「セイア様、そろそろお時間です」
「おや、もうそんな時間か。今日はこの辺にしておくとしよう」
時刻はちょうど18時ごろ。
セイア様はお茶会を終えた後も、執務をこなされておりました。
学生の身なれど、派閥の長ともなれば仕事はいくらでもあるもの。
僭越ながら、わたくしも少々お手伝いさせていただいております。
といいましても、閲覧する許可がないものも多いので大したことはできませんが。
本日は夜間の護衛はほかの方が担当するので、この後は何をしましょうか。
「ところで、さっきミカに抱き着かれていたとき鼻の下を伸ばしていなかったかい?
確かにミカは発育がいいからね。興奮してしまうのも仕方がないが……」
突然何を言い出すのかと思えば…‥。
まあ、いつものことですわね。
ときたま、セイア様はこういうお戯れをする。
セイア様一筋だというのはご存じでしょうに、とジト目で返す。
「ふふふ、魅惑のセクシーセイアですまない。いやはや罪作りな女だね、私は」
と、どや顔で無い胸を張っている。
服装だけ見れば確かにセクシーですが、それ以上にかわいらしいが先行しますわね。
ええ、何がとは言いませんが。
「失礼だな、成長途中だよ」
「ナチュラルに思考を読まないでくださいまし」
などと軽口を叩けるくらいには、気を許してくださっていますわ。
それにしても、セイア様は少し最近やわらかくなったような気がします。
ミカ様への態度も、ほんの少しですが歩み寄ろうという気持ちは感じ取れますわ。
ええ、本当に、ほんの少しだけですが。
しかし、ミカ様とセイア様の喧嘩?じゃれあい?もまた平和だと思いますわ。
こんな日々がいつまでも続けばいいのに……。
いえ、違いますわね。
こんな日々を続けられるように、エデン条約の締結を急がなくてはなりません。
そして、そのためにもわたくしが全力でサポートし、お守りいたしますわ。
「よし、では帰ろうか」
わたくしが一人決意を新にしている間に、セイア様は帰宅の準備を終えたようでした。
「では、また明日」
「はい。おやすみなさいませ、セイア様」
セイア様のお部屋へと送り届けると、護衛を引き継ぎその場を後にする。
そうだ、そういえば今日はメンテナンスに出していた愛銃が返ってくる日でしたわね。
昔からお世話になっているガンスミスに、定期メンテナンスと調整をお願いしていましたの。
そうと決まれば、善は急げですわ。
自室に戻り、私服に着替えると、そのままトリニティ近郊のブラックマーケットに向かいました。
「よう、嬢ちゃん。ちゃんと仕上げてあるぜ」
いつもの店に入ると、バンダナで口元を隠した怪しい黒づくめのロボットが出迎えてくれる。
怪しい、という意味ではわたくしもあまり人のことを言えませんね。
いつもはロングヘアにしている赤い髪を、ポニーテールにして帽子をかぶることで目立たなくし、
背中に生えている白い羽を、だぼっとしたパーカーの中に折りたたんで隠していますから。
というか、わたくしも黒づくめの怪しい人になっていますわね。
このブラックマーケットという治安の悪いところで、トリニティ生とバレると面倒なことになりますからね。
そもそもティーパーティー所属の身で、ブラックマーケットに出入りしていることがあまりよろしくないのですが。
明確に禁止されているわけではないのですがね。
「いつも助かっていますわ。ありがとうございます」
「どういたしまして。しかしまあ、あのお嬢ちゃんがこんなお淑やかになって……俺はうれしいよ」
あなたは、わたくしのお父様か何かですの?
