魔法少女リリカルなのはPSP =マテリアルサイド=   作:のぶな

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BATTLE 3

 

今、ひとりの魔導師とひとりの騎士が、お互いの持てる力を最大限に使って戦いを繰り広げていた。

 

彼女は闇の書の闇、防衛プログラムの一部である構成体(マテリアル)の一基。

『力』を司る存在であり、闇の書の復活が目的。そして自らが王となり、かつて居た闇へ還るために魔導師や騎士を糧とするべく魔導を奮う。

 

対峙しているのは夜天の書の守護騎士のひとり。鉄槌の騎士ヴィータとその愛機であるハンマー型のデバイス、鉄の伯爵「クラーフアイゼン」。

彼女の内に囚われた仲間を救い出すため、そして今度こそ闇の書の闇を完全に打ち砕くべく戦いに臨む。

守るべきもの、守りたいという願いのために、騎士の誇りを胸に空を翔ける。

 

「いっけぇぇっ!!」

 

外見は幼い少女でありながらも、守護騎士として永い時を過ごしてきた歴戦の勇士であるヴィータが、小さな鉄球状の魔力弾を手にしたハンマーで四発を一度に打ち出す。

それは、ヴィータの真紅の魔力光を纏い、誘導弾として変幻自在の軌道を以って彼女に襲い掛かる。

 

「たぁぁぁっ!!」

 

黒のボディースーツに青のベルトやマント。青い長髪はツインテールに纏めている彼女は、迫る誘導弾を鎌のように展開した魔力刃でひとつ、またひとつと斬り伏せ叩き落としていく。

彼女の反応速度をもってすれば、その程度の事は容易であるとでもいうかのようだ。

 

「アイゼンッ!!」

 

無論、ヴィータとてそのぐらいで倒せる相手だとは思っていない。誘導弾に気を取られている間に一気に肉薄。発動させる魔法は『テートリヒシュラーク』。

それは防御突破の付加効果のある重い一撃。シンプルではあっても防御ごと叩き潰す威力があるそれが、なんの躊躇もなく振り下ろされる。

 

だが、それも彼女には当たらない。粉砕の一撃を間近で見てもその迫力に呑まれる事無く、退かず、逆に踏み込む事によって、その猛威を潜り抜ける。

 

すれ違うように交錯する青い魔導師と赤い騎士。その視線が同時に相手の瞳を捉える。

そこに映っていたのは、敵愾心に満ち、相手を打倒しようとする確固たる意志。

そんな相手の想いを理解し、だが自分も負ける気は一切ないと、さらに自らの心を奮い立たせ合う。

 

刹那の接触を経て、互いに背中合わせのように中空に立つ。そこはまだ白兵戦の間合い。

デバイスを振れば、すぐに相手に届く距離。

 

「はぁぁっ!!」

「だりゃぁっ!!」

 

ならば攻めない理由は無い。ふたりは振り向きざまに互いのデバイスを振り抜く。

だが、同時ではない。高速戦魔導師である彼女の方が、速く鋭い。その攻撃速度はヴィータを上回り、始動は同じであっても確実に先を取る。

 

だが、ヴィータが負けるかと言えばそれも違う。

確かに速さでは彼女に勝てるわけが無い。だが、鉄槌の騎士と呼ばれるその一撃の重さは彼女のそれを圧倒する。

殆ど後出しだというのに、彼女の軽い一撃など物ともしないかのように一気に振るわれる。

 

速さで先手を取った彼女の一撃に、機先を制され十全に力を込められずにいてなお、十二分の威力のあるヴィータの一撃。

結果、ふたりのぶつかり合いは互角の様相を演じる。互いの一撃は、互いに被ダメージを与えるには至らなかった。

 

「ちぃ……っ!」

 

舌打ちをしたのはヴィータ。それと同時に高機動魔法でこの場を一時離脱する。

騎士にとって接近戦は望むものではあるが、彼女のその圧倒的なまでの速度の前では、自分が攻撃をしても、より早く切り込まれてしまう。

ハンマーという武器の特性上、どうしても大振りにならざるを得ないという事情もある。

こちらが先手を取っても、ただ速さだけで先手と後手の順を覆してくる彼女に張り付いていてもカウンターを取られるのが関の山。今のも互角だったのはたまたまだと分かっている。

 

故に、いったん距離を置かねばならない。

 

ヴィータはシャマルやザフィーラのように待ちに徹するような戦い方ではなく、自ら立ち回って戦闘をする。

遠距離、近距離、補助と、多くの要素を高水準でこなせるオールラウンダーであるヴィータが、待ちに徹するというのは性格的にも無理。

故に、持てる手札を巧みに切りながらの立ち回りを演じる。

 

