キヴォトスでちょっとエッチな精子脳男子をヤってみた話(旧題『カヤ虐曇らせモノ』) 作:ニーガタの英霊
大丈夫? 温度差で風邪ひかない?
痛い、身体が痛い。
周囲は土煙に覆われ、視界も定かではない状況。
衝撃で身体を床に投げ出され、うつ伏せに倒れ伏す。
チカチカと点滅するかのような視野の傍をキィキィと木々が擦れるかのような音と重い軍靴の音が通り過ぎる。
『…い』
声が聞こえる。
『先生、目を覚ましてください!』
「"アロナ……?"」
『先生、大丈夫ですか!? 気を確かに……!』
眠たくなる意識を無理やり覚醒させると、其処は青い空がどこまでも広がる教室──シッテムの箱の中であった。
「"いったい何が……"」
『古聖堂が爆破させられて、何とか先生を守ろうとしたのですが……。もう、これ以上は…………しっかり……力が……』
「"アロナ……!?"」
その言葉を最後に、シッテムの箱は沈黙する。
バッテリー切れだ。つまりこれ以上はアロナの力の手助けはなく自力でこの状況をどうにかするしかないというわけである。
息を吐き出し、擦り傷や土に塗れた身体を何とか叩き起こす。
このままじゃ、危険だ。ヒナタは、ナギサは、ヒナや正義実現委員会の皆はいったいどうなったのか。
ヒリヒリと痛みを訴える身体を抱き起こして周囲を見る。
古聖堂の天塔は砕け、周囲には瓦礫が散らばる。
周囲には阿鼻叫喚の声が響き渡り、各地を混乱と恐怖が支配する。
まるで戦場だ……。
そしてその赤焼けた戦場を闊歩する異形の姿。
双頭の頭に、ふらつきながら関節を擦り合わせる甲高いキィキィとした音を奏でる奇妙なマネキン。
紺を基調とした燕尾服はこの状況にあまりにもミスマッチなそれは側に仕えるようにライフルを抱える軍装のガスマスクを付けた男を伴って、古聖堂の奥へ進む。
("今のは……まさか")
経験で勘づく。あんな奇妙な存在、このキヴォトスでは極少数。であるならば容易に想像がつく。
「……先生!」
その存在を網膜に焼け付けながら、立ち上がろうとすると不意に声をかけられる。
「せ、先生……けほっ、こほっ……ご無事でしたか!」
土煙に
「"なんとか…ね……それより皆は……ナギサは!?"」
爆風の最中、私は近くにいたナギサが見えないことに気づく。
「……こちらです、先生」
弱々しい声にはっとして振り向くと、其処には瓦礫に身体を埋めるナギサの姿があった。
「"ナギサ──!!"」
「瓦礫の隙間に、足が埋もれてしまっているようでして……」
「待っててください、すぐに私が……!」
ヒナタはそういうや否や、瓦礫を持ち上げ瓦礫に埋もれたナギサとの間に隙間を作る。
「"ありがとうヒナタ! ナギサすぐ引っ張り出すからね!!"」
幸い、足に痛みはあるようだが、ナギサは私に肩を借りるように立ち上がる。
「先生、ご無事ですか!?」
ナギサを助けてすぐ、こちらに近寄る影。黒のセーラーに赤いスカーフを基調としたその姿は正義実現委員会のツルギとハスミであり私はほっと一息をつく。
「"みんな、すごい怪我……"」
突然の奇襲ということもあり、皆一様に何処か怪我を負いながらも状況を把握しようと精力的に動く。
「ナギサ様、ご無事でなによりです」
「ええ、多少足に痛みはありますが、どうということはありません……。サクラコさんは……」
「残念ながら、この混乱で行方がわからず……」
ハスミは苦虫を噛み潰したような表情で答える。
幸いと言っていいのか、先生とナギサの居たところは比較的ダメージの少ない場所であったため、最悪の中の最善を引けたと言えるだろう。
「ナギサ様……すぐに避難を」
「そう、ですね。指揮系統の再確立をしなければなりません」
「先生、ご一緒に……」
ナギサは私にそう呼びかけようとした時、激しい銃弾の音が古聖堂の側に響き渡る。
