金色の英雄 IS 【更新凍結中】   作:ソウソウ

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第15話 昼休み

 織斑先生の終了の合図が告げられたので俺と璃里亜は装備を戻してグラウンドへと降りていく。山田先生も一緒に。

 

「専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰、波大、遠堂だな。では七人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな?では分かれろ」

 

 織斑先生の指示に生徒達は一斉に動き出して列を作り出す。それだけは良かったんだけど………。

 

「織斑君、一緒に頑張ろう!」

 

「わかんないトコ教えて!」

 

「あ、ああ」

 

「デュノア君の操縦技術見たいな~」

 

「ね、ね。私も同じグループに入れて!」

 

「う、うん。皆さんよろしく」

 

「波大君、その、お手柔らかに」

 

「なみむーよろしく~」

 

「分かった。分かった。ていうか多くないかここだけ!おい!」

 

 生徒の数が一部に集中しているのだ。特に俺と一夏とシャルルに。

 

「馬鹿共が………出席番号順に先程言ったメンバーの順で並べ!さっさと並ばなければISを背負ってグラウンド100周させるぞ!」

 

 織斑先生の鶴の一声で3人に群がっていた女子は1度散り、2分と掛からない内に指示通り並んだ。そんなに嫌なんだな…走るのが………。

 

「……やったぁ。織斑君と同じ班っ。名字のおかげねっ……」

 

 一夏と同じグループになった女子は喜ぶ。

 

「……うー、セシリアかぁ……。さっきボロ負けしてたし。はぁ……」

 

「……鳳さん、よろしくね。あとで織斑君のお話聞かせてよっ……」

 

 セシリアと鈴は先程山田先生にぼこぼこにされていたのであまり反応は良くない。

 

「……デュノア君!わからないことがあったら何でも聞いてね!ちなみに私はフリーだよ!……」

 

 シャルルの周りには手を差し出す女性達。

 

「……やった、波大君だ!……」

 

「……遠堂さん、さっきはすごかったね!私にも教えて!……」

 

 自分で言うのもあれだが、激戦を繰り広げた俺と璃里亜には反応がいい女子。

 

「…………………………」

 

 予想通りというか、なんと言うかラウラのグループだけは会話が一切ない。会話が出来ない状況に陥っている女子達は困っている。

 改善しようにも本人が凄い拒絶のオーラを出しておりどうしようもないのだから言いようがない。

 

「ええと、いいですか皆さん。これから訓練機を1班1機取りに来て下さい。『打鉄』と『リヴァイヴ』が4機ずつです。好きな方を班で決めてください。あ、早い者勝ちですよ」

 

「「「「「「はい」」」」」」

 

「んじゃ早速取りに行きますとしますか。皆、『打鉄』と『ラファール・リヴァイヴ』どっちがいい?因みに早いもん勝ちで行く予定」

 

「そ、そう?じゃあ『打鉄』がいいかなぁ。なんだか扱い易そうだし」

 

「あたしもー」

 

「んー私はどっちでもいいかな」

 

「適正試験の時乗ってたのが『リヴァイヴ』だったからそっちの方がいいなー」

 

「多数決の方が早いな。『打鉄』が良い人、手ぇ上げー」

 

 俺は挙げた手を確認する。

 

「よし、『打鉄』に決定ー。取りにレリゴー」

 

 俺たちのグループは全員でいくことにした。

 

《各班長は訓練機の装着を手伝ってあげてください。全員にやってもらうので、設定でフィッティングとパーソナライズは切ってあります。とりあえず午前中は動かすところまでやってくださいね》

 

 ISのオープンチャネルで山田先生が連絡してきた。取り敢えず簡単にまとめると装着の手伝いと起動に、歩行をやれば良いみたいだ。

 

「では、俺が装着のサポートをして起動してから歩行に移行するってことでいくから」

 

「「「「「ラジャー」」」」」

 

(何故にラジャー………?)

