キヴォトスでちょっとエッチな精子脳男子をヤってみた話(旧題『カヤ虐曇らせモノ』) 作:ニーガタの英霊
「……っ、
「あっ、目を覚ましましたか。ヨシノさん」
トリニティ自治区市街の屋上にて身を潜めていた私と楯無ヨシノさん。
「槌永職員、ここは? 前原室長は? ──ゴホッ、ゴホゴホッ!!」
「ああっ、無理しちゃ駄目です!!」
ヨシノさんはうずくまる様に胸に手を当て、何度も咳き込む。
無理もないだろう、ミサキさんの対空ミサイルをモロに食らったことは明白であり、胸元には傷になるであろう裂傷があった。
「……前原室長の上着」
「え、えっと……イサクさんは私たちと別行動で……」
「──何処にいるか、位置は把握してますね?」
ヨシノさんは一瞬で状況を理解し、私に指示を出す。
二年生の中では最優秀と目されるヨシノさんの立場は室長首席補佐官という役職である。
前原イサクが頭脳であり、不知火カヤが右腕ならば、楯無ヨシノは左腕にあたると言えるだろう。
「優先順位を履き違えてはなりません。キヴォトスの治安を守る一点において前原室長の存在は鼎の軽重を問われることと同義です」
「無線は……生きてますね。此方楯無、今復帰しました」
『こちら前原、無理はするな。いま隠れていた砲兵を沈めたところだ』
所々、息が荒いイサクさんの声。
『走り回ってわかったがどこも大通りに向かう道は封鎖されている。敵は随分と本気らしい、嫌になるわな』
「今どちらに?」
『トリニティ本館への道は無理だな、守りが硬い。今は救護騎士団の方へ向かっている』
「現着場所はわかりますか?」
『入り組んだ裏路地だ。大通りに出ようか?』
「そうですね、此方も狙撃支援を行います。槌永の腕なら突破も可能かと」
『お前らが危険だ』
「槌永の足の速さなら問題ありません。私も足を引っ張るつもりもありません。どうしてもというのであれば救護騎士団から援軍を派兵するか、SRTとの連絡を願います」
『わかった、SRTから空挺強襲装備ですぐに連絡する30分持たせられるか?』
「死んでも守ります」
『健闘を祈る』
ヨシノさんが意識を取り戻して数秒。懐から双眼鏡を取り出し、ブカブカの連邦生徒会の制服を肩に掛けながら立ち上がる。
「槌永二年生、話は聞いていましたね。これより前原室長の逃亡扶助のため狙撃支援を行います」
その言葉とともにヨシノさんは
『ヒヨリ聞こえているか。前原イサクの位置を見失った、位置を教えてくれ』
同時に、私の耳にもう一つの無線が響く。
『ミサキがやられた。そう遠くには行っていないはずだ』
迷う。私の心はもうボロボロだった。
響く轟音。トリニティの煉瓦敷きの通りが瓦礫となり、吹き飛ばされるアリウス分校生。
路地から出てくるのはミサキさんから奪った対空ミサイルを持つイサクさんの姿。
『ビビるよなぁ、眼の前で同僚が吹っ飛んだんだ。コイツはよく効くだろ? わかるぜ』
吹き荒れる土煙の中を吶喊。無線からは悲鳴を上げて助けを求めるアリウス生の悲鳴と銃撃音。
土煙が晴れたその場には、肩口から血を流しながらも立つイサクさんの姿があった。
『いいの一発貰っちまったな……』
「無事ですか室長」
『すんげぇ痛い、身体も出費もな』
連邦生徒会の白いスラックスには土埃や血の飛沫が付き、連邦生徒会仕様の黒のワイシャツは所々焦げ付き、自身の出血で濡れている。
両脇の下にはホルスターと二丁の拳銃を備え、アリウス分校生から鹵獲したアサルトライフルを構える。
傷は決して浅くはないが、銃弾そのものは貫通し首元の青いネクタイで部位を圧迫し止血を行う姿は何処か余裕がある。
『派手に壊したな、こりゃカイザーが儲かりそうだ』
「命には代えられませんから」
『いやまぁ、そうなんだが……あとでリンちゃんにどやされんの俺なんだよなぁ』
カヤぴぃに頭下げるか……。とイサクさんは軽口を叩きながら、バック走をする。
『見つけたぞっ、前原イサクッ!!』
『まいったな、美人は怒っても美人と来たか……』
無線からリーダーの怒号が聞こえる。
