07:覆面水着団、出撃!
起きたらまた目の前が、塞がれていましたわ。
どうしてキヴォトスの民はこうも距離感が近いのか……。
セリナさんのことをお母さんみたいという方の気持ちも少しわかる気がしますわ。
それにしても、セリナさんもけっこう大きいんですね。
こういうと、おっさん臭いかしら?
さて、薬のおかげで眠れた数時間のおかげで、だいぶ体は楽になりましたね。
処方できないほどの強力な薬でも数時間しか持たないなんて、相変わらず頑丈な体ですこと。
ふむ……起こさずに退くのは無理ですね。
「セリナさん、起きてくださいな」
「うぅん……あ、おはようございます、サマナさん」
どこからともなく現れるので最初はびっくりしましたけど、こうしているとわたくしと同世代の女の子ですね。
「よく眠れましたか?」
「ええ、おかげさまで」
できれば迷惑はかけたくないのですが、来なかったら何されるかわかりませんね。
こういう場合には、結構強引なところありますので。
「では、また来週」
「はい!」
といっても、クラスが同じなのでまたすぐに会うのですが。
おや、あれは、ヒフミさんですね。
はあ、あの方角はまたですか……懲りないものですね。
あーもう!流石に見て見ぬふりは気分が悪いので追いかけますわよ。
いえ、ここ最近は気分が良かったことなどありませんが。
HAHAHA、ナイスジョーク。
自分で言ってて悲しくなってきましたわ。
今から追いつくのは難しいので、屋上から探せるように長距離戦用装備で行きましょうかね。
ということで、装備を変更してブラックマーケットの屋上にやってきましたわ。
しかし、杞憂だったようですね。
どこの方かは知りませんが、4人の生徒と1人の大人と一緒に行動しているようですわね。
あれは……最近噂のシャーレの先生というやつですか。
そういえばあのピンク髪の生徒、どこかで見覚えが。
もしや暁のホルス……ということはアビドスですか。
あのような、廃校寸前の高校がなぜブラックマーケットに?
それに、資料で見たのとずいぶん印象が違いますわね。
資料では抜身の刃物のようだったのですが、なんというか牙が抜かれた?
そんなような雰囲気がしま……殺気!?
そんな、この距離で気づかれた?
そんなまさか……でも、明らかに一瞬こちらを向いて殺気を飛ばしてきた。
ええい、やましいことは何もないですが、帰りますわよ。
嫌な予感がしますわ。
「逃がすと思った?おじさんのこと、舐めてもらっちゃ困るよ~」
早い、早すぎますわ。
既に退路を防がれていますわね。
「小鳥遊、ホシノさん……」
「へぇ?おじさんのこと知ってるんだ」
ショットガン……分が悪いですわね
今日のわたくしが持ってきているのは、
うーん、昔の愛銃ならまだしも、このカスタムの銃で接近戦はしんどいですわね。
「それで、ティーパーティーのリーサルウェポン様が何の用さ?」
その異名、そんなに有名なんですか?
「トリニティの戦略兵器と並んで、キヴォトスの有力者なら全員警戒対象にしてると思うよ?」
「あの方と比べられるのは少々不服なのですが……というか、わたくしそこまで強くありませんよ」
ミカ様にもボコボコにされる程度の実力しかありませんでしたし。
「ま、そんなことはどうでもいいんだよね~。うちの子たちを狙った理由を教えて欲しいな~?ことと次第によっては容赦しないよ」
牙を抜かれたとか言ったけど訂正しますわ。
ただ、鞘にしまわれているだけですか。
「わたくしはヒフミさんが心配で来ただけなので、あなた方に危害を加える意図はありませんわよ」
流石に苦しすぎるかしら?
あとからやってきて、スナイパーで安否確認とか意味不明すぎますもんね……。
「ふーん、そうなんだ。ごめんね~おじさんの早とちりだったみたい」
ホシノさんから出ていた殺意が引っ込んだ……ということはひとまず信じてもらえたのかしら。
と、言っても妙な動きをしたら撃つくらいの圧は感じますけど。
「じゃあ、行こうか~。ついでだし、サマナちゃんにも手伝ってもらうよ~」
手伝う?いったい何をでしょうか。
それと、異名だけじゃなくて本名のほうも知られているんですね……。
「と、いうことで連れてきたよ~」
「あ、あはは。お久しぶりです……」
来る途中で、相変わらず制服のままで来て、また不良に絡まれていたと聞いてしまいましたわ。
せめて着替えてからにしませんか……?
「急いでいたもので……」
はあ。
ただでさえ死んだ魚のような目と最近よく言われるのに、いつも以上にひどい顔になっているのを自覚できてしまいますわ。
「おじさんのことは知ってるみたいだから省くとして」
「ん、砂狼シロコ」
「十六夜ノノミです」
「黒見セリカよ」
「書記の奥空アヤネです」
そしてこの、
「"私が連邦捜査部【シャーレ】の先生だよ"」
シャーレの先生……キヴォトスの外から来た大人。
このキヴォトスの外というのは、わたくしの知るものと同じなのでしょうか?