「作戦地域に到着、正義実現委員会の残党……いや、訂正。主力を発見、ツルギとハスミだ。兵力をこっちに回して。これより交戦に入る」
「アリウス分校……!」
黒いマスクに白のジャケット。なにより身の丈はある携帯用対空ミサイルを持つアリウススクワッドの一人戒野ミサキの姿がそこにあった。
しかもミサキだけではなく、ガスマスクをつけたアリウス分校生たちがその脇を固め銃口を此方に向ける。
いったいどれだけの兵力が潜んでいたのか。
困惑するハスミやナギサだったが、ある可能性に行き着いたヒナタは声をあげる。
「ま、まさか……まさか、地下から……? 古聖堂の地下にあるあのカタコンベから……!?」
「なるほど。つまりこの状況、あなたたちアリウスの仕業だと考えて良いでしょうか?」
ハスミは怒気を露わにしながらアリウス生を睨みつける。
「…ハスミ、落ち着け」
だが、そんなハスミを制止したのは正義実現委員会の委員長のツルギだった。
「……そうですね。今は先生とナギサ様の安全が最優先……二人を連れて、ここから離脱します」
「あぁ……暴れるのは、私の役目だ」
口角を吊り上げ嬉々として笑うツルギ。
ツルギの言葉により冷静さを取り戻すハスミ。
正義実現委員会の委員長と副委員長は互いに目を合わせて頷く。そこには確かな信頼があった。
「先生、ナギサ様、行きましょう…!!」
雄叫びをあげ、アリウス生に向かって吶喊するツルギ。
「ツルギに構わないで、優先すべきはティーパーティーのホスト桐藤ナギサとシャーレの先生」
その言葉とともにアリウス分校生は散開して私たちを追う。
「"ナギサっ、失礼するよ!"」
「えっ、きゃっ……!?」
私は、足を庇いながら走るナギサを抱える。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
正直、先生としては良くないかもしれないが今は緊急事態でもある。多少の行為はセクハラにはならないだろう。ならないよね? ならないといいなぁ……。
しばしばハスミが後方に銃を撃ち、ツルギの奇声が聞こえてもなお、アリウス分校生の数は減らない……。否、むしろその数を増している。
「圧力が弱まらない……っ!」
「これ程の兵力が何処に……!」
潜んでいたと言うにはあまりにも多すぎる兵力。
まるでツルギを無視するかのように全兵力が私たちを追ってきてるかのような違和感を感じる。
「先生……どうすればっ!」
ナギサの悲痛な声が耳を掠めるが、それよりも私の頭はこの状況をどうするかに気を取られていた。
周囲には崩れた外壁。古めかしくアンティーク調を思わせるトリニティの市街はまるで廃墟のような姿へと化している。
足元も覚束ない状況で懸命に頭と足を動かす。
「"みんな、よく聞いてくれるかい?"」
……。
………。
交戦はアリウスの優位に進んでいる。
調印式の会場である古聖堂の破壊にゲヘナ首脳が乗り込んだ飛行船の墜落。ゲヘナ・トリニティの両首脳を潰し、混乱の最中にエデン条約を奪取する。
『こちらチームⅡ。目標を捕捉、交戦を開始する』
無線から聞こえる定期連絡。散開して捕捉し続けていた先生と桐藤ナギサの両名を見つけたとの報告。
桐藤ナギサは足を負傷し、先生は無力な存在。そう時間も掛からずに捕らえられるだろう。
「こちら戒野。了解、こちらも──ハスミの迎撃に移る」
そして、私の目の前には正義実現委員会副委員長の羽川ハスミが立ち塞がる。
「いいの? 私に構ってさ」
「許しませんよ、アリウススクワッド。この蛮行の責めは必ず取ってもらいます」
「まるで、勝てるかみたいな言い分じゃん」
「あなた一人程度であれば、どうということはありません」
「そう……じゃあ」
けたたましい機関銃の音が側面から飛来する。
「ぐっ……!?」
それをもろに食らったハスミは姿勢を崩すも直ぐ様手持ちのボルトアクションライフルで迎撃を行う。