姫ちゃんが突撃しやや後ろからリーダーがアサルトライフルを構えて援護の態勢を作る。
「六時の方向に一名、四時の方向、ならび五時の方向に一名」
『楯無、左側は十時以降が見えん、修正してくれ』
「……
ヨシノさんの声が少しだけ強張る。
やはりイサクさんにとって片目を失った影響は大きい。
『左側から攻めろ! 当て無くても良い、牽制で十分だ』
リーダーもそれを理解しイサクさんの潰れ、熱によって融けた左目の側から執拗に攻撃の手を緩めない。
「後方に車両アリ、読み上げます……50m……40m……30m……20m……」
後方には車両という障害物。アリウスもその存在には気づき、追撃の手を緩めない。
イサクさんもその足のスピードを緩めることなく、バック走を続ける。
「10m……今です!!」
けれどアリウスは見落としている。
『なっ……!』
ヨシノさんの合図とともに、タイミングを併せてイサクさんは後方に大きく跳躍。そのまま車両のフロントに着地すると滑らかに移動、そのまま車両後方に陣取り車を盾とする。
『楯無、このまま誘引するぞ』
「
「りょ…了解です……」
イサクさんは決して強くはない。体力も、速さも、力も身体能力で言えばキヴォトスの平均よりやや劣る程度である。
だが、それでもアリウス生がイサクさんを仕留めきれないのはただ一つ。
『上手い……』
リーダーからして感嘆をあげるほどの動作の正確さと状況判断の的確さ、そして何より味方を信じ、自身の足りないところを補わせるコミュニケーション能力。それらを引っくるめた統率力だろう。
そして何より──
「──
車両のエンジン部分を撃ち抜く
『郭雲深を知ってるか?』
それは明確な隙であり、その隙を見逃すイサクさんではない。
一瞬で車両を大きく迂回し路地裏からイサクさんの背後を取ろうとしたアリウス生を逆に強襲する。
『──半歩崩拳、遍く天下を打つ。ってな』
──
イサクさんが掌底を突き出し、アリウス生の身体が垂直に飛ぶ。足元に転がる擲弾銃を拾いあげると路地の側にある建物に向けて発射。瞬く間に瓦礫の山と化し、道を封鎖する。
キヴォトスの人間は非常にタフであり優れた身体能力を持つ。
銃弾に対するダメージは多少痛い程度で、爆発や衝撃に高い耐性があり、各種の感覚器官も鋭く程度の差こそあれオートマタなど比べ物にならない耐久力がある。
『キヴォトス人は確かに外的衝撃に対する防護性能は高い。けれど、衝撃を直接臓器に撃ち込むか優れた三半規管や神経に撃ち込めば俺程度でもダメージは通る』
イサクさんの掌底から繰り出される崩拳は人の内臓に直接ダメージを与えられる。むしろ衝撃を内側に閉じ込めるということに関してなら並の銃弾以上のダメージがある。
人の形をしている以上、その急所はイサクさんも私たちも変わらない。むしろ感覚器官においては優れているが故に、イサクさん以上に急所攻撃に対するダメージは大きいかもしれない。
『……ヒヨリ、わかっているな。ヒヨリが頼みだ』
「──……っ!」
グッと奥歯を噛みしめる。
『サッちゃん……』
『ああ、そうだアツコ。無傷では仕留めきれない……』
リーダーと姫ちゃんは既に覚悟を決めている。
彼女たちに任せればイサクさんを生かしては置かないだろう。
──じゃあ私は? 私はどうしたいんだろう。イサクさんを殺したくはない。けれどリーダーたちアリウスの皆を傷つけたくもない。
この期に及んで、私はまだ迷っていてなにもかも半端で。どっちも大切で、切り捨てたくなくて……。
ぐるぐると、頭がずっとぐるぐるしてた。
泣き叫びたかった。どっちも選びたくない、と。両方を選べるならそれがいいと、恥も外見もなく私は泣きたかった。
「ゲホッ……! ゴホッゴホッ!? ──っう……。槌永二年生、もう少しです……もう少しで……!!」
隣には友達がいて、裏切りたくなくて。辛そうで、苦しそうで、それでも尚足掻いて目を輝かせている友達がいた。
Vanitas vanitatum et omnia vanitas.
