金色の英雄 IS 【更新凍結中】   作:ソウソウ

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はい、1ヶ月ぶりの投稿ですね。いまここで、生存報告しておきます。なにかと忙しかったので、なかなか進まなかったんですよー。………ストックはとうの昔に尽きていますので。
3月いっぱいもまとまった時間がとれるかどうか怪しいので、予め言っておきます。

3月の内に投稿出来るかどうかは分かりません!!

───では、どぞ!!


第40話 弱点

 次の日。

 生徒達は早朝からISの撤収作業に勤しんでいた。各々の作業に別れて、滞りなく進んでいく。

 その中、昨日の夜に、織斑先生の説教を浴びた何人かの生徒の足取りは重くなっていた。事情の知らない者は特に気にしていない様子だが、逆に知っている者は彼女達に同情はする。だが、手伝いはしない。自分の作業を早く終らしたい為だ。

 そして、作業が終了を迎えた。

 

「ふう~、終わった~~!!」

 

「さぁ、帰ろーー!!」

 

 解放された生徒達はテンションを上げながら、自分のクラスのバスへ搭乗していく。

 中には名残惜しそうに海を眺めてから、バスへと乗り込む人もいる。人それぞれだ。

 蒼星と璃里亜も同じように作業を終えて、バスへと乗り込もうとしていた。

 ………乗り込もうとしていたのだ。

 

「………」

 

「ん?」

 

 直前、蒼星の足取りが止まった。彼の視線の先にはバス。

 蒼星は今まさに極限の境地を脳裏で駆け巡っていた。原因はこのバス。

 自分は乗り物酔いに弱いのだ。特に地道を走る車関連がとても弱い。何故か飛行機や船などはあまり酔わないが。

 そして、これからバスに乗ってIS学園に帰る。それだけなのだが、蒼星にとってはとても苦痛なのだ。

 酔う。

 それは抗うことのできない症状。降りるまで治ることは見込めずに、車内で未知なる敵と格闘を続けないといけない。

 分からない者にとっては一生分からないであろう、この死闘。蒼星にとっては避けれるのなら絶対に避ける。それぐらい、強敵なのである。

 

「ほら、ソウ君。乗らないと置いてかれるよ~」

 

 璃里亜が満面の笑みで、彼を呼ぶ。

 彼女は知っている。蒼星がバスに乗るのに躊躇している理由を。あえて、知りながらも彼を呼んでいるのだ。それもとても楽しそうに。

 今すぐにでも逃げ出したい。

 だが、乗らないと───

 

 ───帰れない。

 

 帰るのには乗らないと、だが、バス内では確実に乗り物酔いとの乱闘が始まる。正直、遠慮願いたい。

 だからって、帰らない、という手段を取れるかというと───不可能だ。自分は二人しかいないIS男性操縦者でもあるわけなので、ここに留まることは出来ない。

 

「ほら、早く!!」

 

 珍しく躊躇している蒼星に、璃里亜はいつもと変わらずに彼の側へと接近すると、遠慮なく彼の右手を掴んだ。

 そのまま、蒼星をバス内へと連行しようと試みる。無論、蒼星も黙って引き込まれる訳がない。

 

「ちょちょ、ちょっと!!待てって!!」

 

「本ちゃん、手伝って!!」

 

「了解~」

 

「どっから来たんだよっ!?」

 

 疾風の如く参上した本音。

 本音は蒼星の何もない左手を掴んで、彼を引っ張る。

 女子二人に手を引っ張られる状況に陥った蒼星。無理に力ずくで引き払うことも出来ずにされるがままになっていく。

 

「………長丁場は勘弁して………」

 

 もう覚悟を決めるしかなかった。

 

 

 

 

 ◇

 

 バス内では既に殆どの生徒が自席についていた。一組のバスでは織斑先生の姿が見えないが、他の生徒は全員座っている。

 帰りとあって、全体的に思い出話に花を咲かせる和やかな雰囲気があった。

 

「………ヘルプ」

 

 だが、特定の一ヶ所からは、負のオーラが漂っている。

 蒼星から漂う暗い雰囲気に周りの生徒は少し萎縮していた。

 

「………ヤバい」

 

 まだ出発はしていないものの、バスに乗ったという認識だけで既に乗り物酔いに襲われそうな蒼星。

 隣の璃里亜は、呑気に彼の顔を横から覗きこむ。

 

