金色の英雄 IS 【更新凍結中】   作:ソウソウ

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今回は長めです。

───飽きずに、最後まで行こう!


第18話 シュヴァルツェア・レーゲン

「じゃあ、はいこれ」

 

 訓練を再会すると、シャルルは一夏に先程まで使っていた55口径アサルトライフル『ヴェント』を渡した。

 

「あれ?そう言えば他のやつの装備って使えないんじゃないのか?そうしたら俺が使っても無理なんじゃ……」

 

「普通はね。でも所有者が使用承諾すれば、登録してある人全員が使えるんだよ。───うん、今一夏と白式に使用承諾を発行したから、試しに撃ってみて」

 

「へぇー初めて知ったわ。よし!一夏が訓練するなら、俺も近接戦闘の訓練でもしますか」

 

「蒼星がしても意味あるのか?」

 

「あるに決まってるだろ。なんだ、一夏。嫌みか?」

 

「そういうわけじゃなくてな、蒼星が強すぎるんだよ」

 

「へぇー、蒼星って近接タイプなの?」

 

「違うよ、中距離タイプ」

 

「でもさ、箒にも近接で勝ってさ皆と勝負しても余裕の表情でいるやつがなぁー…」

 

「俺よりも近接戦闘のプロがいるじゃないか」

 

「え!誰なの?」

 

 俺は頭に鬼を浮かべる────と思ったが後から痛い目に遭いそうなので止めておく。

 

「───織斑先生」

 

「ああ。織斑先生は世界最強だしね」

 

 織斑先生のことを言うとシャルルは納得しており一夏は満足の笑みを浮かべる。もしや、一夏はシスコンではないかという疑惑が浮かぶ。

 

「あと一人俺と同じくらいの人がいるけどな」

 

「はぁ!ほんとか!?」

 

「ほら、あそこ」

 

 俺の指差した先には箒たちに何か色々としゃべっている璃里亜がいた。いや、よく見ると離里亜が一方的に話している。

 

「遠堂さん?」

 

「そうそう」

 

「え!マジかよ!」

 

 一夏が先程から驚いてばかりだけど気にしない。

 

「じゃ、シャルル。一夏のことをよろしくな」

 

「う、うん。分かった」

 

 シャルルが頷いたのを確認した俺は璃里亜達の元へと向かう。

 「蒼星は俺の親かよ!」と一夏の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────だから、箒は擬音ばかりで言われても分からないの!スズーも感覚だけでなくてもっと具体的に!セシリアちゃんはあんなに詳しく言っても通じないの!抽象的に織斑君に分かりやすく!分かった!」

 

「リリーが怖いわよ………」

 

「知らなかった……」

 

「そうですわね………」

 

 あー……指導者達が指導されている。しかも三人はその場に正座をしている。璃里亜がさしたんだろうけど。璃里亜は一度スイッチが入るとそのまま止まらなくなって暴走してしまうときがあるが今そんな状況になっている。

 

「おーい、リリー………」

 

「────セシリアちゃんの場合はもっと数値での表現を減らして曖昧にしないとかえって織斑君には分かりにくいの」

 

「はい!分かりましたわ!」

 

 セシリアは完全に手元に置かれている。というか目を輝かしている。

 

「………………」

 

「私はどうすればいいのだ」

 

「箒はもう少し擬音じゃなくて中身を詳しく説明すべきなの。もしくは私みたいに実践で見せるかのどちらかにした方がいいの。とにかく擬音は禁止!」

 

「ぐっ…………分かった」

 

 璃里亜の正論に反論できず渋々納得する箒。

 

「……………そうだ」

 

「最後ににスズー!」

 

「あ、はい!」

 

 蒼星に気づいて目線を向けてくる鈴は蒼星に気付いていない璃里亜に呼ばれてつい生返事をしてしまう。

 

「スズーも箒と同じだけど、もっと詳しく説明したらいいの。同じ近接型なんだから教えやすいでしょ!」

 

「それよりもリリー」

 

「ん?何?」

 

 鈴は答える代わりに璃里亜の後ろを指差す。璃里亜が振り返るとそこには……。

 ───何かが光っていた。

 目の前に歯車が浮いており真ん中の穴には何かが光って見えた。璃里亜にはまるで獲物を狙う猛獣の目のように………。

 さらにその穴の中から人の手ような物が伸びてきて───

 

「きゃあああぁぁー!」

 