対する彼女は、ヴィータのように深い考えは、ぶっちゃけ無い。

考える事は単純明快。『ただ速く』の一念のみ。

逃げるというのであれば追う。攻撃されるのであれば避けるだけ。そして、今もヴィータは後退したというのであれば追うというシンプルなものだ。

 

通常、機動力に自信のある魔導師はヒットアンドウェイに徹する戦い方をするもの。

それは、場合によっては遠距離からの牽制や砲撃の一撃を放ち、一瞬の隙を見て肉薄して一撃を加え、反撃をされる前に相手の射程外へ逃れるもの。

得意な間合いは着かず離れずのミドルレンジ。あるいは相手がクロスレンジを得意とするならロングレンジまで距離を置くのもひとつの在り方。

 

だが、彼女の場合は違う。

ただ速さだけを頼りに、接近戦を繰り返す。防御は反射神経による回避のみ。

速さと鋭さを以って、常に至近距離での戦いを続けようとする。スピードによって相手を翻弄し、同時にクロスレンジをこなすという無茶を押し通す。

 

一撃入れられたら終わりだというのに、それでもあえて離れないというのは、勇敢とも言えるが、その大抵は無謀と呼ばれるものでしかない。

だが、彼女は接近戦を望む。理由は単純明快。その方がカッコイイし楽しいからだ。

 

そして今も、下がろうとするヴィータを追って、踏み込んでいこうとする。

 

「ほらよっ!!」

 

だが、そんな彼女の行動は至極読みやすい。追撃が来ると分かっていて何もしない手は無いと、ヴィータは置き土産代りに誘導弾を放つ。

四発のそれらは、真正面から彼女の行く手を遮る。しかも一点突破もさせないように配置している辺り、ヴィータの技量と経験の高さが窺える。

 

流石の彼女も無理矢理に突破するわけにもいかず、いったん足を止めてそれらに対処する。

 

「コメートフリーゲンッ!」

 

そこへ、距離を置いたヴィータが追撃をかける。浮かび上がるのはひとつの鉄球。

それは先程までの誘導弾に使っていたそれとは違う。ハンドボール大はあろうかというそれは、込められた魔力も威力も誘導弾とは一線を画する、まさに砲弾。

 

それを頭上からのオーバースローで振り抜くハンマーが全力で打ち出す。

瞬間、真紅の魔力光に覆われて、一直線に彼女へ向けて撃ちだされる。誘導性はない、威力を重視したそれが空を翔る。

無論、次なる魔法を使っても誘導弾の制御をヴィータは怠っていない。彼女の足止めにと放っていた誘導弾を巧みに操り、その動きを阻害し、行く手を誘導する。

故に、砲弾の直進上に彼女の姿があるのは、偶然ではない。

 

「光翼斬ッ!」

 

目の前に迫る脅威に対する彼女の選んだ手段は迎撃。

回避しようにもピンポイントで誘導弾が先回りをしている。防御にしても、まだ現状では防御で魔力を削る場面ではない。

その判断からの迎撃だったが、生半可な攻撃ではこちらが一方的に負けて押し込まれると考えるまでも無い事も直感で理解していた。

故に、放つのはデバイスに展開していた圧縮魔力刃。大きく振りかぶり、身体の捻りの勢いも加えて解き放つ。

それは、残っていたヴィータの誘導弾をも切り裂いて、真紅の魔力を纏う砲弾と真正面からぶつかり合う。

 

砲弾と魔力刃。そこに込められた威力は互角。

拮抗し、そして大爆発を引き起こす。彼女とヴィータの間では魔力の残滓が霧となり、ふたりの魔力光の入り混じった爆煙が視界を遮るように発生していた。

その爆煙の中を、ヴィータへと一気に肉薄するべく彼女は突っ込む。迂回なんて面倒はしない。最短距離を最速で距離を詰める。

 

そして、爆煙の中を突き抜けた彼女の視界に映ったのは、もう一発放っていたヴィータの砲弾!

