金色の英雄 IS 【更新凍結中】   作:ソウソウ

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ついに!!ついに!!UA数が20000を突破していた!!
できる限り続けられるようにはしますので、これからもどうぞご贔屓に!!

───この調子で、行こう!!


第19話 シャルルの秘密

「簪ちゃん、調子はどう?」

 

 更衣室から出た俺は真っ先に簪のいる整備室に向かった。先に来ていた簪は相変わらずウィンドウを表示させて手元のキーボードでカチカチ打ち込んでいた。

 目が疲れそうな作業を何時間も続けている彼女の集中力は計り知れない。

 

「それなりに…………」

 

 「どれくらい?」と言いながら俺は簪の隣に座る。麒麟の整備も兼ねて簪のIS造りの手伝いをするためだ。

 

「あと機体は17パーセントぐらい…」

 

「んで、武器の方はまったく…っと………」

 

 やはり二人だけではなかなか進まないもので武器の方も仕上げないと完成とまで言えないのだ。

 他の皆に手伝ってもらうのも良いのだと考えたのだが、簪はこのIS造りにそれなりの信念を込めているかのように思えたので、無闇にそれを壊すような真似はしたくなかった。

 

「近接武器は普通につくるとして……荷電粒子砲とミサイル兵器は何かのデータを元に作らなきゃダメなんじゃないか?」

 

「うん……だから、それは後回し。取り敢えず機体と近接用の武装が……最優先」

 

「まぁ、そうなるか」

 

 荷電粒子砲は麒麟の電子流砲を参考にすることも出来るかもしれない……まあ…造りが全然違うからあまり当てには出来ないな…。

 

《パパー、こっちもー》

 

「はいはい、分かりましたよっと」

 

 そう返事しながら麒麟のウィンドウまで手を伸ばした俺は思わず固まってしまう。

 

(やば…………今声出てた……俺……)

 

 思わず声を出してユカに返事をしてしまったが簪がいることを忘れていた。ぎこちなく簪の方へと向くと当の本人は作業に集中しており気づいていなさそうだ……良かった。

 

「あーー!いた!なみむー!」

 

 すると扉の方から声が聞こえて振り向くとそこには何故かのほほんさんがいた。

 

「かんちゃん、なみむー借りてくねー」

 

「え……なに、ちょぉー」

 

「あ……………」

 

 俺の近くまできたのほほんさんは俺の腕を引っ張って整備室の扉の方へと向かっていく。

 

「取り敢えずまた今度ね、簪ちゃん!!」

 

 俺はのほほんさんにどこかに連れていかれたのであった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「到着~」

 

「何故に生徒会室?」

 

 のほほんさんに連れてこられた場所は生徒会だった。来る途中からは普通に隣を歩いていた。

 

「俺、何か悪いことしたのか!」

 

 真っ先に思い付いたのはそれだった。だが思い当たることがないので余計に不安が脳内をよぎる。

 

「いいから、いいから~」

 

 のほほんさんに背中を押されてそのまま生徒会の中へと入ってしまう。

 

「いらっしゃーい、蒼星君」

 

 生徒会に入るなりそんな言葉で歓迎されてしまった。中にはそういえば会長だと言っていた楯無先輩とのほほんさんに似ている女性が一人。

 制服のリボンの色から三年生だと思われるがのほほんさんとは違って真面目そうなイメージを持ってしまった。

 

「その方は?」

 

「私のお姉ちゃん~」

 

「本音はお茶でも入れてなさい。初めまして、私は“布仏 虚”と言います。蒼星君、よろしくお願いいたしますね」

 

「こっちこそよろしくです。で、ここに呼ばれた理由は何ですか?」

 

「何ですか?じゃないわよ!どうしてここに今まで来なかったの!」

 

「だって来る理由がないですから」

 

「私が来なさいと言ったでしょ!」

 

「あの置き手紙のことですか?でも“暇だったら"って書いてあったので忙しい俺には関係ない話です」

 

「うぅ……蒼星君が冷たい……」

 

「会長、早く進めてください」

 

 うそ泣きをしだした会長を虚が手厳しく注意する。真面目そうなイメージではなく、本当に真面目な性格のようだ。

 

