ナイチンゲール「コロシアイデスゲームなんてさせるか!ナイチンゲールがいる限り!」   作:行き場のない串焼き

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注意:ヘブバンを第三章まで進めてから読むことを推奨します。
また、何も知らなくても読むことを推奨します。


Day1 セツナ、延ばした先に。

 

『???』

 

「ここはどこでしょうか?」

 

私が目を覚ましたのはよくわからない何処かでした。正確に言うならば、窓がない教室。というより、窓に真っ赤な血でできた手の跡があって窓としての機能を果たしてません。

それに、この教室の机と椅子も変です。全体の六つの内五つは窓と同じような血の色がべったり。他の一つは新品みたいに綺麗なのですが、生傷が耐えていません。

体を起こした先に見えたのは黒板。傷だらけで使い物にはならなくなっています。後ろにもありますが、そっちは一度も使われてないように見えます。

教室の前の扉は横のスライド式で、後ろの扉はドアノブを捻って開けるタイプ。

全体的に見るなら…

 

「ちぐはぐ」

 

そう、とてもちぐはぐな印象です。この教室、一体なんなんだろう?

ガチャリ。音は後ろから聞こえてきました。

 

「起きたのかね?君が最後だ…」

 

開けてきたのはそう…なんというのでしょうか。空のようなデタラメに青い瞳、烏の濡羽色のような黒一色の髪、よく見るような白色のシャツに黒い長ズボン。唯一の奇妙な点は胸についている青く光るブローチ。学生、でしょうか。

 

「動けるのならついてくるといい」

「その…?」

 

拙い言葉なのですが、どうやら伝わったみたいです。

 

「ああ、私の名前についてかね?名乗り忘れたこちらの落ち度だ」

 

あまつさえフォローまでされては背が立ちません。

 

「ふむ…仮としての名だが、名乗らせてもらおう。ライム、だ」

「…偽名、ですか?」

「そうだ。いかんせん、私もこの状況で詳しく名前を言う程君を信用できないのでね。申し訳ない。無論、君も偽名で構わない」

 

ライムさんはそういって私に促してきた。えーと…

 

「じゃあ、レモン…で…」

「わかった。では、改めて外に出るか」

 

見惚れるほど丁寧な所作で前の扉を開けると私が先に出れるよう避けてくれました。しかし、こんな優しい人が偽名を名乗らないといけないとまで思わせる状況とはなんなのでしょうか?

 

『ロウカ』

 

廊下では血の跡がついていました。教室の外は綺麗になっていましたが、それ以外は全く血がない場所がありません。強いて言うならば、私達が歩いたお陰で床の部分の血が薄れている、のでしょうか。

上にはライトもあり、暗くはないのが余計に怖いです。

それ以外には不審な点は特にない普通の廊下…だと思います。

 

「レモン、体調は無事か?」

「はい…大丈夫です…その…」

「うん?何かあったかね?」

「その…トイレ…」

 

ライムさんは忘れていたような顔をしていました。

 

「ああ、そうか。そういえばまだここに来て行っていなかったな。よし、では一緒に行くとするか」

 

トイレにはついてきてはもらいたくなかったのですが、場所もわからないのでライムさんについてきてもらいます。

 

「さて、ここがトイレだね」

「そ、そうなんですね…」

 

トイレは男女でちゃんと別れているようでした。

 

 

 

 

外でライムさんを待っていると、この空間の異様さがわかります。

 

「そもそも、この場所を建てる費用は何処にあるのでしょうか?」

 

学校を再利用したとしても改装の費用もありますし、水道と電気を通しているのも気になります。そこまで整えたとしてもその後血だったりなんだったりを残しておいているのかも気になります。そんなことを考えていると、ぴっちりとスーツを着た紫色の人がやってきました。髪の毛はツインテールに纏められていて、そこも青く光っています。

 

「ん?お前さんは誰かい?」

「あ、レモンといいます…」

「レモン、ね。あたいはユズさ」

「ユズさん、よろしくお願いします…」

「ここで待つってことはもう一人連れがいるんだろ?誰さぁね?」

 

やけにぐいぐい来る人です。どんどん迫ってきます。

 

「ち、近いです…」

「ああ、そうかね?」

 

そういうとユズさんはひょいっと後ろに下がりました。

 

「それで、誰さぁね?ミカンかね?ライチかね?」

「いえ、ライムさんです…」

 

どうやらミカンさんとライチさんと言う方もいらっしゃるようです。となると、全員で五人でしょうか?

