金色の英雄 IS 【更新凍結中】   作:ソウソウ

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本編とは別に離里亜からの視点でとある一日を書いてみました。余裕があらば、同じ日の蒼星版も投稿するつもりなんですけど期待のハードルは低めで(´д`|||)

因みに“舞姫”はSAOでの離里亜の二つ名のことです。

───さぁ、いこうか!!


閑話① 舞姫日記・その一

 ───これはとある日の他愛のない彼女の平和な日常である。

 

「ふわぁぁぁ~~」

 

 今朝。部屋に差し込んだ朝陽の光に導かれるがままに、現実の世界へと引き込まれる時間帯。

 大きな欠伸と共に体を伸ばしてストレッチをする。まだ眠気が少しある。

 

「もぅ~あさぁ~………」

 

 腑抜けた声を上げた。脳がまだはっきりと起動していないのか、意識が安定しない。

 目蓋を擦り、ベッドから降りるとふらふらな足取りのままカーテンの方へと近づく。バサッ!と勢いよくカーテンを開くとそこからより一層輝かしい光が部屋へと突き刺さる。

 カーテンを開けた彼女“離里亜”は窓越しに大きく欠伸をした。本日二度目である。

 

「うぅ………」

 

 二つある内のベッドの一つ、その上で毛布にくるまっているもう一人の同居人の呻き声が漏れる。

 明るくなった部屋内でもぞもぞと動く毛布の塊。動くだけで、中から出てくる気配はなさそうだ。

 

「ほら、朝だよ~」

 

 ベッドに近づくなり離里亜は毛布を思いっきりまくり上げた。中にいた人が、ゴロゴロと転がりながらベッドへと落ちた。

 

「リリ~、なにするの~」

 

 そのまま猫のように身を丸めてしまったのは離里亜と同じ部屋の住人である“本音”だ。彼女は離里亜に文句を言い付けるが、そんな気が一切感じられない。

 

「早く起きないと遅れるよ~、本ちゃん」

 

「平気~」

 

 ひらひらと掌をさせて、余裕な態度をアピールしてくる本音に離里亜は不安感を抱いた。本当に平気なのだろうかと不安になる。

 本音を見ていると、どうしてか二度寝したくなるような気分に襲われてしまう。なるがされるがままに離里亜も自分のベッドへとバタン!と倒れてしまった。そして、そのまま重たい目蓋を閉じる。

 そして、再び無が部屋内を覆った。

 数分後───

 

「うわぁ!寝ちゃったら、遅れるよ!」

 

 離里亜は勢いよく顔を上げた。そのまま急いで仕度をし始める。早くしないと、もし遅刻をするということになれば魔の出席簿攻撃を喰らう羽目になるかもしれない。

 

「ほら!本ちゃんも早く!!」

 

 未だにぼやぁ~としている本音を急かすように言うと、渋々本音も動き出した。

 よく思えば、毎回同じことをしているのではないかと思う。二人とも朝には弱いらしく、こうして毎回時間ギリギリなことになってしまうのだ。眠気に負けそうになった離里亜にも一理あるかもしれないが、今はそんな細かいことはなし。

 本音がようやく着替え終えると、彼女を引っ張るようにして部屋を出る。

 向かう場所は食堂。

 さて、今日の朝御飯は何にしようかと期待に胸を膨らましていた離里亜だった。

 

「リリ~、寝癖ついてる~」

 

「えぇ!?」

 

 ………時間が危ない。

 

 

 ───【6月27日“料理研究”】───

 

 

 ふぅ~と離里亜が心から安心して、溜め息をつけたのは教室に入って自分の席についた時だった。

 寝癖を急いで直して、食堂で朝御飯を噛み締めてどうにかチャイムが鳴る直前に入ることに成功した。朝御飯の味はあまり覚えていない。

 本音はどうしてかチャイムに間に合っており、さらに寝癖直しというアクシデントがあったとはいえ先に彼女が席に座っていたのにはちょっとしたショックを覚えた。

 山田先生がいつものように教室に入ってくる。一目見渡すと教卓の前へと移動して、出席簿を開いた。

 全員の出席を確認した後に、山田先生は軽く今日の連絡事項をて短めに説明をする。今日は特に何ら変わりのない日だ。

 やがて、授業がいつも通りに始まる。

 その時、離里亜はふと気付いたのだが、蒼星が先程から何度も頭をフラフラさして安定して座っていないのだ。

 誰も知らないのだが、蒼星は朝から自分の寝床に侵入しようと企んでいた会長の楯無の退治をしていた為にお疲れモードに入っているのだ。

 そんなことは露知らない離里亜はまた織斑先生に目をつけられないようにだけ、心の中で注意しておくのであった。

 午前中の授業はあっという間に過ぎていき、あと一つ受けると昼休みになる時間帯になってきていた。今は休み時間。次の授業は数学なので移動する必要もない。教室内では、女子達が談笑して盛り上がっている。

