魔法少女リリカルなのはPSP =マテリアルサイド=   作:のぶな

1 / 44
ちょっと前にARCADIAに接続出来なかったときに、完結作品ぐらいはみんなの見える所に置いておきたいと思った次第での投稿です。なお、GW期間は毎日投稿予定。


星光の殲滅者編
プロローグ


 

今、海鳴市は、密かに、だが確実に波乱が巻き起こっていた。

 

僅か数週間前、『闇の書』と呼ばれるロストロギアがその最期を迎えた。

その際に無限再生プログラム、『闇の書の闇』と呼ばれたそれは、最後の夜天の主とその仲間たちによって打ち砕かれた。

 

だが、それで全てが終わったわけではなかった。

時間を置き、打ち砕かれた『闇の書の闇』は再び元の姿を取り戻そうと動き始めたのだ。

 

その中核となっていたのは、三体の構成体(マテリアル)の存在。

 

そして、今この場にある結界の発生原因はその内の一体、高町なのはの情報を素体として生まれた存在だった。

 

「く、お前は僕をどうしようとする気だ!?」

 

彼女の前に居るは、この発生した事態を収束させるためにこの場に赴いた時空管理局時空航行艦アースラ所属。執務官クロノ・ハラオウンだ。

 

彼は闇の書の闇の復活を阻止するべく、構成体の内の一体である彼女と戦闘を行なったのだが、力及ばず、敗れたのだった。

現に、防護服の所々は破れ、その手足は拘束魔法によって空中に貼り付けにされて自由を奪われていた。

 

それでも彼の心は折れておらず、毅然とした面持ちで目の前の敵対者を睨みつける。

それは、悲劇を繰り返さないという強い決意の篭った瞳だった。

 

「別にどうと言う事はありません。ただ、貴方には闇の書の闇の復活の贄となって頂くだけです」

 

だが彼女はその視線に堪えた様子もなく、淡々と答える。

その顔立ちや姿は、素体となった高町なのはという少女と瓜二つだった。

だが、彼女は高町なのはとは明らかに違った。

 

高町なのははツインテールに纏めているのに対し、彼女は栗色の髪はショートカットにされており、バリアジャケットの色彩も、裏返したように黒を基調としたもの。

そして何より、高町なのはの持つ快活さは無く、感情の感じられない無機質な瞳で目の前の相手と向き合っていた。

 

「とはいえ、今の私は所詮欠片。貴方のリンカーコアを奪略しても意味がありませんが」

「……それはどういう事だ?」

 

クロノは、彼女のその言葉に聞き返す。

彼は戦いに敗北し、身体は拘束されている。その上、魔力残量もそう多くは無い。バリアジャケットの維持で精一杯という状況だ。

それでもまだ諦めていない。どんな些細なものでも良い、突破口となるものを見つけるべく会話をつづけようとする。

 

「簡単な事です。現在、闇の書の蒐集行使の能力は八神はやてが持つため、貴方のリンカーコアを奪っても意味がありません」

 

彼女はクロノの思惑に気付かず、それとも気付いた上でなのか、提示された疑問に対してスラスラと答えを述べてゆく。

それは、勝利者として今の状況を誇示するわけでも、敗者に情けを掛けるわけでもない。

ただ単に「聞かれたから答えた」というものだった。

 

それを、クロノは一字一句漏らさぬよう、静かに耳を傾ける。

とりあえず、今すぐ殺されるような事にはならなそうだが、だからと言って状況が好転したわけでも無い。

 

元々この結界内では外部との通信が完全に遮断されているのだから、現状を仲間に伝える事は出来ないが、長時間経過すれば異変を察知した誰かの救援も期待できる。

今のクロノに出来るのは、会話で時間稼ぎをしつつ、突破口を探すという事だ。

 

その観点からすれば、彼女は会話が出来る相手なので、時間稼ぎが出来る。

それだけでなく、もしかしたら重要な情報を聞き出す事が出来るかもしれない。

 

クロノは今までの短いやり取りの中で彼女の人となりを分析した結果がそれだった。

ならば無言で捕まっている理由は無い。更なる情報を聞き出すべく口を開く。

 

「ですので、貴方はその身体ごと取り込ませて貰います」

 

だが、クロノが言葉を発するよりも早く、彼女は行動に移していた。

彼女の身体から噴き出すように黒い濃密な魔力が霧となって現れる。

それはまさに、闇そのものが溢れだすかのようにクロノの目には映っていた。

 

目の前で行われる事に、クロノは戦慄を抱く。

今、決定的なまでに自分にとって不味い事が起きようとしている事を悟り、少しでも逃れようと必死にその身を動かして足掻く。

 

「何も考える必要はありません。夢を見る必要もありません。貴方はただ、永久に私の中に在れば良いのです」

 

だが、彼女の拘束魔法は非常に堅固であり、いくら抗おうにもびくともしない。

彼女はそんなクロノに対して何の感慨も抱く事も無く、ただ有言実行するだけとクロノに対してその手をかざす。

それと同時に、彼女を取り囲んでいた闇がクロノの身体に纏わりつく。クロノの身体の輪郭が徐々に揺らいでいく。

 

「う、うわぁぁぁぁっ!?」

 

自身の身体に起こっている事を拒絶するべく、クロノは叫び声を上げる。

だが、それは何の抵抗にもならなかった。

 

闇がクロノの身体を完全に覆い尽くしてその姿を隠されると、クロノの叫びもまた掻き消される。

そして、闇は彼女の中へと還元する。

 

そこにはもう、クロノ・ハラオウンという少年の姿は何処にも無かった。

 

「……さあ、次は誰と会うのでしょうか?」

 

ここに在るのはひとりの少女の姿を象った存在。

開かれた口から零れるのは、少女のものでありながら、感情の篭らない抑揚の無い声。

赤い宝石を先端に据えたデバイスを手にした、栗色のショートカットの、黒い色彩のバリアジャケットの少女。

 

「全ては心地良い永遠の血と怨嗟のために……」

 

彼女は闇の書の防衛プログラムの残滓である闇の書の欠片。その中でも特に強い力を持つ構成体(マテリアル)のひとりであり“理”を司る存在。

 

 

元となった魔導師と同じ桜色の魔力光を残し、目的のためにこの空へ飛び立った。

 

 

 

 




魔法少女リリカルなのはStar Right、始まります。
初戦の相手はクロノだったわけですが、とある理由により色々なシーンはばっさりカットのプロローグ扱いです。
あと、この星光の殲滅者の魔力光は桜色ですが、魔力光が炎のような色になったのは2作目以降で、この時点ではコレが仕様です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。