 

「では訓練を始める。一番手は誰だ?」

 

 ちょっと調子に乗って軍の訓練風にしてみる。

 

「はい!私です!」

 

 ビシッと敬礼をする一人の女子生徒。

 

 お、乗ってくれた。ありがたい、ありがたい。ここで乗ってくれないと俺が寂しい人になっていたところだ。

 

「ふむ。では、ここに足を入れて……そうだ。その調子だ!」

 

「はい、了解です!」

 

「よし、では起動してみよう!」

 

《波大君、ふざけないでちゃんとしてくださーい》

 

《あ、はい。すみません》

 

 あーあ、山田先生に注意されてしまったではないか。

 

「はい。起動っと………ぅわあ」

 

「ここからはちゃんと行くよ。俺の所までゆっくりでいいから歩いてきて」

 

「わ、わかった」

 

 俺は麒麟を展開して距離をとるためにジャンプする。

 

「おーい、準備できたらここまで歩いてこいよー。因みに次の人からも一緒だからよく見ておけよー」

 

 手を振りながら声を出して準備完了の合図を出す。

 

「ちょ、ちょっと…待って!」

 

 ゆっくり、ぎこちない動作で打鉄は歩いて来る。1歩1歩。そして時間を掛けて俺の元に着く。

 

「ふー到着」

 

「よしあともう半分。ファイトだ」

 

「んー、波大君、何か操縦する上でのコツとか無い?何か意識するとかさ」

 

「人によって変わってはくるが、やっぱりISは何回も使うことによって慣れた方が良いだろう。まあ、俺からはISを道具だとは思わずにパートナーと思って動かしてみたらいいと思う」

 

「パートナー?」

 

「そう、自分の相棒となるからね。ISに語りかけるのもいい方法かな」

 

「語りかける………」

 

(俺の場合はユカと話しているんだけどな…)

 

 この事は誰にも知られてはいけないので口に出さないことにする。

 

「次の人も待ってるから行こうか」

 

「う、うん」

 

 帰り道は比較的時間が短縮されていた。

 俺のアドバイスが効いたのか初めの頃とは比べて比較的上手になった。

 

「ありがとう、波大君のお陰でなんだか上手くなったような気がするよ」

 

「いやいや、君が自分で頑張ったからだよ。───じゃあ、次の人ー」

 

 「は~い」と元気な声で出てきたのはのほほんさんだった。

 

「なみむー。これ、どうやって乗るの?」

 

「え!あー………立ち状態のままかぁ……」

 

 訓練機は専用機と違い解除するときに気を付けないとこういうことになってめんどくさいことになるのだ。

 

《波大君がコックピッドまで運んでやってくださいね》

 

 通信で山田先生からの解決方法を言われて俺は早速実行に移す。

 

「ちょっとのほほんさん。失礼するね」

 

「んー、なにー────ってえー」

 

「「「「……っ!」」」」

 

 周りの女子達が驚いた表情でこちらを見てくる。それもそうだろう。今、俺はのほほんさんをお姫様抱っこをしているからだ。

 ハイパーセンサーで辺りを見回すと一夏のグループも俺のグループと同じことになっており箒を抱っこしていた。箒は嬉そうに顔を赤らめていた。

 

「ほら、降りて」

 

「うん、なみむー。またやってね~」

 

 俺が操縦席に降りるように促すとのほほんさんは顔を赤らめながらそう言ってくる。

 

「はいはい。機会があればね。先程と手順は一緒だから大体は分かるよね。ほら、あそこまで歩いてみよう」

 

「えー、なみむー。分かんない」

 

「話聞いてなかったのか……まあ、いいや。ついでに全員に説明しますか」

 

 ちょっと声を大きくして周りの反応を見る。と、やはりラウラのグループの女子達がこちらに耳を傾けてきている。

 ラウラはやり方だけを指示しており後は何もしていないのでコツとか教えてほしいのに聞けなくて困っているように見えたのでしょうがなく一番近い俺が言うことになる。

 

「えー、まず機体に自分の体を合わせるようにしてセットしていく。次に起動してから歩くんだけど出来る限り慎重にすること。慣れたら速くしていっても構わないけど無茶はしないこと。そして、基本的に動かす時に意識しなくても自然と動く事ができるようになっている。だから機械に乗って動いているイメージより自身の手足と同じような感覚でいけるからそんなに力は入れなくてもいいからな。最後にランクが低い人はまず手を握ったりして感覚を掴んでから動くように」

 

 ラウラのグループの女子達もうんうんと頷いている。ラウラのグループでも歩行訓練が始まったみたいだ。今ので理解出来たのなら良いのだが………それよりも………。

 

「分かった~」

 

 ホントに分かったのか不安になりながらものほほんさんの番も順調に進んでいった。

 のほほんさんの番も終わり次の人が乗ろうとするとあることが発覚した。

 

「んで、のほほんさん。これ、わざとだろ」

 