 一夏の周りでは、相変わらずのメンバーが囲んでいる。

 そんな中、離里亜もそこに入ろうと自分の席を立ち上がろうとしたのだが一人の生徒が話しかけてきた為に止めた。

 

「離里亜さん、ちょっとよろしくて?」

 

「ん?セシリアちゃん、どうしたの?」

 

「今晩、空いてるでしょうか?」

 

「確か………うん、予定はないよ。でも、何で?」

 

 セシリアだった。一体何の用事で自分に用があるのか、離里亜は尋ねた。

 セシリアは言いにくいのか、ゴホンと空咳をする。そして、覚悟を決めた様子で口を開いた。

 

「わ、私に………料理(・・・・)を教えてくださいまし………」

 

「ふぇ?料理(・・・・)?」

 

 思わずあっけらかんな返事をしてしまった。無理もない。あのセシリアが、あの料理が下手な彼女が教えてくれと頼んできたのだ。

 彼女の料理下手は離里亜も知っている。というか肌身を持って実感したこともある。味の記憶は殆どないが。どれ程のレベルか、具体的に言うとISなんて目じゃないほどの破壊力が込められているぐらいだ。

 

「え?でも、なんで私?」

 

「日本の料理を学んでみるのも良いと思いまして」

 

「あ………もしかして、織斑君に?」

 

「はい、そうですわ」

 

 一夏は根っからの日本人。彼の好みも自然と日本料理になるのも普通だ。彼女も少しでも彼の気を引くために、自分も日本料理に挑戦しようとしているのだろう。

 だが、セシリアはある問題と対面することになった。

 それは作り方が知らないという、料理の根本的な問題だった。そこでセシリアは同じ日本出身で料理上手な離里亜に頼むことにしたのだ。

 別に離里亜にとって、セシリアに料理を教えることに問題はない。人に教える経験は初めてだが、そこはなんとかなる。

 問題はセシリアの料理に対しての認識だ。彼女の場合、少しずれている。

 離里亜は上手く彼女に作り方を伝授出来るのか、不安だった。と、ここで離里亜はふとあることを思った。

 

「箒ちゃんにも頼んだの?」

 

 日本育ちで料理が出来るのは離里亜だけではないのだ。箒もそれなりに弁当を作れるくらい余裕の腕はあったはず。

 セシリアは首を横にふった。

 

「箒さんは諸事情があるとことで断られましたわ」

 

「そうなんだ………」

 

 ここで自分の失態に気付いた。先程、離里亜は放課後の予定がないと言ってしまっているのだ。箒と同じ言い逃れは出来ない。

 

「駄目でしょうか?」

 

「い、いや………う、うん。任せて」

 

「よろしくお願いしますわ♪」

 

 上機嫌になったセシリアは自席へと戻っていった。チャイムの鳴る時間がすぐそこまで迫っていたからだ。

 ───次の授業が始まった。

 授業の内容はあまり頭に入らなかった。

 

「何にしようかな………」

 

 離里亜の頭の中を占めていたのは、何の料理を教えれば、良いのだろうか。それだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───放課後。

 

 離里亜は一人で廊下を歩いていた。もうすぐアリーナでの特訓を予定しているのだが、途中で忘れ物をしてきたことに気付き部屋に取りに戻っていた所なのだ。

 しっかりと右手にはタオルが握られている。これは昔から愛用しているお気に入りの代物なのだ。

 離里亜は寮の玄関前のちょっとしたスペースに来ていた。彼女の視線の先には二人の少女が設置されたソファに座り、こちらに背を向けて楽しそうに団欒している。

 離里亜は二人の方へと歩き出していく。二人が誰なのか、彼女は既に知っている。

 鈴とラウラだ。

 鈴は片手にそこの自動販売機で購入したと思われる缶を持っており、ラウラも同じものを持っていた。まだ離里亜の存在には気付いておらず、ソファの上でくつろいでいるようだ。

