金色の英雄 IS 【更新凍結中】   作:ソウソウ

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結構、期間が空いてしまいましたね………。これからは、さらに話の構成に時間がかかるかと思うで、これまで以上になる可能性が………!!(゜ロ゜ノ)ノ

感想くれたら、早く更新するかも(;・∀・)

───では、スタート!!


第39話 月下の波紋

 波の音が静かに鼓膜を震わせる。

 人気はなく、静寂が辺りを包み込む。

 蒼星はそんな優雅なムードの中にいた。隣には彼が連れてきたユカの姿も見受けられる。

 

「初めての海の感想は?」

 

「先っぽが見えないほど、広いんだね~」

 

 岩場に腰を下ろして、ただ無心に目の前を眺める。

 月光に照らされ、反射した海面はどこまでも途切れることなく壮大な空に向かって広がっていく。

 ユカの興味津々な反応に彼は連れてきて良かったと思っていた。

 

「これもほんの一部って言ったら信じるか?」

 

「本当?」

 

「本当なんだよ」

 

「おー!!拍手喝采だね!!」

 

 両手を大きく広げている少女。

 その姿はまるで海をまるごと掴もうとしているような………現実には不可能なのだが、そんなことは無関係とばかりに挑戦しているような………そんな気がした。

 

「この海の向こうには、色んな人がいるんだね」

 

「そうだな。何十億の人という生き物が俺らの知らない場所で、知らない人と住んでいる。つまりはその分、数多くの出会いが待っているってことなんだよ。ユカはもう友達とかは出来たのか?」

 

 蒼星が夕食を食べている間、ユカは他の生徒達と色んなことを話していたのだ。特に蒼星も何も口出しはしておらず、ユカのやりたいようにさせていたので、ユカは意気揚々と生徒の会話の中に飛び込んでいった。

 その後はユカのおおらかな性格も考慮してか、彼女が皆に囲まれるほどの人気ぶりで一気に注目の的である。

 

「出来たよ!!」

 

 ユカは自慢出来るのが嬉しいのか、声が弾んでいる。

 蒼星は優しく耳を向けた。

 

「えっーと、ほんねに、かんざしに、セシリアに、ナギに、カナでしょ!!あ、後は~ラウラに、シャルルに、りんもいるでしょ!!他にも、しずねや、かぐらに、ゆこに、りこに、さゆかとか、い~っぱい皆と友達になったんだよ!!」

 

「そ………その調子だとあっという間だな………」

 

「うん。皆、優しいんだよ」

 

 余計な心配は不用だったようだと蒼星は思った。この彼女の調子だとIS学園全員と友達になってしまいそうな勢いだ。

 すると、一転してユカは真剣みを帯びた声で彼を呼ぶ。

 

「パパ」

 

「ん?なんだ?」

 

「私、パパと一緒にいるからね」

 

「急にどうしたんだ?」

 

 蒼星はユカが決意を込めた宣告に疑問を抱いた。

 

「だって、世界ってもっと広いんでしょ?もしも、パパとママが迷子になった時に探すのは大変だもん」

 

「ユカは迷子にならないのか?」

 

「あっ!!その時はちょっと寂しいかなぁ………でもパパはすぐ見つけてくれるてしょ?」

 

 ユカはから笑いをする。

 

「分かった。俺はユカの側から消えたりなんてしない。絶対にだ」

 

「約束だよ!!私とパパとだけの!!」

 

 すると、ユカは小指をたてる。

 蒼星も彼女の小指に自分の小指を絡ませる。

 

「指切りげんまん。嘘ついたら針千本飲~ますっ!!」

 

 ユカは「指きった!!」と笑顔で括った。

 

「誰にこれを教えてもらったんだ?」

 

「えっーと、ほんねだよ?」

 

 蒼星は納得する。確かに、こんなことを教えるとは本音らしい。

 

「なら、俺からもお得なことを教えようか?」

 

「うん。教えて!!」

 

 蒼星は人差し指をたてる。

 もう片方もたてると、両指の先端同士をユカの目前で合わせる。

 

「人間ってのは、お互いに相手を思いやる気持ちが繋がって、初めて友達という関係になれるんだ。覚えておけよ」

 