「え?……なんのこと~?」

 

「なんで、立ち状態のまま解除してるんだ?」

 

 俺がちょっと目を話した隙にのほほんさんは立ち状態でISを解除していた。これでは誰も乗れない。つまり俺がそこまで運ばないといけない。絶対にわざとだろ……これ………。

 

「「「「私達もしてほしい!」」」」

 

「あー!もう!分かった、全員してやるよ」

 

「「「「やったーー」」」」

 

 結局、全員をお姫様抱っこするはめになった俺は璃里亜からの嫉妬の目線をハイパーセンサーで感じながらこなしていくのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では午前の実習はここまでだ。午後は今日使ったISの整備を行う。故に各々格納庫にて班別に集合すること。専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。では解散!」

 

「どっちにしろ整備するんだから、今のうちに細部は見ておこう」

 

 織斑先生の言葉と同時に訓練が終わり片付けとなる。

 俺は自分も加わり格納庫に班のメンバーと打鉄を戻すが、シャルルの所はシャルル以外の体育会系の生徒が点数稼ぎを目的に片付け、一夏の所は反対に生徒はさっさと帰ってしまい一夏が1人で片付けていた。

 

「……せっかくのアピールチャンスを無駄にして何やってんだか………」

 

 俺の呟きを聞いていた女子達は一夏のグループの女子達を哀れむ。最終的に俺とシャルルと一夏を狙う別のグループの女子達が運んでいったのだった。

 因みにISの片付けは人力で行うので結構疲れる。

 

「取り敢えず着替えるか」

 

「あ、ああ。シャルルも行こうぜ。またアリーナの更衣室まで行かなきゃいけないし」

 

「え、えぇっと、僕はちょっと機体の微調整をしてから行くから、先に行ってて。時間が掛かるかもしれないから待ってなくてもいいから」

 

 シャルルは慌てて言う。この反応もどちらかというと女の子がする反応に見える。やはりシャルルは女なのでは……と思ってしまう。

 人間不信みたいだな……と思う。

 

「んじゃ、俺は先に行くから」

 

「いや、別に待ってても平気だぞ? 蒼星と違って俺は待つのには慣れ───」

 

「い、いいからいいから!僕が平気じゃないから!ね?先に教室に戻っててね?」

 

「お、おう。わかった。そ、それじゃ行くよ。おーい、待てよ蒼星」

 

 シャルルの妙な気迫に押され、一夏はつい頷いて俺に付いて来た。

 それと俺は待つことが苦手ではない。

 

「なあ蒼星、何でシャルルはあそこまで必死だったんだ?」

 

「さあ?もしかしたらか一夏からの危険信号を直感的に感じたかもしれないんじゃないか?」

 

「何でだよ!俺はそんなもんは無いぞ!」

 

「冗談に決まってるだろ。そう向きになって怒るな。けどシャルルもああ言ってる事だから、さっさと更衣室に行くぞ」

 

 食って掛かる一夏に俺が軽く流してると更衣室に着いてすぐに着替え始める。

 

「そうだ蒼星。今日の昼は空いてるか?」

 

「昼か?え~………特に何もないな」

 

「箒が俺と一緒に昼飯を食べないかと誘われてさ。けど俺だけってのもなんだし、良かったら蒼星も一緒にどうかと思って。あ、勿論シャルルも誘うつもりだ」

 

「……箒、どんまい…………」

 

 相変わらずの一夏の唐変木が発揮して箒の小さな勇気は水の泡となるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どういうことだ」

 

「ん?」

 

「ごめん、どうしようもなかったんだ」

 

 昼休みの屋上。そこに俺達がいた。

 

 本来、最近の高校の屋上は生徒立ち入り禁止となっているが、このIS学園ではそんな決まりはない。それどころか誰でも入れるように開放されており、花壇には綺麗に配置された季節の花々、欧州にありそうな石畳が設置されている。そしてそれぞれ円テーブルには椅子が用意され、晴れた日の昼休みには女子達で賑わう快適な場所となってる。

 その女子達はシャルル目当てで学食に向かったと思われるので、屋上には俺達以外誰もいなかった。

 今日は貸し切り状態みたいで何よりだ。裏の裏を取ったような気分になる。

 

「天気がいいから屋上で食べるって話だっただろ?」

 

「そうではなくてだな……!」

 