 驚いた璃里亜は叫びながら即座にエンドロードを展開すると飛んでいってしまった。

 振り返ると人の顔ではなく別のものがあったら驚いてしまうのは無理はないが、あそこまでリアクションを取られてしまっては、こちらはどういう反応をすれば良いのか分からない。さらにそこから手が出てきて、より恐怖感に拍車をかけてしまったのだろう。

 

「やり過ぎだ、蒼星」

 

「そうよ、リリーが何処かに行っちゃたじゃない」

 

「璃里亜さん、御愁傷様です………」

 

「色々、言われるな………本人が気付かないのが悪いんだけどな………」

 

 歯車───エネギア───がぷかぷかゆっくり上昇して浮かび上がり蒼星の顔が三人の目に写る。

 流石に穴から腕を通してみたのはやり過ぎたかとは思ったが。

 

(あー……戻ってくるかな………)

 

 璃里亜が戻ってきたのは数分後の話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、何の用なの、ソウ君」

 

 しばらくしてから戻ってきた璃里亜は自分の失態に触れて欲しくないのかすぐに本題に入ろうとする。

 だが、易々とそれを逃そうとはしない。

 

「ふふふ……リリーを脅かしにきた─────はいぃ!嘘です!ごめんなさい!」

 

 やはり思った通りに璃里亜は先程のことを話に出すとすごい威圧感を放ってくる。

 

「蒼星さんも璃里亜さんの指導をされたいのですの?」

 

 セシリア達もあの事にはあえて触れないようにしている。自ら火に飛び込むような真似だけはしたくない。

 

「いや、リリーに久しぶりにデュエルしないかって誘いに来ただけだ」

 

「デュエル?」

 

「まあ簡単に言うと一対一の近接試合みたいなもの」

 

「それっていつものと同じじゃない」

 

 鈴が言っているのは俺と一夏がずっと同じ近接戦闘をしていることを言っている。因みに一夏が勝ったのは今までにたったの一回だ。

 

「ISをある程度制限するんだ」

 

「あー、なるほど~」

 

「別にいいよ、ソウ君。ルールはどうするの?」

 

「俺はムーンテライトだけで行く。リリーも近接武器だけで来い。後は……空中戦も有りってことでいいだろう」

 

「OKだよ。じゃ、早速やろうよ」

 

「セシリア達は少し離れておいてくれ」

 

 俺が指示を出すとセシリア達は俺と璃里亜からISを展開してからジャンプしてある程度距離を置く。

 俺も璃里亜から距離を置いてムーンへライトを展開して構える。箒と剣道をしたときと同じ構えだ。

 

《ユカ、今回は自分自身の力だけで行くから見ておいてくれ》

 

《うん、分かった!》

 

 ユカにサポートはいらないように伝えておいて準備はこれで万全となる。

 

「箒ちゃん、合図よろしくー」

 

 そう言った璃里亜は対山田先生の時に使用した銃剣を剣モードで展開して姿勢をとっている。あれを見るのも久しぶりだと俺は感じていた。

 

「わ、分かった─────それでは始め!」

 

 箒の合図とともにデュエルが開始した───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蒼星と璃里亜から距離を取った三人はデュエルを観戦することにした。ISを展開したままでいるのはそうした方がセンサーによる補助とか色々あって見やすいからだ。

 

「遠堂は近接は出来るのか?」

 

「分かりませんわ。ただ山田先生と試合をしていた時はそれなりに出来ていましたわね」

 

 箒の疑問に答えたのはセシリアだったがセシリア本人も璃里亜の腕は知らないので返事は曖昧になってしまう。蒼星の近接戦闘の腕は箒達は充分に知っているので何も言わない。

 

「ほら、始まるみたいわよ」

 

 鈴の目線の先にはムーンへライトを構えた蒼星と銃剣を構えた璃里亜が見つめあっていたところだった。二人とも真剣な眼差しで。

 

『箒ちゃん、合図よろしくー』

 

 璃里亜からのいきなりの通信に箒は驚いてしまうがすぐに璃里亜の指示通りに動く。

 

「始め!」

 

「あれ?動かないわね」

 

 箒の合図と同時にどちらかが動くかと鈴は考えていたが思惑は外れてどちらも向き合ったまま動かない。

 

「どうしたのでしょう?」

 

 セシリアも鈴と同じ疑問を持っていた。

 

「あれは…隙を伺っているのだ」

 

