くっ殺系姫騎士氷結怪獣シーモ「やってやりますわァァ~~~~~~!!!!」 作:よよよーよ・だーだだ
『運命』というのはきっとこういうことを言うのでしょう。囚われの身になったわたくしシーモの生涯、その転機は唐突に訪れました。
「野郎どもォ、シーモを放てェーい!!」
いつもの激痛で叩き起こされたわたくしは溶鉱の檻から引き出され、『その方』と真正面から相対することになりました。
ひたすら寡黙にわたくしをじっと見据えてくる、寡黙なその方の種族はスカーキングと同じくグレートエイプ。
しかし、これまで出会ってきたどのグレートエイプの殿方ともまったく違っておりました。
「…………。」
齢は見たところ壮年。毛色は平均的なグレートエイプと同じ黒毛で、しかもところどころ白髪のシルバーバックが混じっております。とても若者とは言えない年頃です。
しかしその体は隅から隅まで徹底的に鍛え抜かれており、これまでわたくしが出会ってきたどのグレートエイプよりも屈強で逞しく思えました。実際その全身には無数の傷跡があり、百戦錬磨、歴戦の勇士という風格が漂っております。きっと誰よりも多くの強敵と戦って、そしてその都度打ち克ってきたに違いありません。
またその方の目つきには、強い決意の眼光が灯っておりました。渦巻いているのは不条理に対する怒り、誰にも負けぬという強い自負、そして熱く燃える闘魂……。
それでいてさらにその深奥を覗いてみれば、その方の瞳には他のグレートエイプたちとは異なる光もまた垣間見えました。むしろ奥底にあるのは、穏やかな理性の光。これまでわたくしが出会ったことの無いタイプの、グレートエイプの偉丈夫です。
その方を指差しながら、スカーキングがけたたましい声を張り上げました。
「さあシーモ、〈コング〉の野郎を氷漬けにしちまえ!」
……コング、この方はコングというのですか。
スカーキングがコングを敵視している理由はすぐにわかりました。地下帝国のグレートエイプと似てはおりますが、そもそも匂いや血統が全然異なっております。おそらくコングはこの地下世界における流れ者、地下帝国の外からはるばるやって来られたのでしょう。
……まったく、お気の毒に。このコングという方も、きっとスカーキングの下郎に殺されてしまうに違いありません。
そのようなことに想いを巡らせながらぼんやり見つめていると、スカーキングがわたくしに怒鳴りました。
「どうしたシーモ、恐るべき古代怪獣の力を思い知らせてやれ!」
いやです! その命令を、わたくしは最初拒否してやりました。
……ふん、どうせ性根の腐ったスカーキングのことです。例によって不埒な振る舞いをしてこのコングという殿方から御不興を買い、諍いの果てにくだらない喧嘩沙汰となったに違いありません。
そのことがわかっていたので、わたくしはスカーキングの命令に従いたくなどありませんでした。まったく、真正面から敵わないからと無闇に虎の子を持ち出すなんて卑劣、腰抜けも良いところです。このゲス野郎には、意地や誇りというものが無いのでしょうか。
そうやってわたくしが軽蔑の目線で睨みつけてやると、スカーキングは不機嫌そうに逆鱗クリスタルを甚振るように握り締め、重ねて命じました。
「さっさとやっちまえ、シーモ! それとも、もっと痛い目に遭いてェってのかァ……!?」
ぐ、ぐぅぅ……!