「ここで、吐いちゃ駄目だよ」

 

「………そんな気分じゃない」

 

「気分の問題なんだね」

 

「………早く帰りたい」

 

 苦痛な彼の願い。

 残念なことにそれは叶えそうにない。織斑先生が戻ってきていないのだ。何処に行ったのかは知らないが、しばらくは戻ってきそうにない。

 と、一番前の席に座っている山田先生が心配そうに声をかける。

 

「波大君、もしも限界が来てしまったら早めにお願いしますねー」

 

「………善処します」

 

 ぼっーとしておこう。

 璃里亜の配慮で、窓側の席に座らされた蒼星は窓ぶちにもたれ掛かるとひたらすら無心で外を眺め始めた。

 まだ乗り物酔いは本格的に発動していないので、こうしておけば大丈夫のはずだ。

海が見える。

 真っ青な青空から日光が照らし、海面がキラキラと煌めている。この海ともお別れとなると、名残惜しさを感じる。

 水平線の向こうには何があるのだろうか。『外国』とか『大陸』などの夢のないことを言ってはいけない。夢を見ようではないか。蒼星はひたすら意識を酔いから逸らそうと頑張る。

 そう言えば、頬に誰かに触られている感触がする。

 

「プニプニ~♪」

 

 蒼星が現実逃避に近い方向に走っている時、彼の後ろの席の本音が前の席に持たれると、面白半分に彼の頬をつついていた。

蒼星も蒼星で、無抵抗になっている。抵抗する気力すらないようだ。

 本音は止めるどころか、何秒置きにつついていたのが、段々と連続につつくようになり、間隙がなくなっていく。

 

「なみむーのほっぺた、プニプニだね~」

 

 そんな感想を最後に本音はつつくのを止めると、自分の席へとちゃんと座った。彼女の表情は満足感に満ち溢れている。

 一部始終を黙って観ていた璃里亜。しばらく考えていたが結局、本音が何に満足したのかは分からなかった。

 

「誰か~、飲み物持ってないか~?」

 

 へとへとの一夏。彼も寝不足からの重労働により、疲れが限界まで来ていたのだ。

 離れた席にいるシャルロットが真っ先に反応した。

 

「あ………さっき、飲み干しちゃった」

 

 残念そうに一夏の肩が少し揺れる。

 

「蒼星は………ないな」

 

 璃里亜は隣の彼を見た。

 手元には水の入った容器が力なく握られている。一夏からは手元が見えないので、蒼星は持っていないと判断したのだろう。本人に直接聞けるほど、蒼星の顔色は優れない。

 ゴソゴソッ、と鞄を探る物音がする。

 ラウラ、セシリア、箒がいそいそと飲み物を取り出そうと善戦していた。乙女の闘いも大変だなぁ、と璃里亜は他人のように思っていた。

 懸念すべき簪も四組のバス内である。

 

「誰か来たよー」

 

 ユカの声に、璃里亜はようやく気付く。

 女性がバスの中へと入ってきた。それも相当の美人。

 端麗な金髪と、大人らしく魅せる体型。一目見たら思わず止まってしまうほどの整えられた顔立ち。

 璃里亜も見惚れてしまっていた。

 

「織斑一夏君はいるかしら?」

 

「あ、俺です」

 

「あら、そう………君が」

 

 一夏の近くへと歩み寄ると、かけていたサングラスを胸元へとしまう。というか、胸の谷間に預けている。彼女は腰を折ると、一夏をじっと見つめた。

 品定めというより、純粋な好奇心から彼を観察しているようだ。彼女の瞳からは悪い気はしない。

 一夏が戸惑い気味になる。

 

「あの、あなたは?」

 

「私は“ナターシャ・ファルイス”。“銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)”の操縦者よ」

 

「あ………だから………」

 

 璃里亜は彼女の正体を聞いて、あることを思い出した。福音戦終了してから、帰還する際に自分が彼女を安全な所まで運んだのだ。

 一目見て、どこか引っ掛かっていたのだがようやく解消された。

 璃里亜の蟠りが取れたことは余所にナターシャは大胆な行動へと出た。

 

「これはお礼よ。ありがとう、白い騎士さん」

 

 ───チュッ………。

 

「「「「「────っ!!!」」」」」

 

