魔法少女リリカルなのはPSP =マテリアルサイド=   作:のぶな

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後日談やらネタはまだあるのでもうちっとだけ続くんじゃ。


星光の殲滅者、後日談1

 

闇の書の闇の残滓が齎した余波被害。

 

それは管理局で予想された範囲内での出来事に収まるはずだった。

だが、実際には闇の書の闇の復活という、あってはならない結末で終えてしまった。

 

ただ、新たな闇の書の闇となった高町なのはの収集データをもとに構成された彼女は、人を殺すという行為よりもリンカーコアの蒐集を優先していた。

さらに、何故か守護騎士達がはやてのためにリンカーコアの蒐集をしていた時のように、相手を死なせない程度に加減しての蒐集行使をしていた。

その結果、負傷者は多数出たが、死者は出なかったのが不幸中の幸いといったところだった。

 

それでも新たな脅威を誕生させてしまったという事実は依然としてあるため、管理局内部はその事後処理にみな奔走しているようだった。

 

そんな中、事件に関わった魔導師達は蒐集行使を受けたためにリンカーコアが一時的に収縮してしまっているが、身体的には問題はないため各自養生する事になっていた。

 

時空管理局嘱託魔導師である高町なのはとフェイト・テスタロッサの両名もまた、現在は治療設備の整っている管理局の本局で身体を休めていた。

どうせひとりで休んでいたところで事件を防ぐ事が出来なかった事に苛まれてしまうのは目に見えて分かっている。

それなら仲の良い友達同士で遊んでいた方が気も紛れる、という理由でふたりは同室の扱いになっていた。

 

保護者の面々もこの事は了解している。

なのはの家族は一緒に居たいという思いはあったが、リンカーコアという未知の器官のダメージは地球の医療ではどうしようもないと分かっているので、渋々、といった様子だったが。

 

「……ねぇなのは、あの子の事をどう思う?」

 

そんなわけで、なのはとフェイトは平日の昼間から部屋でのんびりまったりとして過ごしていたのだが、それでも話題に上がってしまう事柄があった。

 

「うん、あの子ってわたしの蒐集データをもとにしているんだよね。初めて会った時はびっくりしちゃった」

 

ふたりは現在、ベッドに並んで腰を下ろして話をしていた。

話題に上がるのは再構成を果した闇の書の闇である彼女の事。

 

実際のところ、フェイトは彼女の事について相談をしたかった。

そしてそれはなのはも似た部分があるので、話題を逸らそうなどとは思わない。

 

「はやてと守護騎士のみんなを一度に相手をして勝っちゃうなんて、凄く強いよね」

「……うん、そうだね」

 

ふたりの心中、特になのはは複雑だった。

 

彼女の身体と魔導は自分をもとにしている。自分の魔法が回りまわって迷惑をかけている。

実際に戦う機会があったというのに、彼女を止める事が出来なかった。

自分が取り込まれてしまったから、更に彼女は強くなってしまった。

 

そんな風に、自分が悪かったんじゃないかという考えがぐるぐると頭の中を回っていて気分が落ち込んでいた。

 

「今度会ったときも、……負けちゃうのかな?」

「フェイトちゃん……」

 

再び彼女と会う。

 

これは殆ど確定している事実であるとふたりは認識していた。

偶然や運命に導かれて、ではない。彼女の方から自分達に会いに来る。

 

根拠といえるものはないが、彼女は確かになのはとフェイトに対して、他の人とは違う執着を持っている事を感じていた。

 

だから、逢いに来る。それを明確に感じているのはなのはとフェイトのふたりだけ。

そんな理由があるから、共通の悩みを持つふたりだけで話をしていたのだ。

 

なのはは俯き加減のフェイトの横顔を見て、胸が締め付けられるような想いを抱く。

もしかしたら原因は自分なのかもしれない、そんなマイナスな考え。

 

「……大丈夫だよ、フェイトちゃんっ」

 

だが、そんな考えよりも、なのはは友達がつらそうな顔をしているのが嫌だった。

 

「確かに今のわたし達じゃ勝てないかもしれないと思う。でもだからって諦めるのは嫌だよ。

だから、わたしはこれからもっと強くなる。強くなって、フェイトちゃんの事も守れるように頑張る。だから大丈夫!」

 

強く断言すると、なのははいつもの明るい笑顔をフェイトに向ける。

 

実際のところ、なのはは自分の言葉に根拠はないとは分かっている。それでも、はっきりと言い切ってみせた。実現してみせると言ってみせた。

自分は弱いと分かっている。だけど弱いから強くなりたいとも思う。

少なくとも、自分の友達の笑顔を守るぐらいは強くなりたい。

 