「くっ、伏兵──いや、あれは……」
「うん、どうやら姫はうまくいったみたいだね」
それはまるで幽鬼を思わせるかのような異質な存在だった。青白い肌に、顔にはガスマスクを付け、頭にはシスターベールを被るそれら。
ゲマトリアと呼ばれる大人たちの一人である
──ユスティナ聖徒会。
「数の差は歴然だけど……まだやる?」
「くっ……」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるハスミ。
「じゃあね、あんたはそこでトリニティが滅びるのを口を開けて待ってな」
「アリウス──ッ!!」
ユスティナ聖徒会が羽川ハスミに向かって銃口を向けたその時だった。
「きぇえええっっ!!!!」
奇声をあげながら二丁のショットガンを振り回す少女。
「剣先ツルギッ!!」
ユスティナ聖徒会によって放置されていた陣形に穴が空き、その隙を見逃すことなくハスミとツルギは離脱する。
「噓でしょ、あの数を捌き切ったって?」
ツルギには何十ものユスティナ聖徒会の
足止めとしては十分。その隙を狙ってアリウス分校生と私で周囲のハスミやヒナタを削って、先生や桐藤ナギサの身柄を押さえる算段だった。
「チームⅡ応答して、ハスミとツルギを取り逃がした。今全力で追ってるところ……チームⅡ? どうしたの? 応答して」
直ぐ様、ハスミとツルギが先生の元に向かう可能性を考え、無線機で危険を分散行動を行っているチームⅡに連絡するものの、
「まったく……一筋縄じゃいかなそうだね」
……。
………。
「うぅ……」
瓦礫に埋もれながら倒れ伏す少女──アリウス分校生たち。
身体には瓦礫の衝撃と質量によって身動きが取れず、皆一様に呻くことしか出来ない。
「"ごめんね……"」
痛みよりも身動きのとれなさに歯痒い感情で睨みつけるアリウスの生徒たち。
先生としては非常に心苦しく、申し訳なさが先に来てしまうが、最悪は命の取り合いになる現状からして優先すべきはナギサの安全圏への脱出である。
「流石ですね、先生」
「先生! ご無事でしたかっ!」
手際の良さを称賛するナギサと作戦のために一時別行動をしていたヒナタが駆け寄る。
「"ありがとうヒナタ、助かったよ"」
「い、いえ…それほどでも。まさかこんな手で一網打尽にするなんて……」
そう言ってヒナタは恐縮するが、私としては大したことはしていない。
トリニティは古風な雰囲気の石畳の街である。煉瓦細工やアーチ状に作られた石橋などアンティーク調の景観の街並みが佇む。
私のやったことはそんなトリニティにはよくあるアーチ状の陸橋を崩し質量を持って彼女たちを崩落に巻き込ませただけのことである。
「ご謙遜を、アリウスの実行部隊を誘導して陸橋の下に誘い込み隠れていたヒナタさんに陸橋の一部を破壊させることで連鎖的に彼女らを行動不能にした手腕は流石としか言いようがありません」
「"買いかぶり過ぎだよナギサ……。それにトリニティは一度見てるから。何処をどういう風に動けば良いのか経路は頭に入ってたしね"」
「……一度見た程度でそれが出来るのは先生だけかと思うのですが」
キヴォトスに住む少女たちはヘイローがあり耐久力が人並外れて高い。
だから必要なのはダメージではなく質量による行動の制限。トリニティという街並みだから出来たことで他の自治区ではこんなことは不可能である。
「先生ッ!」
「"あれは…ハスミにツルギ?"」
額に汗をかき、制服を土で汚しながら駆け寄るハスミと、周囲をキョロキョロと首を振り警戒を怠らないツルギ。
「"無事だったんだね"」
「ええ、なんとか……しかし──」
「──漸く追いついたよ」
静かに敵意を滲ませながら、姿を現したのはアリウスの生徒。白のコートに黒い布のマスク。気怠そうな表情を浮かべながら、銃口を此方に向ける。
「諦めなって、どれだけ足掻いても数の差は覆せない」