まあ、いいでしょう。
なんだか今日はよくからかわれますね。
「お代はいつも通り、口座に振り込んでおきますわ」
「おう」
うん、やはりいい仕事をしますね。
セレクターを操作したり、チャージングハンドルを引いて初弾を装填したりして感触を確かめましたが、完璧ですわね。
注文通りの仕上がりです。
サイトに取り付けてもらったセイア様の耳を模した飾りも、動作を妨げることがありませんね。
ああ、あのモフモフしたセイア様のお耳……。
モフりたいと何度思ったことやら。
いえ、そのような不敬は許されませんわ。
セイア様なら許してくれそうな気もしますが、それはそれ、これはこれですの。
さて、用も済みましたし、長居は無用ですわね。
帰るとしましょうか。
ダダダダダダッ
「おらおらー!!待てやゴルァ!!」
「う、うわあああ!」
はあ、この悲鳴は……。
またですか、ヒフミさん。
仕方ありませんね。
ええ、本当にしかたなくです。
別に、調整した愛銃を試し打ちしたいとかそんな気持ちはありませんわ。
本当ですよ。
「もう逃げられねぇぞ!」
「あわわわわ、まずいです!」
何とか逃げ回っていた少女だったが、大人数に追いかけられついに路地に追い込まれてしまう。
「おとなしく眠ってろ!」
不良の魔手が少女に迫った、その時、サイレンサーで抑制された一発の銃声とともに、少女に襲い掛かろうとしていた不良が倒れる。
「誰だ、てめぇ!」
「ヘッドショット、ターゲットダウン。近接強襲戦闘に移行します。」
不良たちが銃声のした方を見ると、そこには愛銃の
構えを解き、パーカーを脱ぎ捨てると同時に走り始める。
「と、飛んだ!?」
助走をつけて大きく飛び上がると、そのまま空中でセレクターをシングルショットからフルオートに切り替え、不良達へ射撃を開始する。
空中という不安定な状態でも、不良達の頭部や胸部などの急所を正確に撃ち抜く。
そして、勢いそのままに不良達の上を飛び越え、少女のもとへ舞い降りる。
「少し、失礼しますわ」
「ふえっ?」
サマナは少女を抱きかかえると、その純白の羽で銃弾から少女を守る。
羽で防御しながらも、装備していたチェストリグから予備のマガジンを取り出し、手早くリロードする。
不良達はもはや恐慌状態で、銃を闇雲に撃ち続けるが、冷静な時ならいざ知らず、そんな状態の弾が当たるわけもなく、間もなく弾切れとなる。
その間にも、ひとり、またひとりと不良達が倒されていく。
「あと1人」
「ち、畜生!!」
破れかぶれになった不良は、弾切れになった銃で殴りかかる。
「舐めないでくださいまし」
が、駄目。
愛銃を手放し、スリングで吊るすと、不良を掴み投げ飛ばす。
「赤髪青眼の天使……まさかお前は「それ以上は言わせませんわよ」」
倒れ伏した不良に拳を叩きつけ、その意識を刈り取る。
この間、わずか3分。
短時間で10人以上の不良をなぎ倒し、救出対象には傷一つつけさせない。
これが、百合園セイアの護衛、赤鎌サマナの実力であった。
パンパン、と服や羽についたほこりを払うと、守り抜いた少女の方へ向き直る。
「さて、怪我はありませんか、ヒフミさん」
「サマナちゃん!はい、おかげさまで!」
少女の名前は、
サマナと同じく、トリニティ総合学園1年にして自称平凡な逸般人だ。
本当の凡人は好きなもののためとはいえ、ブラックマーケットになどこないのだ。
そして、ティーパーティーの桐藤ナギサから目をかけられている時点で、ただの平凡な生徒というのはあり得ないのである。
「あはは……また助けられてしまいましたね」
「あれほど1人でブラックマーケットに近寄るなといいましたのに」
ええ、彼女とこうして出会うのは今回が初めてではありません。
前もこうして、不良に追われているところを助けて差し上げましたの。
自分のことを棚に上げているですって?
わたくしはいいんですの。
見ての通り、返り討ちにできますし、そもそもトリニティの生徒とバレにくいように着替えてますし。
制服でブラックマーケットに来る方がどうかしていますわ。
どこが平凡なんでしょうかね。
「あなたに何かあれば、ナギサ様が悲しむということをお忘れなきように」
「あはは……」
少しずるいが、ナギサ様のことを引き合いに出せば素直に聞いてくれる。
平凡とは程遠いですが、いい子ですから。
「用が済んだなら帰りますわよ」
「あ、はい。行きましょうか」
投げ捨てたパーカーを回収して、着なおすとヒフミさんとともにその場を後にした。
ふふふ、久々に運動しましたが、体を動かすのは心地いいですね。
愛銃の調子も最高でしたし。
まあ、護衛という立場なので、こうして武力をふるうことがないほうがいいのですがね。
帰宅して夕食やお風呂を済ませると、心地よい疲労感の中で眠りについた。
普段お淑やかにしていますが、ちょっと戦闘狂の気があります。
容姿についてですが、羽は背中に生えていて、白いのでアズサみたいな感じです。
特に飾りはつけていませんが、大きいので今回のようにガードするのに使ったりできます。
もちろん痛いですけどね。
EW版ガンダムデスサイズヘルのアクティブクロークみたいな感じです。
あと護衛なので、普段からティーパーティの制服の上にチェストリグをつけています。
みんなどこからマガジン出してるのかちょっと気になりますね。
ちなみに戦闘力としては、現在のスタイルではミカやツルギなどとタイマンするのは分が悪いです。圧倒的個人と戦うのではなく、今回のように一対多で守りながら戦うための装備と戦闘スタイルなので。
追記
アークナイツのイベントやらなきゃだったり、GWで親戚との集まりあったりするので次はちょっと時間かかるかもです。