そろそろ臨海学校編も終盤に入ってきましたね~。次は夏休み?まぁ、のんびりと行きたいですね( ̄▽ ̄;)
───では、スタート!!
可憐な雰囲気を放ちながら、白いワンピース姿の少女はゆったりとその場に足をつけた。
クルリ、と一回転すると蒼星の顔をジト目で両頬をぷくっーと膨らますと、
「何時になったら、呼んでくれるのっ!」
いかにも不満そうな態度を彼にぶつけていた。彼は目を泳がせて、頭をポリポリ掻いている。
周りの皆は、謎の少女の突然の登場に唖然と口をポカーンと開いたままである。唯一、璃里亜だけはニコニコと蒼星と謎の少女との様子を見守っていた。
「まあまあ、取り敢えず落ち着け。もうすぐで呼ぶつもりだったんだから」
彼は少女の頭を撫でる。その一連の動作に違和感はなく、それが何時ものやり取りかのようになっていた。
「ほら、自己紹介」
「うん」
少女は頷く。そして、パチパチと何度もまばたきを繰り返している一夏の方へと体を向けた。
「皆さん、初めまして!!私は、麒麟のISである自我意識の“ユカ”と言います。よろしくね!!」
「え?」
「今………なんて言ったの?」
「ん?ユカだよ?」
「え!あ………いやぁ………そうじゃくて………」
鈴が小首をきょとんと傾げる無垢なユカに両手はあたふたとさせて、狼狽えている。彼女のこんな一面を見るのは滅多にない機会なので、蒼星は少し楽しんでいた。
「………すみませんが、もう一度お願い出来ますでしょうか?」
セシリアが恐る恐る口にした。
「えぇ~と、改めましてユカです。皆さんとは初対面だよ。あ、さっき言うの忘れたけど、待機状態ではこの姿になれるんだよ!!」
再び自己紹介してもらいながらも、セシリアは完全に納得出来な様子だった。無理もない。普通なら有り得ない現象だからだ。
───ISの擬人化。
そもそも研究者の間では、コアに意識があるのかすら不明という現状の中なのだから、彼女がこうして現れていることは凄いことなのである。
一夏がハッと顔を上げる。
「ユカって………蒼星がセシリアと対戦する前に言っていたような………」
「え?一夏さん、それは本当ですの?」
セシリアは反射的に聞き返す。
一夏の言っていたことが事実なら、彼女は蒼星のISに───出会った当初からいたことになる。
箒が代わりに答えた。
「私も聞いたぞ」
蒼星がビクリと肩を震わす。
やはりユカとの初対面の際に事情を知らなかったとは言え、大声をあらげてしまったのは失態だったと蒼星は後悔していた。
「………ユカ、と言ったな。兄様のISにはいつから居たのだ?」
ラウラが訊ねる。
彼女の表情は不満ぎみだ。蒼星の
「
「あ~………言っちゃったか………」
「え?………パ………パパァ!?」
ユカの然り気無い一言に蒼星は額を押さえる。
彼が額を押さえた原因に一夏が気付いてしまったようで、大声をあげた。周りの皆も一夏の驚いた理由に面を喰らって目を見開いた。
「どどど、どういうことよ!?」
「蒼星さん、説明くださいまし!!」
「今のは、本当なの!?」
「聞き間違いではないだろうな!?」
「兄様!!私に黙って子供を………っ!!」
「………本当っ!?」
蒼星の顔の間近まで一気に詰め寄る。
最後の簪に至っては普段からは想像できないほどの積極ぶりだ。
「色んな成り行きでな………ユカとは俺がSAOにいた頃に一度出会ってるんだ。まぁ、その時はこいつがISだとは知るよしがないから、安全のために一緒に過ごすことになって………そのまま俺が保護者みたいになったってだけだ」
「そ、そうなのか?」
「そうだ。というか、そうしろ」
一夏の曖昧な返事に蒼星はそう告げた。
今まで、一度も質問をしてこなかった簪が口を開く。
「じゃ、じゃあ………ママって………璃里亜さん………?」
簪は嘘であって欲しいと言わんばかりに、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
蒼星が父親となれば、無論母親の存在もあるわけで………実際にその役割にぴったりな人物が彼の隣にいる。
ユカはその場に勢いよく立ち上がる。
「ママはママだよ!!」
「うん。そうなんだよね~」
「「「「「───っ!!」」」」」
何度目か分からない驚愕の事実の判明に唖然と口をパクパクとさせている。
璃里亜は健気に笑顔を浮かべる。
「リリーに子供………っ!」
「正確にはちょっと違うんだけどね」
「わ、私は伯母に………っ!」
「それは絶対におかしいよね!!」
