その前に一つだけ。
曇らせは好きですが、それは過程にすぎず、目指すのはハッピーエンドです。
これだけは真実を伝えたかった。
ミカちゃんと出かけてから数か月たった、ある日の朝のことでした。
セイア様のヘイローが破壊されたと聞かされたのは。
話を聞いた時、自分の耳を信じられませんでした。
この目で見なければ信じられない、そう思いせめて遺体だけでも確認させてほしいとそうお願いしました。
でも、不可解なことに第一発見者である救護騎士団のミネ団長とともに、セイア様の遺体が行方をくらましたとのことでした。
何故?
そして、セイア様の死因は他殺だったそうです。
いったい誰が?
何故?何故?何故?
考えても、考えても、不可解な点が多すぎますわ。
襲撃犯への怒りがふつふつと湧いてくるのを感じます。
でも、何よりも許せないのは……わたくし自身です。
襲撃があった当日、本来の護衛はわたくしだったはずでした。
ですが、その日はセイア様からのお願いで別のものに護衛が変更されていました。
これまでも、こういうことはありました。
わたくしが関わると、予知が機能しなくなり破壊されることもある……だから、どうしても外したくない時は、わたくしには自宅待機を命じられていました。
セイア様曰く、予知には結節点……ターニングポイントのようなものがあるそうで、そこを破壊するとそこから先の予知がすべて白紙になってしまう。
今回も同じような理由だったのでしょうが、あの日はどこか様子が変でした。
どこか歯切れが悪いというか、迷っているというか。
ですが、わたくしはセイア様を後押ししてしまった。
ただただ盲目的に、肯定してしまいましたわ。
他ならぬセイア様のご判断ですから、自信を持ってくださいと。
その時のセイア様は、何かを決心したような顔でした。
今思えば、未来のために死ぬ覚悟を決めたということなのでしょう……わたしが肯定してしまったばかりに。
わたくしのミスでした。
いいえ、そうではないですね。
予知した通りということは、わたくしがいなければもとよりその予定だったということ。
ご自身が襲撃されるということも全て知っていたんでしょうね。
相談してくだされば、何が来ようと、誰が来ようとセイア様をお守りしたのに。
でも、そうはなりませんでした。
それとも、死してなおまだ何か期待してくださっているのでしょうか?
だとすれば、買い被りすぎです。
わたくしはセイア様がいなければ生きていけないような、こんな弱い人間なのですから。
貴方のいない世界に意味などありませんよ。
古文書にあった、
偶然与えられた二度目の人生、今度こそは幸せな人生を送れるように頑張ろうと思っていました。
ですが、幸せを甘受できたとしても、こうして失われてしまう……。
結局のところ一時的なものにすぎず、何をしても無駄ということに尽きるのですね。
思い返してみれば、セイア様の役になど立てていなかったですね。
ただただ依存して、空回りしていただけ。
憧れは理解から最も遠い感情とはよく言ったものですね。
セイア様は期待してくださっていたのに、わたくしは期待に応えられなかった……いいえ、応えようとすらできていなかった。
パテル分派の方々のミカ様を見る視線と何が違うのでしょうか?
状況に流され、権力者に迎合する。
セイア様には失望されていても不思議ではありませんわね。
未来は変えられず、すべては無駄な足搔きだと思っていたところに現れた一筋の希望……それがただの買い被りだったわけですから。
あれからさらに数か月がたちわたくしは2年生になりましたが、その間のことはあまり覚えていません。
覚えていることといえば、セイア様の護衛を外れていたことの事情聴取くらいでしょうか。
まあ、当然でしょうね。
セイア様の襲撃された当日に不自然に護衛を交代しているわけですから。
それがセイア様の指示だったとしても。
いえ、セイア様の指示だったからでしょうか?