 

「ライムぅ?あの天才と?」

「天才、ですか?」

「そうさね。あたいはあんな天才のまとめ方、見たことはないさね。最も、あたいが人を見たのは百にも満たねぇけどね!」

 

そういってケラケラと笑うユズさん。見た目のスーツの硬派な印象とは裏腹に、かなり気さくな方なようです。

 

「おっと、ライムがきたようさね」

「ふむ、なんの話をしていたのかね?私の名前が聞こえてきたような気がしたのだが」

 

ライムさんが来たようです。歩きには迷いがなく、まっすぐに歩いています。

 

「いやぁ、こいつが待ってたから誰と一緒にいたってのをききにねぇ」

「なるほど、もっともだな」

 

そうやって話していると、急に音声が流れました。

 

『あー、マイクテス、マイクテス。聞こえてそうなのでそのままちょっと話します。29Aの皆さんは至急一階のトイレの近くにある体育館に来て下さい。状況説明がしたいです』

 

聞こえてきた声は、女なのか男なのかはっきりしない声です。

 

「さて、では行くか。この状況で情報が得られるのは何にせよ貴重な機会だ。罠だとしたら起こす前に殺せばいい…」

「要はつっこんじまっていいんだろ?」

「相違ない」

「やりぃ!」

 

そういうとユズさんは一目散に駆け出し、扉を開け放ちながら体育館に入っていきました。

 

「それでは私達も行くとするかね…なに、あと二人について気にすることはない。すぐに来るさ」

「はい…」

 

私達はゆっくりと体育館の方に歩いていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『タイイクカン』

 

体育館は今までの恐ろしい雰囲気とは真逆に、どこにでもあるような普通の体育館でした。バスケのコートなどの体育の授業で使うような線もあります。

体育館の前の方にある朝礼台には可愛らしい緑色のとかげを模したぬいぐるみがあります。

ユズさんはバスケットボールで遊んでいました。ダム、ダムと規則的な音が響きます。

 

「いやぁ、やっぱりこういうのは落ち着くねえ。自然物だけの生活も悪かねえが、こういう人工物だらけってのもおもしれえ」

「どんな生き方してきたんですか?」

「そんな気にせんでもこっから出れたら話してやっからね…なぁに、焦ることはないさ」

 

そういいながらもボールを触る手を止めないユズさん。

 

「ほれ、ライム達もやってみな?」

「ふむ、まあやぶさかではない」

 

そう言われた瞬間、ユズさんはバスケットボールをノールックで投げつけました。私の方に。

 

「なんで!?」

 

私は慌てましたが、ライムさんがバシッと受け止めました。

 

「せめてコントロールをしてほしかったものだな」

「しょうがないねぇ。ここいらはあたいの性分なもんだからねぇ」

 

そんな呑気な会話をしていると、扉の前に誰かが来ていたようです。

一人は巫女さんが着るような袴を着ながら、屋台で売っているような白色の狐のお面を頭に被っていました。髪はショートカットに切られているようで、留め具が輝いているお面の下からちょっとだけ黒色の髪が見え隠れしています。

もう一人は和風の人とは打って変わって洋風の人で、昔の貴族が来ていたような騎士の鎧みたいなものを身に纏っています。腰につけているのはレイピア、でしょうか。鎧にある紋章が青く綺麗に光っています。

 

「へいへい!ライムとユズと…誰?」

「えっと、レモンです」

「うんうん!なるほど、私はライチ!よろしく!」

「は、はい…」

 

どうやら巫女さんの方はライチさんと言うようです。となると、もう一人はミカンさんですかね?