「虚ちゃんも冷たい……まあいいわ。蒼星君!あなた、生徒会に入りなさい!」

 

「嫌です」

 

 俺はバッサリと切り捨てた。

 

「嫌でもさせてもらうわ。その方が何かと都合がいいのよ」

 

「はあ………何を言っても無駄だってことは分かってますんで好きにしてください」

 

「蒼星君も大変ですね」

 

「あなたには生徒会長補佐をやってもらうわ」

 

「はいはい、わかりました」

 

 虚が同情してくる。余計にキツくなりそうなので正直やめてほしい。

 

「話は終わりですか?───だったらやりたいことがまだあるんですけど」

 

「ちょっと待ってくれる。後あなたに頼みたいことがあるのよ」

 

「何ですか?」

 

「あ………え……えーとね………」

 

 珍しく会長が挙動不審になっている。そんなに話しにくいことなのだろうか………。

 

「もういいです。私が話します」

 

 虚が代わりに説明をし始めてしまった。どうにか吹っ切れた会長も途中から虚の説明に参加した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、どうにかしろと」

 

 俺は思わず何をやっているんだこの人…と思ってしまう。何故なら虚の話だと…。

 会長は現在簪と喧嘩の真っ只中らしい。と言っても簪が会長を避けているのだが。始まりは会長が簪に“あなたは弱い"と口走ってしまったのが始まりだった。

 それに腹が立った簪は自分一人でも強い、何でも出来ると姉に証明するためにたったの一人でISの製作を始めたのだ。会長も一人でISを作ったと聞いた簪はそれに対抗するために。

 実を言うと会長もISは一人では作っていないのだがそんなことも本人の口から言えずにダラダラ時間が過ぎて姉妹の間に亀裂が走っていったというわけだ。簡単に言うと二人とも不器用なだけなのである。

 

「簪ちゃんはすごいわよ。一人でISを一から作ろうとして……私には出来ないことよ」

 

 俺にはその仲直りの仲裁をしてほしいのことらしいが…………。

 

「そもそも俺なんかでいいんですか?」

 

 そう、それが問題なのだ。家族の問題なのに赤の他人である俺が干渉しても良くないからだ。

 

「蒼星君は無意識みたいだけど、あなた、凄いことしてるのよ」

 

「何をしたっていうですか?」

 

「実を言うと今までかんちゃんのISの製作の手伝いをした人がいないのよ、本人がそれを拒否してね」

 

「え………でも………」

 

「そう、蒼星君は手伝っているのよ」

 

 会長の言うとおりだとじゃあ、何故簪は俺の場合のみにあんなに意図も容易く許可を出してくれたのだろうか………。

 

「だからこそ、蒼星君の協力が必要不可欠なのよ!」

 

 会長自身の問題のはずなのに何故かテンションが上がっている会長。まあ、話を聞いている限り会長は簪と今すぐにでも、仲直りしたい様子だ。

 

「いいですけど………具体的には何をすればいいんですか?」

 

「ぐっ………それは…」

 

 言葉に詰まる。会長は考えていなかったみたいだ。

 

「一つ提案が有ります」

 

 このままでは拉致があかないので俺が考えた解決策を言うことにする。

 

「簪ちゃんと試合をしてください、会長」

 

「試合ねぇ………」

 

「やっぱりこういうのはお互い本気でぶつかりあった方が早いです。それならお互い専用機持ちなんでISで勝負して本音をさらけ出したらいいんじゃないんかと思いますが」

 

「あー、私の名前が出てきたー」

 

 会長がなにかを考えているのをよそにのほほんさんは呑気にそんなことを言っている。そういえばのほほんさんは本音って名前だったはずだ。

 

「まあ…まだIS自体が完成してないんでまだ先になりますけどそれまでには充分時間はあるはずですので………それでは……」

 

 それだけを言い残して俺は生徒会室を出たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「会長、どうします?」

 

 蒼星が出ていった後、それを確認したのちに虚が尋ねる。

 

「私……やるわ」

 

 楯無はそう宣言した。自分の愛しい妹のためにも真っ正面からぶつかっていくことを決めたのだ。

 

「そうですか、じゃあそれまでにはこれらを片付けておいてくださいよ」

 

 ニコリと笑った虚は楯無の目の前の机の上に大量の書類をどーんと置く。楯無の顔に冷や汗がたらりと流れる。

 