予知をもとに何か指示を受けていないかなども聞かれましたわ。
しばらくは現実を受け止めきれず、狂ったように戦闘力強化に勤しんだ時期もあったような気がしますが……結局虚しくなってやめてしまいましたわ。
ある程度は習慣として続けていますが。
その時期にトリニティの不良を狩りまくっていたせいで、ティーパーティーのリーサルウェポンなどと言うあだ名がついてしまったようですが些細なことですね。
そういえば、最近はキヴォトスでいろいろ起きているようですね。
連邦生徒会長の失踪、それに伴う行政機能の停止と混乱、そしてその解決の立役者となった【先生】の赴任。
まあ、わたくしにはどうでもいいことです。
トリニティの内部でいえば、連邦生徒会長の失踪で流れかけたエデン条約の締結を行おうと、ナギサ様が動いているらしいですわ。
ミカ様は相変わらず自由気ままに過ごしていて、どこかに行ってしまうことも多いのだとか。
ミカ様とは、あれから話していませんわ。
なぜだか気まずくなってしまうようで、顔を合わせても逃げるようにその場を去ってしまいます。
ナギサ様はお忙しいようで、事情聴取の後はしばらく休めということだけを伝えられて、それ以来会っていません。
それに、条約のことでピリピリしているのもあるのでしょうが、わたくしを疑っているようでフィリウス分派の人間が常にわたくしを監視しています。
ああ、虚しい。
皆様との日々はとても楽しかったですが、セイア様がいなくなったことですべて失われてしまいました。
こんなことであれば、最初から出会わなければ幸せだったというのに。
どうしてわたくしはこの世界に生まれてきてしまったのでしょう。
誰が、何の意図で?
わからない。
考えるのも億劫になってきましたわ。
そんなこんなしているうちに、授業時間が終わりましたわ。
今日の予定は……と、手帳を取り出そうとしてないことを思い出す。
そういえば、そうでしたわね。
手帳がないことを思い出したわたくしを見て、クラスメイトがせせら笑うのが聞こえてきますわ。
「セイア様のお気に入りだからって生意気なのよ。堕天使め」
堕天使……懐かしい名前を最近はよく聞くようになりましたね。
グレていたときについた異名なのですが、不良では珍しい天使のような2枚の羽と、リンゴを模したヘイロに生えた10枚の羽を合わせて12枚の羽として、ルシファーなどと呼ばれていましたわ。
結構戦闘スタイルが乱暴だったので、堕天使って表現がちょうどよかったんでしょうね。
古文書に語られる堕天使ですが、不良の中にそんな教養がある人間がいたことに驚きを隠せませんね。
キヴォトスの外ではサブカルでメジャーな存在だったので知っていても不思議ではないですが。
もしかしたらトリニティでは創作の題材にされているかもしれませんけど。
それはさておき、セイア様がいたころは肩書によって守られていたところはあるのですが、やっかみというものは存在していましたわ。
セイア様が(表向きは)療養中ということもあって、庇護がなくなったことで実害が出始めているわけなんですが。
それに、療養中なのに付き人兼護衛が何もしていないということで、原因が実はわたくしではないかとする勢力もあるようです。
フィリウス分派の人間が監視についてるのも理由の一つなんだと思いますわ。
悪人なら胸をなめられても当然、などというパワーワードを前世で聞いた覚えがありますが、理由があれば何をしてもいいと思っているんでしょうかこの学園の人たちは。
主語が大きくなりすぎてしまいましたね。
そういった人ばかりではないというのに……。
「次は何をしてやろうかな?」
「ちょっと、今はやめときなって。ほら」
「げっ……」
そう彼女が促した方には、いつもの監視がいました。
わたくしを監視しているだけなので、別に問題はないと思うのですが。
そういえばあの方は、ナギサ様の護衛も務める精鋭だったと思いますが、それだけ警戒されているということですか。
悲しくないといえば噓になりますが、ホストとして必要なことなのでしょうね。
ブラックマーケットに装備の手入れなどで行くときはさすがについてきていませんね。
ティーパーティーの服装は目立ちすぎるのでしょう。
というか、今思えばブラックマーケットに出入りしているせいで疑われている自業自得な面もあるのでしょうか……。
さて、今日の予定でしたか。
つい癖で手帳を確認しようとしてしまいましたが、別に特に予定などないのでほぼ白紙なのでなくても困りませんね。
しいて言えば、救護騎士団で定期健診くらいでしょうか。
セイア様がいなくなってしまってから、夜眠れなくなってしまいましたわ。
それで道端で倒れてしまって、セリナさんに何度助けられたことやら。
不思議なことにどこからともなくセリナさんが現れて、地面にぶつかる前に支えてくださるのですが、セイア様の予知夢のような彼女の特殊な神秘なのでしょうか?