ラウラの妄想愚痴に璃里亜が間髪なき突っ込みを入れる。
と、ユカが顔を上げる。
「パパ、誰か来たよ」
「ん?誰だ?」
大体の面子は揃っている。では、誰がこの部屋に向かってきているのだろうか。
「なみむー、お?皆、こんな所にいたんだ~」
部屋の扉が開くと同時に聞き覚えのあるのんびりとした声が聞こえてきた。
不動のだぼだぼとした服装に身を包んだ本音は一夏達を見つけるとこう言った。
「夕食の準備が出来たのに、来ないから探してたんだよ~」
「あ、もうこんな時間か」
本音の言った通り、時刻は夕刻。夕食の予定の時間となっていた。
笑顔で「随分と探したよー」と本音は後付けた。愚痴のように話す彼女曰く、他のクラスメイトも何人か協力してもらい、一緒に探してもらっていたらしい。
「それじゃあ、行こっか」
璃里亜が先導するかのように、立ち上がると部屋の扉の方へと歩いていく。
それに続き、一夏達も同じように移動を開始しようとするが───
「簪ちゃん」
「蒼星君、どうしたの?」
「皆にさ、寄り道するから俺は後から行くって言っといてくるないか?大丈夫、すぐに用事はすぐに終わるから」
「うん。分かった」
最後に出ていこうとした所、簪は彼に呼び止められる。
簪は頷くと、先に向かった璃里亜達の後を追って早足で移動していった。
部屋に取り残されたのは、蒼星とユカ。
「うし、行くぞ、ユカ」
「あいさー!!」
目指すはあそこだ。
◇
専用機持ち一同が腹を満たす為に食堂へと向かうなか、蒼星だけは別のルートとなる通路を歩いていた。
彼が足を止めたのは、とある部屋の前。
がらり、と音をたてながら彼は中へと踏みいった。
「あ、波大君?どうされたんですか?」
真っ先に彼に気付き、声をかけたのは山田先生だった。彼女は回転椅子に座り、パソコンと向き合っていたようだ。
山田先生の隣で仁王立ちしていた織斑先生も振り返る。
「波大、貴様、ノックもしないとは良い度胸だな」
「あぁ………すみません。ちょっと相談事がありまして」
「まあ、いい。言ってみろ」
いきなり部屋に押し掛けたことは不問のようだ。彼は心の中で一撫で下ろすと、本題に入る。
山田先生が彼の方へと座っている椅子を回転さした。
「ユカについてです」
「というと?───あ、その子は?」
山田先生が首を傾げると同時に蒼星の背後に隠れていたユカを発見した。
ユカは彼の隣に並び立つと、緊張を含んだ声で喋り出す。
「えぇ~と、ユカでふっ!」
………噛んだな。
蒼星はそう思った。
緊張からユカは勢い余って盛大な失態を犯していた。羞恥心のあまり、彼女はすぐに蒼星の背中へと隠れる。
ただ山田先生が反応したのはそこではない。彼女は両手で口元を隠すと、何故か蒼星に同情の視線を送ろうとする。
「波大君っ!?まさかっ!!子供が出来たんじゃあ………っ!!」
「違いますから」
───いや、ある意味合ってるのか?
その疑問が頭に浮かんだが、妄想癖の激しい彼女の妄想をひとまずバッサリと切り捨てた。
山田先生は悲しげに目を細めた。
「そうなんですか………」
「なんでそんなに落ち込んでるんですか………山田先生」
「いえ!気にしないでください!!」
首を横に振って何もないとアピールする山田先生。
蒼星は腑に落ちないのだが、話を元に戻すことにした。
「こいつは俺の麒麟が人格化したようなものです」
「え?人格化?………って、えぇっ~!!」
「山田先生、静かに」
「あ、はい………」
驚愕のあまりに叫んだ山田先生とは対照的に、織斑先生は驚く素振りを見せるどころかユカを目を凝らして睨み付けるように見ていた。
「嘘を言ってるのではないな?」
「はい」
「なら、信じよう」
あっさりとユカを認めた織斑先生。
蒼星は思わず訊ねる。
「疑ったりはしないんですか?」
「ん?貴様が何かを隠していたことぐらい、初めから分かっていた。面倒ごとを引き起こすのなら対策を考えたが、その心配は無用と判断したまでだ」
「そ、そうなんですか………」
織斑先生には隠し事をしていたことを勘づかれていたらしい。流石の世界最強と評される彼女だからこその鋭い観察眼なのだろう。
山田先生は知らないらしく、蒼星と織斑先生を交互に眺めては小首を傾げる。
「それで、お願いがあるんですが───」
蒼星は織斑先生と山田先生に頼み事をこと細か目に話した。相談する理由もしっかり付けてだ。
この頼み事はユカが望んだことでもあり、また彼女の成長に繋がると踏んだ彼が決めた決断だった。
蒼星が一通り話し終えると、織斑先生は彼の言いたいことが理解できたらしく何度も頷いた。