 一部始終を目撃した者は唖然とする。

 一夏も何が起きたのか分からず、呆然としていた。

 一夏の頬にいきなり口付けをなすりつけたナターシャは彼の初な反応に微笑みを浮かべる。

 

「となると、この子が織斑君だとすると、彼がもう一人の?」

 

 ナターシャの視線が蒼星の方へと移った。

 璃里亜はとっさに身構える。まだ、彼女にとって一夏にあんなことをされるのは享受の範囲内だが、彼にそんなことをされてはたまらない。

 璃里亜の警戒心を向けられていることに気付いたナターシャは大人の笑みを浮かべる。

 

「あらあら、そんなに警戒しなくても」

 

「ソウ君に何をするつもりなんですか」

 

「お礼に言いにきただけよ。流石にさっきのはしてはもらえないようだけど………もしかして………あなたの名前は?」

 

「えっ………?遠堂璃里亜ですけど………」

 

 璃里亜は目を丸くしながらも答えた。

 返答に確信を持ったのか、ナターシャの声が少し元気になる。

 

「やっぱりあなたが私を運んでくれたのね。ありがと、お嬢ちゃん」

 

「えへへ………当たり前のことをしただけですよ………」

 

 面と向かってお礼を言われれば、正直照れてしまうものである。璃里亜も例に漏れずに頬を掻いて、照れてしまっていた。そのまま未知なる自分だけの別世界へと入っていった。璃里亜は褒めに弱いのだ。

 そこを隙と見たナターシャはまたしても咄嗟に行動に移ろうとするが───

 

「パパに触っちゃ駄目!!めっ!!」

 

「あら、小さな妖精さんだこと」

 

 ユカの登場にナターシャも驚く。

 小さな体で精一杯に両手を広げて、蒼星の前に立ち塞がる。

 

「あっ!!私ったら、つい………」

 

 璃里亜もようやく戻ってきた。

 

「私はユカ。麒麟の自我意識なの。パパに許可なしでやるなんて私が許さないんだから!!」

 

「そう………ユカちゃんね。ISが自我意識を獲得してるのも驚きだけど、それ以前にあの子があんな態度になってるのも納得したわ。なるほど、あなたのお陰だったのね」

 

「………ん?」

 

 一人で勝手に納得している。誰も彼女の話がいまいち掴めずに首を傾げている。

 ナターシャは肩を下ろす。

 

「仕方ない。可愛い妖精さんとお姫様に見張られてちゃ、王子を奪還するのも難しそうだし諦めることにするわ」

 

「私ぃ、お姫様…………!!」

 

「リリ~、戻ってきてよー」

 

 またしても昇華していきそうな璃里亜に本音が呼びかける。まだ時間がかかりそうだった。

 

「金の英雄さんによろしく言っといてね」

 

 私の力のお陰で諦めてくれたかと、ユカが自慢そうに頷きを繰り返していた。

 

「それと、織斑君もまたね~、バーイ♪」

 

 最後にそんな捨て台詞を残して、ナターシャはバスを後にした。彼女が去ったバス内に取り残されたのは不穏な空気。

 

「「「「………」」」」

 

 具体的には四名の者から流れ出ている。

 一夏が一足遅く気付く。やばいと危険を全身で感じたときには手遅れだった。

 

「出発はまだか~………」

 

 蒼星はまだ酔いが治りそうにない。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 ナターシャはある人の所へと向かった。

 

「どういうつもりだ?」

 

「想像よりも素敵でしたので、つい」

 

 数分前のことを思い返し、熱を帯びた頬を押さえるナターシャ。そんな彼女を機嫌悪そうに見ている千冬はため息をつく。

 

「どちらかと言うと、騎士さんより英雄さんの方が好みだったんだけど………なんか彼、既にダウン状態だったようで」

 

「波大のことか。乗り物に弱いらしくてな、行きもあんな感じだった」

 

「男性操縦者が乗り物に弱いって大丈夫でしょうかね?」

 

 はは、と冗談げに笑う両者。

 

「彼を狙うのは止めておきます。既に先客もいるようですし」

 

「他にもいるようだがな」

 

「あらら、ではもう一人の王子も?」

 

「そっちの方が大変だな」

 

「それはそれで面白そうですね」

 

 冗談なのか、本気なのか。千冬はナターシャの微笑みに区別がつけられなかった。

 