 剣道経験者の箒だけがこの状態の意味を分かっていた。

 二人の対戦に気づいたのか野次馬がだんだんと増えて騒がしくなってくる。が二人はまだ動かない。

 

「「「…!」」」

 

 次の瞬間、璃里亜が動いた。思わず三人は息を飲む。

 璃里亜の剣は蒼星の大剣に止められて押し合いに入る。二つの剣がぶつかった衝撃が辺りに広がる感覚を箒は覚えた。

 

「………うわぁ………」

 

 押し合いに勝ったのは蒼星だった。そのまま大剣で攻めようと奮うが璃里亜もどうにか銃剣で対応して剣筋を剃らす。その光景に鈴は思わず感嘆の声を漏らす。

 

「………あ」

 

 このまま攻めてもらちが飽かないと判断したのか蒼星は勝負に出る。大剣を切り上げるように動かすと同時に大剣を空中にほおり投げた。

 

「あいつ、剣を投げたわよ」

 

「ああ………」

 

 璃里亜も予想外だったのか慌てるが銃剣を構える。と、蒼星が素手で璃里亜に接近した。

 

「体術ですわね」

 

 セシリアが言った通りに蒼星は体術で攻めだした。璃里亜はガードが間に合わずダメージを少し負ってしまうが反撃にと銃剣を突くように動かす。蒼星はなんとかかわすが少し機体にダメージがいってしまう。再び体術で攻められると思った璃里亜だったが蒼星は機体を浮かした。

 そして大剣を空中でキャッチして降り下ろした。

 璃里亜は危機一髪に後ろに退避してかわす。大剣は地面へと激突して地面にひびが入る。

 

「何あれ…………」

 

「もはや、芸だな」

 

「初めて見ましたわ」

 

 観戦している生徒達も驚きが表情に隠せないほどだった

 璃里亜は銃剣を縦に構えて接近して猛攻撃を仕掛けた。蒼星の大剣は細かい動きが難しいが、璃里亜はそれが得意げに仕掛ける。突きと斬を交互に色んな方向からしていく。その数、12連撃………。

 

「璃里亜もなのか…………」

 

「すごっ…………」

 

 箒も今の技を見て蒼星と同じ剣術の使い手だと感じた。鈴は一番の理解者の強さにただただ驚くのみだった。

 蒼星は冷や汗をかきながらも必死に璃里亜の剣に付いていく。攻撃が緩んだ隙を見つけて反撃するために。と、今がチャンスだと判断した蒼星は思いっきり銃剣の刀身に大剣をぶつける。璃里亜はなんとか手放さずにいるが弾かれた銃剣はすぐには動かせない。蒼星はある技の体勢に入る。

 

『え……ちょっと……』

 

 璃里亜は思わず声を漏らすが、蒼星はニヤリと笑みを浮かべて大剣による15連撃に入った。一撃目は正面から二、三撃目からは横からそして後ろに周り攻撃、一回転するかのように動き、攻撃する。

 

「速い…………」

 

 蒼星の移動スピードが異常だった。故にまるで瞬間移動してから切りつけられているような錯覚に鈴は感じた

 やがて結果がついた……璃里亜が蒼星の15連撃に耐えきれなくてエンドロードのエネルギーが切れたのだ。

 

「もうわけが分かんないわよ」

 

「私もだ………」

 

「私もですわ…………」

 

 次元が違うと思い知らされた三人と先程の試合を見ていた生徒達だった───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソウ君!ずるい!あれは使ったら駄目でしょ!」

 

 デュエルが終わるなり璃里亜がそう言ってくる。あれとは最後に使った大剣スキル『ムーンラッシュ』のことだろう……。

 

「リリーだって使ってきただろ」

 

 そうなのだ。璃里亜だって短剣最上級スキルを地味に使用してきたのだ……。

 

「バレたか、テヘ♪」

 

「バレたかって…………まあ……いいが」

 

 自覚はあったのか璃里亜はそれ以上何も言わない。というか初めに決めておけば良かったなと後悔する。

 

《パパ、なんだか騒がしいよ》

 

 ユカから通信が入る。聞き耳を立ててみると騒がしいのは俺と璃里亜のデュエルを見たからだと思っていたが違うみたいだ。

 

「ねえ、ちょっとアレ……」

 

「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」

 

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」

 

 取り敢えず騒ぎの元となっている方へと目を向ける。

 

「………………」

 

