ナイチンゲール「コロシアイデスゲームなんてさせるか!ナイチンゲールがいる限り!」   作:行き場のない串焼き

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Day0、誰が為の蒼い空

私は転生者だ。死んだ理由?そんなことも気にしもしなかったけど、まあのほほんと生きていた。二度目の人生があってラッキー、ぐらいだったんだけど。

 

「うわぁ!?な、なんだあれは!?」

 

渋谷のど真ん中でそんな声を聞いてもうビビりまくった。だってどう見たって地球外生命体じゃんって見た目。真っ黒いボディの先端にはバッチリ尖ってるのが見えてるし、そんなぶっといので死にたくないし。

 

ということで私はその場から駆け出し、近くにあった山に逃げ込んだ。え?学校とか建物になんで逃げ込まなかったのかって?馬鹿たれそんな棺桶に逃げ込む訳ないだろう。パニック映画じゃ間違いなく壊されたり人の不仲で死亡フラグにしかならんわい。

 

てな訳で私は山でサバイバル生活を始めることにした。元からそっちの気で楽しめる人間だ。外の世界に関する情報は全くなくなってるけどモーマンタイモーマンタイ。

 

そんなこんなで過ごしていると、遂にマイマウンテンにエイリアンがやってきた。結果から先に言ってしまうと、そんな問題らしい問題はなかった。私が護身用に持っていたバールのようなもので殴っただけで簡単に体が砕け散っていった。なんだただの雑魚だったのかな?それがわかってからはヒャッハー、って感じで暴れまくった。それはそれは暴れまくった。なんならバールをエイリアンの素材を使って作り殴っていた。そしてある日気づいたのだ。

 

─これ、完璧に主人公の流れじゃん。

 

誰か倒れた人達を颯爽と救って「大したことはしてないよ」とか言ってその人達と一緒に世界救いそうじゃん。

そんな馬鹿なことを考えた途端、私は察したのだ。こんな山奥に籠もってヒキニートしている理由なんて無いと。都会でポテチ食べてちやほやされたいと。

そうやってノコノコと都市に出てきた私が見たのは都市の残骸だった。

地面が割れ、草は生い茂り、車は錆つき、建物は崩れ、人の死体は放置。

こと、私はそこで狂った世界をようやく理解したのだ。ラノベみたいな世界に転生したとかで喜んでいた自分が虚しくなった。そして案の定、私は人の死体のグロさに吐き、その吐いている最中にエイリアンが襲ってきた。

後にも先にも、あれが私の中で一番最悪だった戦闘だ。無駄に硬かったしパールを持ってなかったから素手で殴るしかなかったし。

で、その後は蛆の生えてた死体を焼いて…後は覚えてない。気づいた時には私の手は血だらけに染まっていた。それからは記憶が鮮明になっているし、前世から続いた普通の毎日からすっと非日常だって理解した。

そして、私は色々と始めた。

一つ、始めたことの中で一番大きいのは農業。エイリアンが嫌いな花を周囲に咲かせ、ホームセンターから奪ってきたかぼちゃやらなんやらの食材を作りまくった。畑を作るのにはバールちゃん。バールちゃんは鍬にも使えるいい子だね。この世界で殆ど一緒に生き抜いてきたから、気分はすっかり戦友の気分。スマホ?充電切れてる。

それと、もう一つ、エイリアンの研究。正直一発で沈むエイリアンばっかだったけど、もしかしたらそうならないのかもしれない。という訳でエイリアンを鹵獲して生体研究をした。エイリアンには…まあ、地球の癌ということでキャンサーと名付けた。カニみたいな連中が多いので我ながらいいセンスだと思っている。

そんで研究内容はまあいろいろ。何処にどれくらい殴れば死ぬのか、電気をしっかり通すのか、水には浮くのか、とか。一応食べれるのかどうか、ってのも研究したけど微妙だった。美味いけど焼き加減で美味さがめちゃ変わる。生で干物、半生でカルビ、ベストでカニ、焦げたらジャーキー。因みに一番鮮度が落ちないのが半生。くそっ…私はハラミ派なのに…

そんでもって隣の山を開拓。木はキャンサーの殻を使って切り倒し、根っこはキャンサーの背中を使って掘り起こす。地面を均すのにはキャンサーの背中…え?キャンサー汎用性高すぎん?

まあ調べておきたいことはさておき、だいたい山を真っ平らにすることができた。あら、あっちに落ちる夕陽が綺麗。そんなこんなで半年、私は隣を丸裸にしていた。木材なんて余りまくってるわ。この前なんてログハウス作ったし。神社の近くの木の家ってなんか風流じゃない?じゃないか。

一応、私が考えているのはただでっかく作った納骨堂…というより遺体安置所?だ。何で作ろうとしているのかというと、最近キャンサーの動きが活発になっているからだ。もし死体が近くにあったらたまったもんじゃない、という訳でちょっと凝りまくってみようと思う。でも、使うのは私だけになるんだろう。木材だと間から何か虫が入ってきそうだし…という訳でキャンサーの外殻をとんてんかんかんして作る気でいる。ふっ…可能でしかない!ちなみに、キャンサーの外殻を体の中に入れたり近くに持っていると知らない内に体が若返ったり人間の力を超えたりする。なんでだ…どうでもいいけど。使えるもんは使わないといつ死ぬのかわからんし。

 

 