そう言った少女──ミサキの背後には見るからに異質な人型のナニカが私たちの周囲を取り囲むように佇む。
「……まさか」
「"ヒナタ?"」
目を見開き、ヒナタは目の前のことが信じられないかのように身体を震わす。
「あの姿、本で見たことがあります……。あれは、聖徒会の服装」
「聖徒会…?」
「『ユスティナ聖徒会』……数百年前に消えた筈の『戒律の守護者たち』が、どうして今ここに……!?」
……。
………。
「揃いつつある」
古聖堂の地下、カタコンベと呼ばれる場所に。それは居た。
「役者が揃いつつある」
キィキィと身体を揺らすその様は、一層不気味でありながら男は歓喜に身を震わしていた。
「やはり、槌永ヒヨリを導いたことは間違いではなかった。『戒律の守護者たち』の『威厳』を複製すること。そしてその血統による『戒命』の動作する様を見届けられたことは、幸甚であった」
マエストロ。キヴォトスにおける大人でありキヴォトスの神秘を研究し『崇高』に至るために各々が実証と実験を繰り返す集団ゲマトリアに属する存在である。
「……」
「不満そうであるな、ロイヤルブラッド──秤アツコよ」
顔一面を覆うマスクを被り白いフード付きのコートを纏う少女はおもむろに手を動かす。
──ヒヨリは怒るのではないか……、と。
「ああ、なるほど。問題はない、前原イサクを再現する。それは私と槌永ヒヨリの間によって結ばれた神聖な契約である。私は、彼を連れて行くことが何よりも前原イサクを復元することの最善であると確信しているのだよ」
そう言って、マエストロは徐ろに身体の向きを一人の男に向ける。
「それに、戦力は一人でも多いほうがいいだろう。私なりの善意である」
全身を迷彩服で包み、防弾チョッキと鉄帽。顔をガスマスクで覆い、腰にはナイフと警棒。脇の下には特徴的な単発型拳銃。
手には取り回しやすい小型の機関銃を持つモノ。
なにより特徴的なのは細かな十字を円型に纏めた黒いヘイロー。その姿はヒヨリのヘイローと全く同じ形をしていた。
「私とて不満なのだよ。全くもって本物には程遠い。わかるかね? 未完成品を見せびらかすのは芸術家として恥ずべきことなのだよ。……だが、今はあえてそれを飲もう。ベアトリーチェよりよくよく頼まれたことであるし、契約には遵守すべきであるのだから」
アツコは手を振る。
──なにをするのか、と。
「感動とは、人の心を震わすことにある。羨望、嫉妬、愛着、興奮、劣情、怒り、悲嘆、恐怖。芸術とはそれらの感情を底から引きずり出し、見るものにインスピレーションを与えるのだよ」
マエストロは指を振るうと、そのガスマスクの男はくるりと背を向け歩みだす。
「芸術とは主観でなく客観であるのだ。評価される芸術というのは衆愚によって形作られるものでもあるのだ。人に見せ、人に評価され、初めて価値がつくとも言える。俗物的な感性であるが、間違いではないのだ。芸術を形作る一つの要素であるのだから」
──趣味が悪い。
「残念だ、しかしそれもまた評価の一つとして受け取ろう。さあ、往かん。私の役割はまだ、終わってはいないのだから……」
キィキィと音を鳴らし、マエストロは歩みを進める。
「さあ、この地下にある教義のもとへ案内してもらおう」
……。
………。
「きりがありませんね」
息を荒くしながら、ハスミはひとりごちる。
倒しても倒しても何度でも沸き立つユスティナ聖徒会の複製。
数の暴力に生徒たちは一人、また一人と疲弊する。
「ま、マズいですね……せめて、先生だけでも脱出を……!?」
ヒナタがそう呟いた時、側面から発砲音が響く。
「こっち!」
「"ヒナ……!"」
地面につきそうなほどの白髪に小柄な体躯。
ゲヘナ学園風紀委員長のヒナが額に血を流しながら鋭い目つきで敵を捉える。
「ヒヨリ、もしかしてヒナを止められなかった?」
『えへへ……す、すみません。聖徒会が顕現するより前に全員なぎ倒されて……』