 箒の睨む先には“出し抜けると思っていたのか?“と言いたげに笑うセシリアと鈴。

 訳も解らずおびえるシャルル。

 なんでこんな事態になっているのかすら分からない一夏。

 俺に付いてきた璃里亜も苦笑いを浮かべている。

 

「修羅場だね、ソウ君」

 

 いや、むしろ璃里亜はこの状況を楽しんでいるように思える。ライバルがいないからって余裕な態度の璃里亜。いつか、苦労するぞ。その調子だと。

 でも、そうなると俺も大変な目にあうことになるのか……。

 

「せっかくの昼飯だし、大勢で食った方がうまいだろ。それにシャルルは転校してきたばっかりで右も左もわからないだろうし」

 

「そ、それはそうだが……」

 

「諦めろ箒。一夏がこう言う奴だって事くらいはお前だって分かってる筈だと思うぞ?」

 

「む、むう……」

 

 俺の台詞に箒は何か言いたげにしながら持ち上げた拳を握り締める。そう、諦めるしかないのだ。その手には包みに包んだ手作りの弁当が握られていた。成程。成程。

 どうやら箒は一夏の為に手作り弁当を作ったみたいだ。それで、一夏をお昼に二人で食べようと誘いたかったのか。

 

「あれ?箒どうして弁当箱二つなんだ?」

 

「……これはお前の分だ」

 

「俺に!?ありがとな箒!!」

 

 そう言って笑顔で弁当箱を受け取る一夏。

 一方箒は顔を赤くして顔を背ける。

 

「あ、ああ。…気にするな」

 

 と言いながら嬉しそうにしている。

 ───だが残念なことに弁当を持ってきたのは箒だけではないのだった。

 

「はい一夏と蒼星。アンタたちの分」

 

 そう言ってタッパーを俺と一夏に向かって放る鈴。食べ物を投げるな。

 

「おお、酢豚だ!」

 

「これは美味そう……だな」

 

「そ。今朝作ったのよ。アンタたち前に食べたいって言ってたでしょ。蒼星はついでだけど。リリーもいる?」

 

「うん、頂戴~」

 

「あー、ついでですか。そうですか」

 

「コホンコホン。………一夏さん、わたくしも今朝はたまたま偶然何の因果か早く目が覚めまして、こういうものを用意してみましたの。よろしければおひとつどうぞ」

 

 セシリアがバスケットを開くと、中にはサンドイッチが綺麗に並んでいる。

 

(なんか、ヤバイぞ…………)

 

 見た目は普通のサンドイッチ。だが、何か本能的に拒否信号が脳から出ている。

 

「鈴もセシリアもありがとな。それじゃあまずは箒の弁当から……」

 

 一夏はから揚げを箸で取り口に含んだ。

 そしてその、後目を見開いて驚いたように話す。

 

「うまい!!箒、本当にうまいぞこれ」

 

「そうか美味しいか。それは良かった」

 

 と言ってさらにから揚げを口にする一夏。

 それを見て箒はほっとしたように自身の弁当のふたを開けた。

 それを横目で見た一夏がふと気がついたように話す。

 

「あれ?箒の方にはから揚げ入って無いのか?」

 

「え?あ、いやそれは……うまくできたのはそれだけだから…」

 

 と最後の方は小さな声で話す。

 しかし一夏には聞こえていなかったらしく首をかしげている。

 箒もなんと説明するべきか考え、ひらめいたように口に出す。

 

「わ、私はダイエット中なんだ!だから一品減らしただけだ」

 

「え?何でダイエットなんてしてるんだ?」

 

 きょとんとした顔をしながら箒を見る一夏。

 まぁ普通に考えても箒は痩せている方だ。むしろこれ以上痩せたら病気を疑う。

 だが女性からしてみればそれくらいは普通なのか?

 言い訳として通用するのか俺が悩んでいると箒が顔を赤くして叫ぶ。

 

「一夏!!お前どこを見ている!!」

 

「どこって…体?」

 

 もっぱら、一夏からしたら“見た目は別に太っては無い”と思っているのだろう。

 

「ソウ君。見てないよね」

 

「見てない。見てない」

 

「女性の体を凝視するなんて……紳士的じゃありませんわ!!」

 

「あんた…なに胸ジロジロ見てんのよ!!それにダイエットって言うのは太ってるからやるもんじゃないの!!」

 

 案の定、他の二人から厳しいツッコミが入る。

 助けを求めるようにこっちを見るでない。こっちだってピンチなんだから。

 

「ほら、ソウ君。いる?」

 