もう自分なんてどうなってもいいといったのですが、もっと自分を大切にしてと怒られましたわ。
いつでも助けられるわけじゃないとも。
そこで、健康管理のために定期的に検診すると宣言されてしまいました。
わたくしのことはいいのですが、わたくしのせいで悲しむ人が出るのは本望ではないので極力気を付けるようにしていますわ。
「やっぱり、眠れませんか?」
「ええ、そうですね」
理由はティーパーティーの機密なので話せないのですが、セイア様関連だろうというのはおそらくばれてしまっていますね。
眠ろうとすると、無駄だとわかっていてもあれこれ考えてしまう。
そして、そんなあきらめの悪い自分に嫌気がさして自己嫌悪でさらにという悪循環。
あとは、セイア様を抱いてお昼寝したあの日の感触が忘れられなくて、セイア様のことを考えてしまって眠れなくなってしまうこともありますわ。
セイア様が生きていれば、魔性の女ですまない、などとからかってきたのでしょうか?
でも、もういませんから考えてもせんないことですね。
「わかりました。対処療法でしかありませんが、今日もここで眠っていってください」
わたくしは肉体が強靭なようで、睡眠薬を常用するとすぐ耐性ができてしまって効かなくなってしまうらしいです。
なので、数日に1回の定期健診のときだけそのまま薬を飲んで眠るというのが対処になってしまっていますわ。
そもそもが相当強力な薬なようで、処方できないというのもあるのですけど。
「はいどうぞ」
「やっぱりしなきゃダメですか?」
何故かいつもセリナさんを抱いて寝るように指示されますわ。最初の日にはなかったのですけど、2回目からはずっと。
抱き合うことでストレス解消などの効果があるといいますが、それがセイア様との会話を思い出させてつらい気持ちになってしまいます。
しかし、薬による眠気にはあらがえず、そのまま意識を手放しました。
背中にセリナさんの手を感じながら。
「おやすみなさい、サマナさん」
薬で眠ったことを確認しても、そのままサマナさんを抱きしめて背中を撫でる。
眠ったから離れようとしたこともあったのだけど、離れるとうなされているようだったので心配になるんです。
何があったのかは機密で話せないそうですが、相当なことがあったんでしょう。
ミカ様と戦ったとかでボロボロになっていたときは、あんなにもかわいらしい顔をしていたのに、いまでは眠れていないせいでひどい隈があるのもですが、荒んだ眼をしてしまっています。
それに、教室でもいろいろと悪さをされているみたいです。
私も助けてあげられたらいいのですが、サマナさんはティーパーティーで私は救護騎士団……政治的な問題であまり干渉できないんです。
私の勝手な行動で先輩方にご迷惑をおかけするわけにはいきません。
ミネ団長もどこかに行ってしまった今、あまり動けなくて歯がゆい思いをすることも多いです。
でも、今は患者と主治医の関係……そこに立場は関係ありません。
いいえ、救護騎士団として、そんなものをここには持ち込ませません!
だから、今だけは甘えてくれてもいいんですよ?
だって、私たちはクラスメイトで、友達なんですから。
「いかないで。見捨てないで……置いていかないで……」
「大丈夫ですよ、私はここにいますから」
そういいながら、強く抱きしめると安心したのか、安らかな寝息を立て始めました。
いつか、薬に頼らずともぐっすり眠られる日が来ますように。
それまでは、私がついていますからね。
たとえ、セイア様の代わりに過ぎなかったとしても。
みんなのミスでした。
互いが互いを信じられず、もう一歩を踏み込めなかったが故の。
どうなるかはまだ分からない。
エデン条約編、開幕。
私事ですが、最終編やれてなくてようやくクリアしたんですがすごくよかったです……。
実をいうと、エデン条約編も最近読んだんですよね。
エデン条約編をクリアした勢いでこの小説書き始めたんですよ。
昔の任務やらないとストーリー進めれなかったころの認識のままで、任務やるのめんどいなーってなっててそのままだったんです。
イベントやったりガチャは回したりで戦闘力だけは上がってたのでヒエロニムスにも普通に勝てるレベルだったんですけど。
とまあ、最終編のことも考えたうえで多少は設定を作ってみたので、楽しみにしていただけたらなと思います!
今回の内容書いてて思ったのは、セリナと遊びに行く回とかも書けばよかったですね。メンタル病んでセリナが主治医ってのは初期からあったので。
どこかで折を見て書こうかな?
ちなみに固有2にするくらいにはセリナ好きです(好自語)
ヤンデレ概念よき……
そういえば、2話のヒフミのセリフですが、さん付けなの違和感あったのでしれっとちゃん付けに直しておきました。