その願いは本当だから、叶えるために頑張れる。だから大丈夫。

 

「……ならわたしも、なのはの事を守れるように強くなるよ。

ひとりでは無理かも知れないけど、ふたりでならきっと大丈夫。あの子にも勝てるよ」

 

そしてフェイトもまた、そんななのはの前向きな気持ちに未来への希望を見る。

確かに敵は強大だけど、お互いを守りあって、支えあっていけば最後まで頑張れる。

最後まで頑張れれば、今度こそちゃんと勝って終わらせられる。

 

なのはとふたりでならそれを実現できると信じられる。

 

「うん、一緒に頑張ろうねフェイトちゃん!」

 

その想いが、なのはと同じ結論を導き出す。

想いを同じくできて、心が通じ合えるのが嬉しくて、なのはは隣に座るフェイトの手にそっと自分の手を添える。

 

「なのは……」

 

フェイトも繋がる手から伝わってくるなのはの温かさを感じてその手を握り返す。

言葉も無く、ふたりはただ、見つめ合う。そして、

 

「やほー。なのはちゃんにフェイトちゃん。元気にしとる、か……?」

 

そんな、ふたりが背後に百合の花が咲き乱れるような空気を醸し出しているという事を知らず、部屋へと入ってきたはやてはその光景を目の当たりにして動きが固まる。

 

「……あはは。うん大丈夫。わたしはちゃんと空気を読める子やよ~?」

 

そして、何も見なかった事にして部屋を後にしようとする事にしたらしい。

踵を返し、そのまま自身の潜ったドアを再び経て部屋の外へと行こうとする。

 

「ま、待ってよはやてちゃんっ。なんだかよく分からないけど、たぶん何か誤解してると思うの!」

「そうだよっ、何でそんな頬を赤らめながら部屋を出ていこうとするの!?」

 

だが、そんなはやての姿に気付いたふたりは、慌てて引き留める。

実際のところ、ふたりは自分達を傍から見ればどういう風に映っていたかは分かっていないのだが、それでも確実にある嫌な予感につき動かされての行動だった。

 

なのはもフェイトも、凄腕の魔導師ではあるが、九歳であることには変わりは無い。

その手の知識が無いために、現状に理解が追い付かないというのも無理からなぬ話だ。

 

「なんでって、……あかん、そんなんわたしの口からはとても言えへん。

でも大丈夫。わたしはちゃんとふたりの事を祝福するで?」

 

ただ、ふたりの姿を見て、明確にこれから先の展開をイメージ出来たはやてが早熟なだけだろう。

果たして、何処まで想像の翼を羽ばたかせたのかは、はやて本人にしか分からないが。

 

「ち、違うよっ。何が違うのかはわたしにも分からないけど、とにかく違うよ!」

「そうだよ、なのはの言うとおりだよ!」

「あはは~、今更隠さんでもええよ。ふたりの事は何となく察しがついとったからな~。

そういう形があっても別にわたしは偏見を持ったりしない。ずっと友達やで?」

「だ~か~ら~……!!」

 

まあ、女が三人寄ればかしましいとはよく言ったものだと、第三者がこの光景を見たならそう思うだろう。

そして一通り騒いだ三人は、まだダメージが回復し切っていないために、自爆という形で仲良くダウンしていたのだった。

 

閑話休題

 

時間を置いて落ち着いた三人は、先程までの自分達の行動を反省して、なのはとフェイトはベッドの上、はやては車イスの上で、大人しく腰をおろしていた。

 

「……それで、はやてちゃんの身体は大丈夫なの?」

「うん。わたしは純粋魔力ダメージだけやったし、なのはちゃんやフェイトちゃんよりもあの子に取り込まれていた時間も短かったから、わたしらの中でたぶん一番軽傷や」

 

なのはの問いかけに、はやては自身の現状を答える。

彼女との戦闘は苛烈を極めたものだったが、ユニゾンにより、リインフォースの内部に居る形となっていたはやてに肉体的損傷は殆ど無い。

無茶なユニゾンの影響の後遺症はあったが、それもまた、以前までの車イス生活より少し厄介程度で収まっていたため、はやての中では大したことは無いという結論になっていた。

 

「ただ、うちの子達は、な……」

「あ……」

 