「蒼星君は行ってしまったので会長が頑張ってください」

 

 そう冷たくいい放つ虚を楯無は鬼に見えた。と同時に先程出ていった蒼星を恨むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…………」

 

生徒会室から出て廊下を歩いていたら携帯にメールがきたので中身を確認する。

 

「うわぁー、めんどくせ」

 

 メールの送り主は一夏だった。なんでも分からない 所があるので教えて欲しいとのこと。正直言うとめんどくさいの一言だが仕方がないので一夏の部屋に向かうことにしたのだった。

 女に教えてもらうより男の方が気が楽になるのは共感するのだが、一夏の場合はあまり意識していないと思われる。

 簪には、しっかりメールでそちらには用事が出来て、今日はもう行けないと伝えてある。

 

「おい、一夏。来てやったぞー」

 

「サンキュ、蒼星。助かるぜ」

 

 一夏の部屋へと入った俺は部屋にある椅子を手元に引き寄せて座る。

 部屋内を見渡しても、相方のシャルルがいない。俺は少し気にかかったので尋ねてみることにした。

 

「シャルルはどうした?」

 

「シャルルならシャワーを浴びてるぜ」

 

「そうか。それで、どこを教えてほしいんだ?」

 

「ああ、ここなんだけどさ……」

 

 一夏は自分の鞄から教科書を引っ張り出して俺に見せる。幸い、開かれたページは俺が理解している所なので簡単だった。そのまま一夏と俺だけで勉強していると、ふと何かを思い出したかのように顔を上げる。

 

「───そうだ。シャンプー、切れかけてたんだ」

 

「何故に今、それを思い出すんだよ」

 

「いいだろ別に。それより、シャワー長くないか?シャルルの奴」

 

「シャルルはそういうタイプなんだろ。俺はいいから早くシャンプー届けに行ってやれよ」

 

「ああ、分かった」

 

 立ち上がった一夏はシャワールームに向かっていく。やることがない俺は暇なのでパラパラ教科書をめくったりしておく。

 と、席を立ってから一分もしない内に一夏が部屋に戻ってきた。

 

「蒼星…」

 

「ん?何?なんか宇宙人でも見たような顔になってるぞ」

 

 一夏の顔色は先程とは一変していた。頭に手を添えながらベッドに倒れこむ一夏。

 

「どうしたんだ?」

 

「女子がいた……」

 

(ついに……バレたのか?)

 

 シャルルの男装が一夏にもばれるとは思ってもいたがこんなに早くなるとは思わなかった。だが俺はあえて気づかないふりをしておく。

 どうしてシャルルが男装しているのを断言出来るかと言うと、親友から会長と話している際に届いた一通のメールからだ。

 その内容は───

『ソウともう一人以外に男性操縦者が出たってニュースは流れてないぞ。その三人目は何か秘密でもあるんじゃないのか?

 それよりもそろそろログ───』

 本題は最初だけで、後半になってくるにつれてまったく関係ない話になってくるので省略するとして、俺はその時思った。

 ニュースにシャルルの存在が放映されないのではなく、出来ないからではないかと。そうなるとシャルルは世間に存在がバレないほどの相当な極秘を抱えた人物。もしくは───

 

 ───“女性”だから───

 

 ISを女性が操縦するのは当たり前で、そんな事はニュースになるわけがない。だから、取り上げる必要性はない。

 そうなってくると、シャルルの今までの不審に思える行動も意図が浮かび上がってくる。そして、わざわざ男装までしてIS学園に転入してきた理由も予測が着く。

 

「…そりゃあ、この学園には俺たち以外男はいないんだから全員女に決まってるだろ」

 

「違うんだ……今、そこに女子がいた」

 

「それこそありえない。今この部屋にいるのは俺とお前と、シャワー浴びてるシャルルだけだろ」

 

「そうだよな……やっぱ俺の目がおかしいのかな……」

 

「寝ぼけた事言ってないで、ほら、続きやるぞ」

 

「そうだな、うん。そうしよう」

 

 一夏はベッドから飛び起きて、いすに座り勉強を再開する。数分後、先程一夏が出てきた扉から、シャルルが出てきた。俺はシャルルの格好に息を飲む。

 