「それぐらいなら構わん。好きにしろ」
「私からも許可は出しておきますね」
「ありがとうございます」
蒼星が軽く頭を下げる。
それを見た隣のユカも慌てて愛らしく頭を下げた。山田先生が微笑ましくなる。
と、急に山田先生は真剣な表情へと移り変わる。蒼星も黙って、話を聞く体勢に入った。
「先程、遠堂さんから大体の事情はお伺いしました」
織斑先生と山田先生には璃里亜の方から説明をされている。その時の山田先生は驚いていたようで、織斑先生もその報告は初見だったのか、静かに耳を傾けていたと璃里亜本人から蒼星は聞いていた。
「あいつの言っていたことは本当です」
「はい。彼女を疑っている訳ではないのですが………どうも、話が信じられなくて………」
「多分、俺も似たような反応をすると思いますので気にしないでください」
山田先生は真っ直ぐ彼を見つめた。
「でも、私はそれを聞いて納得しました。二人とも他の生徒とは………なんと言いますでしょうか……オーラが違ってたように感じてたんです。すみません、例えが抽象的過ぎました。
………今考えてみれば、当たり前なんですよね。二人とも無事にあの死のゲームと呼ばれたSAOから帰還を果たしてるんですから」
山田先生はそっと微笑む。
その姿は彼の秘めた昔の記憶を傷つけないかのように言葉を選んでいるようだ。
「無論、このことは私から無闇に他の者に口外するつもりはありません。織斑先生も同じです」
「はい、元々この話は俺もしくは璃里亜から直接話しても大丈夫と判断した人にしか言わないつもりですから」
山田先生は蒼星の返答に満足したのか、笑顔を浮かべる。
「波大、一つ尋ねる」
そこにずっと見守っていた織斑先生が話に入ってくる。
蒼星はすぐにこう答えた。
「何でしょうか?」
「貴様は何を見た」
「そう来ますか………今は、織斑先生の質問にははっきりとは答えられません。俺自身もよく見てはいるものの、理解は出来ていないようなものですから」
「そうか………ならいい。今はな」
蒼星は織斑先生が簡単に引き下がったことに少し疑問符を浮かべるが、彼が真っ先に感じたのは別のことだった。
“今はな”。
つまりそれは何時かは答えないといけない。そう解釈しないといけないのだろうか。
「あぁ、そうだ。この件についてだが、あいつの耳には届いておるのか?」
「届いておる所か、中身まで覗きこんでますよ」
蒼星は冗談っぽく半笑いで言う。
「なら余計なお世話は不要か」
すると、織斑先生の表情が少し明るくなったような気がした。負担が削減されたことで肩の荷が降りたことを実感して、それがつい表情に出てしまったのだろう。
福音の戦闘の指揮を筆頭に今もこうして事後処理に追われている彼女の身としては少しでも仕事を早く終わらせたいようだ。
「あ、そういえば福音の操縦者はどうなりました?」
「え~………彼女には特に身体に異常はなかったようなので、安静にしてもらっています。機体の方はこちらで預かっていますので心配することはありませんよ」
「なに、あいつのことだ。貴様ごときにどうこう出来る奴ではない」
「織斑先生は知り合いなんですか?」
「ああ、少しな」
意外な収穫に蒼星は満足そうに頷く。と言っても、あまり需要がない情報なので自己満足にしか過ぎない。
すると、蒼星があることに気付く。
「ん?」
ユカが彼の服の袖を軽く引っ張っていた。彼女は力なさげな瞳をしていた。
彼女の片手は腹部を擦っていた。
「ふふ、波大君もそろそろ夕食の方へと行かれたらどうですか?」
「それもそうですね」
彼はユカの頭をそっと撫でる。ユカは気持ち良さそうに目を細めていた。
「あ、でも最後に一つ」
彼は続けてこう言った。
「今日の夜、ユカを連れて外に散歩に出ても良いでしょうか?」
その時、ユカは真っ直ぐ二人を無邪気な瞳で見つめていた。
織斑先生は呆れた顔をして答えた。
「好きにしろ」
織斑先生も子供のおねだりには弱い。
ふと、思った蒼星だった。
───では、失礼しました。
そして、蒼星とユカが部屋を後にしていく。彼らの姿が見えなくなるまで見送った山田先生はふとぽつりと呟いた。
「危うく頭が混乱しそうになりましたよ………。波大君のあの落ち着きぶりは冷静さを取り戻す特効薬みたいだと思いません?織斑先生」
「あぁ、そうだな」
二人は苦笑いを浮かべた。
◇
相変わらずの豪華な夕食に舌鼓を打ちつつ、生徒達は各々に豪華な料理を堪能していた。