 

「ごめん、待った?」

 

 離里亜が後ろから声をかけると、二人は同時に後ろに振り向いた。特に驚いた仕草は見せずに彼女の手元を見る。

 

「いや、思ってたよりも早い帰還だったな」

 

「帰還って………それよりも、忘れ物はあった?」

 

「うん。待たせちゃって、ゴメンね」

 

 二人にはわざわざ忘れ物をしてしまった離里亜に付き添ってくれていたのだ。離里亜本人は先にアリーナに行ってくれても構わないと言ったのだが、二人は断固して付いていくと意見を変えずに、結局はここまで来てしまっていた。

 二人は頷くと、ソファから立ち上がる。鈴は手をラウラの方へと伸ばした。指先を軽く手招きする。

 

「あんたの缶も空でしょ。私がまとめて捨ててくるわ」

 

「ん、あぁ、すまない」

 

 ラウラは軽くお礼を述べると、空の缶を鈴に渡した。鈴は受けとると、ゴミ箱の方へと早足で向かっていった。

 ラウラは鈴の背中姿を見ながら、離里亜に話し掛ける。

 

「この後、私と模擬戦をしないか」

 

「ん?私と?」

 

「そうだ。一度もリリー個人して、手合わせをしていないなと先程思ってな」

 

 鈴と話をしている時にふとラウラの頭をよぎったのだろう。

 そういえば………一度も離里亜はラウラと個人戦をした覚えがなかった。やろうと思えば幾らでも出来たが、どうしてなのか今の今までしていなかった。

 

「良いかも。でも、周りの人に影響が及ばないようにしないと」

 

「そのことなら心配ない。今日は専用機持ち同士の実戦形式がメインだそうだ」

 

「そう言えば、そんなことを言ってたね」

 

 確か一夏が発案して、蒼星がそれに乗って手配した話は聞いていた。専用機持ち本人のレベルアップにもなり、また一般生徒にも自由に観戦することが許可されており、ISの操縦の参考にすることも出来て一石二鳥だと一夏が今日の昼休み頃に言っていたのは離里亜の記憶に新しい。

 それでもアリーナを借りれる時間は少なく、一人一回しか対決をする余裕しかないとのこと。

 その中で、ラウラは対戦相手を離里亜に決めていたのだ。離里亜は誰にしようかとは考えてすらいなかったので、ラウラの提案を反対する理由はなかった。

 

「ラウラちゃん、よろしくね」

 

「負けないぞ」

 

「こちらこそ」

 

 少し楽しみになってきていた離里亜。ラウラも心なしか浮きだっているように見える。

 そこに缶を捨ててきた鈴が戻ってきた。鈴は様子が変わったように見えた二人に首を傾げる。

 

「何話してたのよ」

 

「何も無いよ。ほら早く行かないと」

 

「むぅ………」

 

 何処か誤魔化されたような気もするが、鈴は気にしないことにした。

 アリーナへと向かう三人だか、寮からアリーナまでは距離がある。時間もかかる為に自然と三人の間で会話が始まってしまう。

 

「リリーの忘れ物ってそれ?」

 

 鈴の指差したのは、離里亜が握っているタオルだ。鈴は正直、わざわざ持っていく必要性は薄いのではないかと思った。

 

「宝物かな?昔にソウ君と買い物に行ったときに買ったんだよ」

 

「へぇ~、私も分かる気がするわ」

 

「ふむ。今度嫁にも買わせよう」

 

「っ!!私にも買わせてやるわ!!」

 

 然り気無いラウラの一言に鈴は対抗心を燃やしていた。

 知らない間で一夏の財布の中身がどんどんと減っていっているような気がする。だが、離里亜の知ったことではない。

 すると、ラウラがふと離里亜の方を見て、何かを思い出したかのように告げた。鈴は密かに嫌な予感を感じていた。

 

「兄様とリリーが“結婚”するとなると───」

 

「け、結婚!!」

 

「リリーは私にとって“叔母”になるのか?」

 

「お………叔母………!!」

 

 ラウラの唐突なとんでもない爆弾発言に二人は驚く。鈴は思わず自分の場合はどうなるのかと妄想してしまい、顔を赤らめる。離里亜は自分がまだ高校生なのに、叔母と呼ばれるかもしれないことにとてつもない衝撃を受けていた。

 