「どうして──」
どうしてそんなに苦しいのに頑張るのか。
どうしてそんなに辛いのに抗うのか。
どうしてそんなに懸命に諦めないのか。
どうして……すべては虚しいのに、そんなにも綺麗な目をしているのか。
『ふっ…ふっ……ふぅーッ……』
イサクさんの荒い息遣いが聞こえる。
体力的にも傷の消耗を考えても限界に近い。
『──ッ!』
姫ちゃんが距離を詰める。ほぼ全力疾走に近い速さでイサクさんに迫る。
その動きを見て、イサクさんも迎撃に移る。
姫ちゃんのスコルピウスが火を吹く。セミオートで発射される弾幕がイサクさんに迫る。
それに対してイサクさんが取った行動は、鹵獲した擲弾銃を投擲で投げつけるというものだった。
予想外の行動、そして迫りくる擲弾銃を躱そうと姿勢がブレる。人間の動きは動いているものを捉えて離さない性質がある。視野が狭くなり、姫ちゃんはイサクさんから一瞬目を離してしまう。
「右に10度ほど動いてください」
『
即席での緻密な連携。姫ちゃんのやや後方からアサルトライフルを構えたリーダーの射線が、姫ちゃんによって塞がれる。
『……っ!!』
それでも姫ちゃんはなすがままにされる訳にはいかないとばかりに投擲された擲弾銃を無視し、再び視線をイサクさんに向ける。
擲弾銃が姫ちゃんの顔面に当たり、マスクを弾き、フードがめくれ上がってもその視線を真っ直ぐとイサクさんに向けて、撃ち続ける。
近寄らせればその時点で負ける。イサクさんが近寄る前に何としてでもイサクさんを仕留める、もしくは手傷を負わせなければならない。
『いい判断だ、優秀といえるな……。だが』
その対応をイサクさんは手放しで褒める。
イサクさんは身体を横に向け左半身を突き出すように駆ける。
少しでも被弾面積をなくすためであり急所を晒さないためでもある。
相対距離はおよそ50m近距離では有るが、得意の格闘戦に持ち込むには距離がある。
イサクさんの左腕に弾丸が着弾し、火傷額を銃弾が掠める。
一瞬一瞬が生と死の狭間をタップダンスするかのような極限状態だろうが、それでもイサクさんは笑う。
『──いつから俺に、飛び道具が無いと思った?』
左脇に吊るされたホルスターから取り出したのは、広い口径で普通の拳銃の二倍はあるかと思うほどの単発銃。
──トンプソン・コンテンダー。
神秘を持たないイサクさんが神秘による補助を持たずして高火力を持てるように追求した高火力の奇襲の一手である。
拳銃らしからぬ轟音とともに発射された弾丸は、吸い込まれるように姫ちゃんの額を撃ち抜く。
『アツコ──ッ!!』
『大事なやつらしいな……ならこれが効くだろ』
意識を失い、崩れ落ちる姫ちゃんの襟首を右手で掴み上げて盾にする。
『撃ちたくないんだろ? 射線が潰れた時に撃てなかったもんな? 優しいんだな、仲間思いなんだろうなぁ。だからこいつが一番効く』
『前原イサクーーッ!!』
リーダーはアサルトライフルを捨て、ホルスターに仕舞っていた拳銃を取り出す。大回りでセミオートで銃弾を吐き出すアサルトライフルより小回りの利く拳銃のほうを選択する。
至近距離はイサクさんの間合いとはいえ、勝ちを目指すのであればこれしか選択肢はない。苦渋の決断だった。
だが、イサクさんはもう一枚上手だった。
『奇襲ってのは二度打つから効果的なんだぜ』
トンプソン・コンテンダーは2丁ある。
相手の選択の裏を尽く読み、真っ向勝負を避け。確実な一手を持って相手を詰ませる。
前原イサクはそういう男だった。そういう男だからこそこのキヴォトスで生き残り防衛室長の地位とSRT特殊学園の指揮権を手にするまでに至ったとすら言える。
銃を構えようとするリーダー、突如として盾として使ってた姫ちゃんを手放して銃口を向けるイサクさん。
決着は激しい発砲音によって終わりを告げた。
けっ、ヘイローも持たねぇ雑魚が……。粋がりやがって!!
ブルアカに先生以外の男は不要なんだよ…! お前なんてアリスクにぶち殺されるのがお似合いだぜ、この筋肉ダルマ。
わりかし先生と相性良さそうで、先生と猥談したり好感度を教えてくれそうな便利キャラみたいになったり基本的にカラッとしてるから先生の癒やしポジ位置になりそうだがそんなIFは無いんだ。先生にだってお前は救えないんだよ。悔しいだろうが仕方ないんだ。
次回、オリ主死す。