スカーキングがウィップスラッシュの逆鱗クリスタルを痛めつける度、それに共鳴した体のクリスタルがわたくし自身を苛みました。まるで全身を砕かれるような、激烈な痛みがわたくしを苦しめます。
……やむを得ません、不本意ですが従うしかないようです。わたくしは渋々、フロストバイトブラストの発射準備へ取り掛かりました。大気に響く重低音、この身に宿った冷気のエネルギーをチャージし、わたくしは全身のクリスタルを光らせました。
「……!」
そんなわたくしの放つ異様な雰囲気から、コングも本能的に危機を悟ったようでした。即座に身を翻し、わたくしから距離を保ちます。
そして放たれる絶対零度、フロストバイトブラスト。
灼熱の溶鋼が流れる地下帝国。しかしフロストバイトブラストのおかげで、辺り一帯の気温が一気に氷点下まで冷えきりました。
「…………ッ!!」
まず一射目、コングは巨体を翻して躱しました。スカーキングに強要されているためにフルパワーから程遠いとはいえ、わたくしのフロストバイトブラストを回避してみせるとはなかなか見事な身のこなしです。
ですが、次は逃しません。わたくしは続けざまに、二射目のフロストバイトブラストを放ちました。コングが跳躍する軌道も勘定に入れたこの射線、間違いなく直撃です。いくら身軽でも躱しようがないはずでした。
ところが、コングは思わぬ行動に出ました。
「……コング・アックス!」
なんと、コングは持参していた巨大なアックスを両手で構え、そのままその場に仁王立ちしたのです。まさか、そのアックスでわたくしのフロストバイトブラストを防いでみせようなどというのでしょうか。なんと無茶なことをしようとするのでしょう。
全身氷漬けになるはずのコング、しかし予想外の展開はまだまだ続きました。スカーキングが、周囲のグレートエイプたちが、そしてわたくしまでもが一斉に驚愕しました。
「凍らない、だとオ……!?」
コングの目論見は成功していました。コングのアックスはわたくしのフロストバイトブラストを、真正面から受け止めていたのです。
……そういえばコングのアックス、どこかで見覚えのある造形だと思っていましたが、子細に観察してみればその刃先にゴジラの背鰭が使われておりました。ゴジラといえば本来低温に弱い怪獣ではありますが、それでも光線技には耐性があります。それを見越した武器と戦術だったのでしょう。
そして、それを咄嗟に判断して行動に移せるコング。コングは単なる筋肉野郎ではなく、なかなか機転の利く方のようです。わたくしはフロストバイトブラストを撃ちながら、内心密かに感服いたしました。
しかし、それにも限界が訪れます。
「……ぐあっ!!」
まず、わたくしがフロストバイトブラストの出力を上げた途端、コングの手元からアックスは弾き飛ばされてしまいました。いくらアックス自体の強度が良くても、それを支える腕の力が足りていなければ意味がありません。
さらに、冷凍光線というのは直撃を防ぎさえすれば良いというものではありません。熱伝導、すなわち触れているだけでダメージを与える。それが極寒の冷気というものです。
「う、腕が……!」
アックスを失ったコングは、その場に崩れ落ちました。絶対零度に曝されたコングの全身は低体温症。アックスを構えていた片腕に至っては完全に氷結し、酷い凍傷になってしまっています。
もはやコングは虫の息、それを見たスカーキングがすかさず命令しました。
「今だァ、シーモ! トドメを刺せぃ!」
コングには何の咎もありません。しかもこんな弱った相手へさらにトドメを刺すなんて、わたくしの氷結怪獣としての良心が傷つきます。
かといって、ここで撃たなければどうでしょう。わたくしが痛めつけられるばかりか、きっとコングはスカーキングと手下どもによって嬲り殺しにされてしまうだけです。
……コングとやら、どうか許してくださいね。この罪滅ぼしはいつか必ず、この身命をもって果たさせていただきますから。心の内で密かに詫びながら、わたくしは三射目のフロストバイトブラスト発射準備を整えました。
と、そのとき。
「コングの兄貴ィ~!」
遠くの方から掛かった声に、コングが振り返りました。
いったいいつの間に手懐けたものでしょうか。スカーキングの親衛隊レッドストライプスの一員である子猿が、コングのことを手招きしております。
「こっちでヤンスよォ~!」
そう言って子猿が指し示した先は、地下帝国の外へと通じる抜け穴でした。
「…………!」
コングは一目散に駆け出しました。わたくしはフロストバイトブラストで狙いましたが間一髪、コングは抜け穴へとその身を滑り込ませて闇の奥へと消えてゆきました。
獲物を逃したスカーキングが苛立たしげに怒号を挙げました。
「コングの野郎を逃がすんじゃあねえ! 引っ捕えて俺様の元へと連れてくるのだ!!」
スカーキングの命令を受け、忠実な親衛隊レッドストライプスが一斉に追跡へと取り掛かりました。