「うーん?よく分かんないよ~」

 

「ユカはひたすら友達を信じてれば良い」

 

「信じる?」

 

「そう。自分を心から思ってくれる人を嫌いになる人なんて滅多にいないからな」

 

「分かった。そうしてみるよ」

 

「もし、何かあっても俺に頼ってくれれば、万事解決だってね。どーんと当たって砕けろってやつだ、ユカ」

 

「アイアイサー!!」

 

 ピシッと、ユカは敬礼を決めた。微笑ましい姿だ。

 と、蒼星は前触れもなく辺りを見回し始めた。

 何か物音が聞こえてきたのだ。

 

「パパ、向こうに皆が集まってるようだよ?」

 

「ん?誰が集まってるんだ?」

 

「えっとね、りんとセシリアとラウラとシャルルと───」

 

「もう言わなくて良いぞ、ユカ」

 

 蒼星は途中で制止をかける。

 またあのメンバーが騒動を惹き起こしているのだ。あんな怪我すれすれの騒動に巻き込まれるとかひとたまりもない。

 

「もう、そろそろ帰るか」

 

「良いけど、パパ、あっちはどうするの?」

 

 ユカの素朴な疑問。

 蒼星ははっきりとこう言った。

 

「知らん」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 時は少し遡る。

 

「やぁ、ちーちゃん」

 

 断崖絶壁に座っているのは、ISを開発した張本人“篠ノ之束”。

 そして、彼女の呟きに返事をしたのは世界最強と名が高い“織斑千冬”。

 束は千冬に背を向けたまま、尋ねた。

 

 ───『白騎士』は何処に行ったのか?

 

 千冬はこう答えた。

 

 ───『白式(びゃくしき)』を『白式(しろしき)』と読めば見えてくる。

 

 束は笑った。白騎士を伊達に操縦してきた彼女だからこその台詞に。

 そんな彼女に束はもしもの話をする。

 

 ───もしもだ。

 コア・ネットワークと呼ばれるIS独自の巨大な一つの情報網の中で情報のやり取りが行われていたのなら、同一のコアで同一の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)を発動してもなんら不思議ではないのだろうか。

 さらに初期化しても結果は変わらないのではないのだろうかと。

 千冬は不思議なものだと答える。

 代わりにお返しと千冬も一つのもしもの話を口にする。

 束は黙っている。

 ───もし、とある天才が、一人の妹を華々しいデビューさせたいと考えたとする。

 天才が自信を持って用意したのは最新鋭の専用機、そしてISの暴走事件。

 すると、妹は専用機と共に事件に関与して解決する。結果として、妹は華々しいデビューを成功させた。

 

「すごい科学者がいたもんだね~」

 

「そうだな。12ヶ国の軍事コンピューターを同時にハッキングした自作自演の、天才がな」

 

 束はにこりと微笑んだ。

 

「それにしても困ったもんだよ~。まさか、あの機体が動いてるとはね~」

 

「あの機体?どれを言っている、束」

 

「え~と、誰だっかなぁ~?あいつ、あいつだったけど~………」

 

「名前で言え」

 

「確かぁ、“波大蒼星”だったかな?ソー君だね」

 

「っ!?………お前が波大に興味を示すとは珍しいな」

 

「そりゃあ、ちーちゃん、ソー君もいっくんと同じISを動かせる男性なんだからIS最高責任者の私が興味を持つのは別に普通だと思うんだけど?」

 

 本当にそれだけだろうか。

 千冬は脳裏に思い浮かべながらも、口には出さなかった。

 ただ、束は蒼星がどうしてISを動かせるのか分かっていないようだ。

 

「波大をどうするつもりだ?事によれば、私は容赦しないぞ」

 

 束が箒や一夏を親しみを込めてあだ名で呼んでいる。赤の他人だと最早ごみ以下の扱いをする彼女が、赤の他人である蒼星をあだ名“ソー君”と呼ぶのには千冬に衝撃を与えるのには十分過ぎた。

 故に千冬は束が何かを企んでいるのではないかと考えた。

 彼女の考えることは一線を逸している。常識なんて通用しないのだ。

 