「どうなのだ?」

 

「ラ、ラウラちゃん。ソウ君とは結婚出来ないんだって………まだ///」

 

「私は出来るぞ。というより既にしている───」

 

「してないわ!!」

 

 堂々と言い放ったラウラに対して、鈴のツッコミが入る。

 実際に彼女が勝手に一夏を嫁にしてしまっているのだ。無論、相手の許可などは聞く暇すら与えない。というより、彼女の場合は嫁と言うのではなく婿だ。

 ここで、鈴がようやく落ち着いた様子で説明を始めた。

 

「日本の男性は18歳からではないと出来ないのよ」

 

「そうなのか?」

 

「う、うん。そ、そうだよ!!」

 

 ラウラは明らかに動揺してしまっている離里亜に鈴の言っていることが事実なのかを確かめた。

 ラウラは残念そうな表情になる。

 

「まだってことはやっぱり狙ってんのね」

 

「ふふん!!何か文句でもあるの////?」

 

「………何で、吹っ切れてんのよ」

 

 吹っ切れたかのように離里亜は頬を桜色に染めて、堂々と鼻を鳴らした。鈴は彼女の方向性が違っていることにため息をついた。

 反撃とばかりに離里亜が鈴にとっては卑しい笑みを浮かべた。

 

「スズーだって狙ってるんでしょ??」

 

「そ、そうよ////。………ライバル多いけど」

 

 顔を真っ赤にして肯定する鈴。ボソッと呟いた内容はなんとも虚しいものであった。

 最大のライバルは当の本人が気持ちに気付いてくれるかどうかである。

 

「嫁は渡さんぞ!!」

 

「の、臨むところよ!!」

 

 二人の間でバチバチと火花が散る。応援に入る離里亜としてはどちらも平等に応援はするつもりだ。

 いつの間にか話が盛り上がってきており、アリーナにもうすぐで着くのだが三人とも恋心に夢中で誰も気付かない。

 そこに───

 

「なぁ、蒼星~、頼むよ~」

 

「お前とやるの飽きたんだ。たまには他の人とやりたいんだって」

 

 三人の目の前の通路に蒼星と一夏がバッタリと出くわす。そして、蒼星は離里亜と、一夏は鈴と目線が合う。

 先程まで彼らの話の真っ最中だった彼女たちにとってそれは予測の出来ない不意打ちだった。

 ───故に逃走。

 

「………逃げたな」

 

「なんで逃げるんだよ」

 

 ただ会っただけなのに、怖がられるかのように去っていった二人を尻目に男達はただ呟く。

 と、蒼星はポツリとその場に残っていたラウラに一言。

 

「ラウラは行かないのか?」

 

 そんなことを聞かれたラウラの返事は───

 

「私は決して逃げないのだ」

 

「「………??」」

 

 何のことなのか、頭を捻らす蒼星と一夏であった。

 ───その後、二人はすぐに戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふん♪」

 

 上機嫌になりながら、離里亜は料理の準備をしていた。主に食材や器具のセッティングなのだが、これから作る料理には少ししか使わないのですぐに終わる。

 彼女のいる場所は自室。他に誰の姿も見当たらない。

 ルームメイトの本音は先程離里亜がセシリアにここで料理を教えることを伝えたら逃げるように部屋を出ていった。簪もしくは蒼星の所に遊びに行ってくると言っていた。冷や汗を掻いていたのは気のせいだろう。

 コンコンと扉がノックされる。

 離里亜が扉を開けるとそこには、セシリアが立っていた。両手にはエプロンと───

 

「え………なんで……?」

 

 不可解な代物を持っていたセシリアに離里亜はあり得ないと言葉が詰まる。

 彼女が手にしていた袋の中にいたのは(・・)。本物の鶏だ。しかも生きている。

 

「コケコッコッーー!!!」

 

 バサバサと鶏冠を捕まれている鶏は必死にセシリアから逃れようともがいている。

 

「セシリアちゃん、なんでそれ?」

 

「“卵”が必要ですので、わざわざお取り寄せましたのよ♪」

 

「………確かに卵を持ってきてとは言ったんだけど………」

 

 必要なのは卵であって、それの産みの親である鶏は不必要。ましてや鶏だけを持ってきても、都合よく卵は産んでくれない。

 まさか、ここまで彼女が料理の知識に乏しいとは完全に誤算だった。離里亜は頭を抱える。これは難航しそうだ。

 