ミサキはため息を一つ吐き出すが、その後のヒヨリのセリフに身を引き締める。
『でも、大丈夫ですよ……ちゃんと捉えています』
「……そう」
あの日以来、ヒヨリは変わった。
自信なさげで、いつも卑屈では有ったヒヨリだったが、マエストロの工房に何度も出入りし少しだけ明るくなっていた。
それと同時に元々高かった狙撃の腕をさらにあげていった。
いくら離れようと、ここはヒヨリの射程範囲。事実、ヒナは頭部の外傷以外に脇腹を押さえ、腕に血を流しかすかに痙攣している。
そんなことを思考していると、第一目標であったシャーレの先生と桐藤ナギサはヒナとともに戦場から離脱しようとしていた。
「ヒヨリ、追える?」
『ここからですと移動する必要がありますので……どうしましょうか……撃っちゃいます?』
「ヒナが邪魔でしょ……。追跡して退路を封じて」
『わ、わかりましたぁ……』
殿として正義実現委員会の双璧であるツルギとハスミが残り、先生たちの離脱を援護する。
……。
………。
「はあっ、はぁっ……」
息を切らして顔を歪ませるヒナ。
満身創痍の中、倒れそうな身体に何度も鞭打ち眼前の
「先生、もう少し耐えて。ここを抜ければ……ッ!?」
瞬間、ヒナの身体を弾丸が飛来する。
「"ヒナッ!!"」
「ぐっ……大丈夫、まだ……わたしは……」
そんな様子をヒヨリは冷静に見つめていた。
「ごめんなさい、辛いですよね、痛いですよね……苦しいですよねぇ……」
ヒナは避けられない。そういう風に撃った。
単独ならば避けられた狙撃。だが今の彼女には先生を守らなければならない。だったら、ヒナの射線上に先生を巻き込むように撃てば、彼女は避けない。
「仲間思いの奴にはよく効く、ですよね。えへへ、イサクさんの言ってた通りでした……」
弱点があるならば、其処をつく。
連邦生徒会防衛室にいた経験が生きた形になる。
このままヒナを嬲り殺しにすれば、あとは聖徒会の数の暴力で押さえつけられる。
始末するより、人質として活用すれば連邦生徒会に対するカードとして活用できる。ヒヨリの思考はそんな冷徹な考えに支配されていた。
「私は、貴方の前に出ませんよ……だって、その方が効率的ですからねぇ……」
全員がヒナの趨勢に視線が向かっていた。
ゲヘナ最強といわれるヒナ。アリウスにとって最警戒対象である存在。それを討ち取れる興奮。
「……間に合いましたね」
だからこそ、誰も気づいてなかったのだ。
皆が彼女を無力な存在と思っていた、足手まといでしか無いと信じていた。
「──えっ」
指先に感じる衝撃。ヒヨリの武器であるアイデンティティの銃口がひしゃげる。
『こちらEAGLE、敵狙撃手の無力化に成功』
ユスティナ聖徒会の背後と側面より、けたたましい銃弾の音。
『こちらFOX、交戦に移るわ』
『HOUNDも交戦に移るぜ、こりゃあ特別労働手当を期待していいんだよなぁ!!』
側面から盾を構えて敵陣に突撃する
「"彼女たちは、いったい……"」
「独立傭兵の方たちです。少々特別な事情がある方たちなのですが……」
先生の疑問をナギサが答える。
「──元SRT特殊学園所属。腕に関しても、心情においても信頼できる、私の保険です」
桐藤ナギサの秘密兵器。
廃校し、居場所を失った元SRT特殊学園の元生徒たちを雇いいざというときの戦力としていたことだった。
「皆さん、すぐに雇われてくれましたよ。
知っている。槌永ヒヨリは知っている。
ヒヨリ自身ではなく、あえて銃器を撃つことによって相手の狙撃を無効化した手腕。それでいて狙撃箇所にはもうすでに姿は無く、身をくらませる技術。
超遠距離狙撃に特化したEAGLE小隊のモノと見て間違いない。
そして、今まさに前線にて暴威を振るうポイントマンの少女。
