしたことだってある。
いつも会話があって、喧嘩もして、それでも最後には笑っている。そんな気安い関係だった。
「……なん、で?」
だから、イサクが言ったことがまるで信じられなかったからだ。
愕然とする私に向かってイサクは困ったかのような表情で口を開く。
「親父と父さんのためだからな」
寂しそうに、けれど仕方なさそうにイサクは答える。
「親父たちが、どうやって俺たちを食わせていたか。カンナちゃんは知ってるだろ?」
「そ、それは……」
イサクの問いに、私の口は鉛でも引っ付いたかの様に重くなる。
イサクの父親たちは裏社会ではそれなりに名の通った悪党だった。
元カイザーグループの幹部社員であったオートマタと酒に酔って一般人に暴力を振るい武道界から追放された元柔道家。
前者は知能犯としてインチキ紛いのセールスを、後者は用心棒や金貸しの下っ端として恫喝と犯罪スレスレのグレー行為を行いながら互いにコンビを組んで裏カジノをほどほどに荒らしていた博打うちの玄人だった。
「親父たちのやったことは、紛れもない違法賭博で人身売買で洗い出せば詐欺や恐喝に傷害なんてものも出るだろう……カンナちゃん。親父たちは良いやつだったよなぁ」
イサクは懐かしむように、笑う。
「親父たちは俺を育ててくれた。飯を食わせてくれたし、飯を食わせるための方法も教えてくれた。生き延びるために戦い方を教えてくれて、不器用でも本をくれて学ばせてくれて、笑って、泣いて、喧嘩して、一緒に寝てよ。良い親だったと思うよ……。俺はあの人たちが大好きだよ」
それは紛れもないイサクの本心で、確かな家族の絆で愛情だった。
「でもよ、あの人たちは悪い人なんだ。だから、あの人たちは裁かれなきゃならねぇ。キヴォトスの法律に、規則に、秩序に……従わないとならない」
イサクは腰掛けていたガードレールから離れて私に身体を向ける。
「……だから俺は、あの人たちを刑務所にぶち込まなきゃならねぇんだ」
イサクはそういって寂しそうに笑った。
「泣くなよ……カンナちゃん」
「だって…だって……、それじゃ…それじゃぁ……」
泣きじゃくり、嗚咽を混じらせて言葉に詰まる。
何をやってるのだろう、私は。
「カンナちゃんの泣き虫は治らねぇなぁ……」
苦笑しながら、イサクは私の背中を二回ほど軽く叩いてゆっくりとさする。
イサクの手はとても堅く、その手のひらは彼の器のように大きく。
イサクは何時だってすごくて、いつだって大きくて、まるでお日様みたいに温かく、遠くて。
私にはそれがとても辛かった。
「だって、イサクが一番辛いのにぃ……!」
一番つらくて、一番苦しくて、一番泣きたいのはイサクのはずなのに。彼は涙も流さずに私を励ます。
「別によ、一生の別れってわけじゃねぇんだ。三年もすればムショから出てくるだろうよ。そん時にまた、安い常夜鍋でもよそって食えばいい。……あの人たちは悪い大人だったけどよ、それでも家族だ」
「でも……でもっ……!」
「家族の絆はそう簡単に途切れるもんじゃねぇよ。全部、償って、贖って……そうしたら俺たちは互いに胸を張って親子になれるんだ」
私がやるべきだったのだ。
私が決断するべきだったのだ。
ヴァルキューレ志望だから、市民を助けてくれるおまわりさんになりたいなどと嘯きながら。
身内感情を優先してイサクの父親たちから目を背けていた。
ただ、一人。イサクだけはそこから目を背けなかった。
どんな理由があろうと、やったことは秩序から外れる行為であるから。
そんな過去があろうとも、罪を犯したことは消せないのだから。
親子の絆を壊してしまうかもしれない恐怖と向かい合いながら、イサクは決断したのだ。
誰がイサクを弱いといえよう。
誰がイサクを馬鹿にできよう。
イサクの心と意志はきっと誰よりも強くて気高いほどに美しく。
──そんなイサクに、私は憧れたんだ。
「──イサクは、本当にいい奴なんだ」
そのやさしさに、その強さに、その温かさに、妬心を混じらせた羨望も持ったことがある。
でも、私は同時に救われたんだ。
イサクは何時だって正しい者の味方であった。
笑われようが、周囲から詰られようが、ええかっこしいだとか言われようと。
真面目に頑張っている奴が報われないのが嫌だ、と。あいつは言ったのだ。
だからあいつは、決断したんだ。
自分の父親が逮捕されて、刑に処され、離れ離れになることを承知の上で。
──自分の父親たちが、罪を清算して真っ当になれると信じていた。
互いに本当に胸を張って親子と言えるようになるために。前原イサクは苦痛を選択したのだ。
「優しい奴なんだ」
優しくて、甘くて、罪人だろうが助けたがる大バカ者だから。
いつも火中の栗を拾っては怪我をする。それでいてその怪我を隠すものだから、本当にどうしようもないでくの坊の阿呆だ。
「だから、私はあいつを助けてやるんだ」
幼馴染だからじゃない。
アイツに憧れてるからじゃない。
おまわりさんだからじゃない。
「だから、貴様の乱痴気騒ぎも此処で終わりだ」
──家族を助けてやるのに、理由など必要あるまい。
「──手を挙げて投降しろ。ヴァルキューレだ」
「──
あいつの邪魔はさせない。
アヤメ「このカンナっていう幼馴染ください」
ナグサ「アヤメ……?」