 そこにいたのはシャルルと同じ転校生である、ドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒだった。

 この学園に来て以降、ラウラはクラスの誰とも仲良くしようともしないだけでなく会話さえもしない女子。

 そのラウラは一夏の方を睨み付けていた。

 

「何やってるんだ、あいつら?」

 

「さぁ?…………」

 

 璃里亜にわかるはずもなくそちらへと向かうことにした。エンドロードも移動するには何の問題もないので取り敢えず移動する

 

「織斑一夏」

 

ISの開放回線(オープン・チャネル)で名指しの声が入った。それは言うまでも無くラウラ本人の声。

 

「……なんだよ」

 

 取り敢えず返事をする一夏。名指しをされた以上無視する訳にはいかないと言う感じだ。そんな一夏にラウラがふわりと飛翔してきた。

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

「イヤだ。理由がねえよ」

 

「貴様にはなくても私にはある」

 

 一夏から織斑先生はドイツに教官として行っていたことがあると聞いていた。織斑先生が教官だった頃にラウラに一体何があったのかは分からないがこういう事は俺としてはあまり好ましくない態度だった。

 

「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を───貴様の存在を認めない」

 

 ラウラの台詞の意味のすべてを俺は理解出来なかったが、一夏は理解したのか表情が変わる。が、一夏自身も戦う気が無さそうだ

 

「また今度な」

 

「ふん。ならば──戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

 そう言った直後、ラウラは漆黒のISを戦闘状態へとシフトさせる。そして左肩に装備された大型の実弾砲が撃たれた。

 

「「!」」

 

「…なっ……………」

 

 実弾砲が一夏に迫るが横から飛んできたエネルギー弾に打ち落とされた。

 

「大丈夫か、一夏?あと、シャルル、余計な手間かけさせて悪いね」

 

「ううん、平気だよ」

 

 電子流砲を肩にかついでいる俺はシャルルに一声かける。シャルルも一夏を守るためにシールドを展開していたからだ。

 

「……こんな密集空間でいきなり戦闘を始めようとするなんて、ドイツの人はずいぶん沸点が低いんだ。ビールだけでなく頭もホットなのかな?」

 

「それともドイツの軍人は周りがどうなろうと知った事じゃない……などと言う自分勝手な考えを持っているのか?」

 

「貴様、邪魔をするのか!」

 

「ああ。するよ。というか君、視野が狭いね」

 

「貴様、何を言って───────っ!」

 

 俺に指摘されてラウラはようやく気づく。ラウラは怒ると周りが見えなくなってしまうタイプなのか自分の周りを囲んでいるエネギアの存在に気づかなかった。エネギアは攻撃準備は万端と見せつけるかのようにバチバチと雷を穴の所に集めている

それにしてもシャルルの装備呼び出しの技術には驚いた。通常は一~二秒かかる量子構成をほんの一瞬と同時に照準も合わせていたからだ。それが出来るということは大量の装備を格納してると言ったところだろう。事前に呼び出しを行わなくても戦闘状況に合わせて最適な武器を使用出来るだけでなく、同時に弾薬の供給も高速で可能だ。要するに持久戦では圧倒的なアドバンテージを持っているということになり、相手の装備を見てから自分の装備を変更出来る強みがあると思われる。

 実際に手合わせをするとなると、また一味違う試合となり苦戦することは間違いない。

 

『そこの生徒! 何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』

 

 睨み合いをしてる最中、突然アリーナにスピーカーからの声が響いた。さっきの騒ぎを聞いて駆けつけた担当の教師みたいだ。

 

「……ふん。今日は引こう」

 

 二度の横槍に興が削がれたのか、ラウラは戦闘体勢を解いてアリーナゲートへ去っていく。彼女の性格から察するに、教師が怒り心頭で怒鳴っても無視するだろう。

 

「一体、何がしたいんだろうな、あいつ。一夏、何かしたのか?」

 

「いや………何もしてないはずだが……」

 

「一夏、大丈夫?」

 

「あ、ああ。二人とも、助かったよ」

 

 ラウラがいなくなった事に俺とシャルルは警戒を解いて一夏の方を見る。

 

「………もうそろそろ終わろうか。周りから注目浴びすぎて、集中出来そうもないしな」

 

「そうだね。それに四時を過ぎたし、どのみちもうアリーナの閉館時間だしね」

 

「おう。そうだな。あ、銃サンキュ。色々と参考になった」

 

「それなら良かった」

 