「その鶏は要らないから、戻してきて」

 

「そうですの?折角の鶏ですのに………」

 

 離里亜に冷たく放たれた一言にセシリアは渋々といった感じで従っていった。とぼとぼと部屋に戻っていった。

 しばらくしたら、また戻ってきた。今度は余計な物は何も持っていないようだ。卵は予め離里亜が用意していた物を使うことにした。

 エプロン姿になった二人はキッチンに並ぶ。

 

「では、始めます!!」

 

「はい!!」

 

 そして離里亜の料理講座が始まる。

 二人が作ろうとしているのは弁当には定番と言える料理“玉子焼き”だ。また初心者でもコツさえ掴めれば、誰だって美味しく仕上げれる料理でもある。

 滞りなく離里亜の手元をよく見ながらも、セシリアはそれに従うようにして真似をしていく。

 離里亜が玉子焼きを作る際に利用する長方形のフライパンを取り出した時には、セシリアは少し驚いていた。イギリスではこんなフライパンを目にする機会はないだろう。

 

「その調子だよ!!セシリアちゃん!!」

 

「は、はい!!」

 

 薄い卵の生地を何枚も層のように丸めることで玉子焼きは出来上がる。セシリアは今、その丸める作業に神経を集中さしていた。

 

「で、出来ましたわ!!」

 

 そして、数十分かけて出来上がったのはそれなりに食欲をそそる玉子焼きだった。

 

「よし、今度はセシリアちゃん一人で作ってみようか」

 

 最初は離里亜の手助けもあって、玉子焼きとして出来上がったが本来はセシリア自身一人で調理しないといけない。

 故に離里亜は今度は自分の助け無しで作ってみようかと提案したのだった。

 

「はい、分かりましたわ」

 

「あ、そうだ。セシリアちゃんに料理の秘訣を教えるね」

 

「秘訣………とはなんですの?」

 

「それはね……料理とは味が勝負なんだよ」

 

「そうなんですの?」

 

「うん。それに必要なのは、セシリアちゃんが食べてほしいと願う気持ち、後は余計な物は入れずにシンプルに仕上げることだよ」

 

「はい。分かりましたわ!」

 

「じゃあ、私邪魔しないようにジュースでも飲んで時間を潰してくるね」

 

 離里亜は部屋を後にした。

 離里亜が彼女にアドバイスしたことは、今の彼女にとっての必要なことだと離里亜は考えていた。

 誰だって最初は上手くいかないものである。料理だけでなく、他のことでもそうだ。だから大切になってくるのは相手を思って精一杯の想いを込めること。そうすれば、相手に自分の頑張りは伝わるものなのだ。

 それに料理はある意味、人間と似ている。人間は外見だけで、判断せずに内面も人としての価値が現れてくる。料理だって、そうだ。例えどんなに見映えが良かっても味が最悪だと、一瞬でその料理の価値は下がってしまう。

 だからと言っても、余計な手間暇はそんなにかける必要性もない。やり過ぎても駄目なのだ。大事なのはバランス。シンプルイズベストと言うやつだ。

 離里亜は自動販売機の前まで来たが、飲み物を買う気力はなかった。結局、何も買わずに近くのソファへと腰を下ろす。

 無心になる。こうしないと心配で心臓が押し潰されそうなのだ。だからと言って、側にいると絶対に手助けしてしまい、セシリアの成長のためにもならない。ここは我慢するしかないのだ。

 数分間、何も考えずに上を見上げていた。天井は何もなく、無心になれる。

 すると、離里亜の首筋にヒンヤリとした感触が襲う。思わず短い悲鳴を上げた。

 

「キャ!!」

 

「良いリアクションだな」

 

 離里亜が慌てて振り返ると、そこに立っていたのは蒼星。彼はイタズラ成功とばかりに微笑ましく笑っていた。

 両手にはジュースがあった。あの片方を離里亜の首筋に当てたのだ。

 

「ほら、いるか?」

 

「う、うん」

 

 離里亜の隣に腰を下ろした蒼星は、ジュースの片方を離里亜の方へと差し出した。

 離里亜はジュースを手に取ると、両手で握り締めるように持つ。

 

「心配事でもあるのか?」

 

 口元へと持っていこうとしない離里亜を見て、彼はそんなことを尋ねていた。

 元気がない、調子でも悪い、そう相手の体調を伺うのが普通だが、彼は真っ先に離里亜に心の中の問題について尋ねている。分かるのだ、彼には。

 