「……シャルル、だよな?」

 

「な、何で蒼星もここに……?」

 

「あ、俺が勉強教えてもらいたかったから……」

 

 俺の目の前にいるシャルルは昼間のとはまるで違っていた。結んでいた髪をストレートに下ろし、シャワーを浴びていたせいか頬も紅潮している。何より違っているのは胸の部分が昼間より膨らんでいる事だった。

 予想は的中していた。

 

「シャルル、それ……」

 

「ごめんね。蒼星、一夏」

 

 シャルルは顔を俯かせ、涙声で謝罪の言葉を口にした。一夏は余りの驚きにシャルルの言葉を聞くことしかできない。俺は黙って聞いている。

 

「僕、二人に嘘ついてたんだ……」

 

 彼女の口から明かされる真実が、二人の耳朶を打つ。柔らかな光に照らされるシャルルの顔には、何処か物悲しい表情が浮かんでいた。

 

「男装してたことなら知ってたぞ」

 

「……やっぱりバレてたんだね」

 

「え!蒼星、まじかよ!」

 

「ああ。友達から聞いた限りでは男性操縦者の三人目が出たってニュースはないみたいだったし。それにシャルルの態度も男にしてはおかしいところがいくらか見受けられたからな」

 

 あんなに不謹慎な態度を取られたら分かるだろうと俺は思う。

 

「あはは………分かりやすかったね」

 

 簡単に見破られたのがショックだったのかシャルルは余計に落ち込んでしまう。

 

「だがこれだけは断定出来なかった。シャルルが男装をしていた理由は何?」

 

「なんだと思う?」

 

「まさかの返しでくるのかよ………考えられるのは俺と一夏に接近するためだろうか」

 

「正解……実家の方からそうしろって言われて……」

 

「うん?実家っていうと、デュノア社の────」

 

「そう。僕の父がそこの社長。その人から直接の命令なんだよ」

 

 一夏が言ってる最中、シャルルはすぐに頷く。父親からの命の割りにはシャルルは距離を置いたような呼び方をしていた。

 

「父親からの命令、ねぇ……」

 

「命令って……親だろう?なんでそんな───」

 

「僕はね、二人とも。愛人の子なんだよ」

 

 シャルルの発言に思わず絶句する俺と一夏。当然だろう。普通に世間を知る俺達に、『愛人の子』と言う意味の言葉が知らない訳が無い。

 

「引き取られたのが二年前。ちょうどお母さんが亡くなったときにね、父の部下がやってきたの。それで色々と検査をする過程でIS適正が高いことがわかって、非公式ではあったけれどデュノア社のテストパイロットをやることになってね」

 

 あまり言いたくないであろう話しを健気に喋ってくれるシャルル。その事に俺と一夏は、何も言わず黙って話しを聞く事に専念した。

 

「父にあったのは二回くらい。会話は数回くらいかな。普段は別邸で生活をしているんだけど、一度だけ本邸に呼ばれてね。あのときはひどかったなぁ。本妻の人に殴られたよ。『泥棒猫の娘が!』ってね。参るよね。母さんもちょっとくらい教えてくれたら、あんなに戸惑わなかったのにね」

 

「「…………………」」

 

 あはは、と愛想笑いを繋げるシャルルであったが、その声はちっとも笑っていなかった。俺と一夏は何も返さずに無言である。特に一夏からは怒りを表していた。その証拠に拳をきつく握り締めている。

 都合が良いときだけ利用する、使い物回しのような扱いをシャルルは受けているよだ。

 

「それから少し経って、デュノア社は経営危機に陥ったの」

 

「え?だってデュノア社って量産機ISのシェアが世界第三位だろ?」

 

「それは量産機だけを視点においた時だけの話だ」

 

「うん。蒼星の言うとおり、結局リヴァイヴは第二世代型なんだよ。ISの開発っていうのはものすごくお金がかかるんだ。ほとんどの企業は国からの支援があってやっと成り立っているところばかりだよ。それで、フランスは欧州連合の統合防衛計画『イグニッション・プラン』から除名されているからね。第三世代型の開発は急務なの。国防のためもあるけど、資本力で負ける国が最初のアドバンテージを取れないと悲惨なことになるんだよ」