「それはそうと、随分波大の電撃を浴びていたようだが昨日の今日で出歩いても良いのか?」

 

「ええ。それが驚くことに全然後遺症がないようです。彼がある程度手を抜いておいたおかげでしょうかね。バスであんな姿をしている彼からは想像も出来ないほどの絶妙な技量ですよ」

 

「そうか。私だってあいつについてはよく分からん所が多い」

 

「あのブリュンヒルデが、ですか?」

 

「無茶を言うな」

 

「てっきり知っているもんだと思ってました」

 

 千冬は苦笑いをした。世界最強だからと言って、何もかもを手中に収めているとはとんだ勘違いだ。誰にだって、分からないことはたくさんある。

 例えば、親友の束が今、何処で、何を企んでいるのか───

 

「後、彼の側にいたユカちゃんでしたっけ?彼女には色々とあの子を励ましてくれたようで」

 

「会っていたというのは初耳だな」

 

「そうですか?かという私も保証はないんですけど。ただ、あの子とこの前、会ったときに心の中に直接謝られたような気がしましてね。あの子なりの精一杯の気持ちの中に、誰かに背中を押されて、勇気を出した。そんな風にも感じましたので、多分その誰かがユカちゃんかと私は思うんです」

 

「それは良かったな」

 

「えぇ。嬉しい限りです」

 

 その後、事務的な連絡事項を交わした。

 主に福音の処理についての件や、ナターシャの今後の対処などだ。

 

「では、私はこれで」

 

 話し終えると、ナターシャはその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 IS学園。

 ようやく辿り着いた一行。各々が思い出話に花を咲かせながら、荷物を運んで寮へと入っていく。まだ臨海学校の余韻が冷めていないようだ。

 そして、バスから降りた蒼星も両手を大きく広げて、清々しい笑顔になっていた。

 

「帰ってきたぁぁぁぁあああ!!」

 

 随分とハイテンションな蒼星。

 地獄のような過酷なバス内を過ごして、たっぷりと新鮮な空気を肺一杯に取り込めるこの時間が彼にとっては何よりも嬉しいことなのだ。

 特に大変だったのはあれだ。

 バスでの帰り道、元気が有り余っていた様子の一組のクラスメイトはなんとカラオケを始めてしまったのだ。はつらつな声を発するのは良いが、蒼星にとっては五月蝿いの一言。とっとと寝かせてくれ。

 そんな彼のことはお構い無しに周りはカラオケで盛り上がるのだから、地獄のような時間だったのだ。

 

「なみむー、元気だねー」

 

「あれだよ、本ちゃん。バス酔いの反動で降りてから一定の時間、ソウ君、テンション上がっちゃうんだって」

 

「あー、だから海行ったときもいきなり飛び込んで行ったんだねー」

 

 冷たい目線がきつい。

 だが、今の蒼星にとやかく気にしていられるほど余裕はない。

 彼から少し離れている一夏、シャルロット、ラウラ、セシリアもまた彼の不可思議な行動に不安を覚える。

 

「蒼星、大丈夫なのか?」

 

「あの様子だと心配も不要って気がするけど」

 

「でも以外でしたわね。蒼星さんの弱点が乗り物なんて思いもしませんでしたわ」

 

「そうだな。正直、あまりISでの戦闘とは関係ない気もするが、兄様のことを知れるのは良いことだろう」

 

 まぁ、弱点っていっても肝心のISを使用する際には、殆どその効力を発揮していない。つまりは、知っている知らない前後で彼との試合に勝てる見込みが上がる可能性はない。

 ラウラは何度も嬉しそうに頷いているが、どうしてそこまで嬉しそうなのかは誰も分からない。

 

「何度麒麟を使って、速く帰ろうと考えたことか!!」

 

 実際は寝ていただけである。

 

「ユカには何度も頬を引っ張られて痛いし!!」

 

 ユカは彼に構って欲しかったのだろう。何回も蒼星を動かそうと試みていた。そんな風景を見ているとまるで、父と娘の和やかな日常の一環に見える。せっかくの休日を存分に休みたい父親に対して、遊んでくれとせがむ子供だ。

 その後、ユカはついにせがむのを諦めたのか、妖精の羽を広げて途中から居場所を移動していた。と言っても、隣の座っていた璃里亜の所だ。 

 