「セシリアちゃんが一人で出来るかどうか………」

 

「あー………言ってたな、そんなこと」

 

 事前に離里亜は蒼星にセシリアが出来そうな料理は何か相談に乗ってもらっていた。玉子焼きを提案したのも彼だ。

 

「そんなに心配することか?」

 

「余計なことをしそうで、心配になっちゃうの」

 

「確かにしそうだな」

 

 彼は、あははと笑った。そして、自分のジュースを口に含む。

 

「まぁ、精々頑張りたまえよ」

 

「むぅ………他人事のような言い方をして」

 

「俺はただリリーに期待してるだけだって。お前の作る料理は絶品だってことは俺の舌が知っているしな」

 

「本当?」

 

「本当だって。嘘ついても意味ないだろ?」

 

 確かに今の彼は嘘をついているようには見えなかった。

 

「それじゃあ、先行くからな」

 

「うん、お休みなさい」

 

「おう、お休み~」

 

 彼は立ち上がると、廊下の方へと歩いていった。

 彼が人を褒めるとは珍しい。感想を要求すると言ってはくれるが、向こうの方からは滅多にないからだ。

 離里亜はジュースの蓋を開けた。一度も飲んでみたことがなかったが、試しに飲んでみた。

 

「甘い………」

 

 ………彼のくれたジュースは甘かった。

 

 

続く?──────────────────────────

 




ソウ「さて、やるか?でもめんどくさい」

ユカ「パパ!!やるったらやるんだよ!!」

ソウ「でも、ママはいないぞ」

ユカ「ゲスト呼んであるから大丈夫です!!」

ソウ「はぁ………ちなみに誰?」

ユカ「この人です!!」

クライン「おう!!風林火山のリーダーのクラインだ!!女の子のギルドメンバーは大歓迎だからな、どんどん来てくれよな!!」

ユカ「クラインさん、ここはALOではないよ」

クライン「甘いな、ユカちゃん。こういう緻密な努力こそが我がギルドの発展に繋がるんだ」

ユカ「へぇ~………そうなの?」

ソウ「………よし、帰れ!!」

クライン「おい!!いきなり酷くねぇか!!」

ソウ「なら、終わる!!」

クライン「それもダメだ!!俺がここに来た意味がねぇ!!」

ソウ「そんなもんはいらん!!」

ユカ「早くお題発表してもいい~?」

クライン「おう!!いいぞ!!ソウは俺が押さえとくから!!」

ソウ「クラインごときに、捕まる俺ではない!!」

クライン「うるせぇ!!俺の出番がないんだ!!」

ソウ「当たり前だ!!ISとはまったく関係ないお前に出番はない!!」

クライン「かぁー、だからだ!!ここ以外じゃあ、俺は出るどころか存在すらしてねぇ」

ソウ「知らん」

クライン「頼むよ~、ソウ~」

ユカ「………発表しても、良・い・か・な?」

ソウ・クライン「「………はい」」

ユカ「今日の題はこちらでさぁ!!」

 ───離里亜の料理疑惑!?

ユカ「私のママは実際はどれくらい料理が出来るの?ということなのである」

クライン「んで、ソウ。どうなんだ?」

ソウ「ニヤニヤすんな!!………まぁ、リリーは料理スキルはコンプリートしてたからなぁ………」

クライン「それだけかぁ?」

ソウ「他に何か言えってのか!?」

クライン「あるんだろぉ?」

ソウ「………作るやつは美味しいよ。全部」

クライン「ほほぉ~、いただきやした!!」

ユカ「うん!!ママに報告しなくちゃ!!」

ソウ「よし、帰る!!」

クライン「他にもあるんだろぉ?ニヤニヤ」

ソウ「うるさいわ!!あ、そうだ。もう、クラインは呼ばないことにしよう」

クライン「そ、それだけはご勘弁をぉぉ!!」

ユカ「あ、そろそろ時間なので、皆さん、さような──────」

クライン「ソウ!!頼むからそれだけは!!」

ソウ「ふっ、男に二言はない」

クライン「そんなぁぁぁぁぁあああ!!」

ユカ「………クラインさんなんて、もう呼ばないことに私も決めた!!」

クライン「え!?ユカちゃん!?」

ソウ「じゃあ、また次回で!!」

 ───以上。
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