 

 以前にセシリアが第三世代型の開発に関していくつか言っていた。

 そういえば、あれは確か訓練中に───

 

『現在、欧州連合では第三次イグニッション・プランの次期主力機の選定中なのですわ。今のところトライアルに参加しているのは我がイギリスのティアーズ型、ドイツのレーゲン型、それにイタリアのテンペスタⅡ型。今のところ実用化ではイギリスがリードしていますが、まだ難しい状況です。そのための実稼動データを取るために、わたくしがIS学園へと送られましたのよ』

 

───と、セシリアが軽く説明していた。恐らくラウラもIS学園にわざわざこんな中途半端な時期に入学したのはセシリアと似た事情だろう。俺と璃里亜もだが。

 

「話を戻すね。それでデュノア社でも第三世代型を開発していたんだけど、元々遅れに遅れての第二世代型最後発だからね。圧倒的にデータも時間も不足していて、なかなか形にならなかったんだよ。それで、政府からの通達で予算を大幅にカットされたの。そして、次のトライアルで選ばれなかった場合は援助を全面カット、その上でIS開発許可も剥奪するって流れになったの」

 

「なんとなく話はわかったが、それがどうして男装に繋がるんだ?」

 

「成程。注目を浴びる為の宣伝と同時に、男子である俺達……いや、正確には一夏に近付く算段と言ったところか」

 

「え?蒼星、それって一体……?」

 

 俺が結論を出したにも拘らず、一夏は未だに分かっていなかった。シャルルの説明で大体分かる筈だろう。

 

「早い話、シャルルが男子と偽れば俺達と接触しやすく、更には機体と一夏のデータを取れるかもしれないって事だ。因みに本命が一夏で、俺はあくまでついでの一人ってとこだろ」

 

「俺の?そんなの俺より強い蒼星のデータの方が良いんじゃないか……?」

 

「俺がその立場だったら全く無名である俺なんかより一夏を選ぶ。何しろお前は織斑先生の弟だからな。シャルルの国も方もそう思ってるんだろうよ」

 

「そう、白式のデータを盗んでこいって言われているんだよ。僕は、あの人にね。そして万が一に盗めなかったら蒼星のデータを盗めってね」

 

 シャルルの父親は話を聞く限りでは酷い人だと思う。いくら愛人の子だったとしてもここまで道具扱いにするのはおかしい。

 その人にとってはシャルルは利用価値のある人形とでも思っているのだろう。

 こんなことを言わずともシャルルはちゃんと理解している。その証拠に他人行儀に自分の父親のことを話しているからだ。

 

「とまあ、そんなところかな。でも一夏と蒼星にばれちゃったし、きっと僕は本国に呼び戻されるだろうね。デュノア社は、まあ……つぶれるか他企業の傘下に入るか、どのみち今までのようにはいかないだろうけど、僕にはどうでもいいことかな」

 

「「…………………………」」

 

「ああ、なんだか話したら楽になったよ。聞いてくれてありがとう。それと、今までウソをついていてゴメン」

 

 深々と頭を下げるシャルルに俺は黙って見ていたが、一夏が肩を掴んで顔を上げさせていた。

 

「いいのか、それで」

 

「え……?」

 

「それでいいのか?いいはずないだろ。親が何だっていうんだ。どうして親だからってだけで子供の自由を奪う権利がある。おかしいだろう、そんなものは!」

 

「い、一夏……?」

 

「一夏、少し落ち着けって。シャルルが戸惑っているだろう」

 

 戸惑いと怯えの表情をしてるシャルルに俺が一夏を落ち着かせようとするが、当の本人は全く聞く耳持たずだった。

 

「これが落ち着いていられるか!親がいなけりゃ子供は生まれない。そりゃそうだろうよ。でも、だからって、親が子供に何をしてもいいなんて、そんな馬鹿なことがあるか!生き方を選ぶ権利は誰にだってあるはずだ。それを、親なんかに邪魔されるいわれなんて無いはずだ!蒼星だってそう思うだろう!?」

 

 ここまで言う一夏は珍しい。ただ俺には今の台詞は一夏自身のことを言っているように聞こえるが一夏にも何かあったのだろうか………。

 

「それには一先ず同意するが、取り敢えず落ち着けよ」

 