 一夏の礼ににっこりと微笑むシャルル。そんなシャルルに一夏は妙に照れてる感じになっている。別にこれぐらいなら本人の性格とかでなんとも思わないのだが───

 

「えっと…じゃあ、先に着替えて戻ってて」

 

 これだ。いつも、シャルルはこうして先に促しているのだ。よっぽど俺達と着替えるのが嫌なのか、他に何か理由があるのかどっちかだろ。俺は後者だと思うが真相は本人に聞くしかない。

 

「というかどうしてシャルルは俺と着替えたがらないんだ?」

 

「どうしてって……その、は、恥ずかしいから……」

 

 これもいつものやり取りで、一夏は着替えを断るシャルルを強引に誘おうとしている。流石に嫌がってる相手に無理に着替えようとする一夏もどうかと思う。

 

「一夏、シャルルがこう言ってるんだから早く行くぞ」

 

「ちょ!ま、待てよ蒼星……!」

 

 先に行こうとする俺に一夏は呼び止めようとする。

 

「蒼星、早く一夏を連れて行きなさい。それと一夏、引き際を知らないやつは友達なくすわよ」

 

「そうだよ、織斑君。早くいってらっしゃ~い」

 

「こ、コホン!……い、一夏さん。どうしても誰かと着替えたいのでしたら、そうですわね。気が進みませんが仕方がありません。わ、わたくしが一緒に着替えて差し上げましょう。蒼星さん、申し訳ありませんが後はわたくしが───」

 

「こっちも着替えに行くぞ。セシリア、早く来い」

 

「ほ、箒さん!首根っこを掴むのはやめ────わ、わかりました!すぐ行きましょう!ええ!ちゃんと女子更衣室で着替えますから!」

 

 反論しようとするセシリアだったが、箒が有無を言わさず首をグイッと引っ張るので根負けした。

 

「さて、こっちも行くぞ一夏」

 

「わ、分かった。分かったから離してくれ蒼星!」

 

「そうか。それじゃシャルル、先に行ってる」

 

「あ、うん」

 

 シャルルにそう言い、一夏を連れた俺はゲートへ向かう。

 

「ったく……首根っこを掴まなくてもいいだろ………」

 

「まあまあ、ほら着替えるぞ」

 

「しかしまあ、この更衣室を俺達だけ使うなんて贅沢っちゃあ贅沢だな」

 

「確かにな。俺と一夏とシャルルだけ使うにしても広すぎる」

 

 がらーんと広い更衣室に入るとそこにはロッカーの数が五十程あって、当然室内も広い作りだ。俺達はISを待機状態のアクセサリーに変換し、俺はそのまま着替えを入れておいたロッカーを開け、一夏はベンチに腰掛けながらISスーツを脱いだ。

 

「はー、風呂に入りてえ……」

 

「着替える度に毎回そう言ってるよな」

 

「シャワーだけじゃ物足りないんだよ。蒼星も風呂に入りたいって考えた事は無いのか?」

 

「まあ気持ちは分かるけど。俺はそんなことはあまり考えないんだけどな」

 

「そうなのか?あ~あ、いつになったら大浴場が使えるんだろうな~」

 

「確か山田先生が大浴場のタイムテーブルを組み直してるって聞いてはいるらしいが、いつになったら使えるんだろうな」

 

 そう話してる内に俺達は着替え終わる。

 

「よし、着替え終わり」

 

「それじゃ行くか」

 

「あのー、織斑君と波大君とデュノア君はいますかー?」

 

 更衣室から出ようとすると、ドア越しから呼んでいる声が聞こえた。山田先生のようだ。

 

「はい? えーと、織斑と波大がいます」

 

「入っても大丈夫ですかー? まだ着替え中だったりしますー?」

 

「大丈夫ですよ、着替え終わってますから」

 

「そうですかー。それじゃあ失礼しますねー」

 

 一夏が問い掛けに答えると、パシュッとドアが開いて山田先生が入って来る。どうでも良いが、圧縮空気の開閉音はなんかいい感じがする

 

「デュノア君は一緒ではないんですか? 今日は織斑君と波大君と一緒に実習しているって聞いていましたけど」

 

「まだアリーナにいますよ。大事な用件だったら呼びにいきますが?」

 

「ああ、いえ、そんなに大事な話でもないです。後で織斑君か波大君のどちらから伝えておいてください。ええとですね、今月下旬から大浴場が使えるようになります。結局時間帯別にすると色々と問題が起きそうだったので、男子は週に二回の使用日を設けることにしました」