 

「うむ、拙者も名乗っておこう。拙者はミカン、よろしく頼む」

「は、はい…レモン、です…」

「なに、そこまで畏まる必要は無い。拙者は未熟な身ゆえ、気軽に話しかけていただけると有り難い」

 

予想通り、ミカンさんが騎士さんだったみたいです。…ちょっとだけ、混乱しそうです。

 

「声の主よ、もう集まったぞ」

「あ、もう集まった?それじゃ、私の出番か」

 

その高い声は朝礼台から聞こえてきました。

 

「という訳で、私が君達に対して話せることだけ話そうか。まあ、その前に…」

 

ごくり。誰かの固唾をのんだ音が不気味に響きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の挨拶をしておこうか」

 

そういうとぴょこんと可愛らしい少女が出てきます。白色の長い髪にこれまた白い白衣。ぶかぶかな白衣は袖が余っていてファッションにしか見えません。白衣の中にちろりと見えるのは綺麗に仕立て上げられたセーラー服。

 

「私はナイチンゲール、ドクターだ。ドクターと呼んで欲しい」

 

皆呆気に取られてしまいました。

 

「さて、ではこの状況を説明しようか」

「可愛い…かわいいよぉ、ナイチンゲールちゃん…」

「ええい、ドクターと呼べ!ライチ、ちょっと話させろ!」

 

ライチさんがドクターさんに近づいてぎゅっと抱きつき、ドクターさんが嫌がっています。まるで従姉妹がじゃれているようです。

 

「もういい…とりあえず話の邪魔はしないでくれ…」

「やったー!」

「では、話そう」

 

そういってキリッとした表情を浮かべるドクターさん。これでシリアスは無理だと思いますが…まあ言わないでおきましょう。

 

「結論から言わせてもらえば、君達29Aは記憶を失っている。それと、私はそれに色々と関わっていぐえぇ」

 

ライチさんは驚きの余りドクターさんを絞めました。

 

「ふむ、とりあえず話を続けてもらうとしよう。ライチ、やめてあげなさい」

「ふぅ…ふぅ…」

「全く…私は生きているのだぞ…さて、話を戻すか。ここでの生活の期間は君達が忘れてしまった『何か』を全て思い出してもらうまで続く。まあ、何度も私がテコ入れを行うから、長くても一月で終わるはずだ」

 

「生活に必要な場所も環境も整えているし、言ってくれれば各自の要望にも答える。ただ、外の情報などは入れることは出来ない…申し訳ないがそれだけは勘弁してほしい」

 

「まあ、今話せることはこれぐらいだ。何か質問はあるか?」

「では私が」

 

言うなりライムさんが手を上げました。

 

「ここにいる限りは人間らしい生活ができる、ということであるのは理解した。君がなぜこんなことをするのか、という点は理解が出来ない」

「簡単だ。私のエゴで君達をここに来た以上、最低限そういう生活にしなければならない。ここで君達に記憶喪失の記憶を取り戻してもらえるのも同じ理由だ。…なにせ、こんなことは本来してはいけないのだからな。別に、私だってやりたくてやっていることではないのだ…あ、」

 

そこまで喋ると、慌てて頭をブンブン振るドクターさん。

 

「ふっ、気にしなくてよい」

「かわいい…かわいいよぉ…」

「ええい、すりすりするな!とりあえずもうこれで終わりだ!」

「ね〜ね〜、個室ってあるの?」

「もちろん用意してある。ほら、さっさと帰れ!」

 

そういうなりぐいぐいと私達を押そうとするドクターさん。ただ、どうしても中学生にしか見えません。

 

その後、私達は個室に帰って寝ることにしました。

 

「あ、イラスト…」

 

私達の部屋の前には私達を模したドットのイラストがありました。皆それぞれの部屋に入っていきます。

 

 

『コシツ』

 

個室は綺麗で新品そのものです。特に血の色ではないので、目の部分にも良かったです。

 

「あ、ベッド…」

 

ベッドはふかふかの枕の布団がありました。ポス、と音を立てながら倒れ込むと、眠くなってきました。

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