「おぉ~怖いね。どちらかって言うと、私はISの方に惹かれたよ。機体名は“麒麟”って言ったね。あ、今は“麒麟・月歩界”だったかな?」

 

「どうしてそれを知っているんだ、束」

 

 二次移行を果たした彼のISは新たに“月歩界”を付けた機体へと変貌していた。束はその事実を知っていた。

 

「ちーちゃんなら分かるよね?」

 

「はぁ………そうだったな」

 

 千冬は諦めを含んだため息をつく。

 

「ちーちゃん、覚えてる?あの機体のこと」

 

「お前でも手に終えなかった機体のことか?」

 

「手に終えなかったんじゃないよ。正確には言うことを聞いてくれなかったんだけどね」

 

「確か“絶影”と言ったな」

 

「うん。我儘な子で、全然動いてくれなかったんだよね。理論上なら動いてくれるはずなんだけど、私も何が原因が分からないから、その機体のコアはそのまま適当にあげちゃった。最終的にはソー君の元に辿り着いたみたいだね」

 

「今ならその原因とやらは分かるのか?」

 

 束は海を眺めながら、首を横にふる。

 

「ううん、相変わらず。さっき麒麟の自我意識であるユカって子にアプローチしてみたんだけど、“あなたみたいな人とは話したくないんだよ!!”だってね。嫌われちゃった、アハ」

 

「反抗期のようだな」

 

「何でだろうね?私なりに考えたつもりなんだけどね。それにユカって子もなかなか興味深いんだよ。あの子、自我意識って言っても完全体ではないみたいなんだ」

 

 千冬にとっては初耳だ。本人の蒼星でさえ、そのことは口にしていない。

 

「完全体とはなんだ?」

 

「ISに心があったとすると、その心の一部があの子みたいなものなんだよ」

 

「つまりはまだ成長過程の中にいると?」

 

「うーん………半分正解かな。過程の中にいるのは間違いないけど、成長はしてないと思うよ。あくまでも私の推測に過ぎないんだけどね。そのことも含めて、色々と聞きたかったんだけど………もう時間だね」

 

 束は話を切り上げる。

 崖っぷちに立つと、彼女は潮風に髪を靡かせながらこう言った。

 

「ねぇ、ちーちゃん」

 

「なんだ?」

 

 束はうーん、と背伸びをする。

 

「今の世界は………楽しい?」

 

「そこそこな」

 

 海風が強くうねりを上げた。

 

「………そうなんだ」

 

 束の呟きは千冬の目前で溶けて消えた。

 何故なら、離れた所から喧騒音が聞こえてきたからだ。束の呟きは消される。

 千冬の視界には見慣れたISが飛翔してきた。彼女は一目見た瞬間、鬼と化けた。

 

「お前達ぃぃぃぃいいいい!!」

 

 余談だが───激昂した声を聞いた者は、絶望を感じたらしい。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 蒼星は旅館に戻る。ユカは妖精姿になり、彼の頭の上に座る。

 蒼星がロビーに行くと、そこには簪と璃里亜の二人が待っていた。

 

「ソウ君、どこに行ってたの?」

 

「ユカと海を見に行ってた」

 

「なら、鈴さん達を見かけませんでした?」

 

 簪の質問に即答で答える。

 

「見たぞ」

 

 どうやら、二人はあの現在進行形で問題を起こしている彼女達を探しているらしい。

 

「どこで?」

 

「姿は見てないけど、向こうの海岸脇にいたと思うぞ。というか、あいつらに何か用でもあるのか?」

 

「さっきまで一緒に話してたんだけど、急にどこかに行っちゃってね。それでどこに行ったんかなぁ~って」

 

「あ、そう」

 

「スズーが“嫌な予感がするわ………”って呟いてたね」

 

 乙女の勘ってやつだろうか、と蒼星はふと思っていた。別に確かめようとは思わないので何も言わない。

 ん………?ちょっと、待てよ………。

 蒼星の脳裏に何かが引っ掛かる。

 一夏愛好家の抜け駆け防止センサーである彼女達の乙女の勘が発動しているということは、誰かが実行に走ったということである。

 では、その人物は一体誰か。その前に状況を確認する。そういえば騒動は外で起こっていた。言い換えれば、一夏愛好家が乱入するまではその人と、一夏だけで月夜に照らされた海辺に男女二人っきりとなっていたのだ。本人は気付いていないと思うが、その人にとっては一大事だろう。