純粋な疑問ですが、気になりますわね。
「トリニティ総合学園、ティーパーティー……を現在休職中のただの、赤鎌サマナと申しますわ。よろしくお願いいたします」
肩書、なかったですわね。
何者でもなくなってしまったようで、なんだか悲しくなってきましたわ。
「先生、一つだけお聞きしたいことがあるのだけどいいかしら?」
「"うん、いいよ"」
先生の耳元に近づいて囁く。
「今って令和何年ですか?」
NATO弾、名古屋メシ……なぜかわたくしが知る世界の残滓がキヴォトスにはいくつか存在していますわ。
ということは、わたくしの前世もキヴォトスの外なのでは?と思ったのですけど。
「"え……?令和6年だけど、キヴォトスって和暦だっけ?"」
令和6年……ということは、わたくしの記憶にある最後の年、つまり推定わたくしが死んだ年と、先生の赴任した年が同じ……何か作為的なものを感じますわね。
「いえ、特殊な事情で少しだけですがキヴォトスの外のことを知っていますの。ちなみに、アーマードコアの新作は発売されてますわよね?」
「"ああ、うん。去年発売してるよ?"」
なるほど。
であれば、歴史としても概ね大差ないと思いましょう。
ガバガバな自覚はありますが、直近で大きな出来事ってのが思い浮かびませんでしたわ。
主観では十数年前ですからね。
「"やりたかったらシャーレに置いてあるから、今度やらせてあげようか?"」
え、持ってきちゃったんですか?
仕事での赴任先にゲームを?
大丈夫なんでしょうか、この人。
なんだか少し不安になってきてしまいましたわ。
「いえ、大丈夫ですわ」
昔ならやりに行ったかもしれませんが、今はそういう気分になりませんし……。
「"そっか。気が向いたらいつでも来ていいからね!"」
「ええ、そうさせていただきますわ」
おっと、ほかの皆様をほったらかしにするわけには行けませんわね。
「失礼、お待たせいたしましたわ」
ホシノさんからある程度聞いていますが、改めて現状の情報を共有してもらいましたわ。
会話ついでに、というわけではないのでしょうが、ノノミさんのおごりでたい焼きを食べていますわ。
甘いものはいいですわね。
「ふむ、やはり奇妙ですわ」
「はい、普通ここまでやりますか?といった所でしょうか」
ブラックマーケットでの悪事なんて、治外法権があるようなものですから隠す必要性はそこまでないですわね。
隠すコストに対して、メリットが釣り合わない。
「うーん、じゃあなんでそこまでして隠してるのかな~?」
「ま、それがわかれば苦労しないわね」
隠蔽に使うコストとメリットが釣り合うような組織となると、だいぶ可能性が限られてきますわ。
「カイザーコーポレーション……」
「カイザー?」
「もしかして私たちが借金しているカイザーローンと同じ?」
やはり、繋がりましたわね。
「裏での悪事がバレたらまずいということは、表にも進出しているような大企業ということ」
「なるほど、それでカイザーですか。違法スレスレで、だいぶあくどいことをしているようで、ティーパーティーでも警戒対象になっていると聞いたことがあります」
ヒフミさんが言う通り、ティーパーティーとしても危険な企業として、トリニティ領内への進出を極力抑えるという方針で結論が出ていますわ。
証拠がないので完全に締め出したり、潰したりといったことはできていないのが現状ですが。
それにしても、ナギサ様。
いくらお気に入りの子だからと言って、ティーパーティーの内部情報を流すのはいかがなものなのでしょうか?
いえ、ヒフミさんのことなので大丈夫だとは思いますが。
「ちなみに、あそこにある銀行がカイザーローンですね」
「まって、あれって!」
「ん、今朝集金に来た現金輸送車。ナンバーと運転手が一致してる」
ふーん、隠蔽している割には詰めが甘いんですわね。
一度表の支社で車を積み替えてからブラックマーケットに持ち込んだりすれば、絶対にバレなかったでしょうに。
「書類さえ回収できれば確認できそうですけど……」
「"アロナ、なんとかできないかな?"」
『ダメですね。全てオフラインで管理されているようです』
いま、先生のタブレットから女性の声が?
どこかで聞いたことがあるような声でしたが。
「先生、今どなたと会話していましたの?タブレットから女性の声がしましたが」
「"えっ?サマナにもアロナの声が聞こえるの?"」
「おじさんには何も聞こえなかったよ~」
となると、先生とわたくしにしか聞こえていない?
共通項は……キヴォトスの外と関係があることだけですか。
「まあ、今はいいですわ。現金輸送車は行ってしまいましたし、どうしましょうか?」
銀行の堅牢な金庫に保管されてしまっては、ミカ様やツルギ委員長……いえ、かの有名なSRT特殊学園のFOX小隊でさえ厳しいのではないでしょうか?