 

「うわぁっと!?」

 

ヴィータの姿があると思っていたところに、完全に思考の埒外であったそれが現れた事に度肝を抜かれた彼女だったが、辛くも回避する。

誘導弾ならともかく、この重い砲弾を迎撃は不可能、防御も骨な威力のそれに、回避というのは間違ってはいない。

 

「ラテーケン、ハンマーッッ!!」

 

だが、ここまでが全てヴィータの思惑通りだった。

彼女に向けて放たれた砲弾は、僅かに軸をずらされていた。

それは、本当に僅かではあったが、咄嗟の判断の中では避ける方向を限定させるには十分な要素。彼女の回避のために動いた方向は、まさにヴィータの狙い通り。

 

彼女の行く先にはヴィータの姿。手にしたデバイスは一方に突起、もう一方にはジェット噴射口の着いたフォルムに変形を終えているばかりか、噴射された魔力によって加速も得ていた。

あとは、彼女へと叩き込むだけ!

 

「当たるっ……かぁっ!!」

 

だが、彼女はそれすらも避ける。

急激な方向転換で砲弾を回避した所から、更に加速する事でヴィータのハンマーの届く範囲から一気に離脱する。

息もつかせぬような攻防の応酬。実力の差も殆ど無いが故の、互角のせめぎ合い。

 

今、この場では非常に高度な魔法戦が繰り広げられていた。

 

「だーくそっ。思念体の癖にちょこまか避けてんじゃねーよっ、このバカがッ!!」

「僕はバカじゃないって何度言えば分かるんだよっ、このチビがッ!!」

「さっきから頭悪そうな戦い方しておいてバカは確定だろうがっ。それとあたしの事をチビチビ言うんじゃねーよっ!!」

「頭悪そうって言うなぁッ! あと、君はちっこいんだからチビって言って間違ってなんかいないだろ!!」

「うっせーよっ! このバカバカバーカ!!」

「なんだとぉっ! このチビチビチービ!!」

 

そして同時進行の舌戦は、非常に低レベルだった。

 

思い返せば、ふたりは初めて顔を合わせた時からこんな感じだった。

 

出会いのその時も、何を想うよりも先に『こいつとはそりが合わない』とひと目見て直感を働かせていたのだから、その想いは筋金入りだ。

ただ、同時に同じ事を考えているのは、これ以上無く気が合っているとも言えなくは無いのだが、その辺りは本人同士、絶対に認めない事だろう。

 

とりあえず、第三者がこの場に居れば抱く思いはひとつ。

 

子供がふたりいる、と。

 

「だりゃーっ!!」

「たぁぁーっ!!」

 

そんな交わす言葉も少なく始まった戦いだったが、苛烈さを極めるばかりで、勝負がつかないでいた。

いかに見た目が子供とはいえ、その身に宿る魔導と技は高い次元で習得されたモノ。

片や速さと鋭さで勝り、片や重さと威力で勝る。

得意分野は全く違うが、共にオールラウンダーと言える二人の力のと技の競い合いは、総合力で言えばほぼ互角。

故に、戦いが始まってから幾分の時間が経過した今でも、勝敗の天秤にいまだ大きな傾きが無かった。

 

「で~んじ~ん……」

 

彼女は周囲に直射弾である魔法『電刃衝』の発射体である金色の魔力球を設置してゆく。

 

「シュワルベ……」

 

それを見たヴィータもまた、小型の鉄球を目の前に浮かばせ、それを打ち出すべくデバイスを振りかぶる。

 

「しょーうッ!!」

「フリーゲン!!」

 

そしてほぼ同時に互いの魔力弾が放たれる。

彼女の直射弾は、時間差を置いて順次発射される。時間差で高速で放たれる数は6つ。

 

対するヴィータの誘導弾は4つ。数で劣っているが、それが戦力差ではない。

直射弾は細かい制御など利きはしない。大きく避けてもさほど問題も無いし、時間差があるとはいってもバカ正直に魔法のぶつけ合いをする必要も無い。

ヴィータは大きな回避運動をしつつ誘導弾を操作し、自身に命中の危険性のある直射弾を見極め、それだけは真正面からぶつけて相殺する。

そして、残りで危険ではないと判断した分は無視し、彼女に狙いをつける。

 

結果、ヴィータの誘導弾はばら撒かれた直射弾をすり抜けるようにして彼女に襲い掛かる。そして、ヴィータは既に直射弾の猛威からの安全圏に達していた。

遠距離での打ち合いでは自分に軍配が上がった。そうヴィータは思った。

 

「電刃衝ッ!」

 

だが、彼女はさらに直射弾を放つ。それは、誘導弾が目前に迫っていると知ってもなお、迎撃ではなく相手を打倒するために放たれていた。

直射弾は、誘導性は確かにない。だが、それを補って有り余る速度でヴィータへ迫る。

 

互いの目前に、互いの魔力弾が襲い掛かる。すでに回避も防御も出来るようなタイミングではない。

 