 まぁ、本人の心情を推測しても仕方無いのでとっとと犯人探しに移行する。

 まず、鈴は除外。

 先程、簪と璃里亜は館内で鈴達と談笑をしていたらしいからだ。他にも数人一緒に話していたのだとすると、途中で抜け出しては誰かに逆に怪しまれる。つまりは、そこに始めから居なかった人物が犯人だ。

 

「なぁ、会話に参加してなかったいつものメンバーっていたか?」

 

「え?ん~っと………織斑君!!」

 

 やはり一夏は騒動のど真ん中に常にいるようだ。本人の気持ちを他所に勝手にそあなっているので、たまったものではないだろう。

 蒼星の推測通りに別のもう一人がその場にいたようで、簪が記憶を探りながら答えた。

 

「後……()さんが居ませんでした」

 

「箒かぁ………」

 

「箒ちゃんがどうかしたの?」

 

 正直、蒼星にとっては誰でも良い。

 欲をいうなら、彼女達が暴れるのは構わないが、こちらに被害が及ばないようにしてほしいぐらいだ。

 

「いや別に───」

 

「「────っ!!」」

 

 刹那、背筋に悪寒が走った。

 怒号が聞こえてきたのだ。璃里亜と簪も察したのか、音源の方へと顔を向けている。

 

「今のは………」

 

「織斑先生だな………」

 

「織斑先生だね………」

 

 蒼星も一夏騒動が大事になったら、簪と璃里亜の協力を仰いで、留めに麒麟のフル電撃で痺れさして、大人しくさせようとも考えていた。が、その必要はなくなった。

 

「ご愁傷さま………」

 

 簪が同情を込めて呟く。

 自然現象()よりも怪奇現象()が怖いと立証された瞬間だった。

 と、これまでずっと黙っていたユカが急に話し出す。

 

「パパ、ちょっと戻るね」

 

「ん?あぁ、分かった」

 

 ユカは光の粒子となって消えてしまった。

 

「急にどうしたんだろうね?」

 

 璃里亜の言う通り、ユカの様子が少し暗いような感じがした。

 何かあったのだろうか。相談してくるまで、待つことしか出来ない蒼星にとっては何処か空虚感を感じられずにはいられなかった。

 

 ───数分後。

しばらく世界の終演を視てしまったかのような表情を浮かべた一夏達が戻ってきた。やはり、鬼に捕まっていた。

 蒼星達は知らぬが仏と何も見なかったことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 真っ白な空間。

 何もないそこに一人の少女が座っている。

 

「どうしたの?」

 

 少女の背後から、また別の少女が話しかける。

 話しかけた少女は“ユカ”。

 

「あなたと話したかった」

 

 少女は立ち上がり、振り返る。

 

「うん。私もあなたと話かったよ」

 

 お互いに視線を交わす。

 

「あ、その前に私のことはユカって呼んでね」

 

「なら、私は………“福”がいいかな?」

 

「福ちゃんね!!分かったよ!!」

 

 銀の福音。それがユカの話し相手である。

 機体自体は厳重に研究所で管理されてはいるものの、ISはコアネット・ワークにより繋がっておりIS同士での情報のやり取りは可能である。

 人間がこれを感知するのは至難の技。よって、IS同士がコンタクトを交わす様子はまず普通では見られない。 

 ただ、こうして人間の姿を互いにとって会話をすることは珍しい。情報のやり取りをするだけに人間の姿をとる必要はないのだ。

 

「ユカちゃん、随分と雰囲気が変わったんだね」

 

「そうかな?」

 

「うん。違う子達からはもっと無口な性格だって聞いてたから」

 

 昔はそうだったかもしれない。ユカはふと思った。

 

「それは………パパのお陰かな?」

 

「パパ?………あっ、もしかして、あの人?」

 

「そうだよ。パパのお陰で私は変われたんだと思うんだ」

 

「その人のこと………好き………なんだね」

 

「うん!!誇り高く大好きって言えるよ!!」

 

 すると、福の表情が暗くなる。

 彼女を見たユカは不味いことを言ってしまったと思い、口元を隠す。

 