……コング様とやら、どうか逃げ延びて。そして二度と、わたくしどものような悪党と関わりを持たずに済みますよう。
今のわたくしに出来ることと言えば、そうやってコングの無事を祈ることだけでございました。
レッドストライプスによるコング追跡は、結局失敗に終わりました。
現場からの報告によれば追跡部隊はコングの仕掛けた罠にかかって、隊長格を一体残して全滅してしまったとのこと。つまり、コングとやらは無事逃げ切ることができたようです。
……よかった。その話を小耳に挟んだわたくしは、密かに安堵すると同時に仄かな希望を抱きました。
生き馬の目を抜く卑劣な暴力が物を言う、冷酷非情なこの世界。そんな世知辛い世間ではありますが、一方でコングのような立派な殿方がまだいるのだということ。世の中、まだまだ捨てたものでは無い……そのように感じられて、わたくしは内心とても嬉しかったのでございます。
一方、命からがら逃げ帰ってきたレッドストライプスの隊長格は、
「報告、報告でございます、スカーキング様ァァ~~!」
「なんだァ、テメェ……コングの野郎をおめおめ逃がして『報告』だァ~~? もしもくだらねえ内容だったら、生きたまま八つ裂きにしてくれっぞアァン!?」
そう不機嫌そうに唸るスカーキング。けれどレッドストライプスの隊長格は、そこで驚くべき報告をもたらしたのです。
「かのコングとやら、外の世界と繋がっておりました! そしてその逃げ帰った先には、地上世界へ続く抜け穴が……!」
「なんだとォ……!?」
この報告には、スカーキングも目の色を変えました。
無理はございません。長年封じ込められてきたスカーキングの地下帝国、その地上世界進出への手がかりが見つかったというのですから。
スカーキングはすぐさま行動に移りました。
「おい野郎ども、出かけんぞォ!!」
スカーキングは地上侵略の準備に取り掛かりました。忠実なレッドストライプスの親衛隊をありったけ引き連れ、スカーキング自身もコングから奪った戦利品のアックスを携えました。
当然、その戦列には地下帝国における最高戦力であるわたくし、氷結怪獣シーモも加わることになりました。
「おらッ、出番だぞシーモ!」
そうして溶鋼の檻から引き出されたわたくしの背中に、スカーキングの痩躯がまたがりました。どうやら歩くのを億劫がったらしいスカーキングは、わたくしを代わりに歩かせるつもりのようです。
……なんと屈辱的な仕打ちなのでしょう。わたくしは乗り物ではありません。他の方ならいざ知らず、よりにもよってスカーキングごとき下郎めを乗せることになるなんて。
わたくしは嫌悪感のあまりすぐさま振り落としてやろうかとも思いましたが、その気配を目敏く察したスカーキングはわたくしの耳元へ囁きかけました。
「おいィ~、変なことを考えるんじゃあねーぞォ? さもないと……」
そう言いながらピタピタ突き付けたのは愛用のウィップスラッシュ、ひいてはその先端に取り付けられたわたくしの逆鱗クリスタルです。
長きにわたって心身に沁み込まされた条件反射で、わたくしは思わず身が竦みました。スカーキングへの反抗は、すなわちわたくし自身の苦しみを意味します。
咄嗟に怯えるわたくしの様子を見て、スカーキングは残忍な嗜虐の笑みを浮かべました。
「さあ、とっとと歩けェい!」
「くっ……!」
止む無くわたくしはスカーキングの意のままに、卑怯姑息の卑劣漢スカーキングを乗せて歩き始めました。
……まったく業腹でなりません、スカーキングごときのために働くなんて。けれど、急所を握られた身では逆らうこともままならないのでした。
「ヒャッハァァ~~~~ッ!!」
そうやってわたくしを屈服させたスカーキングは、至極ご満悦の様子でした。浮かれ調子のスカーキングは、わたくしの背の上で仁王立ちしながら号令をかけました。
「テメェらァ! 地上侵略の開始じゃァァ~~~~いッッ!!」
かくして進軍を開始する、地下帝国の大軍勢。スカーキングに率いられたグレートエイプの兵士たちが地下帝国をあとにします。
わたくしシーモの、そして地球の命運をも変えることになる大決戦がまさに始まろうとしておりました。
スカーキング、台詞なんてものは一言も無かったんですけど、どう見てもCV千葉繁さんか高木渉さんにしか見えませんでした。吹き替えも無ければ字幕すらないのに、なぜか何を話しているのかわかるという凄いキャラだった。あいつ絶対猿語で台詞喋ってたでしょ。
イカレたメンバー紹介するぜ!
-
まいどお馴染み主人公!キングコング
-
相も変わらず見境ねえぜ!ゴジラのオジキ
-
出る作品ちげえだろ!猿の惑星スカーキング
-
おまえジャンプ黄金期に出てたろ!スーコ
-
なんだおまえは萌え属性か!くっ殺姫シーモ
-
もー、男ってホントバカ!モスラの姐さん
-
ニューリーダー病が祟って死亡!スキュラ
-
悪くないのに突如死亡!ティアマト