 

「本当ですか!」

 

 話を聞いた一夏は感激の余りに山田先生の手を取った。風呂好きの一夏にとって嬉しい話だろう。さっきもそれについて話していたからだ。

 

「嬉しいです。助かります。ありがとうございます、山田先生!」

 

「い、いえ、仕事ですから……」

 

「おーい一夏、少しは落ち着けー」

 

 山田先生に感謝してる一夏に俺が落ち着かせるように言うが、当の本人はそんなのお構い無しだ。

 

「これが落ち着いていられるか。山田先生のおかげでやっと風呂に入れるんだぞ。山田先生、本当にありがとうございます」

 

「そ、そうですか? そう言われると照れちゃいますね。あはは……」

 

「一夏。俺からは山田先生に迫っているようになってるぞ………」

 

「せ、せま……!」

 

「………え?」

 

 俺の台詞にやっと自分の今の状況に気づいた一夏は、そのまま山田先生の顔を見て手を握っている事を確認する。箒達が見たら絶対に嫉妬する展開になるだろうな

 

「……一夏?何してるの?」

 

 背後から声がすると、そこにはシャルルがいた

 

「まだ更衣室にいたんだ。それで、先生の手を握って何してるの?」

 

「あ、いや。なんでもない」

 

 シャルルの台詞に一夏は握っていた手を離す。山田先生も流石に俺やシャルルに言われて凄く恥ずかしくなったのか、一夏から開放されてすぐにクルンと回転して背中を向けた。

 

「二人とも、先に戻ってって言ったよね」

 

「お、おう。すまん」

 

「戻ろうとした直後に山田先生が来たから、此処で話し込んでただけだよ」

 

「ふ~ん」

 

 俺が戻らなかった理由を言っても、シャルルは妙に不機嫌そうだ。特に一夏を見ながら。何故だろう…………。

 

「喜べシャルル。今月下旬から大浴場が使えるらしいぞ!」

 

「そう」

 

 興奮気味な一夏とは対照的に冷静な返事をするシャルル。あんまり興味無さそうな感じにみえる。

 

「ああ、そういえば織斑君にはもう一件用事があるんです。ちょっと書いて欲しい書類があるんで、職員室まで来てもらえますか?白式の正式な登録に関する書類なので、ちょっと枚数が多いんですけど」

 

「わかりました。────じゃあシャルル、ちょっと長くなりそうだから今日は先にシャワーを使っててくれよ」

 

「うん。わかった」

 

「蒼星、夕食はいつもの時間な」

 

「はいはい、分かったよ」

 

「じゃ山田先生、行きましょうか」

 

 一夏は俺達に言った後、山田先生と一緒に更衣室を後にする

 

「シャルル、一つ聞いていいかな?」

 

 更衣室にいるのは俺とシャルルの二人だけだ。あのことについて聞くのに絶好のチャンスだと見た俺は畳み掛ける。

 

「何かな?」

 

「シャルルって女の子みたいって言われたことあるか?」

 

「えっ!…………な、ないよ。周りの人は大人が多かったしね……」

 

「そうか……悪かったな……俺は先に行くな」

 

「う、うん………」

 

「……動作には気を付けろよ」

 

「え!………」

 

 そんな忠告だけをシャルルに残しておいて俺は更衣室を出てある所に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(もしかして………バレてる………?)

 

 シャルルは蒼星の出ていった扉が閉まるのを確認してから更衣室のベンチに座る。そして先程のやり取りを思い返した。何故あんな質問をしたのだろうか……蒼星の好奇心からなのか……それとも………

 

(やっぱり…分かりやすいんだろうか……)

 

 もし蒼星にバレていたとするなら何か対策を模索しないといけないことになるがシャルルには具体案が咄嗟に思い浮かばない。

 

(それに………あれは…………)

 

 会話の最後に“動作には気を付けろよ"と蒼星はそう言ったがどういう意味を込められていたのかは分からない。

 男のくせに女の子に見える動作は気を付けろよなのか…男装してるのに女の子に見える動作になるのは気を付けろよなのか…思考がぐるぐる回るだけで結論付かない。

 シャルルは考えるのをやめてさっさと着替えることにした。

 

 

続く──────────────────────────────

 

 

 

 




活動報告にて、新作品についての参考意見を募集しています。もし良ければそちらの方も覗いてください!
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