 箒に対抗心を燃やしたのか璃里亜も対抗して俺に璃里亜の弁当箱に入っていた玉子焼きを出してくる。

 

「うん…………美味しい」

 

「そう!…良かった、この味出すのに苦労したんだよ………」

 

 璃里亜は安堵の表情を浮かべて何かを呟く。と、一夏が凄いことをし始める。

 

「ほら、箒あーん」

 

「「「「────っ!!?」」」」

 

「え!?一夏!?」

 

「いや、おいしいから自分でも食べてみろって。あーん」

 

 驚くセシリア、鈴、シャルルだった。

 セシリアと鈴は一夏をにらんでいる。

 シャルルは顔を真っ赤にしながらその光景を見ている。

 俺はあきれた顔をしながらも一夏を尊敬していた、普通自然に出来るもんじゃない。

 一方箒の方は本当に食べてもいいのか恐る恐るそして少し恥ずかしそうにだか一夏の差し出すから揚げに口を近づけ……食べた。

 一夏は笑いながら、から揚げの味を聞く。

 

「どうだ?」

 

「……いいものだな…」

 

「な、すげーうまいよな!!」

 

「そういう意味じゃないが…ああ、そうだな…」

 

 箒は完全に顔がにやけて緩みきっていた。

 それを見てシャルルは顔を赤くしながら───

 

「カップルみたいだね………」

 

 と呟くが、それを聞き逃していない二人が反応する。

 

「ちょっと!!二人のどこがカップルみたいですって!?」

 

「適当なこと言ってんじゃないわよ!!」

 

「え、あ、ごめんなさい…」

 

 つい勢いに押されて咄嗟に謝るシャルル。二人は自分の物も食べるように一夏に詰め寄る。苦笑いを浮かべている俺はふと隣にいる璃里亜の方を見る。

 すると、璃里亜は顔を赤らめ俯いている。もしかして何かを想像でもしていたのだろうか……何かは聞きたくない………。

 

「ねえ、蒼星君」

 

 シャルルが小さな声で話しかけてきた。

 

「ん?何かあった?」

 

「いや…そうじゃなくて、もしかしてあの三人って………」

 

「一夏のことが好きだよ」

 

「へぇ~、だからあんなに必死なんだね」

 

 シャルルは納得したのか頷いていた。そのシャルルもここまで来るのに大変なことになっていた。

 三人目の男子争奪戦とばかりに一年一組には鬱陶しいと思う位に女子が大挙して押し寄せてきてしまった。織斑先生はいないので追い返すことも出来ない。

 そんな女子達にブロンドの貴公子のシャルルは、実に見事としか言いようのない対応でお引取り願っていた。

 女子一同はシャルルの対応と姿に強くアピールするのが逆に恥ずかしくなるばかりか、嬉しいような困ったような顔をして引き上げて言った。

 

 何しろ───

 

『僕のようなもののために咲き誇る花の一時を奪うことはできません。こうして甘い芳香に包まれているだけで、もうすでに酔ってしまいそうなのですから』

 

………絶句をする以外に選択肢はない。

 

 シャルルにはこの台詞が似合っていた。 シャルルが言っても全然嫌味じゃなかった。それはもう本当にそう思ってると言う感じの態度、堂々とした雰囲気の中にある儚げの印象、その言葉の輝きを引き立たせていた。

 そしてどこか優しいと言うのが更に良かったのだろう。手を握られた三年の先輩が速攻で失神してたほどの破壊力だった。

 まあ結局そのあとにセシリアと鈴と璃里亜が合流してこんな騒がしい昼食になっているのだ。

 

「僕はここにいても良かったのかな?」

 

「いやいや、男子同士仲良くしようぜ。色々不便もあるだろうが、まあ協力してやっていこう。わからないことがあったらなんでも聞いてくれ。───IS以外で」

 

「アンタはもうちょっと勉強しなさいよ」

 

「一夏、折角の頼れる男が一気に崩れ落ちたな。そうならないためにも勉強したらどうだ?」

 

「してるって。多すぎるんだよ、覚えることが。お前らは入学前から予習してるからわかるだけだろ」

 

「ええまあ、適性検査を受けた時期にもよりますが、遅くてもみんなジュニアスクールのうちに専門の学習をはじめますわね」

 

 俺や一夏は分厚い教科書だけで予習してただけだ。尤も一夏はやっていなかったみたいだが。

 俺としては機械の構造を知ることは楽しいと心から思えるので、それほど苦とは感じない。国語などの普通教科は別としてだ。

 