そんなことをやっていると5年位経った。立派な学校ができ、その近くには広大な農場が広がっている。

学校には図書館、プール、体育館、食堂、風呂…とにかく色んなものを詰めた。中にはカジノとかビリヤードなんかも置いてある。図書館には隠し扉があり、そこにはキャンサーの研究資料を載せてある。う〜ん、そこまで凝らなくても良かったかなって思った。多分半年はここの機構にかかってる。隠し通路とかは別にキャンサーの素材の問題でスカスカだったから別によかったし、誰かが入ってきた時の為に監視カメラもバレないように置いた、放送できるように放送室も置いた。なんなら教室も全部遠隔操作で鍵を閉められるハイテク仕様。…機械は使えないんじゃないかって?キャンサーを解体した時のコアの欠片部分使ったら無限に電気生んでくれるのよ。しかもバリッバリ伝導率がおかしい。スマホに使ったら100%になった。スマホが使えるようになってからはパシャパシャ撮り続けている。容量なんてめっちゃある。だってアプリ入ってないもん。ソシャゲは容量、はっきしわかんね。

そんなもんもさておき、色とかもかなり学校に寄せた。だから結構変な建物になってる。衛星とかもないはずだし…ヨシ!

ちなみに防衛機能はしっかりしてある。まず、ここに入るためには上にあった神社から入らないといけない。屋上は入口専用、正面玄関は出口専用に作った。初見さんを困惑させる仕掛けだ。そもそも来る人いないだろうけど。

屋上の鍵はそのままタップしたら開くようにしてあるし、出口の鍵はバールちゃんのレプリカを置けばすぐ開く。簡単だな!何回か建設途中に侵入してくる盗賊もいたが、それはもうぶっ殺してある。ん?気絶させた道具?隠し通路にあるガトリングガン。掃除とかもちゃんとしてるけど、ちょっと床に血が飛び散ったんだよね。折角だから実験に使うことにした。非道じゃない、先に襲ったあっちが悪い。

それと、相手もバールで壁を殴ったけど凹み一つついてなかった。バールちゃんは特別、はっきしわかんだね。

というかこの学校の本質は生物室にある遺体安置所だ。生身のまんまで八万人まで入る。でも生物室地下にあると学校としておかしくない?だからそこは第二生物室を3階に作って地下に第一生物室を作ることで対応した。ふっ、天才だな。

悲しい自画自賛はさておき、ここはシェルターとしても機能するように設計した。外にある一人で作った農場から自動で収穫、貯蔵して中の人が死なないように食材を食堂に運ぶ役割だ。色んな食材があるから退屈はしない。肉とか魚とかも育てた大豆から作製している。作るのめんどい。お菓子のポテチもラムネもこだわって作ったから安心安心。ポテチ、美味い。

 

農場ではポテチを作るためのポテトの他、殆どの食材を育てている。夏野菜でも冬野菜でもばっちこい!そんな素敵な農場です。ちゃんとどんな状況にも対応できるAIとビニールハウスあるから楽勝だぁwww観葉植物とかも置いておきたかったけど…根がからまったりとかしたら困るからね、しょうがないね。でも充分に育てたから向こう数十年は生きられそう。…ん?今何歳かって?わからん、というかレディに年を聞くな。

そうそう、年といえば最近体が十歳位まで縮んできたんだよね。5年前はぴったりだった白衣がダボダボだしシュシュで纏めてた髪からシュシュがすっぽぬけたり。弊害はあったけどまあ楽だし良いかなって。

さぁて、暇なのでなんか起きないかな〜?

 


 

司令官は口元を強く噛む。そして決断を下す。

 

『…総員撤退しなさい。今回の作戦は中止よ』

 

死んだ少女達を無駄にする選択肢を。

彼女が見ているレーダーにはセラフ部隊の青が殆ど無く、危険な宇宙外生命体であるキャンサーを示す赤が占めていた。段々と消されていくその青色に、司令官は悔しく思いながらも淡々と指示を出す。死にゆく者に懺悔するより先に、今まだ生きている者の救済を。

しかし、無常にも色は赤く染まり続ける。一つの青い点のみが残る惨状。生存は絶望的かと思われた。

 

「…ドローンのカメラ映像を映して」

 

司令官が指さしたのはその点に最も近いドローン。映してもさして変わらない、全滅を見届けるだけの単純な作業。

 

「……司令官?」

「…レーダーにはセラフ部隊の反応はなかったんですよね?」

「はい。ですが、これは…」

 

それを全て覆した。

カメラに映し出されているのはキャンサーから必死に逃げるセラフ部隊の少女…そして、その後ろにキャンサーを追撃する少女。的確に一撃で殺し、的確に少女の視界に入らないように暗殺し続ける少女。

 

「ねえ。彼女…」

「ええ。白衣ですね」

 

その戦闘技術もさることながら、恐ろしいのは少女が白衣に血を一つ残さずにこの戦闘を行っている点だ。返り血すら飛び散らせず、音一つ立てない戦闘のなんと恐ろしいことか。

 

「…彼女に接触は不可能ね。ドローンで追跡は行える?」

「はい。もちろんです」

 

司令官の会話の最中に、セラフ部隊の少女は死地を脱出した。

 

『☓☓☓隊員、ヘリに乗って脱出』

 

機械的な音声が司令部に流れる。ただ、それよりも人がやった妙技に圧倒されていた。

 

やがて、少女はこの名で司令部から仮称されることになる。

誰にも妥協を許さず、死にゆく者を全力で助け続けた天使。

『ナイチンゲール』、と。




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