だが、守護騎士達に関しては、あまり楽観視が出来ないというのが現状らしい。

みな、敗北が決定してなお、限界を超えて最後の最後まで彼女の内に囚われたはやてを救うべく戦いを続行し続けたらしい。

その上で、リンカーコアの蒐集を受けたため、致命傷のギリギリ一歩手前という状態になっていた。

守護騎士達は、その在り方からして、通常の魔導師や騎士と比べて回復力は高い方ではあるが、それでもまだ、みな目を覚まさず昏睡状態である。

 

……そう説明をするはやての表情は、先程までの三人のやり取りなど無かったかのように暗い色が見て取れる。

先程までのアレも、一種の空元気でしかなかったのだと、なのはとフェイトは気付く。

だが、気付いたとしても、なんと声をかければ良いのかが分からないと、ふたりは上手く言葉が出ない。

 

「ああでも、みんな命に別状は無いって。栄養ある物を食べて、きっちり休んでいればちゃんと全快出来るって、先生が言っていたしっ」

 

そんななのはとフェイトの様子に気付いたはやては、心配はさせまいと俯き加減だった顔を上げて、ふたりに笑いかける。

 

だが、はやてのその表情は笑顔を浮かべる事に失敗したように、上手く笑えていない。

それでも必死に笑顔を浮かべようとするはやてに、なのはとフェイトはそっと寄り添う。

 

「なのはちゃん、フェイトちゃん……?」

 

そんなふたりに対して、困惑の表情を浮かべるはやて。

 

「別に、無理して笑わなくていいんだよ?」

「なのはちゃん……」

 

「辛い時は、ちゃんと辛いって言って欲しい。じゃないと、その悲しみに心が押しつぶされちゃうと思うから。

頼りないわたしかもしれないけど、手を差し伸べたり、傍に居たりする事ぐらいは出来るから……」

「フェイトちゃん……。ふたりとも、でも……」

 

「大丈夫。はやてが守りたい騎士達は今は見ていないから。弱音を吐いても心配をかける事はないから」

「うん。実はさっきまで、わたし達も弱音を吐きあっていたんだ。

だから、はやてちゃんとの本当の気持ちも教えて欲しいんだ」

 

「わたしは、わたし、は……う、うぁぁ!!」

 

辛い事は自分が我慢していれば、みんな笑っていられるはず。

そう思う事で押えていた想いが、涙となって溢れだす。

 

はやての心中は不安と悲しみで不安だった。

みんな無事で勝つんだと言ったのに、勝つ事が出来ず、家族に怪我を負わせてしまった。

ベッドで寝ているみんなを見て、もう起きないんじゃないかという不安に襲われた。

 

また一人になってしまうのではないかと思って、その場に居られず逃れるようになのはとフェイトの下を訪れた。

でも、来たのは良いけど、自分が悲しんでいる姿を見せて、余計な心配をかけて、幻滅して。

結果、みんな自分の傍から離れてしまうのではという想いから必死に自分を取りつくろっていたみせていた。

 

そんな心中を、筋道も立てず、殆どめちゃくちゃな順序と言葉で吐露するはやてを、なのはとフェイトは、何も語らず身を寄せる。

ただ、傍に誰かがいるからひとりじゃないと、温もりを伝えるかのように……。

 

「……はー、泣いたらなんやすっきりした。おーきにな。なのはちゃん、フェイトちゃん」

 

そして、一通り泣いて、涙と一緒に悲しみや不安も流れ落ちたのか、涙をぬぐいながら柔らかな笑みを浮かべる。

それは無理をしたものではない。心の底からの笑みだった。

 

「うん、役に立ててよかったよ」

 

実際には何の問題も解決していない。泣いたからと言って過去が変わるわけでもない。

それでも、立ち止まり続けるのではない。一歩を踏み出す小さな勇気がその胸に灯っていた。

はやてだけじゃない。なのはとフェイトも、気持ちは一緒だ。

 

「わたし達は、あの子に負けちゃった。でも、まだわたし達はここに居る。全ては終わったわけじゃない」

「諦めたら終わりだけど、わたし達は諦めたりなんかしない。出来る事は、きっとまだあるはず」

「そや。今はまだ勝てないかもしれへんけど、いつかはあの子にきっちりリベンジや!

そして、悪い事をしたからごめんなさいをさせたる!」

 

なのはが手を差しだすと、その上にフェイトが添えるように手を重ねる。

そして、更にその上にはやての手が重ねられる。

 

三人の視線が交錯する。誰の瞳にも悲壮感は無い。

ただ、未来へと向かう決意に満ちていた。

 

「せーの、がんばるぞーっ」

「「おーっ!」」

 

想いを貫く力と、空を翔ける翼があるから。

だから、きっと──

 

 

 

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