「ありがとう。一夏って優しいね」

 

 シャルルが笑顔で礼を言った事により、一夏は妙におかしな反応をしていた。

 お~い一夏、シャルルは男なんだぞ……って突っ込みたいところなのだがシャルルが女の子かもしれないと疑惑を感じている俺は何とも言えない。

 

「ていうか食べようぜ。食べてすぐダッシュは避けたい。俺と蒼星とシャルルはまたアリーナの更衣室まで行かないといけないんだからな」

 

 どうやら一夏達は一段落しているようで話題が変わっていた。

 

「ちょっと一夏、一つ聞いて良いか?」

 

「何をだ?」

 

「もしかして、実習の度に毎回スーツを脱いでいるのか?」

 

「え?脱がないとダメだろ?」

 

 俺の問いに一夏は聞き返すと鈴が呆れたように言おうとする。

 

「あんたねぇ。女子は半分くらいの子が着たままよ?だって面倒じゃん」

 

 鈴の言葉に一夏は今更気付いた顔になる。道理で午後からの実習がいつもギリギリに来ていた訳だ。少しは出席簿攻撃を避ける方法とかを考えないのだろうか。

 

「蒼星、お前今は……」

 

「そりゃあ勿論着てるよ。ほれ」

 

「………俺、てっきり素早く着替えているのかと思ってた」

 

 俺がズボンの裾を上げてスーツの一部を見せると一夏はガックリとなった。いくら俺でも時間を浪費する事は避けたいからだ。

 

「ていうことは………」

 

 次に一夏は箒達を見始める。流石の一夏もそれはよした方がよい気がする。

 

「な、なに女子の体をジロジロ見てるのよ!このスケベ!」

 

「織斑君の変態!」

 

「え?いや、別にそういう意味で──」

 

「い、意味がどうであれ、紳士的ではないと言っているのですわ!」

 

「織斑君のあほー!」

 

「だから眺めていただけ──」

 

「お、女の体を凝視しておいて眺めていただけとはなんだ!不埒だぞ!」

 

「織斑君の唐変木!」

 

「ちょっ!最後のは何!?」

 

 璃里亜がさりげに一番一夏の悪口を言いまくっている。

 

「でも……ソウ君になら………」

 

「もしかして遠堂さんは蒼星君を?」

 

「え!?あー、うん」

 

 シャルルに言われて顔を赤くする璃里亜。

 

「シャルル、何か呼んだか?」

 

「え!違うよ!」

 

「そ……ならいいが……」

 

 よく聞こえなかったが俺の名前が出ていたような気がして聞いてみたら必死に否定されてしまった。なんだろう…………。

 一夏は「はぁ……」と溜息を吐いて反論する事を諦めて弁当を食べ始めた。懸命な判断だろう。今の箒達に何を言っても無駄だから。

 

「……………」

 

「どうかしたの、一夏?」

 

「何かに目覚めたのか?」

 

 一夏は何となくと言った感じでシャルルと俺を見た。俺は軽く冗談を言ってみた。

 

「男同士っていいなと思ってな」

 

 すると、訳の分からない事を言った。別の意味に勘違いされても可笑しくない発言だ。が、一夏の気持ちは何となくだが分からなくもなかった。

 多分、一夏の事だから新しい男子が転入して来た事に嬉しく思っているんだろう。ついでに寮の大浴場もようやく使えるかもしれないと。

 因みに大浴場についてだが、男の俺や一夏、シャルルは現在使う事が出来ない。以前は時間をずらして使用出来る予定だったのだが、かなりの女子達から異議があったみたいだから結局は入らずじまいに終わっている。

 その異議とは『私たちのあとに男子が入るなんて、どういう風にお風呂に入ったらいいかわかりません!』だそうだ。

 だったら女子の前の時間───と言う編成では更に倍の数の女子達が異論を唱えたみたいだ。『男子の後のお風呂なんてどういう風に使えばいいんですか!』だそうだ。なんだそりゃ!と思うがこれが現実である。

 こんなことも色々あって昼休みもあっという間に過ぎていったのだった。

 

「一夏さん!!どうしましたの!?」

 

 さっきセシリアのサンドイッチを食べた一夏が倒れてしまったが………。

 

 

続く──────────────────────────────

 




次回、いよいよあの姉妹の登場!?
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