「うん、ほかに方法はない。アレをやるしか」
「アレ?アレか~」
アレ?
「アレってまさか!?」
「でも、あの方法なら!」
「"もしかして会議で言ってたアレのこと?"」
全く話が読めませんわね。
ヒフミさんも同じような状態のようですが。
そしてシロコさんは、カバンから青い覆面を取り出して頭に被ると、どや顔で宣言しましたわ。
「銀行を襲う」
「「はいーーーーーー!?!?!?」」
気が付くとホシノさんも、そうなるよね~などと言いながら色違いの覆面をつけていましたわ。
「わあ☆そしたら悪い銀行をやっつけるとしましょう!」
ノノミさん!?
では、まさか……いえ、あの真面目そうなセリカさんに限ってまさかですわよね!?
「マジなのね?じゃあ、とことんやるしかないわね!」
そ、そんな馬鹿な……。
「あ、あう……?とぅるるる、あわわ~?」
ヒフミさんはショートして精神崩壊してしまっていますわね。
「はあ、こうなったら止めても聞きませんよね。私も覚悟を決めましょう」
そういって、この場に居ないアヤネさんまで覆面を付けましたわ。
ストッパーに見えて意外とノリノリですわね!?
「ごめん、ヒフミ、サマナ。二人の分の覆面は準備がない」
あってたまりますか!!!!!
「うへ~じゃあ、バレたらトリニティのせいってことにするしかないね~」
「ワタクシ、トリニティチガウ。ムカンケイ」
「そ、そんな……サ、サマナちゃんは……制服じゃない?」
わたくしは来る前にちゃんと制服から着替えてますし!
ヒフミさん、不測の事態を予測しろとまでは言いませんが、これに懲りたら今度から最低限私服に着替えてくるんですよ……。
「とりあえずこれでもどうぞ~☆」
「お、たい焼きの紙袋?それなら大丈夫そうだね~!」
本当に……?
ヒフミさんも対策委員会の皆さんも、制服のままなので所属隠せてないのでは?
総生徒数5名の学園ですよ?
「あうう……」
「ん、完璧」
「見た目だけならラスボスだね~」
ご丁寧に5という番号まで降られている。
「わ、私もご一緒するんですか?」
「さっき今日は一緒だって約束したじゃーん?」
ヒフミさん、迂闊すぎますわよ!
「うう……もうナギサ様に合わせる顔がありません……」
「サマナちゃんは……」
「はあ。今日はスナイパーライフルなので、外から援護しますわ。ということで、番号はなくても大丈夫ですよ」
ラプアマグナム弾なので、遠距離からでも十分な威力がありますわ。
それにしても、あんないかにもな覆面を被せられたら、末代までの恥でしたわね。
今日日ドラマでももうちょいましな銀行強盗を出しますわ。
「うへ~まあ、もう異名もあるわけだし外部協力者ということでここはね。ね、ルシファーちゃん?」
「うぇ……そちらの方も広まってますの?」
なんだかこう、黒歴史を知られているようでむず痒いですわね。
というか先生、止めなくていいですか?
これでもあなた、教育者ですわよね?という気持ちを込めて、先生の方を見つめる。
「"でも、これしかないのも事実だし……"」
反対する人間は0と。
では、わたくしも腹をくくるしかありませんね。
全員が覚悟を決めると、先生から通信用のインカムを手渡されましたわ。
「"みんな、これだけは約束して欲しい。怪我しないように気を付けること、不必要にケガ人を出さないこと。特に、一般のお客さんには十分注意すること!"」
はい!、とみんなで返事をする。
「それじゃあ、先生。例のセリフを」
「"銀行を襲うよ!覆面水着団、出撃!!"」
「「「「「「「おー!」」」」」」」
え、この集団そんなダサい名前でしたの!?
ええい、もう、なんとでもなれですわーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!
メンタル病んでバニバニしてるけど、根はいい子なのでなんだかんだおせっかいを焼いてしまうサマナちゃんであった。
ちなみに今のサマナの戦闘力ですが、肉体も精神もボロボロなうえ、セイアの護衛してた時の装備がメンタル的な理由で使えないのでめちゃくちゃ弱体化してます。
ゲーム的にいうと、全ステータスダウン(レベル低下)、固有武器装備不可、NS使用不可、PSがスキルレベル1に低下って感じです。
EXとSSはそもそもまだ覚えてないので使えない感じです。
あ、そうそう。
お気づきの方もいるかもしれませんが、1話のステータスに乗せた攻撃タイプを神秘から貫通に変えました。
完全体のときのスキルとか考えた影響ですが、現状の話には一切関係ないです。
追記
先生の見た目はアニメ先生って書きましたけど、想像しやすいようにってだけなのでアニメ先生とは別人と考えてください。
個人的な性癖では便利屋先生が好みなんですけど、今作で考えてる先生のパーソナリティ的に似合わないなってなったのでアニメ先生が選ばれました。