「ど、どうしたの?一夏、変だよ?」

 

「あ、ああ……悪い。つい熱くなってしまって」

 

 シャルルが加わった事により一夏はやっと落ち着いてくれた。

 

「いいけど……本当にどうしたの?」

 

「俺は───俺と千冬姉は両親に捨てられたからな………つい」

 

「その……ゴメン」

 

「気にしなくていい。俺の家族は千冬姉だけだから、別に親になんて今更会いたいとも思わない。それに蒼星もだろ………」

 

「まあ二人とも病気で、なんだけどな……」

 

「…そうなんだ」

 

 俺の両親は二人ともあの事件が起こっている最中に病気にかかり死んでしまった。俺にとっては恩人とも言える人だったが、あの二人は本物の両親ではないことは知っている。一夏は勿論、璃里亜にも言っていない。けれどあの二人の優しさにはただただ感謝するしかない。今となっては遅い親孝行をするために今の俺は遺言に書かれた事実を確かめている最中だ。

 

『蒼星は、いずれ本当の家族と出会うだろう』

 

 遺言のひと文にそう書かれてあった。それがいつになるのかは分からないがあの二人が言うならば本当なんだろうと思う。

 

「それでシャルルはこれからどうするんだ?」

 

「どうって……時間の問題じゃないかな。フランス政府もことの真相を知ったら黙っていないだろうし、僕は代表候補生をおろされて、よくて牢屋とかじゃないかな」

 

「それでいいのか?」

 

「シャルルにも訴えるぐらいの権利はあると思うが?」

 

「良いも悪いもないよ。そもそも僕には選ぶ権利がないから、仕方がないよ」

 

 一夏と俺の問いにシャルルが痛々しそうな微笑を見せながら答えた。それには絶望さえ通り越して何かも諦めている。そんなシャルルに俺と一夏は顔を顰めると同時に腹が立った。何も出来ない自分に。

 

「……だったら、ここにいろ」

 

「え?」

 

「特記事項第二一、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする」

 

 思ったとおり、一夏はIS学園の特記事項を利用してシャルルを踏み止まらせようとした。けど凄い。さっきまで気持ちが高ぶっていたのに、あの長い特記事項を落ち着いてスラスラと言えるとは。少しでも噛めば代わりに言ってやろうと思っていたのだが、どうやら不要のようだ。

 

「───つまり、この学園にいれば、すくなくとも三年間は大丈夫だろ?それだけ時間あれば、なんとかなる方法だって見つけられる。別に急ぐ必要だってないだろ」

 

 確かにそうかもしれないが、あくまでそれは一時的な物に過ぎない。もし何も方法が無く三年経ったらアウト。それでシャルルの人生が終わってしまうとは言わないが、好ましくない事態になるのは目に見えている。

 言い換えれば問題の先送りにしていることになっているが、他に最善の手段は思い当たらないので何も言わないことにする。

 

「僕がいたら、一夏と蒼星に迷惑かけちゃう……僕はそんな事したくないよ」

 

「別にいいだろ。そんな事」

 

「え?」

 

「俺達が迷惑と感じなきゃ迷惑じゃない。そうだろ?蒼星」

 

「まあ……そうだな」

 

「一夏……蒼星……」

 

 二人の優しさに触れたシャルルは胸に何か熱いものがこみ上がってくるのを感じていた。

 

「ありがとう……ありがとう、二人とも」

 

「別にいいよ、礼を言われる程の事じゃない」

 

 俺が返答したその時、部屋の扉がノックされた。俺と一夏は揃ってシャルルを見る。

 今、この状態を見られるとヤバイことになる。

 

「あー……やばいことになりそうだぞ、一夏よ」

 

「ああ……って落ち着きすぎだろ!シャルル、取り敢えず隠れろ」

 

「う、うん」

 

「何故、タンスの中に隠れるんだ!ベッドのなかでいいだろ!」

 

「シャルルは佳境に弱いみたいだな」

 

「ご、ごめん…」

 

 シャルルがベッドの中に隠れたのを確認したのちに一夏と俺はアイコンタクトを取る。お互い頷いた後に俺はゆっくりと扉に近づき恐る恐る扉を開けた。

 

 

続く──────────────────────────────

 




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