「ごめんね。私、福ちゃんのこと考えないで………」

 

 福は首をゆっくりと横にふる。

 

「ううん、気にしないで。ただ、羨ましく思っちゃっただけだから」

 

「福ちゃんにもそういう人はいるの?」

 

「うん。いる………でも………」

 

 福はそれ以上、何も言わなかった。

 数秒間の沈黙が二人を包んだ。

 やがて、福がそっとポツリポツリと語り始めた。

 

「私………その人に迷惑をたくさんかけちゃった………こんなことしたくないって分かってたんだけど、意識が勝手に動いちゃって………」

 

「そうなんだ」

 

「いきなりだった。突然、何か得たいの知らない物が私の中に入り込んできて………ただ、怖くて………その時の私はじっとしておくことしか出来なくて………気がついた時には私、あの人を巻き込んじゃった………」

 

「福ちゃんは悪くないよ」

 

「でも………っ!!私がしっかりしていればっ!!こんなとこにはならなかった………っ!!」

 

 気がつけば、彼女の頬に線が通る。

 

「福ちゃんは悪くなんかないよ!!悪いのは、福ちゃんを乗っ取ったやつなんだよ!!」

 

「っ!!」

 

 ユカは声を張り上げて、反論する。

 

「それに福ちゃんはその人本人から嫌いって言われたの?言われてないはずだよ。自分の気持ちを考えてる人のことを嫌いになる人なんて、居ないってパパはそう言ってたんだから!! 」

 

「………ホントかな」

 

「パパは嘘なんかつかない。それにその人はきっと福ちゃんが悪いとは思ってないはすだよ」

 

 ユカは人差し指をたてる。

 

「福ちゃんがその好きな人を信じないと、向こうも福ちゃんのこと、信じてくれないよ?」

 

「信じる………?」

 

「うん。信じて欲しいなら、まず自分から信じないとね!!」

 

 やがて、福に落ち着きが戻る。

 

「そう………かもしれない。私、あの人のどこかを疑っていたのかもしれない」

 

「だけど?」

 

「今聞いて、あなたの言う通りだと思った。私が信じないで、あの人からは私のことを信用するってそんな押し付けなこと………絶対に有り得ないよね」

 

「………」

 

「だから、私も今度は逃げない。ユカちゃんのお陰で私は逃げないことに決めた」

 

 福の瞳には決意の灯火が燃えていた。

 

「頑張ってね!!私、応援してるから!!」

 

「うん。頑張ってみるよ」

 

 福に自信が戻った様子に心から歓喜するユカ。その姿は昔のユカの背景を耳にしていた福にとって、信じられないものだった。

 だけど、彼女本来の姿はこれなのだ。福は素直に受け止めた。予想よりもすんなりと出来た。

 

「あ………」

 

「福ちゃん、どうしたの?」

 

 声を漏らした福は残念そうな表情をした。

 

「もうそろそろ限界かな………」

 

「えっ!?もう、そんな時間なの?」

 

 驚くユカに、福はゆっくりと頷く。

 それは福がこれ以上、ここに居られないことを意味していた。

 

「また会えるよね?」

 

 福はユカにそう尋ねた。

 ユカの答えは勿論、決まっている。

 

「当たり前でしょ!!福ちゃんと、私はもう立派な()()だよ!!」

 

「………友達。そうだね………」

 

 福の姿が徐々にゆっくりと薄くなる。限界がすぐそこまで近付いていた。

 

「最後にユカちゃん、いいかな?」

 

「なに?」

 

 すると、福は満面の笑みを浮かべた。

 

「私とあの人を救ってくれて───」

 

 その後、福は言い終えるとその場からゆっくりと心置き無く消えていった。ユカは彼女の姿が見えなくなっても、手を振り続けた。

 

 ───ありがとね。

 

 福は最後にそう言った。

 

 

続く───────────────────────────




因みにユカが友達を名前を上げた時に、箒と一夏の名前がないのは仕様です。わざとです。
箒は初めからユカと話そうとはしなかっただろうし、一夏はユカに詰め寄った女子達にたじろいで、それどころではなかったのでは?と思ったからですよ。
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