シャルロットを筆頭に専用機持ち達は福音戦の事情を一切知らない生徒達に囲まれて、詰め寄っていた。が、知る代わりに監視がつくと言われるとすぐに引き下がった。誤魔化すように食事に没頭する。
その中、一つの席が未だに空いていた。
「………遅いですね」
「うん………何してるんだろう………」
空席の隣には、璃里亜。向かい側には簪が座っており、簪の隣には本音がいる。初日と同じ席配置となっている。
璃里亜と簪の二人は目の前の食事には手をつけておらず、じっと待っていた。彼が来るのを待っているのだ。
そんなことは遠慮なしにと本音は口いっぱいに頬を膨らましている。そんな本音も二人の寂しそうな様子に気づき、
「ふぅひゃひぃほぉも、へゃべひゃいの?」
「本ちゃん、食べながら喋らない」
「ほぉーぃ」
「食べないのは蒼星君に悪いから………」
「今の!?分かったの!?」
璃里亜は驚愕に包まれた目で簪を見た。
簪は解答を口にする。
「本音は“二人とも、食べないの?”って言ってる」
すると、本音は何度も頷いた。正解と言いたいのだろう。
よく通じたなぁ………と感心せざるを得なかった。
───と、次の瞬間、障子が開いた。食事をしていた者達の箸が止まり、視線がそちらへと集まる。
蒼星が入ってきた。
一目見た者は特に気にする様子はなく、また箸を動かして食事を再開した。
だが、大半の者はそのまま動きが固まり、彼の肩に乗っている
彼の肩には小さな妖精の姿をした女の子が座っていたのだ。
一夏やセシリアも気付いていて、声には発しないもののびっくりしている。
「なぁ………俺には見えるんだが………」
「わたくしも………ですわ………」
幻覚ではないようだ。
「ねぇねぇ、あれって………」
「か………可愛い………」
「お?なになに?」
気付いてる者といない者に別れていた。
蒼星は周りの不穏な空気に惑わされた様子もなく、自分の席となる場所を見つけると普通に歩き始めた。
彼は席に座る。と、璃里亜と簪が食事に手をつけていないことに目が止まった。
「待っててたんだな。ごめん、思ったよりも長くなって………食べないのか?」
「うん。食べるんだけど………」
「………」
言葉を濁らせた璃里亜。簪に至っては無言で彼を凝視していた。正確には彼の肩付近。
「いただきますっと」
周りの視線を気にすることなく、蒼星は普通に箸を手に取るとご飯に手をつけていく。
生徒達は隣の子とひそしそと会話を始めていた。視線の先には妖精の女の子。
その妖精は彼が食事を始めたのを確認すると、綺麗な羽を広げて彼の肩からふわりと離れると彼のいるテーブルの上へと降りた。
簪は妖精を何度も瞬きをして、見つめた後はゆっくりと刺身をつまみ出した。
「ユカちゃん………出てきても大丈夫なの?」
璃里亜は指先を伸ばすと、小さな妖精───ユカの頭を撫でた。
「うにゅ~」
気持ち良さそうに声を上げるユカは璃里亜に撫でてもらいながら答えた。
「うん。さっき、パパと許可を貰いに行ったんだよ~」
「あ………蒼星君の寄り道って………」
ユカの台詞を聞いた簪が蒼星の方へと向いた。
蒼星は刺身を咀嚼してから、言った。
「まあね。折角だし、この際にユカにはできる限り出てきてもらおうと思ったからな。さっき、織斑先生直々に許可は下りたから問題はない」
だがこれはあくまでも、学園内だけの話に収まる。外でユカの存在を無闇に公開する訳にはいかないのだ。理由として、主に男性がISを操縦することを気に食わないとばかりに目の敵にしている連中が何をしでかすのか分からないからだ。織斑先生や山田先生からも念を押すように学園外でのユカの人間化について言われていた。
「でも、ユカちゃん………そんな姿にもなれたんだね………」
「私に不可能はないんだよ!!」
簪の言うとおり、ユカは少女ではなく妖精のような姿をとっていた。
本人によると、どちらでも構わないのだそうだ。故に己の気分次第で決めている場合が殆どであるとのこと。
そして、今は妖精の姿。
姿は小さいと言えど、その存在感は案外大きいものである。
『………』
生の妖精を目撃してしまった生徒一同。
目が止まり、口も止まる。
誰もが胸裏で同じことを秘めていた。
───か………可愛い………。
「うにゅ?」
ユカはちょこんと首を傾げた。
続く───────────────────────────
さっき、一話を見返してみると書き方がまったく異なっていましたね。これからはいまどおりになると思うんで、時間があれば一話辺りも書き直そうかなぁと考えてみたり………。
では、いつ?
・・・(;´Д`)