「「フルドライブッ!!」」

 

それを、ふたりとも自身の魔力を全開にする事で対処する。

身に纏うフィールド系魔法の防御出力を最大にする事によって受けるダメージを出来る限り軽減したのだ。

防御膜で受け止めて相殺するバリアや、固く弾く・逸らすシールドと違いダメージは徹るが、それも最大にすれば魔力弾一発程度どうと言う事はない。

 

「いくぞっ、とっととぶっ潰して終わりにしてやるよ!!」

「ふんっ、速攻で決めるのは僕の方だ!!」

 

互いに魔力弾によるダメージを少なからず受けたが、そんなもの気にもしていないと言わんばかりに睨み合うふたり。

実際、ダメージを受けたとは思っていない。それよりも、折角魔力を全開にしたのだ。これを契機に、一気に戦いを終わらせようと考えていた。

 

……合図は無い。睨み合っていたふたりは、何の前触れもなく戦いを再開、いや、今までを更に越える苛烈な戦いを開始した。

 

全開に魔力を解放した影響で、ふたりの魔法はその威力が大きく上がっている。

直撃すれば大ダメージは必須。それが分かっているから、多少のダメージは無視してでも直撃だけは防ぐ。

だが、掠めるだけでもバリアジャケットと魔力が削られる。お互い、徐々にその身に裂傷が刻まれていく。

 

「おぉぉぉっ!!」

「はぁぁぁっ!!」

 

それでも戦いの意志は揺らがない。むしろ、僅かでの傷を受けたら、よくもやったなと気炎もあらわに更に燃え上がらせる。

先ほどまでは、口ケンカをしながらの魔法戦だったが、今ではそれも無い。ただ、裂帛の気迫の籠められた叫びと、奔る魔法が空を打つ音が響き渡るだけ。

 

結界に覆われた、世界とは隔絶されたこの場所で青い魔導師と赤い騎士は全力を尽くしあう。

 

「どうした、もしかしてもうガス欠なのかい?」

「はっ、言ってろ……ッ!」

 

そして、数えるのも忘れるほどの激突を経て、仕切りなおしと再び睨み合う。

ふたりとも息が上がっており、肩で息をしている。バリアジャケットも多くの損傷が見て取れる。だが、そんなものはどうとでも無いかのように視線で牽制しあう。

 

その中で、ヴィータは戦況が自分にとって不利になろうとしている事に気付いていた。

魔力を全開にして戦いを続けていたが、それもそろそろ限界が近い。だが、そんなヴィータに対して彼女の方はまだまだ魔力に余裕があるように見える。

ベルカの騎士にとって、魔力が残り少なくなったからと言って、ミッド式の魔導師と比べて戦闘続行能力は高い。

それでも、この相手に魔力が足りなくなったら、勝負は見えてくるのも分かっている。

 

「アイゼン、カートリッジロードッ」

《Gigantform》

 

故にヴィータは、勝負を決める事にした。

ベルカ式の魔法の最大の特徴であるカートリッジシステムを使い、薬莢が排出される。

同時に、ヴィータのデバイスの形態が変化する。

それは鉄槌。元々もハンマーではあったが、明らかにその大きさが違う。巨大なそれは粉砕という言葉が良く似合う。

鉄の伯爵、クラーフアイゼンがフルドライブモード、ギガントフォルム。

 

威力は絶大な反面、大振りになるため、高速で動き回る彼女相手に使う機会が無かった。

だが、勝負をつける事にしたヴィータはそれでもあえてこのフォルムを選ぶ。

策はある。細かい理屈も、彼女の速さも、全て纏めて叩き潰すつもりだ。

 

「ならこっちもだっ。いくぞ、バルニフィカス!!」

 

対する彼女も、相手が最大の攻撃を繰り出そうというのなら自分もやらねばなんになると、こちらもフルドライブモードへと移行させる。

金色の魔力光で構成される身の丈を超える刀身を持つ大型剣。彼女のオリジナルであるフェイト・テスタロッサのデバイス、バルディッシュのザンバーフォームと同じ姿。

 

武器の大きさは互いに引けを取っていない。威力ではヴィータが勝り、速さでは彼女が勝っている事も変わらない。

それでも自分は負けない。自分の力を信じて真っ向から向かい合う。

 

空気は一触即発。緊張が高まっていく。

 

そして、

 

「……ふむ、中々に面白い余興だったが、見ているだけというのも存外に飽きるな。

もうよい。うぬらの出番は終わりだ。疾く、舞台より降りよ」

 