「自由だぁーー!!」

 

 彼は清々しい笑顔になっている。

 そんな時に、二人の少女がやって来た。

 他のバスから降りてきた簪と鈴だ。一夏達の方へと合流する。

 

「蒼星君………」

 

「あんなのほっときなさい」

 

 簪は心配そうに見つめ、鈴は興味なさそうにしていた。

 最終的に一夏はあんな様子な彼を見て、触れない方がよいと判断した。

 

「行こうか」

 

 一夏の呼び掛けを聞いた皆は黙って頷くら、一人何も知らされないまま、各自勝手に自室へと戻っていった。

 ───そして。

 数秒後、蒼星は辺りを見回した。

 誰もいないことに気付いた。

 

「あれ?皆は?」

 

「置いてかれたよ」

 

 左肩に現れたユカが答える。

 叫んだお陰でだいぶ酔いが冷めたようで、気分はまあまあよい蒼星。寛大な心である今、独りぼっちにされたことを責める気はない。

 

「なら、戻るか」

 

 蒼星は歩き出す。

 彼の脳裏にふと過ったのは山田先生が帰る途中に言っていたある言葉。

 

『部屋に帰るまでが、臨海学校ですよ~。最後まで油断しては駄目ですからね!!』

 

 ───山田先生らしいや。

 

 

 

 

 

 ◇

 

「お帰りなさい♪」

 

「………何してるんですか………」

 

 部屋の扉前で蒼星は困り顔になる。

 原因は一応彼のルームメイトとなっていた楯無がニコニコ笑顔になって、出迎えてくれていたからだ。ただ、その格好が些か違和感満載である。

 所謂、裸エプロンである。

 エプロン一枚に身を包んだ彼女。きらびやかな手足がさらけ出されており、胸元が今にも見えそうである。

 この人は自覚はあるのだろうかと、蒼星は思う。大人しくしておけば何かと美人の部類に余裕ではいるだろうに損だ。

 終始、無言の彼に楯無は不機嫌。

 

「ちょっと。何か感想は?」

 

「老けました?」

 

「そうなのよね………生徒会の仕事が山積みで色々と大変だったのよ………」

 

 蒼星や本音が不在だったので、実質楯無と虚の二人での作業だったのだろう。ラウラとシャルロットの件については片付いてはいたものの、新たに別の用件が舞い込んで来ていたはずだ。それが相当苦痛だったのか、うっすらと楯無の目元に隈がある。

 と、楯無はノリツッコミを切り換えた。

 

「って!!違うわよ!!というか、可愛い女の子に老けたって言ったら駄目でしょ!!」

 

「あ………」

 

「“そう言えば”みたいな顔するのは止めてもらえるかしら!!」

 

 楯無の頬がひきつって来たので、蒼星は自重することにした。

 バサリ、と楯無は扇子を広げた。扇子には『お疲れ』と書かれていた。彼女なりの歓迎の表現の仕方なのだろう。

 

「それで、その妖精が噂のユカちゃん?」

 

「うん。そだよ」

 

 蒼星の左肩に乗っていたユカが元気よく答える。因みに楯無と蒼星のやり取りは初めから傍観している。

 

「私のことは楯無って呼んでね」

 

「うん、分かったよ、たてなし」

 

「っ!!………遥かに想像以上に可愛い………!!」

 

 楯無はボソッと呟いていたが、何て言ったんだろうと、蒼星は小首を傾げる。一瞬疑問に思うが興味が湧かなかったので、すぐに忘れる。

 後でじっくりと堪能してあげるなどと不気味な呟きが聞こえたような気がしたと思いきや、楯無は真剣な表情になった。

 

「あなたの耳に入れてもらいたい話があるのよ」

 

 どうでもよい………という訳には片付けられないらしい。わざわざこうして前フリを入れるということは何かしら重大な話であることは確かだ。

 が、その前に蒼星はどうしても言いたかったことが一つ。

 

「とりあえず服を着てください」

 

「あら♪エッチ♪」

 

 今更、小悪魔の笑みを浮かべても遅い。

 だが、蒼星は口には出さないが改めて思っていた。

 ………結構、会長って綺麗なんだな。

 

 

続く────────────────────────────




(-_-).。oO会長もヒロインに入れちゃおうかなぁ………。二人のやり取りは書きやすいし。
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