金色の髪にピンと伸びた狐耳。銃床で敵を殴りつけ、敵の間に敢えて割って入ることで銃撃を抑制する大胆な行動と勇気を持つSRT最優の部隊と呼ばれたFOX小隊のポイントマン、FOX3。
それを的確にサポートするのは追跡と斥候を得意とする特殊部隊であり、あの慈愛の怪盗の捜査における影の立役者。HOUND小隊のポイントマンであったHOUND3。
火線を引くのが得意で、特に長期戦と持久戦を得意とするどこまでも相手に噛みつき執着する猟犬だ。
「あー、こっちこっち」
先生たちの背後、其処に居るのは背中に大きな背嚢を背負った蜘蛛のエンブレムが特徴の少女。
「SPIDER小隊……」
ある種一番厄介であり、防衛においてFOX小隊すら手こずる手合いとして名高い基地防衛や工作を得手とするSPIDER小隊。
無闇に動こうものなら。
「あ、そこ足元注意ですよー」
ユスティナ聖徒会が踏んだ地面から爆発音。ひっそりと仕込ませておいた地雷だろう。
それ以外にも瓦礫や廃墟に隠れるように設置されていたワイヤートラップやスモークでこちらの視界を制限する戦い。
斥候追跡特化部隊の
SRT最優にして最高の部隊
超遠距離狙撃専門部隊の
基地防衛・工作部隊の
「いやー、間に合ってよかったですよー」
「ありがとう御座います、SPIDER」
「桐藤殿には世話になってますからー、HOUNDも金払いがいい桐藤殿の仕事なら最優先で引き受けたいと言ってましたしねー」
間延びした特徴的な話し方をするSPIDERと呼ばれた少女。
『ひゃはははは!!!! オラオラオラァ!!!! お前ら全員アタシの金になれェ!!!!』
『ちょっと、品がないわよHOUND!! 少しは落ち着きなさいよ!! EAGLEからの命令聞こえないじゃないっ!!』
『暫く自由にやっておけ、細かく命じなくてもFOXとHOUNDなら前線は任せられる』
歯を剥きながら、的確に
撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。
相手を自由にさせないこと。特に凄腕の狙撃手であり、不意をついたとはいえ彼女たちの上役でもあった前原イサクに致命傷を負わせた相手なのだ。
当たらずとも構わない。撃ち続けることによって相手に圧力を強いる。それが何よりも相手にとって嫌なことだろうから。
「アリウス、私がイサクさんの仇を知って……なにも対処をしていないと本当に思っていたのですか?」
本来は身の回りの護衛やトリニティの防衛のためにFOX3とSPIDER2を。アリウスの潜伏場所を見つけるためのEAGLE1とHOUND3ではあった。
SRT廃校後、ヴァルキューレ警察学校に移ったSRTの生徒は少なくないものの、独立傭兵としての道を選んだ生徒もいる。
ナギサとしての財力にモノを言わせ、イサクさんの仇を討てるかもしれないという甘言を使って手元に置いた兵力。
「ほい、桐藤殿。無線ですよー」
「ありがとう御座います、SPIDER。これで、トリニティの予備部隊を動かせます」
ここに天秤は傾いた。
桐藤ナギサを潰しきれなかった。たったそれだけで状況がトリニティ側へ有利に進み始める。
「槌永ヒヨリ……貴女のことは知っています」
アリウス分校が密かに連邦生徒会内部に潜ませたスパイ。アリウス分校の特殊作戦部隊であるスクワッドのメンバー。
なによりイサクさんを裏切った薄汚い女。
「貴女のことは……、絶対に許さない」
昏い瞳で、ナギサは命令を下した。
イサクさんがいる分、トリニティ側も戦力増強しないとアカンな……。
せや!(安易なオリキャラ投入)
というわけでEAGLE1とSPIDER2とHOUND3とかいう元SRTから傭兵になった三人衆を登場させました。設定はあらかた固めていますがオリキャラを活躍させたところで原作キャラの活躍を奪うのは解釈違いなので次の話には処理します。ついでに固有名詞はつけません。(湯婆婆並感)お前らは一生モブでいろ。