第三者の声が響き渡った。

 

「な……」

 

完全に水を掛けられる形となったふたりだったが、声を放った人物がいるであろう方向を見て、更なる驚きを抱く。

そこには、古代ベルカ式の魔法陣が白い魔力光で展開され、剣の形状をした魔力弾が次々と撃ち出される光景。

 

特に狙いもつけていないようなものが、それぞれ真っ直ぐに飛ぶだけのもの。

だが、その数による攻撃範囲は、彼女とヴィータ、ふたりの戦闘空域を埋め尽くさんとする勢いで順次撃ち出されていく。

ふたりともいざ踏み込もうという瞬間を狙われ、完全に虚を疲れた襲撃の前になすすべがない。

 

そして、無数の刃はその身を貫いた。

 

「な、なんで……」

 

ヴィータのその肢体を。

 

彼女は、自身の前で両腕を広げ、その身を盾とするかのように魔力弾の前に立塞がっていたヴィータのその背中に信じられない思いを抱く。

ヴィータはその身をよろけさせる。飛行魔法を使う余裕も失われたのか、地に落ちようとするのを、彼女は抱えて受け止める。

 

「なんで、なんで僕を庇ったりしたんだよ!?」

 

ヴィータの手足や胴体には魔力によって編まれた刃が幾つも突き刺さっていた。

夜天の書の守護騎士はプログラム生命体であるため、生身の人間よりは頑丈に出来ているが、それを差し引いてももう戦闘の続行なぞ不可能と一目見て分かるその姿。

それを見て、どうして敵対していた自分を助けるような真似をしたのかと、腕の中に抱えるヴィータに声を荒げるようにして尋ねる。

 

「……は、勘違いしてんじゃねーよ」

 

ヴィータ自身、考えての行動ではなかった。状況を目の当たりにして、咄嗟に行動に移っていただけであり、その行動に自分でも驚いていた。

だが、自問して答えはすぐに出た。故に、自身を抱えながら、まるで糾弾するような語調の癖に、不安に震えているような瞳をしている彼女に言葉を告げる。

 

「あたしはおめーを助けたんじゃねー。おめーがやられたら、中にいるシャマルとザフィーラも無事じゃすまねーかも知れねーからだ。それに……」

 

ヴィータは一旦言葉を区切り、そして不敵に笑う。

 

「おめーはあたしがぶっ潰す。この役目は他の誰にも渡してやんねー。……それだけだ」

「……っ」

 

そんなヴィータの姿に、彼女は言葉が出ない。

口の端から血の糸をたらし、普通に喋る事も難しいはず。抱える肢体にも力は入らず、重力に惹かれて垂れ下がる。明らかに弱っている。

だが、それでもヴィータは不敵に笑ってみせていた。

 

出逢ってから間もない。交わしたのは相手を倒すための魔法と、憎まれ口の言葉ばかり。

戦うべき相手、倒すべき相手だという認識は変わっていない。

その中で、ヴィータに戦うに値する好敵手と認められたような言葉に、彼女の心中に良く分からない思いが渦巻いて、話す言葉が見つからないでいた。

 

「かはっ……!?」

「ヴィータ!?」

 

彼女がどうすれば、どんな声を掛ければいいのか頭を悩ませていると、ヴィータは咳き込むようにして吐血した。

幸いか、急所は外れていたが、それでも予断は許さない容態であると改めて見せ付けられて、彼女は一旦思考を中断する。

 

「……ヴィータ。少し僕の中で眠ってて。それならひとまず大丈夫なはずだ」

 

彼女の身体の裡から闇があふれ出し、ヴィータをその身に取り込む。

まだ自分とヴィータの間での決着はついていないし、ヴィータの言葉に対する答えも見つかっていない。

それを果すまでヴィータに消えられるのは困る。だから、今は闇の所の復活のためではなく、ヴィータを助けるそのために、その身に取り込んだ。

 

「……真剣勝負に水を差すなんて、何のつもりだ!?」

 

そして、決着をつけられなかった事、真剣勝負を邪魔された事に対する憤り、その怒りの思い全てを籠めるかのような憎悪の視線を一点に向ける。

 

「ふん、ただの余興にそれほど怒る事もあるまい」

 

そこにいたのは、闇の書の防衛プログラム。その構成体の中枢を担う『王』が冷笑を浮かべてそこに在った。

 

 

 




△ボタン魔法のドゥームブリンガー(通常)を連発しながら、王、降臨。
ゲームでは二連射が限界だけど、ここではそんな縛りはありませぬ。

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